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2000/11/10
あっせん利得処罰罪法案 本会議討論
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民主党衆議院議員 長浜博行

 私は民主党・無所属クラブ、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合の4会派を代表し、野党提出の「公職にある者等による特定の者に利益を得させる目的でのあっせん行為に係る収賄等の処罰に関する法律案」に賛成し、与党提出の「公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律案」に反対する討論を行います。

 国会議員をはじめ、およそ政治家たる者は、高度な倫理観・正義感に基づき職務を遂行すべき責務があることは言うまでもありません。選挙によって選ばれた者は、主権者たる国民・住民から政治に関する厳粛な信託を受けているのであり、国民全体、住民全体の奉仕者として行動すべき責務を負っていることもまた当然であります。特定の者の利益のために行動し、その対価を得るがごときは政治倫理にもとるものであります。

 ところが、政界の一部には、あっせんは政治家本来の仕事であり、その見返りに金品等を受け取ってもかまわないという誤った風潮があります。この風潮を断ち切り、いわゆる「口利き政治」と決別し、政治倫理を確立することが国民から強く求められております。

 我々野党4会派は、与党の穴だらけの「ザル法」では政治腐敗の防止に実効性が無いとの国民の怒りの声を真摯に受け止めるものであります。もちろん、新法は、現行収賄罪の問題点を取り除き、政治腐敗を根絶し、政治に対する国民の信頼を回復できるものでなければなりません。このため、与野党の議論を国民にわかりやすく展開し、また意図的な議論のすれ違いを忌避するためにも、より内容が適切で、実効性が高い法案を提出したことは再三委員会でご説明したとおりであります。

 以下に野党案と与党案を対比しつつ、野党案にこそ理があること、与党案に非があることをつまびらかにしてまいります。

(請託の有無)
 第一に、「請託の有無」の問題であります。
 現行刑法の「あっせん収賄」は、「請託を受け」たことを犯罪の構成要件としており、現実には密室で行われるこの「請託」を立証することは事実上極めて困難であるため、結果としてほとんど適用されてきませんでした。そもそも新法制定の議論はこのような現状を踏まえ、「請託」などの要件をはずし、より立件しやすいようにすることを第一としたものであります。

 今回与党があえてこの要件を残したことは、事実上、適用しづらい現行法の問題点を何ら改革しないものと断ぜざるを得ません。野党案では、当然のこととして構成要件から「請託」をはずしております。

(職務の範囲)
 また、与党案は対象となる行為について「契約の締結、行政処分」に限定しております。しかしこれでは調査や企画立案などの政策決定過程への関与は対象外となり、たとえば特定の者の利益擁護のための「箇所付け」や税制改正、法改正等をあっせんし報酬を得ても対象外となります。これでは国民の新法制定に寄せられている期待に応えることができません。我々の案では「契約の締結、行政処分」に限定せず、「職務に関する行為」全般に及んでおります。

(職務権限)
 同様に、与党案では「その権限に基づく影響力を行使して」との表現がありますが、委員会での質疑を通じ、これでは現行法の「職務権限」と同様に法適用の大きなハードルとなることが明らかになりました。


 ご存知のように現行刑法の収賄罪は「職務権限」の有無が要件となっており、政治家の犯罪を認定するときのカベになってきております。したがってこれも「請託」と同様に要件からはずすというのが、新法制定議論の発端でありました。当然のことではありますが、野党案ではこのようなあいまいな構成要件ははずしてあります。

(犯罪の主体)
 次に、「犯罪の主体」の問題であります。
 与党案は犯罪の主体からわざわざ「私設秘書」を除いております。時、あたかも問題となっている政治家と秘書の関係です。
 委員会の質疑でも、自民党議員は平均12〜3人の秘書を擁していることが自民党の答弁者によって明らかになりました。秘書の業務が公設、私設で明確に区分できるわけがないし、ましてや、今申し上げました数の点からも、公設秘書は政策秘書も入れて3人ですから、残り10人の私設秘書が担当する業務の比重は高いと言えます。従いまして今回の野党案では、処罰対象として、私設秘書も含むこととしております。また、有力政治家のいわゆる「金庫番」の多くは私設秘書であるとの指摘もありますが、与党案が私設秘書を外したことは、敢えて「抜け道」をつくったものと世論からも強い批判が寄せられております。

(第三者供賄)
 また、与党案は第三者供賄処罰を法律に明記せず国会答弁に委ねてしまっております。しかし、司法の独立、また、罪刑法定主義に照らしても、国会答弁等の実効性には大きな懸念があります。きちんと明文化すべきことは当然であり、立法の大原則であると考え、野党案ではこれを明記致しております。

(未遂罪)
 次に、与党案は財産上の利益を「収受」、「供与」した場合に限っており、「要求」、「約束」した未遂罪は対象外となっています。我々の案では、当然のこととしてこの未遂罪を規定しております。
 与党がこの未遂罪を敢えて忌避したことは、昨年公明党も含め提出した当時の野党案よりもさらに後退していることと指摘せざるをえません。

(報酬の範囲)
 さらに、与党案は「報酬」の範囲を「財産上の利益」に絞っておりますが、これでは多くの便宜供与等がもれ落ちる可能性があります。


(適用上の注意)
 以上申し上げてきたように、与党案はこの新法をできうる限り甘いものとしようとしている姿勢、骨抜きの法案にしようという本心がありありと見て取れます。

 その象徴が「この法律の適用にあたっては、公職にある者の政治活動を不当に妨げることのないように留意しなければならない」との条文であります。あたりまえの事を敢えて書かずにはいられなかった心情、このような法案をいやいやつくったとの本音がにじみ出ています。

 この恥ずかしい条文こそ、政治倫理の確立に後ろ向きな与党の姿勢を象徴するものであります。

(野党案の評価)
 これに対し、我々の野党案は国民・世論の声を背に、自らを律し、政治に信頼を再生させる決意にあふれております。
 委員会質疑においては、与党委員から「野党案では政治主導が脅かされる」などといった発言が繰り返されました。野党案に基づいていわゆる「口利き政治」が一掃されることによって「官僚優位」になる、言葉を変えれば「口利き政治」で幅を利かせているのが「政治優位」だということでしょうか。

 だとすれば、現在与党が行っている政治は極めて国民の意に背くものであると言わざるを得ず、それこそ政治改革の理念に根本から反するものであります。
そもそも、「官主導」に甘んじているからこそ、政治家が、公務員に陳情したり、あっせんしたりということがはびこっているのではないでしょうか。新法ではこのような現状に楔を打つものでなければならないと考えます。

 敢えて申し上げます。
 与党議員各位、野党案が制定されれば、各位の政治活動が立ち行かなくなるというのですか。言葉を変えれば、これまでの政治活動では野党案に抵触するもの、つまり「口利き政治」で賄賂を得ている実態がそれほどまでに蔓延しているのでしょうか。一体何を恐れているのですか。国民は厳しく監視しております。

(修正協議について)
 また、本件は政治家自らの倫理確立の問題であり、本来は与野党の垣根を超えて真摯に協議を重ねて、より良い成案を得るべきであります。この視点から、我々4会派は委員会審議と平行し、与党に修正協議を呼びかけてまいりましたが、与党はこれを拒否いたしました。「抜け道をちょっとでも塞ぐ改革はまかりならん」という与党の旧態依然たる姿を国民は決して見逃すことはありません。

(底抜け法案)
 あらためて与党案をかえりみれば、一体現行法と比べてどこが厳しくなったのか、何のためにわざわざ「政治倫理の確立」を目的とする特別委員会で議論を続けたのか、との素朴な疑問が生じます。審議を重ねていくにつれ、与党の法案はザルですらない、国民の政治不信の元凶である金権腐敗体質を温存し続けるまさに底抜け法案であることが明らかになりました。

 以上申し上げて参りましたように、国民が期待し望んでいるものは、わが野党案にあることははっきりしています。そして、与党案では国民の怒り、憤りが募るばかりであります。20世紀最後の段階で国会に議席を持つ政治家の一人として本法案のもつ保護法益である「政治公務員の廉潔性及びこれに対する国民の信頼」の持つ意味を深くかみしめながら、21世紀の子どもたちから笑われることがないように与党も野党もなく、政治家たるもの、より厳しく身を処する方向で勇気を出して、個々人の判断で採決にのぞんでいただきたいと思います。
 このことを最後に申し上げ、「公職にある者等による特定の者に利益を得させる目的でのあっせん行為に係る収賄等の処罰に関する法律案」に賛成し、「公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律案」に反対する討論を終わります。

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