トップ > ニュース
ニュース
ニュース
2001/05/24
民主党地方分権公聴会〜パネルディスカッション
記事を印刷する

コーディネーター 荒井聰(地方分権統括副大臣) 私は5年前に地方分権推進法の創設に与党の議員として携わりました。私自身、議員になる前に農水省の職員でございました。2000の補助金のうちの約半分ぐらいが農水省じゃないかと思いますけれども、その中でどういうふうに役割分担をしていくのかということに悩んだ思いがございます。

 しかし一方、いま国は大変な財政状況なり、あるいは制度的なしがらみがある中で、非常に輝いている地方がたくさん出てきています。いま浅野知事や北川知事、あるいは三春町の伊藤町長、この現象というのは、徳川末期のあの状況に似ているのではないか。江戸幕府が非常に疲弊していったときに、地方から地方を生き返らせるようなさまざまな人材が出てきて地方をよみがえらせていった。そのエネルギーが明治維新に結びついていったのではないか、そんな思いがしております。いま地方は、情報公開などで一時混乱した時期もございますが、まさに地方でつくり上げていった制度が中央にはね返っていって中央の制度化という動きになっているのではないかなと思います。

 先ほど4人の先生方からさまざまなご意見をいただきましたけれども、私は大きく分けて地方分権の基礎的な部分、それが税財政の部分であろう。補助金の部分とか交付税の部分、あるいは自主財源の部分といったような地方分権を支える基礎の部分であろう。もう一つはソフトの部分、北川さんが運動論という言い方をされましたが、情報公開とか、あるいは伊藤町長のおっしゃいました人材論とか、そういう地方自治体を取り巻く頭の切りかえ、ソフトの切りかえ、そこのところが大きなポイントなのではないかというように承りました。

 そこで、あまり時間がないものですからこの二つに絞って、先生方とそして鳩山さん以下の皆さんで議論を行っていきたいと思います。

 そこで最初に石先生からお話がございました独自財源論、あるいは浅野知事からもございました課税自主権の話、それから補助金が必要なのかどうかといったような議論、それも税財政問題について書き込みが少し足りない、あるいはまだラフではないかというご指摘をいただいたわけですので、このあたり玄葉先生。

玄葉 石先生から特に言われたのは、国の財政が地方よりもっと悪いから税源移譲はやっぱり難しいよな、こういう話をいただいたようにも思うんです。さっき最後の確認をしたスクリーンに、マイナスBという数字が実はあったんです。一括交付金に次年度にした後に、その一括交付金というのは約17 兆円あるわけですから大変な額なんですが、Bというのは使い道自由になるので、少しずつ減らさせてもらおうと。減らさせてもらっても、使い道自由になるから満足度は高まるのじゃないだろうか。そのことで国の財政構造改革にも資するものにしよう。そういう基本的な方向性があるということです。

 じゃあどのぐらい減らすんだとか、そういう意味では粗削りと言われればまったくそのとおりで、いま方向性を提示した中でこういうご意見をいただいて、おっしゃったように精度をより高めていきたいなと考えております。まず基本的な考え方からこういう形で議論をしないと、最初から全部固めてしまってはなかなか柔軟性のあるものにならないので、そういう形で提示をさせていただいているということです。

荒井 自主財源という意味では、東京都知事の石原さんが外形標準課税というのでいろんな話題を振りまきました。石原都知事と似ていると指摘をされました浅野知事、外形標準課税についてどういうお考えでしょうか。

浅野 あの指摘にはいろいろ言いたいことがありますけれども(笑)、本題でないので言いませんが。あれは大ヒットだったんです。ただ、あれは象徴的に大ヒットであった。あのときに私がすぐ思ったのは、東京はいいな、ということです。東京で出されたという必然性もあるわけです。「宮城県でなんであれ出さないの」と言われたわけですが、銀行をターゲットにした外形標準課税、これは答えは明らかで、それをやった途端に宮城県から銀行はみんな逃げていきます。東京が出し得たのは、本当は逃げればよかったわけです。東京都だけ大銀行が外形標準課税でみんな税金が上がるわけですから。だけど逃げていくメリットよりも残っているメリットのほうが大きいから残っているわけです。そういう意味では「東京はいいな」というのも頭に入れておかなくちゃいけないと思いながらも、しかし、ああいうのありなんだということを示したという意味ではいいです。だから、合計するとこれはいいんです。

荒井 石先生、課税自主権の拡大ということは広がっていくのではないかと思うんです。

 いろいろ知恵を出し汗をかいて集めるということは、地元住民に対して負担感、そして受益感、これのつながりになりますから、私は地元でいろいろ提示して「この公民館を建てるならどのぐらい払いますか」ということが直に行くようなのがおそらく地方分権の最後の姿だと思います。外国で地方分権をやっているところはそれがかなりリンクしています。

 そういう意味で私はまったく研究者であり、選挙の洗礼も受けていないから勝手なことを言うんですが、課税自主権というと集め方もどうも企業におんぶします。企業は選挙権はないんですよ。だからあまり企業におんぶしてはいけないんです、したがって、地方分権を言うなら、あるいは地域住民の自治を高めたいなら、地域住民に負担がかかるような個人住民税の所得割、均等割、そのあたりに注目するとか、あるいはもろに産廃税でも環境税でもいいけれども、事業者だけ相手じゃなくて、家庭にも響くようなことがあって初めて課税自主権は意味が出てくるのじゃないかと思っています。これは辛口で、たぶんこれは左右の方から反論があるし、やりたいけれどできないんだというのが正直なところなのかもしれませんが、やはりそっちに行かないとだめだと思います。

荒井 北川知事、いかがですか。

北川 課税自主権はいまのところ無理だと思うんです。それはなぜかというと、東京にずっと集められた一方に税があって、こっちの部分で課税自主権というのは、取れる税は全部国が取っていっていますから、できないと思います。

 産廃税、僕のことを意識して先生が言われたんですが、これなんかは税収増というよりは、むしろ環境先進県でいきますと。「あなた方はいまから産廃場なしになって産業活動できるかできないか、どういうことになるか、そこを一遍ご判断いただけませんか」という問題提起をして、それをバッとぶち上げたら、5割ぐらい、数は少し違うかわかりませんが産廃全体が減ったんです。そういうインセンティブでやっていこうと思っているんです。

 環境対応を、1970年の公害国会で14本の法律で対応して日本の国はよくなりました。昨年、国会議員の先生方で環境で循環型の基本法とか6本つくられましたね。これで環境保全になってきました。私は環境経営、環境に配慮しない自治体とか企業はあり得ない、配慮したほうが必ず得だという県をつくりたいなと思っているんです。そのために税を少しいただきましょう。だから支出のほうが多くなるかわかりませんが、そういった範囲でしかわれわれは税をふやすわけにはいかない。それはなぜかというと、一方に伏魔殿というか、わけのわからないような国税がありますから。本当に難しい。だからここを一遍白紙にして、さあ、つくり直しというなら非常につくりやすいかもわかりません。しかし、みんなそれぞれの地域の事情がありますから、考えていく大きな課題ではあると思います。

荒井 石先生から、補助金の不要か必要かということのチェックが民主党のペーパーには少し少ないというご指摘がありました。補助金をどう使うかというのは、地方の町村長さんたちにとってはいままではとっても大事な仕事ということがあったのではないかと思いますが、伊藤町長、いかがでしょうか。

伊藤 補助金の問題は考えてみるとかなり複雑な問題で、たしかになくてもいい補助金が結構あるのではないかと私も思いますし、それから補助金に縛られることによって本当の政策選択が制約を受けて困る。時には私が知らないところでえらいものができちゃって、こんなに金を使うはずではなかったではないかと。補助金の枠の中でむだ遣いに結果的になってしまっていたことだってあります。私は補助金を減らしていくことに対して基本的には賛成であります。

 ただ、先ほど受益と負担の関係をもっと明確にという石先生のご指摘でした。私たち田舎社会ではこれは日常茶飯事になっているんです。たとえば集会場をつくるときに、最近でもありましたが、1世帯平均10万以上負担しても建てたいというような形がありまして、そういう討論はしょっちゅうであります。10万というと、大体税金が少ないですからあるところでは10年分くらいの税金を丸ごと出して、道路の改良のための土地代は地元で持ちましょうとか、そういう話し合いはしょっちゅうあります。つまりそれが私たちのコミュニティ行政の一側面であります。

荒井 交付税の話はまだしていないんですけれども、補助金、自主財源の話、このあたりで民主党側のプロジェクトからご意見、あるいは民主党の考え方を出してください。

中川正春(財政・金融部門 税制担当ネクスト副大臣) 地方の歳出カットも石先生からわれわれもっと議論すべきじゃないかというお話もありまして、これも素直に受けとめさせていただきたいと思います。

 さっきの基本的なところで石先生のお話では、いまの体系の中で財源を地方に移すというのはできないのじゃないか、それよりも増税分を地方に移していく形のあり方が正しいのじゃないかというご指摘だったと思うんですが、実はそれをやるということ自体が、これまで議論をされてきて、それで政治的に実現されなかったということ。これに対する一つは挑戦だということと、もう一つは、なぜいまの制度が変えられないかというと、これは財務省と同じ議論で、借金は 666兆円、国の分は490兆円、これだけ借金を抱えているじゃないか、これを将来返していくということになると、財源を国が取られてしまったらこの借金が返せない。だから財源を取るのであればこの借金も地方に一緒に持っていってほしい、そういう議論ができないかというのが財務省サイドの議論なんです。

 ここは政治判断になると思うんです。と同時に、物理的にどうなのか、計算した結果どうなのかということだと思うんです。私もその辺は問題意識として持っておりまして、ここのところを最終的に私たちが党として判断をして、どこまで財源移譲に伴ってこの国の過去の負債というものを地方が責任を持って将来返していくのか、ということになると思うんです。いまのところは、「それは国がやったんでしょう、それは国の責任なんでしょう」、こう言ったらいいんですが、物理的にそうならないというのが石先生のご指摘だと思うので、ここは政治課題になると思います。太めに言うと、そういう話になると思います。

鳩山 そろそろ失礼しないといけないものですから、最後に勝手に申し上げたいと思います。

 私はまず北川知事や浅野知事のような人間的な魅力を持った知事がおる県は、課税自主権、大いに大胆に頑張ってもいけるんではないかと思います。それは選挙という洗礼を受けるのが知事の、あるいはわれわれもそうでありますが、むしろ先ほどから知事みずからが話されておりましたように、自己責任を持つ社会をつくり出していくという状況を考えていけば、課税自主権の問題は大いに積極的に、われわれも努力いたしますが、知事側からも「これはやるべし」という話にしていただきたいと思います。

 それから補助金を全廃するときに、それをそのまま一括交付金にしてしまうという考え方は、やはり弾力的にという話ではあったんだと思いますが、われわれとすればこの補助金を相当削減をすることができるのではないかと思っていますから、全廃するときにすべてを見直す必要があろうかと思います。

 これは浅野知事もされておりました話でありますが、メニューを国が示して、多少いらないと思っても「くれるものならば」ということで受ける可能性は結構あるわけであります。もしそれが自分の県で、あるいは市町村でやれという話になれば、必ずしもそれはいらないというものがかなりあるのではないかと思います。また国が仕事を与える場合に、必要以上に立派過ぎるものをつくるということも十分に過去においてあったわけでありますから、補助金の問題を全廃する際に、私は相当の部分一括交付金も削減しても大丈夫ではないかと思っておりますので、大変大事なご提言をいただいたなと思っております。

 最後に申し上げたいのは、先ほど北川知事がお話をされました。いかにして日本に本物の民主主義をつくり出していくかということだと思っておりまして、その民主主義をつくり出していくためにも分権が必要だということに大賛成であります。

 その方向に向けて私たちもより民主主義を高めていく政策をつくり出していきたいと思っておりますので、あらためてこのネクスト・キャビネット主催の地方分権の公聴会をやらせていただいたことは非常によかったと思っています。4人のパネラーの皆様方がそれぞれ大変な個性を持たれた方であるだけに、皆さん重複しない視点からのお話をいただいたことは何よりだったと思います。

 最後に、伊藤町長が話されました合併の問題も、たしかに合併しなくとも当然自分たちが能率よく見事にまちづくりをやっているんだと思っておられる立派な首長さんのところは、逆に成績がいいわけですから合併など必要ないと思う気持ちも強いと思います。一方で国も地方も財政が大変に厳しいという状況もあり、また広域市町村になることによって最適な財政運営が図られるという状況もあるわけでありますから、そこは民主党としては強制はしない。しかし方向としてはできるものから合併というものを頭の中に描いていただくことが望ましいというふうに思っておりまして、合併の議論は慎重ではありますが、私どもとすれば約 1000に、そういうのを上からみたいな発想ではもともと考え方が間違いでありますので、上とか下とかいう発想ではなくて、それぞれの市町村のお考えの中でまとめていただきながら、合併をわれわれとすれば進めていく必要があるだろうという思いで書かしていただいておることをご理解をいただければと思います。

 申しわけありませんが、都議会の選挙が間近でありますのでここで失礼をさせていただきます。本当にきょうはありがとうございました。(拍手)

玄葉 補助金の改革、改革ということでだいぶ議論になっていますが、補助金を一括交付金にするというのは本当にやりたいと思っているんです。これはかなり粗削りにやっているようですが、実は補助金を、2300とはいいませんが数百単位で全部取り出して、どれが都道府県、どれが市町村ということを実際にやって、たとえば教員の負担金なんかも含めて本当に地方に移譲していいのか、教育担当の人たちとかんかんがくがくやって、いいと。地域に任せよう。ナショナルミニマムと言われたけれども、これも実際に都道府県にお任せすれば、都道府県と市町村でそれはやってくれるはずだ、信じよう、ということでかなりの議論をして実はまとめている。これはかなり本気だということはご理解をいただきたい。

 ポイントは、国の権限を国会議員が、もちろん中央省庁の役人を含めて、手放せるかどうかということだと思うんです。われわれは手放す覚悟をしたということはまずわかっていただきたい。方法論は後で少しつけ足させていただきたい。

荒井 それでは次のテーマの地方分権を支えるソフトの部分。北川知事は運動論とおっしゃいましたが、情報公開はものすごく大きな手段になっているのだろうと思います。情報公開の部分を含めながら、また伊藤町長が指摘されました人材論、中央から地方へ人材を持ってくることもきわめて大きな意味があるというご指摘、それらを踏まえて、地方分権を支える周辺の環境整備あるいは条件整備のようなものをお話し願えればと思うんです。いまだに県警本部長とケンカをされている浅野知事。

浅野 いや、きわて仲よくやっています。ちゃんと正すべきは正しながら。前の県警部長もかわりましたから。もちろん個人的にケンカしていたわけではないんですけれども。

 いま地方分権を支えるソフト論というか運動論、いま玄葉さんの説明も聞きました。それなりに非常にすっきりしていていいんですけれども、これはできないんですよ、実現が。というか、これから政治の問題になってくるわけです。

 私が地方分権の話をいろいろなところでやってもどうもピンとこないのは、結局住民の方から「そんでさ、地方分権になったら腹いっぱいになるんですか」と聞かれるんです。「地方分権になったらいまよりも幸せになるんですか」ということなんですよ。それが全然ピンときていないんです。だれが悪いかといったら、まあみんなが悪いんですけれども。

 ですから、地方分権の問題は、地方分権を進めるという側からすると結局県のほうに市町村のほうに権限・財源を引っ張ってくる綱引きを一生懸命やっている。綱引きで赤勝て白勝てなんていうのは、住民は全然興味がない。これを方言で「コップの中の嵐」というわけですから、全然おもしろくない。

 そうでなくて、これは住民にとっても幸せの道ですよというのをたぶん実例で示さなくちゃいけないと思うので、私たちは宮城県として発信できるようなこういった事業を見える形でやってきて、それを「いいね」と。そのいいねというのは、自由にやれたからいいねというのなら、もっと自由度をふやしたらもっといいんじゃないかというふうにやっていくのかなと。これ、いろいろ迷っているんですけれども。

 さっきの議論は、階段を上がっていくときに、2階はこういうふうにつくりますよという話をしているんですけれども、いまこの段階では1階から2階までどういう階段を上っていくの、最初のワンステップはどこなんですかということの議論が非常に大事なんですね。私はややイライラしながらも、それは補助金を一つ一つつぶしていくのが最初の一歩なんじゃないかと。たった一つの補助金をなくすというのは大変なことなんです。その最初の一歩は非常に大きいんです。二歩目は10個、三歩目は100個。半分ぐらい補助金を減らせば、そこからドドドッといくんじゃないかと思うんですが、これは私のイリュージョンかもしれません。階段の上り方、特に最初の一歩をどうするかというのは政治的には大変重要なんです。2階の部分はさっき見せてもらいました。そのときにちょっと気になるのは金の議論なんです。損得の議論をやっちゃいかん。合併はいま損得の議論でやられつつあって、合併したら金が安くて済みますよというのは、それは全然受けません。

荒井 北川知事、職員の意識改革が大変重要なんだということをずっと力説されておられます。そのあたりでもう少し具体的な話がございましたら。

北川 僕はとても重要だと思っていまして、時間は少しかかるかわかりませんけれども、そういった根源的なことからこの国の民主主義論をもう一回つくり直そう、そういうことがないといけないかなという気がします。それでいま県の職員と議論を重ねているのは、県民を満足さす行政というのは間違いなんだと。主語は「県が」とか「県庁が」、県民を満足させるというのはまったく間違っていて、「県民が満足する行政」をすることがわれわれの使命だということが、官尊民卑の中だとなかなかわからないんです。主権在民ですから主役は県民。県民が満足していただくように、われわれはサポート、行政をするというようなことから始めて、そういうことを盛んにやっていく。

 もう一つは、私は県議会と県の職員組合というのを3本柱にしていまして、オンブズマンですが情報公開は県議会は日本一です。行政は浅野さんが日本一ですが、県議会は日本一になってきました。オープンの場では生活者基点というタックスペイヤーの立場に立って議論がずいぶん進んできました。今度は職員組合のほうも本当に議論をしようよということになって、マスコミの方が入って議論をし始めたら、非常に生産的な議論になってきました。そして一緒にやろうよと。いままでの対立とか不信といったことから離れて、創造的な信頼関係のもとにということで、昨年5月30日にスタートしましたからこの28日に1周年の大会をやるわけです。本当に県民が満足する行政をどうやろうというのを、職員組合と私どもとが真剣に議論していくことが、実は職員をしてものすごく進歩せしめると、そのように思っています。

 そのかわり私は職員組合を裏切らないし、私は「職員組合はあっていい」論者ではありません。職員組合はなければいけないと思っています。ところが、知事も守秘義務の世界ですから、県民とはまったく隔絶された世界の中で職員と温かくやっておれば済んだ話ですから、とっても楽です。組合の側も、失礼な話ですが知事と一緒にやっておれば人事とか予算の面で有利になるとかいうことは事実あったと思います。そういったことを本当に表に出して議論をする自治体にならなければ、プロセスまでがクリアになる自治体でなければ、なんで地方分権を地域の皆さんが言いますかと。そんなことはまったく言わないというところも、先ほどの税財源の議論とあわせて、100も200もあらゆる運動体の総和によって地方分権は進むというふうにとらえている。そういう意味で申し上げました。

 北川さんの話にひっかけて私の自己体験を申し上げますが、4〜5年前に実は私は北川さんに招かれて県民大会なるものの前座の講演をさせられたんですよ。いつの間にかその中にすっぽり入れられちゃって、三重県方式のディベート、討論集会みたいなものを見ていまして、やはりすごいと思いましたね。かんかんがくがく、われわれの目の前で総務部長と公共事業をやっている部署がケンカしているわけですよ。「そんなのはくだらんからやめろ」と予算をつけるほうは言うし、「そんなことをしたら、地元の住民に対して大変な困難になる」なんてやっている。北川さんは腕を組んでニコニコ笑って、最後はパパッとうまいことを言ってうまくまとめているんですよね。一種のコミュニティの集会みたいなことをやりつつ県民の教育あるいは職員の教育をやっているなあと。これはやっぱり僕は地方だからできる話だと思うんです。おそらく浅野さんのところもやっているし、伊藤さんもたぶんやっているんだと思いますが、そういうことができる県というのは私は地方分権の担い手として育つだろうと思います。

 ところが、地方分権と口で言いつつ、3300かある首長さんの中で本当に地方分権をやりたいというところは少ないんじゃないですか。やっぱり中央にぶら下がっているほうが楽ですよ。地方分権と口で言ってなかなかやらないのは、一つは中央の役所は権限を放さないといいますが、受け皿のほうで本当にしんからそれを要求しているというのは、首長、職員、地元住民ともそれほど多くはないと思っているんです。だからこの50年、地方分権とか長洲さんが「地方の時代」とか言っても進まないんです。そういう意味では根本から意識改革をするようなことをやらないとだめだと思います。


会場からの質疑応答

荒井 きょうは地方自治体の関係者、あるいは中央官庁で地方自治体に出向した人もこの会場にたくさん来ていると思います。そこで皆さんの中から、ずいぶんいろんなお話が出たんですけれども、民主党に対して、あるいは先生方に対してご質問がございましたら、どうぞお申し出ください。

問い 横浜商工会議所の産業部政策課の渡辺です。自治体の職員ではないんですが、たまたま職場にきょうのご案内が入っていて、上司に相談したところ、行ってきていいよというので聞かせていただきました。

 私ども、地方というにはちょっと中途半端な横浜に自治体があるわけですが、特に課税自主権の問題でいま神奈川県あるいは横浜市を含めて新税の問題が新聞紙上をにぎわしております。実は課税自主権を広げられるという意見と、実際には難しいという意見がいまあったかと思うんですが、正直言って私どももいろいろ税制の問題で学者の先生を交えて勉強している限りでは、現行の法律の中では、住民に対する超過課税はできるといいながら、実際問題は不可能に近いだろうと。だからこそ新税でいろいろ取れるところから取るということをやっているのではないかと思います。

 特に都道府県の場合は外形標準課税の問題で経済界と、地方自治体、全国知事会とが対立している、意見が違っているわけですけれども、私どもは外形標準課税は反対をしております。その一つの理由は、知事さん連中はどうかわからないのですが、自治省から天下りをした副知事さんなどが自治省の意向を酌んで、外形標準課税は賛成に回ってください、こういうような意見書を自治省に出してください、陳情書を出してくださいという動きをしているというようなことを聞いております。私どもも都道府県の財政が厳しいのはわかっておるので、できる限り地方消費税という形で税源移譲をしてもらいたいと強く言っているところです。きょう石先生がいらっしゃって、まあ政府税調の考えとは違う部分はあるかと思いますが、なぜ大企業から中小企業こぞって反対しているかということをよく勉強していただきたいと思います。特に地元経済界との意見交換、あるいはこういう分権の公聴会をもっと民主党の皆さん方と幅広くやっていただきたいと思っております。

 国税5税の話ですが、地方消費税の1%部分をとりあえず移譲するということを最初に盛り込んでほしい。何年後かということでなく、まずそこをとりあえずやっていただくだけでも違うのではないかと思います。

当麻 所沢市議会議員です。なぜ地方分権かというお話で、中央と地方の上下・主従関係をなくして対等平等にやっていこうというのが理念だと思うんです。そこで、いままでは補助金、税源移譲のことをお話ししておりましたけれども、具体的に権限の移譲の例をとってみますと、所沢市には既に移譲済み、あるいは12年、13年、14年と権限移譲が来るのが80ほどあるんです。ところが、それぞれを見てみますと、これが本当に所沢市にとって、あるいは市民にとってうれしい権限移譲なのかということになってきますと、大変少ないわけです。具体的に市民にとって分権とかなんとかということでインパクトのある権限移譲は、たとえばパスポートを県にかわって所沢市が発行しますよと。こういうのであれば住民はワッと思うでしょうけれども、この辺はどうお考えかちょっとわかりません。

 2点目はいろいろパネラーの方のお話が出ましたけれども、上下・主従関係があまりにも根強いというのは、私もずっと中間報告から勧告等を通しながら議会でも質問をしてやってきたわけですけれど、職員も住民も明治以来の根強い上下関係がありますので、これを何とかして、ソフト面をどうしたらいいのか、やはり具体例を通して、これこれこういうことで初めて自分たちの町は個性のある町ができますよというのをぜひとも民主党から出していただければと思います。

荒井 まだまだご質問なさりたい方はおられると思いますが、時間が押していますので、いまの会場からの質問も含めて、それから先ほどの先生方からのソフト論も含めて、それぞれ一言ずつ。

浅尾慶一郎(幹事長補佐) 横浜の方には地元ですから私から答えさせていただきます。神奈川県は外形標準課税的なものを考えておられますし、横浜市はJRA(日本中央競馬会)に対して、桜木町駅前に場外馬券場があって大変混雑するから、その部分の売り上げに対して消費税をかけさせろ、あるいは消費税相当分を納めなさいというものです。お話にありましたようにたしかに新税はなかなか難しいと思っておりまして、私ども民主党はきょうお話をしましたように、一括交付金にする過程の中で一部減らせる補助金があれば、当然裏の地方交付税の部分も減りますから、そこの部分が財政的な余地が出てくるということで考えれば、そこからまた自主財源がつくれるのじゃないかなと。いずれにしてもJRA新税とか神奈川県がつくった新税については支援をしていきたいと思っておりますので、ぜひご理解をいただければと思います。

中川 ソフト部分についてですが、これは私たちの問題意識そのものでして、この地方分権が住民にとって、国民一人ひとりにとって、じゃあどうなの?ということに対してしっかりしたメッセージを出せるという地方分権でないとだめなんだと思うんです。

 財政移譲の問題とか権限移譲の問題の受け皿、きょうは一城の主がそろっていただいているんですが、ここに焦点が当たっていますが、私たちの基本は地方分権の本当の受け皿は住民一人ひとりなんだろう。意識改革も行政サイドの意識改革以上に、国民一人ひとりの意識改革、これをやっていこうじゃないかというメッセージをどこまで出せるかということもあろうかと思うんです。そういう前提に立っていろいろ知恵を出そうというので、もみくちゃにされながら考え、考えしてきたのが、実はコミュニティ政策の一番最後なんです。そういうメッセージを出したいという気持ちなんです。

 ですから住民が自立をしていく。協働、共生、コラボレーション、この社会なんですよという宣言を住民自治基本法を使ってやっていきたい。そういう意味での住民自治基本法でありますし、その中にコミュニティの類型も、伊藤町長さんには厳しいことを言われましたが、これまでの町内会とか自治会がこれでいいかというと、いいところもあるけれども、それ以上に民主的に改革していって参加の媒体としてもっと活性化していくことも必要ではないか。そういうコミュニティをちょっと法的にも組み立ててみることができないかという話であるとか、あるいはサービスの供給母体は行政だけではないんですよ。どっちかというと地方自治体もアウトソーシングして、その受け皿を、NPOからボランティアからコミュニティから、そういうサービスの供給母体としてのコミュニティを育てていく。そういうこともあって初めて地域が生き返ってくるのじゃないか。そんなことの思いを込めたものと、もう一つは資金と人です。これも補助金とかなんだとか上から行くのじゃなくて、市民そのものが、参考にさせていただいたのは神奈川ネットワークですが、これは市民ファンドとして市民が出し合って、基準は自分たちでつくって、国がこれはだめだというものについても、じゃあ市民だったらやりますよと、そういう資金の仕組み、そんなものも含めてつくり出していきたいなという思いが、実はこのコミュニティ政策に入っているということでございます。

玄葉 まず伊藤町長さんが、これはだいぶ先の話ですが、あんまり財政調整を単純化すると都市化優先になるんじゃないかということですが、これは一言でいうと、人口と面積に応じて配分しても必ずしも過度にそうはならないですね。いろんなシミュレーションをいましていますが、あくまで仕組み方次第になる。ただ、石先生ではありませんが、受益と負担の関係はより明確にしなければいけないだろうと思っています。

 いまのコミュニティの話はまさに検討中で、要は外来種が出てきても、そういう装置を使いたいところは使ってくださいと、あくまでこういう提案をしようということです。

 それとさっき浅野知事がおっしゃっていただいたように、私もまさに最初の一歩なんだと思うんです。たしかに補助金を一括全部交付するといっても、本当に大変な作業です。だから補助金の中でも公共事業だけ取り出して何とか一括交付する。まさにもう一つの最初の一歩は、人材です。国家公務員がたとえば政治の世界に、政党のスタッフ、政治家のスタッフ、あるいは地方自治体などに気持ちよく行けるような制度的担保を何とか考えられないかなと、これも本気で思っています。まさに最初の一歩というより一・五歩まで行っちゃったかもしれませんが、その前の一歩も含めてこれは考えていきたいと思います。

 現場の地に足のついたご意見をいただいて大変参考になりました。ありがとうございました。


ま と め

荒井 最後に、きょうのパネリストの中で政治家ではない石先生に、今回の全体の感想も含めてお話をお願いできますでしょうか。

 私、まったく政治音痴でございますが、このような会はどんどんやっていただいて、まさに地域住民の教育はどうだとか、あるいは地方分権はどうあるべきかということをさまざまなカテゴリーの方々がともに共通の広場で議論することが重要なんです。そのためにはこの種のプロポーザルがないとできませんから。ステップ1、ステップ2、第一歩か一・五歩か知りませんけれども、これを育てていこうという空気をぜひ育てる。僕はきょうはだいぶ育ったんじゃないかと思うんですが、さらにもう少し詰めて、現実的な色彩がもっともっと出てくるような格好にしていけば、かなり選挙のときなども使えるのじゃないかと思っています。

 きょうたまたま開明派の首長さんだけ集めましたけれども、そうでないところもたぶんあるのじゃないかと思いますからね(笑)、そういう方も入れて議論したほうがいいと思いますよ。

荒井 きょうは本当に貴重な意見を私たち民主党に賜りましてありがとうございます。これからも皆様方のご意見を賜りながら私たちの政策をより現実的に、そして国民の声にこたえるような、そういう政策にブラッシュアップしていきたいと思います。

 きょうは本当にありがとうございました。(拍手)

記事を印刷する
▲このページのトップへ
Copyright(C)2024 The Democratic Party of Japan. All Rights reserved.