目次
第一章 総則(第一条―第八条)
第二章 人権教育・啓発基本計画(第九条)
第三章 人権に関する教育及び啓発に関する基本的施策(第十条―第十九条)
第四章 人権教育・啓発推進会議(第二十条―第二十五条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条
この法律は、人間の尊厳に由来する不可侵の権利としてすべての国民に基本的人権の享有を保障する日本国憲法の理念に照らし、歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている地域に係る差別をはじめとする社会的身分、門地、人種、信条、性別又は障害による不当な差別その他の人権侵害を解消することが緊要であることにかんがみ、人権に関する教育及び啓発に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及び国民の責務を明らかにするとともに、人権に関する教育及び啓発に関する施策の基本となる事項を定めること等により、人権に関する教育及び啓発に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって人権の擁護に資することを目的とする。
(定義)
第二条
この法律において「人権に関する教育及び啓発」とは、人権尊重の理念について理解を深め、自ら実践することができるようにすることを目的として行われる教育活動並びに人権尊重の理念の普及及び人権意識の高揚を目的として行われる研修、情報提供、広報その他の活動をいう。
(基本理念)
第三条
人権に関する教育及び啓発は、不当な差別その他の人権侵害を解消し、人権尊重の理念を社会に定着させることを旨として、積極的に行われなければならない。
2
人権に関する教育及び啓発は、学校、職域、地域、家庭等においてあらゆる機会を通じて行われなければならない。
(国の責務)
第四条
国は、前条の基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり、人権に関する教育及び啓発に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第五条
地方公共団体は、基本理念にのっとり、人権に関する教育及び啓発に関し、国の施策に準じた施策及びその地方公共団体の区域の特性に応じた自主的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(国民の責務)
第六条
国民は、自ら人権尊重の理念についての理解を深めるよう努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する人権に関する教育及び啓発に関する施策に協力するように努めなければならない。
(法制上の措置等)
第七条
政府は、人権に関する教育及び啓発に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
(年次報告等)
第八条
政府は、毎年、国会に、政府が人権に関する教育及び啓発に関して講じた施策に関する報告書及び講じようとする施策を明らかにした文書を提出しなければならない。
第二章 人権教育・啓発基本計画
第九条
政府は、人権に関する教育及び啓発に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、人権に関する教育及び啓発に関する基本的な計画(以下「人権教育・啓発基本計画」という。)を定めなければならない。
2
人権教育・啓発基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 総合的かつ長期的に講ずべき人権に関する教育及び啓発に関する施策の大綱
二 前号に掲げるもののほか、人権に関する教育及び啓発に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3
政府は、人権教育・啓発基本計画を定めるに当たっては、あらかじめ、人権教育・啓発推進会議の議を経なければならない。
4
政府は、第一項の規定により人権教育・啓発基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。
5
前二項の規定は、人権教育・啓発基本計画の変更について準用する。
第三章 人権に関する教育及び啓発に関する基本的施策
(情報の収集及び提供等)
第十条
国は、人権に関する教育及び啓発の有効かつ適切な実施に資するため、人権に関する教育及び啓発に関し、情報の収集及び提供を行うとともに、調査研究並びに教材及び手法の開発を推進するものとする。
(指導員の確保)
第十一条
国は、人権に関する教育及び啓発の有効かつ適切な実施に資するため、事業所等に人権に関する教育及び啓発に関する指導員が配置されるよう必要な措置を講ずるものとする。
2
国は、前項の指導員を養成するため、必要な措置を講ずるものとする。
(施設及び設備の整備)
第十二条
国は、前二条の規定による施策を実施するために必要な施設及び設備を整備するよう必要な措置を講ずるものとする。
(人権にかかわりの深い特定の業務に従事する者に対する措置)
第十三条
国は、人権にかかわりの深い特定の業務に従事する者に対し、人権に関する教育及び啓発がその業務の性質に応じて適切かつ十分に行われるよう必要な措置を講ずるものとする。
(事業者に対する措置)
第十四条
国は、事業者に対し、その事業所における人権に関する教育及び啓発が適切に行われるよう必要な措置を講ずるものとする。
(民間団体の活動を促進するための措置)
第十五条
国は、人権に関する教育及び啓発に関する活動を行う民間の団体に対し、当該活動が促進されるよう必要な措置を講ずるものとする。
(国民の意見の反映)
第十六条
国は、人権に関する教育及び啓発に関する施策の適正な策定及び実施に資するため、人権に関する教育及び啓発に関する活動を行う民間の団体の意見その他国民の意見を国の施策に反映させるための制度を整備するものとする。
(地方公共団体の施策)
第十七条
地方公共団体は、第十条から前条までに定める国の施策に準じた施策及びその地方公共団体の区域の特性に応じた自主的な施策を策定し、及び実施するものとする。
(地方公共団体に対する支援)
第十八条
国は、地方公共団体が実施する人権に関する教育及び啓発に関する施策を支援するため、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。
(国及び地方公共団体の協力等)
第十九条
国及び地方公共団体は、人権に関する教育及び啓発に関する施策を講ずるにつき、相協力するとともに、人権に関する教育及び啓発に関する活動を行う民間の団体との連携協力体制の整備を図るものとする。
第四章 人権教育・啓発推進会議
(人権教育・啓発推進会議)
第二十条
内閣府に、人権教育・啓発推進会議(以下「会議」という。)を置く。
2
会議は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 人権教育・啓発基本計画に関し、第九条第三項(同条第五項において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理すること。
二 前号に掲げるもののほか、人権に関する教育及び啓発に関する基本的かつ総合的な政策及び重要事項を調査審議し、並びに人権に関する教育及び啓発に関する施策の実施を推進すること。
(組織)
第二十一条
会議は、議長及び議員二十人以内をもって組織する。
(議長)
第二十二条
議長は、内閣総理大臣をもって充てる。
2
議長は、会務を総理する。
3
議長に事故があるときは、内閣官房長官が、その職務を代理する。
(議員)
第二十三条
議員は、次に掲げる者をもって充てる。
一 内閣官房長官
二 国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者
三 前号に定めるもののほか、関係行政機関の長のうちから、内閣総理大臣が指定する者
四 学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する者
2
会議に、専門の事項を調査させるため必要があるときは、専門委員を置くことができる。
(資料の提出その他の協力)
第二十四条
会議は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。
(政令への委任)
第二十五条
この章に定めるもののほか、会議に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
(施行期日)
第一条
この法律は、平成十三年一月六日から施行する。
(内閣府設置法の一部改正)
第二条
内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。
第三条第二項中「事務の適切な遂行」の下に「、人権に関する教育及び啓発の推進」を加える。
第四条第一項第八号の次に次の一号を加える。
八の二 人権に関する教育及び啓発の推進を図るための基本的な政策に関する事項
第四条第三項第十五号の次に次の二号を加える。
十五の二 人権教育・啓発基本計画(人権に関する教育及び啓発の推進に関する法律(平成十二年法律第 号)第九条第一項に規定するものをいう。)の作成及び推進に関すること。
十五の三 前号に掲げるもののほか、人権に関する教育及び啓発の推進に関する事務のうち他省の所掌に属しないものの企画及び立案並びに実施に関すること。
第十八条第二項の表中央防災会議の項の次に次のように加える。
人権教育・啓発推進会議
人権に関する教育及び啓発の推進に関する法律
(法務省設置法の一部改正)
第三条
法務省設置法(平成十一年法律第九十三号)の一部を次のように改正する。
第四条第二十七号中「人権啓発及び」を削る。
理 由
人間の尊厳に由来する不可侵の権利としてすべての国民に基本的人権の享有を保障する日本国憲法の理念に照らし、歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている地域に係る差別をはじめとする社会的身分、門地、人種、信条、性別又は障害による不当な差別その他の人権侵害を解消することが緊要であることにかんがみ、人権の擁護に資するため、人権に関する教育及び啓発に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及び国民の責務を明らかにするとともに、人権に関する教育及び啓発に関する施策の基本となる事項を定めること等により、人権に関する教育及び啓発に関する施策を総合的かつ計画的に推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
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