トップ > ニュース
ニュース
ニュース
1999/05/31
行政改革に対する基本方針
記事を印刷する

1 基本的な考え方

(1)これまでの行政改革の反省

 行政改革が叫ばれはじめて既に久しいが、これまでの累次の試みは、いずれも不徹底に終った。その理由は三つある。一つは、行政改革の基本理念が不明確なまま作業が進められたこと、二つは、行政に対する要請は時代とともに変遷するから、行政改革は不断の営みでなければならないのに、この視点に欠け、いずれも短期で終了してしまったこと、三つは、行政改革を責任をもって行う主体が定められなかったことである。

 私たち民主党の考える行政改革は、新しいこの国のかたちについて明確なビジョンを持ち、それに向かって一貫性を持って不断の取り組みをし、しかもその責任主体を明確に定めて行う。これによりはじめて、わが国の行政改革が前進する。


(2)基本理念

 わが国の近代行政は、明治維新からはじまった。その仕組みはまず、外交・防衛、通貨、法務などの権力行政(国家がその存立や秩序維持のため国民に命令・強制する作用)のための仕組みとして基本形が形成された。そこでは優越的な国家が行政の主体となった。

 しかし、その後の社会経済状況の変化により、行政分野の中に給付行政(公共施設、社会保障、資金助成などの行政サービスの提供)が大きな比重を占めることになった。そこでは国民がサービスの受け手として主体となり、行政サービスの具体的妥当性や合意形成が重視される。

 ところが行政の仕組みの基本は旧来型のまま維持された。これを民主主義の理念の下に抜本的に改革することが、今求められている行政改革である。

 国の行政分野をスリム化して、原則として国でなければ行えない権力行政及び給付行政の内最低基準(ナショナルミニマム)と調整ルール作りに限定し、その他の分野については徹底した「市場へ・市民へ・地方へ」という振り分けを行う。その結果、給付行政は原則として地方自治体の事務となる。こうして「簡素・効率・透明」を実現する。これが、私たち民主党の行政改革の基本理念である。


(3)政府型行政改革の問題点

 この視点に基づいて、政府の進める改革を見ると、これは行政改革と呼べるものではない。民主党は、省庁半減という省庁大括り再編から論議をスタートさせた今回の行政改革を受け入れることはできない。

 その理由の第一は、政府が何を実現するために、省庁の再編をするのか、最も基本的なことが明確ではない。理念なき行革である。

 第二に、真の行政改革のためには省庁再編の前に、


1. 官民関係の基本を定め、
2. 地方に移譲する権限と財源を決めて移し、
3. 中央省庁の事務の中で、廃止するものと外部化するものを決めて移し、
4. こうして中央省庁の総仕事量を決定した後に、
5. いかなる省庁再編が必要であるか、幾つの省に編成するのか、


 を検討する手順が必要である。政府案は順序が逆である。

 第三に、国土交通省や総務省等の大括り巨大省の設置は、政治によるコントロールが困難になること、「簡素・効率・透明」という行政改革の基本理念に反することなどから、行政改革とは相容れない。

 民主党は行政改革の理念に沿った改革実現に向けて、以下のとおり具体的な改革手順案を提案する。そして政府案の問題点を明らかにし、行革と分権を一体として進め、新しい「この国のかたち」を国民に提案する。


2 民主党の考える行政改革

(1)内閣機能強化

 民主党は「官僚主導国家」から「国民主導国家」への転換を訴えている。これを実現するためには、全国民の直接選挙で構成される国会で直接に指名される内閣総理大臣=首相及びその首相に任免が委ねられている国務大臣とで構成される内閣の指導力を飛躍的に強化することが必要である。そのため次のとおりの仕組みを提案する。これにより政権党には、その公約した政策を実現するために十分強力な権限が与えられる。その結果、この政策及びその実現の程度が国民の信認を得られなければ、明確に責任を問われることになる。いずれにせよ、制度の不備に責任を負わせる言い訳は通用しなくなる。(全体像については添付資料1参照)


1. 首相府設置(詳細は添付資料2参照)

 首相を直接補佐し又内閣と与党の一体性を高めるために首相府を設置し、以下の5室をおく。さらに国政の重要事項について基本方針を策定するため、合議機関を内閣総理大臣の裁量の下、設置し運営することができる。

* 補佐室=首相の直接的補佐。首相の提案する基本方針及び予算編成大綱の作成、戦略会議の運営等
* 秘書室=首相の日程管理、秘書業務
* 政務室=首相と与党の連絡調整等
* 政策室=重要事項について、首相に対する政策的アドバイス等
* 報道室=首相の報道対応及び情報収集等

2. 内閣府設置(詳細は添付資料3参照)
 内閣官房長官の指揮下で政府部内の連絡調整等を行うために内閣府を設置し、以下の8室をおく。

* 内閣調整室=国政の重要事項に関する調整案件の整理・連絡調整等
* 情報・危機管理室=国政の重要事項に関する情報の収集・処理及び災害対応を含む危機管理等
* 予算編成室=首相の定める予算編成大綱に従い、実務的な作業を行う
* 行政改革推進室=中央政府行政機構の管理及び継続的行政評価、行政改革の推進等
* 公務員企画室=新たな採用制度を含む公務員制度の改善、幹部職員人事評価等
* 雇用政策調整室=雇用政策に係わる調整及び中央政府スリム化に伴う雇用対策
* 男女共同参画・人権政策推進室=男女共同参画及び人権関係行政に関する総合調整、施策の推進等
* 内閣法制室=内閣が国会に提出する法律案等について、法制面より内閣を補佐する

 この他、内閣府に外局としておく委員会及び庁は、当面国家公安委員会、公正取引委員会、人権擁護委員会、防衛庁、金融庁、宮内庁の6機関とする。委員会はいずれも国家行政組織法の3条委員会とする。

3. 行革の流れ

 首相府及び内閣府は、この立法によって強化される権限をもって、行政改革を実現する責任機関となり、以下の基本的方針に従った行政改革を継続的に行う。

* 継続的に中央省庁の事務を「市場へ・市民へ・地方へ」振り分けること並びに中央省庁事務の外部委託及び中央の行政機関の独立行政法人化を検討する。
* 上記の検討の結果、中央省庁の事務が縮減するに伴い、中央省庁に残った事務を一層効率的に実施するために、中央省庁組織の再編を行う。

 なお内閣府に設置される行政改革推進室は、この検討を恒常的に行う機関とする。なお行政改革の目的(添付資料4)、手順(添付資料5)は資料に示す通りである。



(2)省庁再編


1. あるべき省庁再編

 省庁再編は、新たに責任機関となる首相府と内閣府が、先に基本的な考え方で述べたとおりの理念と手順に従って行うべきものであり、政府案を行政改革と呼ぶことはできない。政府案どおりの省庁再編を行っても、これは更に私たち民主党の手による行政改革の対象とならざるを得ない。そこで政府案には反対する。とりわけ「国土交通省」及び「総務省」には、単に不徹底との批判ではすまされない重大な問題がある。

2. 国土交通省・総務省について
○「国土交通省」の主たる問題点

* 地方分権が最も必要な分野である「公共事業」について、地方への権限と財源の移譲が実現できていない。その結果として「国土交通省」は巨大な官庁となっている。
* この余りに巨大な官庁を、数人の政治家がコントロールすることは不可能。
* 7兆円もの公共事業予算は、巨大利権官庁に繋がりかねない。
* 政府は「地方整備局」へ権限・財源を移譲することによってこの巨大化に対する批判をかわそうとする。しかし国の出先機関である「地方整備局」に権限を移譲することは地方分権ではなく、かえって国会から遠い所に権限をおくことは民主主義の形骸化に繋がりかねない。

○「総務省」の主たる問題点

* 総務庁、郵政省、自治省を統合する総務省の設置目的が全く不明確。
* 地方分権を所管する部署が、巨大省庁の一部門となり、地方分権推進を妨げる恐れがある。
* 行政制度、公務員制度を所管する総務庁、巨額な郵便貯金資金を有する郵政省、地方自治体を監督する自治省が一体となることは、「内務省」の復活になりかねない。
* 巨額の郵便貯金の自主運用を行う部署と財政破綻直前の自治体を所管する部署が一つの省庁に統合されると、郵便貯金資金の不透明な運用が生じかねない。
* 政策評価を行う総務省が各省と横並びでは、その本来的機能が発揮できない。
* 公正取引委員会を総務省の外局とすることは明確な理由がなく、その機能の重要性を考えると総務省におくことは適当ではない。

3. 財政と金融の分離について
 今回の省庁再編のきっかけは大蔵省不祥事であり、真っ先に掲げられたのが財政と金融の分離である。更に昨年秋には「財金の完全分離」の3党合意がなされた。
 このような経過からして、今回の省庁再編において「財金分離」は不可欠な要素であり、公党間の信頼を反故にした小渕総理大臣の政治責任を追及していく。

4. その他の省庁再編について
 その他の省庁再編については、各部会からの報告に基づいて、国会審議の中でその問題点を明らかにしていく。


(3)独立行政法人

1. 基本的な考え方

 民主党は、中央政府の事務を「企画部門」と「実施部門」に区分し、「実施部門」を「独立行政法人」として外部化することには賛成である。その前提として、省庁再編と同様に独立行政法人においても、まず中央省庁の権限・財源の「市場へ・市民へ・地方へ」の振り分けを行い、その結果中央省庁に残る事務について「外部委託」等のスリム化を検討することが重要である。しかし政府案は、この最も重要なプロセスを経ずに、単に現在中央省庁にある機関を外部化するだけであり、その結果、以下の点について問題がある。従って、民主党としては政府案に賛成することはできない。

2. 政府型独立行政法人の問題点

* 独立行政法人化によってどの程度のスリム化が実現できるかを示そうとせず、またほとんどの場合独立行政法人化しても身分は従来型公務員のまま残すため、実際にスリム化が進展することも期待できない。これでは独立行政法人制度を創設する意味が無い。
* 独立行政法人の効率的経営が可能であるかどうか非常に疑問である。
* 政府が現在独立行政法人化を予定している機関を見ると、民営化すべき機関も多く含まれている。一方で本来独立行政法人化すべき特殊法人等には一切手を付けていない。


3. 民主党型独立行政法人の提案

* 民主党型と政府型との比較
    民主党型                  政府型
1 法人の長に権限と責任を集中       1 主務省が中期計画を押し付け
2 中央省庁、特殊法人、認可法人の     2 対象機関は、事実上すでに外部化
  業務を同一基準で大胆に外部化        されていたものばかり
3 民間との競争              3 独占的立場変わらず

     

  コスト削減(国民負担減)             変わるのは形だけ
  国民へのサービス向上

* 人事
・長
o 民間人も含め公募により決定
o 応募の際に中期目標と計画の概要を提出
o 予算の弾力的運用、運営、人事に関する権限を持つ
o 目標達成度に応じた報酬を得る
・職員
o 職員は、国家公務員と民間人の中間型の独立行政法人型公務員となるので、新たに法律を制定してその身分・権利義務関係を明確にする。(独立行政法人化の前段階で徹底した民営化やアウトソーシングを行うので、公務員の身分の不要な機関や業務部門は、その段階で公務でなくなる。)
o 給与体系、勤務体系は法人の長が決定
o 目標達成度、個々の実績に応じた給与体系であることが望ましい

* 中期目標の策定と評価
o 中期目標は長が応募時に提出
  ・コスト削減の達成目標
  ・サービス向上の達成目標
  ・予算
  ・その他必要な事項
o 目標は全て数値化し、受益者である国民のアンケートも評価に加える
o 目標達成状況は、計画期間終了後に公表。さらに年度ごとに経過報告を行う

* 独立行政法人を情報公開法の対象とし、その政策評価と一層の独立行政法人化の検討を内閣府の行政改革推進室が行う。

(4)政策評価
 政策評価は今後益々重要となっていく行政手法であるが、政府案には具体的な政策評価の手法が示されておらず、政策評価を担う総務省がその他の省庁と横並びとなっているなど問題が多い。そこで以下のような制度を実現する。

* 内閣府に「行政改革推進室」を設置し、各省庁に対する指揮権を備えた政策評価を恒常的に行う。
* 市民参加の政策評価を実現するために政府部内評価として、日本版GPRA法(政府業績評価法)を制定する。
* 単年度主義、単式簿記、現金主義など弊害の目立つ現在の公会計制度を抜本的に改革する。
* パブリックコメント制度(政策立案過程への市民参加)を創設する。

(5)日本版GAOの設置
 行政に対する評価及びこれに基づく改革を政府部内に委ねることは、お手盛りの評価となりがちで、また政策の硬直性を招きかねない。国会が行政に対するチェックという本来の機能を十分に果たすために、国会に日本版GAOを設置する。

(6)特殊法人改革等

* 今後5年の間に現在の特殊法人を「民主党型独立行政法人」「民営化」「廃止」のいずれかに区分し、以後特殊法人という行政形態はとらない。
* 現在の官僚制度の弊害の大きな要因である「天下り」を禁止する法案を提出する。
* PFI制度(民間資金活用による社会資本整備)を活用し、公共事業の効率化を図る。

資料2

首相府設置法案関連大綱

 現行の内閣官房の一部を改組し、新たに首相府を設置する。そのため、以下の法整備を行う。

1. 内閣総理大臣の統轄の下、内閣総理大臣直轄型の「首相府」を設置する。首相府は、現行内閣官房の機能を再編成し、「補佐室」「秘書室」「政務室」「政策室」「報道室」の5室を置くこととし、それぞれに政務官を配置する。

2. 補佐室には、5人以上の内閣総理大臣補佐官を配置し、内閣総理大臣の政務・政策及び外交・情報に関する活動の直接的補佐及びそれらの総括的補佐を担当する。この任務に基づき、主に内閣総理大臣が提案する基本方針、予算編成大綱や演説草稿の作成、戦略会議の運営を補佐する。また、これらの補佐業務に係わる事務官を配置する。

3. 秘書室は、内閣総理大臣のスケジュール管理と書類の管理及び内閣総理大臣の首相活動に係わる機密の処理など秘書業務を担当する。秘書室には、秘書室長及び数名の秘書官の他、必要な事務官を配置する。

4. 政務室は、内閣総理大臣と与党の関係調整のための連絡事項を担当し、主に議会与党及び与党全国組織との連携並びに政務上の調整にあたる。また内閣と各省庁との関係調整のため、与党の国会議員及び与党が推薦する政党スタッフを若干名配置する。

5. 政策室には、内閣総理大臣が選任する政策専門家によって構成される特別政策官を配置する。特別政策官は内閣総理大臣の直接の指示の下、重要事項について政策的アドバイスを行う。

6. 報道室は、主に内閣総理大臣の報道対応を担当する。また内閣総理大臣の情報収集及び情報発信を補佐する。

7. さらに国政の重要事項について基本方針を策定するため、合議機関を内閣総理大臣の裁量の下、設置し運営することができる。


資料3

内閣府設置法案関連大綱

 内閣官房及び総理府の機能の一部を統合整理し、新たに内閣府を設置する。このため、以下の法整備を行う。

1. 内閣総理大臣及び内閣総理大臣が直轄する首相府の補佐機構として、内閣官房長官の指揮下で連絡調整機能等を担当する「内閣府」を設置する。内閣府は、現行内閣官房のうち、「内政審議室」「外政審議室」「安全保障・危機管理室」及び「内閣危機管理監」を統合・整理した「内閣調整室」及び「情報・危機管理室」、現行大蔵省主計局の機能を有する「予算編成室」、現行総理府の「人事課」、総務庁「人事局」「行政管理局」「行政監察局」を整理した「行政改革推進室」及び「公務員企画室」、政府部内雇用政策の調整等を担当する「雇用政策調整室」、男女共同参画と人権政策の企画及び推進を担当する「男女共同参画・人権政策推進室」並びに内閣を法制面から補佐する「内閣法制室」から構成されるものに再編成する。

2. 内閣調整室は、内閣総理大臣が行う総合調整機能及び首相府の機能を補佐するため、国政上の重要事項に関する調整案件の整理・連絡調整等の事務を担当する。このため、内政、外交及び安全保障に係わる連絡調整事務を担当する専門官及びそれらを統轄する調整官の配置を行う。

3. 情報・危機管理室は、情報収集及び処理並びに災害時の対応を含めた危機管理の能力を飛躍的に高めるため、現行の組織を改組して、関係権限を包括的に担当する。

4. 予算編成室は、首相が首相府補佐室等の補佐を得てとりまとめる予算編成大綱に基づき、政府部内の調整を図り、予算案の作成を担当する。現行大蔵省の主計局を内閣府に移管し、これを改組する。

5. 行政改革推進室は、恒常的な行政改革の推進のため中央政府事務及び特殊法人等の評価・監察・見直しを行い、見直しに伴う組織のあり方について調査・立案をするとともに、財務管理及び組織運営に係わる管理を担当する。

6. 公務員企画室はトップマネジメントに関する企画、群採用等新たな公務員採用制度の調査立案、管理者の人材育成や人事交流管理及び政府機構の効率的運営に係わる公務員の仕事のあり方に関する監視機能を担当する。また幹部職員に関する人事評価機能を持つ委員会を置く。


7. 雇用政策調整室は経済政策、教育政策等多方面に関連する雇用政策について政府部内の調整を行うとともに、中央政府のスリム化に伴い生じる雇用対策について調査立案及び実施を担当する。

8. 男女共同参画・人権政策推進室は、男女共同参画及び人権関係行政に関する施策の調整を行うとともに、同和対策・ウタリ対策等特別の施策を推進する。また「人権教育のための国連10年」国内行動計画の推進に関する本部事務局機能も担当する。

9. 内閣法制室は、内閣が国会に提出する法律案及び閣議決定に付する事案について、法制的な観点から、内閣に対して意見を述べる。

記事を印刷する
▲このページのトップへ
Copyright(C)2024 The Democratic Party of Japan. All Rights reserved.