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2000/04/20
特別永住者等である戦傷病者等に対する特別障害給付金等の支給に関する法律案要綱
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第一 総則
一 趣旨(第一条関係)
   この法律は、特別永住者等である戦傷病者及び戦没者等の遺族が置かれている状況にかんがみ、人道的精神に基づき、これらの者に対する特別障害給付金等の支給に関し必要な事項を定めるものとすること。

二 特別永住者等(第二条関係)
   「特別永住者等」とは、日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法に定める特別永住者その他これと同様の事情にある者として政令で定める者をいうものとすること。

三 旧軍人軍属等(第三条関係)

1. 「旧軍人軍属等」とは、次に掲げる者をいうものとすること。
(1) 軍人、準軍人その他元の陸軍又は海軍部内の文官(以下「旧軍人」という。)
(2) 元の陸軍又は海軍部内の有給の嘱託員、雇員、人、工員又は鉱員
(3) 船舶運営会の運航する船舶の乗組船員
(4) 元の陸軍又は海軍の指揮監督の下に(1)から(3)までの業務と同様の業務に専ら従事中の南満洲鉄道株式会社の職員等
(5) 旧国家総動員法等に基づく被徴用者又は総動員業務の協力者等
(6) 元の陸軍又は海軍の要請に基づく戦闘参加者
(7) 国民義勇隊の隊員
(8) 満洲開拓青年義勇隊の隊員又は義勇隊開拓団の団員
(9) 特別未帰還者
(10) 事変地又は戦地に準ずる地域における勤務に従事中の元の陸軍又は海軍部内の有給の嘱託員、雇員、傭人、工員又は鉱員
(11) 防空の実施に従事中の者等

2. (1)又は(2)の者は、陸軍及び海軍の廃止後も、未復員の状態にある限り、(1)又は(2)の者とみなし、(4)の者で(4)の勤務に就いていたことにより昭和二十年九月二日以後引き続き海外において抑留されていたものは、その抑留されていた間に限り、(4)の者とみなし、(8)の者で昭和二十年九月二日以後引き続き海外にあったものは、その海外にあった間に限り、(8)の者とみなすものとすること。

四 在職期間(第四条関係)

「在職期間」とは、次に掲げる期間をいうものとすること。
(1) 旧軍人については、改正前の恩給法の規定による就職から退職までの期間
(2) 三の1の(2)の者については、昭和十二年七月七日以後、事変地又は戦地における勤務を命ぜられた日から当該勤務を解かれた日までの期間及び昭和二十年九月二日以後引き続き海外にあって復員するまでの期間
(3) 三の1の(3)の者については、昭和十七年四月一日以後船舶運営会の運航する船舶に乗り組み戦地における勤務を命ぜられた日から当該勤務を解かれた日までの期間及び昭和二十年九月二日以後引き続き海外にあって帰還するまでの期間
(4) 三の1の(4)の者については、昭和十二年七月七日以後期間を定めないで、又は一箇月以上の期間を定めて事変地又は戦地における同号に規定する勤務を命ぜられた日から当該勤務を解かれた日までの期間及び当該勤務に就いていたことにより昭和二十年九月二日以後引き続き海外において抑留されていた期間(以下「抑留期間」という。)

五 公務傷病の範囲(第五条関係)

1. 旧軍人が負傷し、又は疾病にかかった場合において、恩給法の規定により当該負傷又は疾病を公務によるものとみなすとき、及び旧軍人たる特別の事情に関連して不慮の災難により負傷し、又は疾病にかかり、内閣総理大臣が公務による負傷又は疾病と同視すべきものと認めたときは、公務上負傷し、又は疾病にかかったものとみなすものとすること。

2. 三の1の(1)から(4)までの者(以下「旧軍人軍属」という。)が、昭和十二年七月七日以後事変地又は戦地における在職期間内に負傷し、又は疾病にかかった場合において、故意又は重大な過失によって負傷し、又は疾病にかかったことが明らかでないときは、公務上負傷し、又は疾病にかかったものとみなすものとすること。

3. 旧軍人軍属(三の1の(4)の者を除く。)が、昭和二十年九月二日以後引き続き海外にあって復員(帰還を含む。以下同じ。)するまでの間に、自己の責めに帰することができない事由により負傷し、又は疾病にかかった場合において、内閣総理大臣が公務上負傷し、又は疾病にかかったものと同視することを相当と認めたときは、公務上負傷し、又は疾病にかかったものとみなすものとすること。

4. 旧軍人軍属が、昭和二十年九月二日以後海外から復員し、その後遅滞なく帰郷する場合に、その帰郷のための旅行中において、自己の責めに帰することができない事由により負傷し、又は疾病にかかったときは、旧軍人軍属が在職期間内に公務上負傷し、又は疾病にかかったものとみなすものとすること。

5. 次に掲げる場合には、公務上負傷し、又は疾病にかかったものとみなすものとすること。
(1) 三の1の(3)又は(4)の者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合
(2) 三の1の(4)の者とみなされる者が抑留期間内に自己の責めに帰することができない事由により負傷し、又は疾病にかかった場合。
(3) 三の1の(5)、(7)若しくは(11)の者が業務上負傷し、若しくは疾病にかかり、又は三の1の(8)の者が昭和二十年八月九日前に軍事に関し業務上負傷し、若しくは疾病にかかり、若しくは同日以後に業務上負傷し、若しくは疾病にかかった場合
(4) 三の1の(6)の者が当該戦闘に基づき負傷し、又は疾病にかかった場合
(5) 三の2により三の1の(8)の者とみなされる者又は三の1の(9)の者が自己の責めに帰することができない事由により負傷し、又は疾病にかかった場合。

6. 旧軍人軍属等の次に掲げる負傷又は疾病で、公務上の負傷又は疾病でないものは、公務上の負傷又は疾病とみなす。
(1) 旧軍人軍属の在職期間内の次に掲げる負傷又は疾病
 イ 昭和十二年七月七日以後における本邦その他の政令で定める地域内の事変に関する勤務又は戦争に関する勤務に関連する負傷又は疾病
 ロ 昭和二十年九月二日以後引き続き勤務していた期間又は引き続き海外にあって復員するまでの間における負傷又は疾病で内閣総理大臣が戦争に関する勤務に関連する負傷又は疾病と同視することを相当と認めるもの
(2) 三の1の(5)から(11)までに掲げる者のそれぞれの勤務に関連する負傷又は疾病



第二 特別障害給付金
一 特別障害給付金の支給及び裁定(第六条関係)

1. 旧軍人軍属等であった者が、昭和十二年七月七日以後(旧軍人軍属であった者にあっては、在職期間内)に公務上負傷し、又は疾病にかかり、当該負傷又は疾病により、平成十二年七月一日において恩給法上の項症又は款症の程度の障害の状態にある場合又は同月二日以後当該程度の障害の状態になった場合であって、かつ、その者が特別永住者等である場合には、その者にその障害の程度に応じて年金たる特別障害給付金を支給するものとすること。

2. 1により年金たる特別障害給付金を受けるべき者であって、その障害の程度が恩給法上の款症に定める程度であるものに対しては、その者の請求により、その障害の程度に応じて一時金たる特別障害給付金を支給し、年金たる特別障害給付金を支給しないものとすることができるものとすること。

3. 特別障害給付金を受ける権利の裁定は、これを受けようとする者の請求に基づいて、内閣総理大臣が行うものとすること。

二 特別障害給付金の額(第七条関係)

   特別障害給付金の額については、戦傷病者戦没者遺族等援護法の障害年金及び障害一時金と同額とするものとすること。

三 年金たる特別障害給付金の併給の調整(第八条関係)

1. 年金たる特別障害給付金を受ける権利を有する者に対して更に年金たる特別障害給付金を支給すべき事由が生じたときは、その者に前後の障害を併合した障害の程度による年金たる特別障害給付金を支給するものとすること。
2. 年金たる特別障害給付金を受ける権利を有する者が1により前後の障害を併合した障害の程度による年金たる特別障害給付金を受ける権利を取得したときは、従前の年金たる特別障害給付金を受ける権利は、消滅するものとすること。

四 期限つきの年金たる特別障害給付金(第九条関係)

1. 内閣総理大臣は、年金たる特別障害給付金を受ける権利の裁定を行うに当たって、将来、その障害が回復し、又はその程度が低下することがあると認めるときは、年金たる特別障害給付金を受ける権利に五年以内の期限を付することができるものとすること。
2. 1の期限の到来前六月前までに障害が回復しない者で、その障害の程度がなお一の1の程度であるものには、引き続き相当の年金たる特別障害給付金を支給するものとすること。

五 年金たる特別障害給付金の額の改定(第十条関係)

1. 内閣総理大臣は、年金たる特別障害給付金の支給を受けている者の障害の程度が増進し、又は低下した場合においては、その程度に応じて当該年金たる特別障害給付金の額を改定するものとすること。
2. 障害の程度が増進したことによる年金たる特別障害給付金の額の改定は、当該年金たる特別障害給付金の支給を受けている者の請求に基づいて行うものとすること。


六 特別障害給付金の支給を受けることができない者(第十一条関係)

   重大な過失によって負傷し、又は疾病にかかり、これにより障害の状態になった者には、特別障害給付金を支給しないものとすること。

七 特別障害給付金の控除(第十二条関係)

   援護法その他の法令により、障害一時金その他の政令で定める一時金たる給付(以下「障害一時金等」という。)を受けた者が、同一の事由によって特別障害給付金の支給を受ける場合においては、政令の定めるところにより、その者に支給する特別障害給付金の額から、既に受けた障害一時金等の額に相当する額の全部又は一部を控除することができるものとすること。

八 年金たる特別障害給付金の始期及び終期(第十三条関係)

1. 年金たる特別障害給付金の支給は、平成十二年七月から始め、権利が消滅した日の属する月で終わるものとすること。
2. 年金たる特別障害給付金の額を改定した場合において、改定された額による年金たる特別障害給付金の支給は、内閣総理大臣が裁定をした日の属する月の翌月以前において内閣総理大臣が定める月から始めるものとすること。

九 年金たる特別障害給付金を受ける権利の消滅(第十四条関係)

   年金たる特別障害給付金を受ける権利を有する者が、次に掲げるいずれかに該当するに至ったときは、当該年金たる特別障害給付金を受ける権利は、消滅するものとすること。
 (1) 死亡したとき。
 (2) 特別永住者等でなくなったとき。
 (3) 内閣総理大臣によって一の1の程度の障害の状態がなくなったものと認定されたとき。

十 年金たる特別障害給付金の支給停止(第十五条関係)

   年金たる特別障害給付金を受ける権利を有する者が、禁以上の刑に処せられたときは、その日の属する月の翌月から、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなる日の属する月まで、その者に支給すべき年金たる特別障害給付金の支給を停止するものとすること。ただし、刑の執行猶予の言渡しを受けたときは、この限りでないものとすること。

十一 他の法令による給付との調整(第十六条関係)
   年金たる特別障害給付金を受ける権利を有する者が、同一の障害に関し、援護法その他の法令により、障害年金その他の年金たる特別障害給付金に相当する給付を受けることができる場合には、その給付を受けることができる期間、その者に支給すべき年金たる特別障害給付金の支給を停止するものとすること。ただし、年金たる特別障害給付金の額が他の法令による給付の額を超えるときは、その超える部分については、この限りでないものとすること。

十二 その他特別障害給付金を受ける権利の承継、年金たる特別障害給付金の支給期月、受給権調査の規定を置くものとすること。(第十七条から第十九条関係)


第三 特別遺族給付金
一 特別遺族給付金の支給及び裁定(第二十条関係)

1. 次に掲げる遺族で、平成十二年七月一日において特別永住者等であるものには、特別遺族給付金を支給するものとすること。
(1) 旧軍人軍属等又は旧軍人軍属等であった者で、昭和十二年七月七日以後(旧軍人軍属にあっては、同日以後の在職期間内。(5)において同じ。)に公務上負傷し、又は疾病にかかり、これにより、昭和十六年十二月八日から平成十二年六月三十日までの間に死亡したもの(昭和十六年十二月八日前に死亡したことが、昭和二十年九月二日以後において認定された者を含む。)の遺族
(2) 日本国との平和条約第十一条の裁判により拘禁され、当該拘禁中に死亡した者の遺族
(3) 旧軍人軍属又は旧軍人軍属であった者で、今次の終戦に関連する非常事態に当たり、旧軍人軍属たる特別の事情に関連して死亡したもの遺族
(4) 旧軍人軍属又は旧軍人軍属であった者で、事変地若しくは戦地又は当該戦地であった地域における在職期間内の行為に関連して当該地域において死亡したものの遺族
(5) 旧軍人軍属等又は旧軍人軍属等であった者で、昭和十二年七月七日以後に公務上負傷し、又は疾病にかかり、当該負傷又は疾病以外の事由により、昭和十六年十二月八日から平成十二年六月三十日までの間に死亡し、かつ、死亡の日において当該負傷又は疾病により恩給法上の項症の程度の障害の状態にあったもの(重大な過失によって公務上負傷し、又は疾病にかかり、これにより障害の状態になった者を除く。)の遺族

2. 特別遺族給付金を受ける権利の裁定は、これを受けようとする者の請求に基づいて、内閣総理大臣が行うものとすること。

二 遺族の範囲(第二十一条関係)

1. 特別遺族給付金を受けるべき遺族の範囲は、死亡した者の死亡の当時における配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。以下同じ。)、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹並びにこれらの者以外の三親等内の親族(死亡した者の死亡の当時その者によって生計を維持し、又はその者と生計を共にしていた者に限る。)とするものとすること。
2. 死亡した者の死亡の当時胎児であった子が出生したときは、その子は、死亡した者の死亡の当時における子とみなすものとすること。

三 遺族の順位(第二十二条関係)

1. 特別遺族給付金を受けるべき遺族の順位は、次に掲げる順序によるものとすること。
(1) 配偶者(死亡した者の死亡の日以後平成十二年六月三十日以前に、遺族以外の者の養子となり、又は遺族以外の者と婚姻した者を除く。)
(2) 子(平成十二年七月一日において遺族以外の者の養子となっている者を除く。)
(3) 父母
(4) 孫(平成十二年七月一日において遺族以外の者の養子となっている者を除く。)
(5) 祖父母
(6) 兄弟姉妹(平成十二年七月一日において遺族以外の者の養子となっている者を除く。)
(7) (2)においてその順位から除かれている子
(8) (4)においてその順位から除かれている孫
(9) (6)においてその順位から除かれている兄弟姉妹
(10) (1)においてその順位から除かれている配偶者
(11) (1)から(10)までの者以外の遺族で死亡した者の葬祭を行ったもの
(12) (1)から(11)までの者以外の遺族

四 特別遺族給付金の額(第二十三条関係)

   特別遺族給付金の額は、死亡した者一人につき三百万円とするものとすること。

五 特別遺族給付金の支給を受けることができない者(第二十四条関係)

   次に掲げる遺族には、特別遺族給付金を支給しないものとすること。
(1) 重大な過失によって負傷し、又は疾病にかかり、これにより死亡した者の遺族
(2) 死亡した者の死亡の日以後平成十二年六月三十日以前に離縁によって死亡した者との親族関係が終了した遺族
(3) 禁錮以上の刑に処せられ、平成十二年七月一日においてその刑の執行を終わらず、又は執行を受けることがなくなっていない遺族
(4) 遺族のうちに、死亡した者の死亡に関し、援護法その他の法令により、遺族年金、扶助料その他これらに相当する給付又は特別遺族給付金に相当する給付として政令で定めるものを受けることができる者又は受けた者がある遺族


第四 雑則
一 異議申立期間等(第二十六条関係)

   年金たる特別障害給付金、一時金たる特別障害給付金又は特別遺族給付金(以下「年金たる特別障害給付金等」という。)に関する処分についての異議申立てをなし得る期間は、その処分の通知を受けた日の翌日から起算して一年以内とするものとすること。

二 時効の中断(第二十七条関係)

   一の処分についての不服申立ては、時効の中断については、裁判上の請求とみなすものとすること。

三 時効(第二十八条関係)

   年金たる特別障害給付金等を受ける権利は、五年間行わないときは、時効によって消滅するものとすること。

四 その他

   その他譲渡又は担保の禁止、差押えの禁止、非課税等所要の規定を置くものとすること。


第五 附則
一 施行期日(附則第一条関係)

   この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。

二 その他所要の規定を整備するものとすること。(附則第二条から第五条まで関係)

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