トップ > ニュース
ニュース
ニュース
1999/05/13
男女共同参画基本法(案)
記事を印刷する

民主党・新緑風会

目次
 前文
 第一章 総則(第一条―第十二条)
 第二章 男女共同参画の促進に関する基本的施策(第十三条―第二十条)
 第三章 男女共同参画審議会(第二十一条―第二十六条)
 附則


 男女平等は、法の下の平等として日本国憲法に保障され、各種の法律や制度にも位置付けられている。しかし、いまだ、性別に基づく差別や偏見、あるいは男女の役割に対する固定的な考え方に基づく行動が見られ、また、社会における制度や慣行にも、性別による偏りが多く残されており、職域、学校、地域、家庭その他の社会のあらゆる分野の活動における男女の参画には大きな格差がある。

 また、我が国は、少子高齢化、経済活動の成熟化と国際化、情報通信の高度化等の急速な進展により、社会経済において大きな変革期を迎えている。こうした社会経済情勢の変化に対応し、将来にわたって豊かで安心できる社会を築くためには、多様化と個性化を重視した新たな価値の創造に向けた男女共同参画の促進が緊要な課題となっている。

 このような現状にかんがみ、個人の人権が尊重され、かつ、男女が社会的文化的に形成された性差にとらわれず、その個性と能力を発揮する機会が確保されるよう、社会のあらゆる分野において男女共同参画の促進を図っていく必要がある。そのため、国及び地方公共団体はもとより、企業、学校、地域社会、家庭等が相互に協力しながら、それぞれの役割を積極的に果たしていくことが必要である。

 ここに、男女共同参画の促進の基本理念を明らかにしてその方向を示し、男女共同参画の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、この法律を制定する。


第一章 総則

 (目的)
第一条 この法律は、男女共同参画の促進に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及び国民の責務を明らかにするとともに、男女共同参画の促進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、男女共同参画の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって男女の人権が尊重され、かつ、男女が、社会的文化的に形成された性差にとらわれず、個人としてその個性と能力を発揮する機会が十分に保障される社会を形成することを目的とする。

 (定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 男女共同参画 男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会を形成するために、男女が、社会のあらゆる分野における活動に、社会の対等な構成員として、自らの意思によって参画することをいう。

二 積極的是正措置 男女共同参画の機会に係る男女間の格差を是正するため必要な範囲内において、男女のいずれか一方に対し、当該機会を積極的に提供することをいう。

 (人権の確立)
第三条 男女共同参画の促進は、男女の個人としての尊厳が重んぜられること、男女が性別による差別的取扱い(直接的には性別による差別的取扱いをするものではないが、その結果として、男女のいずれか一方に対し差別的効果をもたらすこととなる取扱いを含む。第十七条において同じ。)を受けないこと、男女が個人としてその個性と能力を発揮する機会が確保されることその他の男女の人権が確立されることを旨として、行われなければならない。

2 男女共同参画の促進に当たっては、女性に対する暴力の根絶が女性の人権の確立に欠くことのできないものであることにかんがみ、性犯罪、売買春、夫からの暴力その他あらゆる形態の女性に対する暴力の根絶に向けて積極的な取組がなされなければならない。

 (男女共同参画の促進に向けた社会意識の形成等)
第四条 男女共同参画の促進は、性別による固定的な役割分担の意識が男女共同参画の促進を阻害する要因となっていることにかんがみ、男女が、社会的文化的に形成された性差にとらわれず、個人としてその個性と能力を発揮すべきものであるとの社会意識を形成することを旨とし、及び社会における制度又は慣行が、性別による固定的な役割分担等を反映して、男女の社会における活動の選択に対して中立でない影響を及ぼすことにより、男女共同参画の促進を阻害する要因となるおそれがあることにかんがみ、社会における制度又は慣行が男女の社会における活動の選択に対して及ぼす影響をできる限り中立なものとすることを旨として、行われなければならない。

 (政策等の立案及び決定への共同参画)
第五条 男女共同参画の促進は、男女が、社会の対等な構成員として、国若しくは地方公共団体における政策又は民間の団体における方針の立案及び決定に共同して参画する機会が確保されること(必要に応じ、積極的是正措置が講じられることを含む。)を旨として、行われなければならない。

 (家庭生活における活動と他の活動の両立)
第六条 男女共同参画の促進は、家族を構成する者が、相互の協力と社会の支援の下に、子の養育、家族の介護その他の家庭生活における活動について家族の一員としての役割を円滑に果たし、かつ、当該活動以外の活動を行うことができるようにすることを旨として、行われなければならない。

 (条約等の尊重と国際協力の積極的推進)
第七条 男女共同参画の促進は、男女共同参画の促進に関して我が国が締結した条約その他の国際約束が尊重されること及び国際協力が積極的に推進されることを旨として、行われなければならない。

 (国の責務)
第八条 国は、第三条から前条までに定める男女共同参画の促進についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、男女共同参画の促進に関する施策(積極的是正措置を含む。以下同じ。)を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

 (地方公共団体の責務)
第九条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、男女共同参画の促進に関し、国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (国民の責務)
第十条 国民は、職域、学校、地域、家庭その他の社会のあらゆる分野において、基本理念にのっとり、男女共同参画の促進に寄与するように努めなければならない。

 (法制上の措置等)
第十一条 国及び地方公共団体は、男女共同参画の促進に関する施策を実施するため、必要な法律、条例等の制定若しくは改廃又は必要な財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

2 国は、地方公共団体が男女共同参画の促進に関する施策を実施するための費用について、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるように努めるものとする。

 (年次報告等)
第十二条 政府は、毎年、国会に、男女共同参画の促進の状況及び政府が講じた男女共同参画の促進に関する施策についての報告を提出しなければならない。

2 政府は、毎年、前項の報告に係る男女共同参画の促進の状況を考慮して講じようとする男女共同参画の促進に関する施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。


   第二章 男女共同参画の促進に関する基本的施策

 (男女共同参画基本計画)
第十三条 政府は、男女共同参画の促進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、男女共同参画の促進に関する基本的な計画(以下「男女共同参画基本計画」という。)を定めなければならない。

2 男女共同参画基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

一 総合的かつ長期的に講ずべき男女共同参画の促進に関する次に掲げる施策

イ 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保のための施策
ロ 男女の家庭生活と職業生活等との両立の支援のための施策
ハ 政策等の立案及び決定への男女共同参画の促進のための施策
ニ 男女平等を推進する教育及び学習機会の充実のための施策
ホ 男女共同参画の視点に立った税制、社会保障制度及び婚姻その他の家族制度に関する法制の見直し等社会における制度又は慣行の改善のための施策
へ 社会経済活動その他の活動における性別による差別の撤廃のための施策
ト 女性に対する暴力の根絶のための施策
チ 妊娠又は出産に係る選択の自由等性と生殖に関する女性の自己決定の尊重及び生理、妊娠、出産等の女性に固有の身体的機能の保護等生涯を通じた女性の健康の支援のための施策
リ その他男女共同参画の促進のための施策

二 男女共同参画の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 内閣総理大臣は、男女共同参画審議会の意見を聴いて、男女共同参画基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

4 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、男女共同参画基本計画を国会に報告するとともに、これを公表しなければならない。

5 前二項の規定は、男女共同参画基本計画の変更について準用する。

 (都道府県男女共同参画計画等)
第十四条 都道府県は、男女共同参画基本計画を勘案して、当該都道府県の区域における男女共同参画の促進に関する施策についての基本的な計画(以下「都道府県男女共同参画計画」という。)を定めなければならない。

2 都道府県男女共同参画計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

一 都道府県の区域において総合的かつ長期的に講ずべき男女共同参画の促進に関する施策の大綱

二 前号に掲げるもののほか、都道府県の区域における男女共同参画の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 市町村は、男女共同参画基本計画及び都道府県男女共同参画計画を勘案して、当該市町村の区域における男女共同参画の促進に関する施策についての基本的な計画(以下「市町村男女共同参画計画」という。)を定めるように努めなければならない。

4 都道府県又は市町村は、都道府県男女共同参画計画又は市町村男女共同参画計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

 (施策の策定等に当たっての基本理念の反映)
第十五条 国及び地方公共団体は、男女共同参画の促進に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、基本理念を反映するように努めなければならない。

 (基本理念の理解を深めるための措置)
第十六条 国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じて、家庭、地域、学校、職域その他の社会のあらゆる分野において、基本理念に関する理解が深まるよう適切な措置を講じなければならない。

 (苦情の処理等のための体制の整備)
第十七条 国は、政府が実施する男女共同参画の促進に関する施策又は男女共同参画の促進に影響を及ぼすと認められる施策についての苦情の処理及び性別による差別的取扱いその他の男女共同参画の促進を阻害する要因によって人権が侵害された場合における被害者の救済を適切かつ迅速に行うため、当該苦情の処理及び当該救済のための組織及び運営体制についての法制の整備その他の必要な措置を講じなければならない。

 (調査研究の推進等)
第十八条 国は、国の施策又は社会における制度若しくは慣行が男女共同参画の促進に及ぼす影響に関する調査研究その他の男女共同参画の促進に関する施策の策定に必要な調査研究を推進し、その成果を当該施策に適切に反映するように努めるものとする。

 (条約等の誠実な履行と国際協力の推進のための措置)
第十九条 国は、男女共同参画を国際的協調の下に促進するため、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約その他男女共同参画の促進に関して我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するために必要な措置を講ずるとともに、外国政府又は国際機関との情報の交換、国際機関への人員の派遣、国際会議への参加、開発途上にある海外の地域に対する支援等男女共同参画の促進に関する国際協力の円滑な推進を図るために必要な措置を講ずるものとする。

 (地方公共団体及び民間の団体に対する支援)
第二十条 国は、地方公共団体が実施する男女共同参画の促進に関する施策及び民間の団体が男女共同参画の促進に関して行う活動との連携を図りつつ、当該施策及び当該活動を支援するため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるように努めるものとする。


   第三章 男女共同参画審議会

 (男女共同参画審議会)
第二十一条 総理府に、男女共同参画審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会は、次に掲げる事務をつかさどる。

一 男女共同参画基本計画に関し、第十三条第三項に規定する事項を処理すること。

二 前号に掲げるもののほか、内閣総理大臣又は関係各大臣の諮問に応じ、男女共同参画の促進に関する基本的かつ総合的な政策及び重要事項を調査審議すること。

3 審議会は、前項に規定する事項に関し、内閣総理大臣又は関係各大臣に意見を述べることができる。

 (組織)
第二十二条 審議会は、委員二十五人以内で組織する。
2 男女のいずれか一方の委員の数は、委員の総数の十分の四未満であってはならない。

 (委員)
第二十三条 委員は、学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。

2 委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

3 委員は、再任されることができる。

4 委員は、非常勤とする。

 (会長)
第二十四条 審議会に、会長を置き、委員の互選によってこれを定める。

2 会長は、会務を総理し、審議会を代表する。

3 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。

 (資料の提出その他の協力)
第二十五条 審議会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。

2 審議会は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。

 (政令への委任)
第二十六条 この章に定めるもののほか、審議会に関し必要な事項は、政令で定める。


   附 則

 (施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。

 (男女共同参画審議会設置法の廃止)
第二条 男女共同参画審議会設置法(平成九年法律第七号)は、廃止する。

 (経過措置)
第三条 前条の規定による廃止前の男女共同参画審議会設置法(以下「旧審議会設置法」という。)第一条の規定により置かれた男女共同参画審議会は、第二十一条第一項の規定により置かれた審議会となり、同一性をもって存続するものとする。

2 この法律の施行の際現に旧審議会設置法第四条第一項の規定により任命された男女共同参画審議会の委員である者は、この法律の施行の日に、第二十三条第一項の規定により、審議会の委員として任命されたものとみなす。この場合において、その任命されたものとみなされる者の任期は、同条第二項の規定にかかわらず、同日における旧審議会設置法第四条第二項の規定により任命された男女共同参画審議会の委員としての任期の残任期間と同一の期間とする。

3 この法律の施行の際現に旧審議会設置法第五条第一項の規定により定められた男女共同参画審議会の会長である者又は同条第三項の規定により指名された委員である者は、それぞれ、この法律の施行の日に、第二十四条第一項の規定により審議会の会長として定められ、又は同条第三項の規定により審議会の会長の職務を代理する委員として指名されたものとみなす。

 (総理府設置法の一部改正)
第四条 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。

第四条第四号の次に次の一号を加える。

四の二 男女共同参画基本法(平成十一年法律第   号)第十三条第三項の規定に基づき、同条第一項に規定する男女共同参画基本計画の案を作成すること。



   理 由

 男女の人権が尊重され、かつ、男女が、社会的文化的に形成された性差にとらわれず、個人としてその個性と能力を発揮する機会が十分に保障される社会を形成するため、男女共同参画の促進について、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及び国民の責務を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定めることにより、男女共同参画の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

記事を印刷する
▲このページのトップへ
Copyright(C)2024 The Democratic Party of Japan. All Rights reserved.