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2001/10/18
「テロ対策特別措置法案」に関する代表質問/藁科滿治議員
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第153回臨時国会 本会議


「テロ対策特別措置法案」に関する代表質問 


民主党・新緑風会 藁科 滿治


はじめに

 私は、民主党・新緑風会を代表して、「テロ対策特別措置法案」ならびに関連法案について質問をいたします。
 まず最初に、今回の同時多発テロ事件による犠牲者の方々とご家族の皆様に対し、心より哀悼の意を表したい思います。
 周知にように、衆議院における審議におきまして、今回の「特別措置法案」の施行によって想定される事態への具体的対応から、テロ対策に向けた中長期的な対応に至るまで審議されてきましたが、なお不明瞭な部分も残っております。参議院においては、国民が、法の目的と具体的な内容、そして政府の今後の基本方針について十分に理解、納得できるよう、総理ならびに関係大臣の明解なご答弁をお願いしたいと思います。


1、非人道的テロの根絶と国際世論の動向

 さて、9月11日、米国で発生したテロ事件は、過去に類例のない「同時多発的に」また「民間人を手段に、そして民間人を対象とした」残虐、卑劣極まりないものでありました。しかも、グローバル化した国際社会のもとで、その影響は経済、社会、生活のあらゆる面において、世界的規模で広がりつつあり、今後の動向は予断を許さない状況にあります。
 一方、こうした状況の中で、各国の世論は、テロの現象面の対応だけではなく、テロの本質、つまりテロ発生の根幹にある様々な要因を除去する対応に関心が向かいつつあります。
 米国の最近における国内世論も、報復行動を強く支持しながらも、事態の推移とともに、徐々に冷静さを取り戻しつつあります。これは、米国の国民が、報復行動だけではテロの根絶は不可能であり、むしろ報復合戦による新たなテロへの危惧と不安というものを認識しているからだと考えます。
 また、今回のテロで犠牲となられた日本人の父親の方は、「報復行動は期待していない。それで、息子が戻ってくるわけではないのですから。」と、唇をかみしめながらテレビのインタビューに答えられていました。おそらく、この方は、「このような痛ましい事件が二度と起きないようにしてもらいたい」と心の底から訴えられていたのかも知れません。
 さらに、我が国の最近の世論調査におきましても、テロ対策の必要性については高い支持率を示していますが、「軍事行動」と「テロ対策特別措置法案」の是非については、意見が二分されているという状況です。
 つまり、米国、日本をはじめ世界の多くの人々が真に望んいるものは、「テロの根絶」に向けた多角的・継続的な取り組みではないかと考えます。


2、「テロ対策特別措置法案」の内容に関して

 そこで、我が国は、テロリズムという特殊な形態による市民と国家への攻撃を未然に防ぐために、国連を中心とする国際機関や米国をはじめとして、これに懸命に取り組んでいる国々と連携し、テロを生み出し、またこれを助長するあらゆる根源を断ち切っていく国際的な協調行動に参画していかなければなりません。とりわけ軍事力・資金力をもった国際テロ組織を根絶させるためには、テロリストの幹部を捕捉して裁判にかけ、またその訓練施設や拠点を破壊することは重要なポイントであると考えます。
 そうした認識のもとで、今回の法案は、テロ対策に関する国際協力、とくに軍事行動をする外国の部隊への後方支援を主眼としておりますが、今日、国民が抱いているさまざまな不安や懸念を払拭するためにも、また中東諸国に対する我が国の中立的なポジションを維持していくためにも、まず後方支援が武力行使と一体化した形で遂行されることは、避けなければならないと考えます。
 そのことも含め、この法案には改善を要する点、より明確化すべき点が多々あります。以下、3点についてわたくしの考え方を述べますので、それぞれ総理、関係大臣より見解をいただきたいと思います。

 第1は、「基本計画」に定められた自衛隊の部隊が実施する対応措置の国会承認の問題です。衆議院における審議におきましては、民主党の修正要求に関して党首会談がもたれましたが、われわれの国会事前承認の要望に対して、政府・与党は事後承認ということで押し切られました。誠に遺憾な結果に終わったわけです。
 今回の自衛隊の活動は危険な地域での活動となり、またその活動が国際的にも大きな影響を与え、また評価を受けることになるわけですから、基本的に、自衛隊の行動について国民的合意とか、国家的承認が適時、必要となるのではないかと考えます。つまり国権の最高機関としての国会の関与が必要になると考えます。現行の自衛隊法や関連法においても、自衛隊を動かすときの国会承認はシビリアンコントロールの基本になっているわけで、この基本原則は貫かれるべきであります。法案には活動地域の限定がないわけですから、現地の事前調査や相手国との事前の交渉を踏まえながら策定される「基本計画」は極めて重要であり、これに基づいて実行される自衛隊の対応措置の国会での事前承認は、この法律の目的が適正に達成されるために必要不可欠のものと考えます。どうか小泉総理におかれましては、この件について是非とも再考していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。(総理大臣)

 第2に、自衛隊が行なう輸送・補給活動には、武器・弾薬を含めないものとすべきであります。これも、これまで十分に議論されてきましたので繰り返しを避けますが、現在の米英の作戦が、テロ拠点の攻撃とテロ容疑者の捕捉に限定されたものではなく、タリバン政権の打倒にむかっている現状、つまり国家間の戦争の様相を示していることに留意すべきです。攻撃対象の国は最貧国で、しかもそこの国民の多くは飢餓や凍死の危機にされられているという惨状にある国です。この国に対する攻撃が市民を巻き添えにし、さらに深刻な状況を誘導するものであるなら、おそらくイスラム世界のみでなく、これに参戦し、協力する国への反感は一段と大きくなるものと考えられます。
 この点の認識を含め、我が国としても、武力行使と一体となるような行動は極力さけるべきであり、武器・弾薬の輸送業務、あるいは戦闘地域近くでの野戦病院における医療活動などは制限されるべきと考えますが、いかがでしょうか。(総理大臣)

 第3に、武器使用についてですが、武力行使と一体となるような武装や、戦闘に巻き込まれるような武器の使い方は極力さけるべきであると考えます。今回、武器を使用できる防護対象には「自己の管理の下に入ったもの」が加わり、そのことにより、難民キャンプが急襲されたり、また緊急避難時に攻撃をうけるなどの事態が発生した際に、自衛官が応戦する、いわゆる戦闘状態になることも十分考えられます。このような事態に陥らないためにも活動地域を限定することと併せ、武器使用について、現行の周辺事態法、自衛隊法、PKO協力法の規定を準用しながら細かいルールを決め、現場での裁量に間違いが生じないようにすべきと考えますが、見解を伺いたいと思います。(総理大臣)
      
 併せて、小泉総理には、去る10月15日に行われました日韓首脳会談に関して伺います。この会談で、小泉総理は韓国の金大中大統領に今回のテロ対策特別措置法」について理解を求められましたが、金大統領は、「理解する、異論はない。ただ、アジア諸国の懸念に配慮して平和憲法の枠内で協力してほしい」と要望を出されております。つまりこの法案に関しては我が国国民のみならず、近隣のアジア諸国の懸念も大きいわけですが、総理としてこのことをどのように受け止めておられるのか、見解を伺いたいと思います。(総理大臣)


3、国際テロにむけた国際協調行動のあり方

 テロリズムを根絶させるには、テロリストを孤立化させ、支援国に圧力をかけ、資金源を絶ち、さらには長期的には、テロリズムを生み出す貧困、内戦、国際社会からの隔絶といったものを取り除いていかなければなりません。
 これまでサミットやAPECの諸会議においても、テロ対策は飢餓・貧困・エイズとならび、その対策の重要性が話し合われてきました。にもかわらず、我が国としては、テロ防止関係の国際条約も一部批准していないなど、非常に遅れた状況があります。いまこそ、この遅れを取り戻し、先進国の一員として、国際社会の要請に応えていく必要があると考えます。
 我が国が求められる国際協調行動は、単に武力行使への支援という短期的課題だけではなく、とりわけ、我が国のもつ特性を生かして、国際テロの本質的問題を解決する中長期的な施策に重点が置かれなければならない、と考えます。
 かかる視点から、以下、四点について私の考えを述べさせていただきますので、政府としての見解を明らかにしていただきたいと思います。

 まず第1に、最貧国、あるいは国際社会から取り残された地域からこのようなテロが出てくるという実態を踏まえる必要があります。とくに、冷戦終結後、中東、東欧、アジア・アフリカ・南米の一部地域で地域紛争や宗教戦争などが泥沼化し、しかも国際社会から取り残されたという注目すべき背景があります。私達はこれらの国・地域に対し、真剣に貧困問題の解決にむけた努力をすべきと考えます。
 とりわけ、ODAについて、従来の、被援助国からの要請によるものでなく、日本の主体的判断を踏まえた提案型の援助といった戦略的な視点を取り入れるべきだと考えます。また、援助の供与にあたっては、人道上必要な援助が、非援助国の国民を直接、裨益するよう、これまで現地で人間的信頼関係を築いてきた様々なNGOと連携することが重要であると考えますが、いかがでしょうか。(総理大臣)
 また、国内政治の安定化、民主化のための援助も踏み込んで実施すべきと考えます。このことは、我が国としても、すでにカンボジア問題で実績をつくっておりますが、これらの経験を生かしながら、取り残された国・地域の経済的・政治的な発展にむけ努力していく必要があると考えます。(総理大臣)

 第2に、これまでの我が国の中東地域への関わりから、テロ撲滅のための中東和平外交とアジア和平外交を積極的に推進することが重要ではないかと考えます。すでに、高村前外務大臣提案の、東京での「アフガニスタン和平復興会議」構想について中東諸国から評価も出てきています。また、ブッシュ大統領は過日の会見で、アフガニスタン復興への我が国の幅広い協力に期待感を示しています。政府としても、これらの動きを尊重し、国際社会から期待されている我が国外交の役割と使命を自覚し、アジア・中近東の和平のために積極的な取り組みをすすめていくことが肝要であると考えます。(総理大臣)

 第3に、テロ対策における国連活動への貢献であります。今回のテロ事件の発生後、翌9月12日に「米国の自衛権発動を認め、必要なあらゆる措置をとる用意があること」を表明した安保理決議第1368号を出して以降、問題解決にむけた国連の取り組みが遅れていることは各方面から指摘されているとおりです。
 我が国としては、紛争解決における国連の機能強化を主張してきたわけですが、今後は国連の場において、テロ等の予防、テロ対策専門家の訓練・育成、生物・化学兵器の規制、小型武器の規制などに向け、常設の機関を設けるなど、我が国として積極的に国連の活動に参画すべきであると考えますが、いかがお考えでしょうか。(総理大臣)

 第4に、この他、テロ防止のために、我が国が率先して協力できる分野で国際貢献すべきだと考えます。例えば、空港における武器の検出などのセキュリティー技術の開発、テロリストの資金源を断ち切るための資金浄化システムの充実、武器輸出の国際的規制などがありますが、我が国主導でできるこれらの分野で積極的に国際協力をしていく必要があると思います。(関係大臣)

 以上のような施策を通じて、我が国は、単に米国の外交・安全保障政策にただ乗り掛かっているというのではなく、「日本国憲法」が掲げる平和主義をむしろ前面に打ち出しながら、主体的な外交方針をもってテロ対策と平和外交に臨んでいくことが肝要だと考えます。そしてこのことを通じてのみ我が国が国際社会からも正当な評価を受けるのではないかと確信するものであります。


4、関連する課題について

 以上、「特別措置法」の内容について、また今後テロ対策で我が国が貢献すべき方向性について、私の考えを述べさせていただきましたが、このことと関連して、懸念している2つの問題がありますので、併せて質問させていただきます。

(1)国内テロ対策
 第一は、国内のテロ対策の問題であります。今回のテロ事件を通じて、我が国のテロ対策が大きく遅れていることが判明いたしました。すでに、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件などを通じ、危機管理体制の必要性が叫ばれてきましたが、基本的には国際テロに有効な政策手段は打たれてきませんでした。アメリカにおいては、現在、炭疽菌による新たなテロ行為も発生し、国民の不安感は高まっておりますが、我が国政府においても、これらのテロから国民の安全と生命が守られるよう、一刻もはやく、テロ対策の強化にあたるべきと考えます。関係大臣より現在の進捗状況や今後の対策方針などについてご説明していただきたいと思います。(関係大臣)



(2)インド・パキスタンの核保有問題 
 第2は、インド、パキスタンの核保有の問題です。1998年にインドとパキスタンが核実験を行い世界で6番目・7番目の核保有国となりました。インドとパキスタンの間の軍拡競争はアジアの緊張関係を増幅してきており、各国はこのために経済制裁を課してきました。これが今回9月22日にブッシュ大統領が経済制裁の解除を打ち出し、また日本も経済援助の方針を出しました。しかしこれらが、テロ対策のための協力支援という範囲に止まらず、核保有を認めたというように捉えられるなら、アジアの安全と安定にとって大きな問題となります。我が国は唯一の被爆国として、この点の問題意識をもちながら外交をすすめていくべきと考えますが、見解を伺いたいと思います。(総理大臣)

 最後に、本法案は、我が国の外交・安全保障政策の根幹に深く関わる法案でありますので、以上述べました私の質問につきまして総理、関係大臣より、明解なご答弁をしていただきますよう重ねてお願い申し上げ、私の質問を終わります。

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