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2001/10/18
テロ対策特別措置法案他3法案への討論/渡辺 周議員
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第153回臨時国会 本会議


テロ対策特別措置法案他3法案への討論


衆議院議員 渡辺 周

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました、内閣提出のいわゆる「テロ対策特別措置法案」並びに自由民主党、公明党及び保守党提出の修正案に反対、民主党提出の修正案に賛成し、内閣提出の自衛隊法の一部改正案並びに海上保安庁法の一部改正案に賛成の立場で討論いたします。

 本年9月11日に米国で発生した同時多発テロは、多くの罪なき人々を巻き込んだ卑劣かつ残虐な犯罪行為であり、自由かつ秩序を守って民主的な社会を希求する私たちへの許しがたき挑戦であります。

 民主党は、今回のテロを、全く新しい形の脅威と捉え、テロ撲滅に向けたあらゆる外交努力、国内外における徹底したテロ対策を行うこととあわせて、国際協調の枠組みの中で、自衛隊の活用も含めた新たな対応が必要であると認識しております。その際には、周辺事態法での議論をふまえ、日本国憲法の枠内で、しっかりとしたシビリアン・コントロールのもとに行うべきだとの考え方を一貫して示してまいりました。

 しかしながら、内閣提出の「テロ対策特別措置法案」並びに与党三党の修正案は、自衛隊の海外派遣に際しての国会の関与という点で、看過できない重要な問題点を抱えており、以下、本法案に反対する理由を申し上げます。

内閣提出案では、対応措置についての基本計画の決定・変更等を、国会への報告事項としています。また、与党三党の修正案では、「防衛庁長官が、これらの対応措置の実施を自衛隊の部隊等に命じた日から二十日以内に国会に付議して、これらの対応措置を実施することにつき国会の承認を求めなければならない」とし、事後に承認を得ることとなっています。

わが国の有事に繋がる恐れのある周辺事態への対処にあたってさえ、基本計画に定められた対応措置を実施する際には、原則、国会による事前の承認が必要とされています。この法案によって、自衛隊は、わが国の領域を遥かに超え、公海上ばかりか、外国領域内においての活動も可能になります。

PKO活動以外で、戦後初めて、わが国の自衛隊が海外で活動を実施するという、まさに、「歴史的大転換」であり、しかも、テロという新たな事態において、従来の「後方地域」という概念すら曖昧にした法体系の下での自衛隊の派遣については、極めて慎重に行うべきであります。

外交的には、現時点ではアフガニスタン及びパキスタンの対日感情はまだ良好であり、わが国だけしかでき得ない、重要な役割を果たすことも可能と考えます。将来のアフガニスタンと周辺諸国の安定と復興に向けて、わが国が果たすべき役割を考えても、自衛隊の派遣には、海外の理解を十分に得られるよう国会の関与としての「事前の承認」が必要であります。

民主党はこれまで代表質問、本会議、特別委員会質問での質疑を通じて、私たちは、想定される実施地域、対応措置の態様等について、再三再四、政府に質してまいりました。しかし、本法案が成立すれば、即座に基本計画が策定され、自衛隊が派遣されることが想定されるにも拘わらず、政府側の答弁は、終始「今後事態がどのように推移するか分からない」などの理由で、具体的かつ適切な答弁は、全く行われませんでした。

内閣提出案の事後報告、並びに与党修正案のような、実施後二十日以内の事後承認では、自衛隊の海外展開が既に既成事実化している可能性も高く、対応措置の実施について、国会がシビリアン・コントロールのもとに、しっかりと歯止めをかけていくことは、実質的に困難となります。自衛隊の海外における活動について、わが国の国益に基づき、法律の目的に適った対応措置を実施できるように、国民から選ばれた国会がしっかりと関与することは、かつて軍部の行動を国会が制御できなかった反省に立つ極めて重要な原則であります。

またこの法案によって、遠く異国に地で活動されることになるであろう自衛隊とその御家族の心情を思い測るにつけても、国民の代表である国会の決議の元に、厳しい任務にあたることが何よりも誇りとなり正当性となるのではないでしょうか。我々国会議員は実際に炎天下のまたは、過酷な寒さの地で被災者の救助や難民の保護に当たることはできません。せめて国会が責任を持つこと。国会の決議で、任務を担っていただくことが必要ではないでしょうか。

「事前承認では機動性、柔軟性が危惧される」との意見がありますが、民主党案では「しかし、緊急の必要がある場合には、国会の承認を得ないで当該協力支援活動、捜索救助活動又は被災民救援活動を実施することができる」と緊急の場合の事後承認を容認しており、なんら法案として問題はなく、なぜこの修正案が与党に理解されなかったのか、政策論というよりも、まさに、与党内による、内部事情以外の何者でもない、と言わざるを得ません。

以上の点から、基本計画に定められた対応措置の実施等につき、原則、「国会での事前承認事項」とすることを内容とした修正案を提出しております。民主党案への議員各位の賛同を改めて要請するものです。

自衛隊法の一部改正案については、国民の生命・財産の安全を確保する上で必要との政府案を理解し賛成致します。ただし、公共の安全と秩序の維持に関しては、警察が一義的に責任を負うとの原則を踏まえ、本改正案で新たに規定された「警護出動」という、治安出動に至らない事態における重要施設警備などの自衛隊の活用については、その対象、範囲、要件、警察との関係など、今後の国会審議を通じて、さらにしっかりと検討していくべきであります。また、秘密保持への罰則のあり方については、「国民の知る権利」や「報道の自由」等の基本的人権を侵害しないよう運用すべきと考えます。

海上保安庁法の一部改正案については、不審船に対する必要な対応措置と認識し、賛成いたします。

航空機ハイジャックという物理的暴力テロから、現在は炭そ菌による企業やオフィスなど市民社会に侵入してくる「しのびよるテロ」という新たな脅威とも我々は戦わねばなりません。  

国際協調の枠組みの中、我が国国民の生命と財産、秩序を守るため、民主党は毅然とした正義感をもってテロ終息のための外交政策、内政政策を実行することを改めて約束し、私の討論を終わります。

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