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2001/10/10
テロ対策特別措置法案他3法案に対する代表質問/伊藤英成議員
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第153回臨時国会 本会議


テロ対策特別措置法案他3法案に対する代表質問


民主党・無所属クラブ 伊藤英成

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、『テロ対策特別措置法案』等について、総理並びに関係大臣に質問を致します。

 去る9月11日の米国における同時多発テロにより犠牲になられた方々、被害に遭われた方々、ご家族はじめ関係者の方々に、改めて心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。

 人道と正義に反する卑劣極まりないテロは、どんな理由をもってしても正当化できない、許せない行為であり、国際社会とともに一致協力して毅然として立ち向かうべきです。しかし、テロの背景には、遅々として進まない中東和平交渉や貧困問題、非民主的な政治体制、そして民族、宗教、石油利権等を巡る歴史的に根深い複雑な問題があります。日本として中・長期的な外交方針の中で、わが国の外交上の特性や果たすべき役割をしっかりと認識した上で、今回の事態への冷静な対応が重要と考えます。テロ対策のための国連や多国間協議へのイニシアチブ、中東における和平外交の推進、ODAの活用、国際的な裁判のあり方なども検討されるべきです。今回の米軍等への支援にしても、その必要性は、理解しますが、わが国にとって最も重要なことは、外交による非軍事的な貢献なのではないでしょうか。総理の見解を伺います。

 まず、この法律案によって、米軍等へ協力支援を行うならば、アル・カーイダやタリバンが、テロの犯人及び支援者であるということが大前提です。総理は、訪米の際にブッシュ大統領から説明を受けているとのことですが、未だ国民への明快な説明はありません。英国政府は、しっかりと文書で国民に説明をしています。日本政府が、今回の米軍等の攻撃への協力支援が適当であると判断する犯人及び支援者を特定する証拠について、総理に説明を願います。

 また、本法律案では、今回のテロに関係する脅威の除去が目的とされています。その範囲はいったいどこまでなのでしょうか。10月7日、アメリカは、アフガニスタン以外にも軍事攻撃を加える可能性を、文書で国連に示しております。この事実について、どのように考えるか総理の認識を伺います。また軍事攻撃がアフガン以外に拡大した場合にどのように対処する方針か、総理に伺います。

 今回の法律案では、国連安保理決議第1368号はじめ過去のいくつかの決議を根拠としています。国際的取組みの枠組みで自衛隊の海外派遣と米軍等の支援を正当化するのであれば、国際ルールに基づき実施することを担保するために、さらなる国連安保理決議等を求めていくべきだと考えますが、総理の見解を伺います。

 次に、国会の関与について伺います。今回の法律案では、基本計画を閣議決定し、国会に報告する形となっています。この政府案では、実際の行動措置に対して、国会がシビリアン・コントロールを及ぼすことは困難です。まして今回は、公海の範囲を超え、見えざるテロ組織に対処するために極めて不安定・不確実な政治情勢にあるかもしれない外国領域までいくという、わが国としてはまったく初めての行動となります。やはり国会の関与のあり方として、基本計画や実施計画を国会の承認事項とすべきと考えますが、いかがでしょうか。また、派遣後に、自衛隊の活動等に支障が出たときなどに、必要に応じて、国会が活動の中止や撤退を決定できるようにすべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 また、本法律案では、2年間の時限立法となっています。しかし、今回のテロへの対応では、状況の変化が極めて早く、また米国等の今後の行動も予測できない部分が多々あります。私たちは、国会の関与及び事態への対応という点で1年間が現実的であると考えますが、官房長官の所見を伺います。

 本法律案では、対応措置を実施する地域について、現在および活動期間を通じて「戦闘行為」が行われない地域としています。また、「戦闘行為」は、「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」としています。これは、周辺事態法の「後方地域」及び「戦闘行為」と全く同じ規定となっています。しかし、テロや内戦も当然、ここでいう戦闘行為にあたるのでしょうね。総理の見解を伺います。

 派遣対象国のひとつとして想定されるパキスタンでは、現在、米英の攻撃に反発する市民がいます。激しい反米デモも頻発している様子が報道されています。また、タリバン勢力に親しみを感じている市民も多くいるとの報道もあります。避難民等にテロのメンバーがまぎれて混乱をおこす場合も想定されます。局所的な自爆テロは、戦闘行為と認定するのでしょうか。また、受入国の政治情勢が不安定化することも予想されます。このような場合、活動地域が法律で定める範囲内であるかどうかの認定を、誰が、どのような基準に基づいて判断するのでしょうか。総理に伺います。

 現地パキスタン政府高官の声として、現段階において、パキスタン政府は、外国の軍隊が領土内で活動することに慎重な意見もあると聞きます。また、部族によっては、活動そのものが困難という指摘もあります。そのような中では、実際にはUNHCRを通じて、NGOが支援活動の中心となり、自衛隊の出る幕はないと思われます。政府は、現地の実情をどのように把握しておられるのか、総理に伺いたい。

 また、政府は、先に航空自衛隊のC−130輸送機6機を派遣し、テント315張、毛布200枚などを無償で提供しています。迫り来る厳しい冬を想定すると、百万人の難民に6万張のテントが必要との指摘があります。政府の支援のあり方について、現状認識を疑わざるを得ません。総理のご所見を伺いたい。

 人道的な被災民救援は、たとえ受入国の同意が得られても、危険を伴うことにならないのでしょうか。国境付近に他国の軍隊が展開することになると、特にそれが米軍陣営の一員ということになれば、かえってテロ組織の攻撃対象となり、ひいては難民キャンプや受入国にまで混乱させてしまうことになりうるのではないでしょうか。さらに、被災民救援に関して自衛隊は具体的にどの程度、どのような準備をしているのでしょうか。今回想定される地域では、イスラム教徒、とりわけ女性や子供、老人に対する医療活動などがあると考えます。女性患者には女性の医者や看護婦も必要となるのではないでしょうか。法律的な枠組みで自衛隊の派遣を可能にしても、現実に現地の人々への配慮ある対応ができるのか。防衛庁長官に伺います。

 人道的な被災民支援でもこれほどの困難がある中、さらに戦闘地域に近い所で実施される可能性がある捜索救助活動は、現実的かつ実効性あるものとなるのでしょうか。今回の場合、一体何処で捜索救助活動を行うことを想定しているのでしょうか。総理に伺います。またこのような複雑な現地の状況などを踏まえると、本法律案で認めている武器・弾薬の輸送についても、実施するべきではないと考えますが、いかがでしょうか。総理のご見解を伺います。

 本法律案に定める武器の使用基準について伺います。今回の法律案は、戦闘とは一線を画した地域としながら、総理は、「危険なところに派遣する」と発言されたと報道されました。基本的に危険が想定されない地域に限って、派遣をするのか、かなりの危険を冒してでも任務のために派遣するのかによって、自衛のための装備は変わってきます。あらためて、総理に確認しますが、この法律案で総理は自衛隊をどこに派遣しようとしているのですか。

 さらに、PKO協力法でさえ踏み込んでいない規定として、「自己の管理の下に入った者」という規定があります。これまで政府は、武器使用の基準については、基本的には自然権的権利に基づく正当防衛、緊急避難の範囲で説明をしてきました。今回、PKO協力法でも周辺事態法でも認めなかった部分について、本法律案において定めることとした憲法上の根拠を総理から明らかにして頂きたい。

 最後に、総理は、米英両国の武力攻撃に対して、間髪いれずに強い支持を表明されました。今回の米軍等への支援については、総理の積極姿勢はよく伝わってくるのですが、私には日本が世界の中でどういう国として進むべきなのか、国際社会の中でどういう地位を占めたいのか、まったく伝わってきません。日本は軍事的活動は出来るだけ抑制的にしながら、世界の平和を築き上げる努力をする国であるべきだと考えますが、如何ですか。

 8日未明に始まった、米英両国によるタリバン勢力への攻撃行動を、米国の自衛とテロ撲滅への国際的行動の一環として、民主党も理解するものです。但し、今後の行動が、一般市民の犠牲が拡大しないことなど、本来の目的を超えることなく、しっかりと目的に適った形で進められることを求めます。

 また、わが国としては必要な米軍等への支援は実施していくべきでありますが、一方でこれまで指摘してきたような課題が存在することも事実です。そうした中でのわが国による外交的な貢献としては、紛争後の復興支援におけるイニシアチブを重視するべきだと思います。現にパキスタンやアフガニスタンでは、水の確保や土地改良など、農業や技術分野に重点を置いた復興支援が極めて重要です。平和で安定した国際社会の実現を祈念して私の質問を終わります。

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