民主党
民主党男女共同参画プロジェクトチーム
■男女共同参画基本法の必要性
○基本法は、国政に重要なウェートを占める分野について、制度・政策に関する基本方針を明示することにより、基本的政策の方向を示すことを主な内容とする法律。< BR> ○基本法は、憲法と個別法の間をつなぐものであり、具体的施策は、個別の法律、予算上の措置、行政上の実施要綱等により行われる。
○法形式としては、一般の法律と同じであって、他の法律の上位法ではないが、実質的にはその対象分野について他の法律に優位する性格をもち、他の法律がこれに誘導されるという関係。
○男女共同参画の実現を促進する取り組みを整合性をもって総合的、効率的に推進するためには、基本法の制定が必要。
■男女共同参画基本法の内容について
1 法律の名称について
○この法律の名称を「男女共同参画基本法」とする。
○その理由としては、男女共同参画は、人権尊重の理念を社会に深く根づかせ、真の男女平等の達成をめざすものである。そのためには、男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等な政治的、経済的、社会内及び文化的利益を享受することができ、かつ、ともに責任を担うべき社会が実現’されなければならない。その意味から、名称を「男女共同参画基本法」とすることが適当と考える。
○他方、目標とすべきは男女平等社会であり、女性差別撤廃条約の趣旨からみても「男女平等基本法」が適当、とする意見もあるが、「男女共同参画ビジョン」で提起されているように、男女共同参画は男女平等実現を前提としており、むしろあらゆる分野における女性の意思決定への参加、すなわち参画の重要一性を特に強調したものであると理解する。従って、名称は、「男女共同参画基本法」とすることとした。
2 前文について
○基本法には次の前文をおく。
○男女共同参画は、人権尊重の理念を社会に深く根づかせ、真の男女平等の達成をめざすものである。
そのためには、男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等な政治的、経済的、社会内及び文化的利益を享受することができ、かつ、ともに責任を担うべき社会が実現されなければならない。
○我が国において、男女平等は、法の下の平等として憲法にうたわれ、各種の法律や制度の中にも位置付けられているが、これを社会に深く根づかせ事実上の平等を達成するにはいまだ到っていない。依然として社会制度や慣行の中に性別によるかたよりにつながるものが多く残されているし、職場・地域・家庭における男女の参画には大きな格差がある。
○現在、我が国の経済・社会は、少子・高齢化、経済活動の成熟化と国際化、企業や国民生活の情報化等の加速的な展開により、大きな変革期を迎えている。これらの変化に対応し、新しい価値の創造による真の男女平等社会を築くためには、男女共同参画社会の実現は不可欠である。
○ここに、男女共同参画の基本理念を明らかにしてその方向を示し、国を始め社会全体として男女共同参画社会実現のための諸施策を総合的に推進していくため、この法律を制定する。
3 法律の目的について
○この法律は、男女共同参画社会の実現について、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、国民等の責務を明らかにするとともに、男女共同参画社会の実現に関する施策の基本となる事項を定めることにより、男女共同参画社会実現に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって男女の人権が尊重され、社会的・文化的に形成された性差(ジェンダー)に縛られず、各人の何一性に基づいて共同参画する社会を実現することを目的とする。
4 基本理念について
○この法律は、次の名号に掲げる基本理念にのっとり行われなければならない。
(1)《人権の確立》
人権は人類が享有する普遍的価値であり、男女共同参画社会の根底を成す基本的理念である。すべての施策は、男女の人権があらゆる場において平等に尊重され、公平に実現されることにより、個々の人生が可能な限り豊かに全うできることに結びつかなければならない。
女性に対する差別や暴力が根絶され、女性が社会のあらゆる分野で自立し、自らの存在に誇りをもつことェできると同時に、一人の人間として敬意が払われる社会の形成は、人権の確立なくしてありえない。
(2)《社会的・文化的に形成された性差(ジェンダー)からの解放》
男女共同参画社会を実現するためには、社会的・文化的に形成された性差(ジェンダー)に縛られず、各人の個性に基づいて共同参画する社会を実現しなければならない。
(3)《阻害する要因の除去》
男女共同参画社会を実現するためには、あらゆる分野における性差別をなくすことが必要。そのためには、直接的な差別はもとより、直接に性別を差別の基準としていなくても、結果として性別による偏りにつながっている、いわゆる「間接差別」についてもなくさなければならない。
また、社会制度・慣行の中には、男女の固定的な役割分担を前提とするものや明示的に性別による区別をしていなくても実質的に性に中立的に機能しないものがあることに留意し、性別による偏りにつながる制度・慣行については中立的に働くようにしなければならない。
なお、事実上の平等を促進することを目的とする積極的参画促進措置(ポジィティブアクション)については、これを差別と見なしてはならないものとする。
(4)《政策・方針決定過程への参画》
政策・方針決定過程への参画を実現するために、公的・私的分野を問わず計画的に女性の参画促進措置を講じなければならない。そのため、積極的参画促進措置(ポジィティブアクション)について積極的に活用することとする。
(5)《家族的責任をもつ男女への支援》
男女共同参画社会を実現するためには、育児や介護など家族的責任をもつ男女が差別を受けることなく、職業生活や家庭以外の分野における活動と家庭生活を両立することができるようすべきである。また、社会全体もその負担を担うことが必要であり、職業生活と家庭・地域生活の両立支援策の充実を図るべきである。
(6)《国際的に確立された理念の尊重と国際協力の積極的推進》
固定化された男女役割分担意識の変革等を理念とする女性差別撤廃条約等、男女共同参画に関わる国際条約を積極的かつ誠実に遵守するとともに、我が国が未だ批准していないILO条約等について、批准が促進されなければならない。
また、地球社会の「平等・開発・平和」の達成に向けて、女性と男性のパートナーシップを確立することが必要である。そのため、男女共同参画の視点に立った国際協力が推進されなければならない。
5 国、公共団体、個人の責務について
〔国の責務〕
○国は、基本理念にのっとり、男女共同参画社会実現に関して、積極的参画促進措置を含む基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
また、ジェンダーの視点から、既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し、又は廃止するため、立法を含むすべての適当な措置をとらなければならない。
○各種の施策や計画が女性と男性に与える影響を分析し、評価するいわゆる影響評価、政策評価についても、必要な措置を講ずることとする。
〔地方公共団体の責務〕
○地方公共団体は、基本理念にのっとり、男女共同参画社会実現に関して、国の施策に準じた施策及びその他その地域の特性に応じた男女共同参画社会の形成のための基本条例の制定等、独自に必要な措置を講ずる責務を有する。
〔国民の責務〕
○国民は、基本理念にのっとり、男女共同参画社会を実現するため、職場、家庭、学校、地域社会等あらゆる分野において、男女が相互に協力し、均等に利益を享受し、ともに責任を担うよう努めなければならない。
6 必要な法制上又は財政上の措置について
○国は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
○国は、地方公共団体が男女共同参画社会の実現に関する施策を策定し、及び実施するための費用について、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるように努めるものとする。
7 年次報告について
○政府は、毎年、国会に、男女共同参画の状況及び男女共同参画社会の実現に関する施策に関する報告を国会に提出しなければならない。
○政府は、毎年、前項の報告に係る男女共同参画の状況を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。
8 基本計画について
○政府は、基本理念に沿って男女共同参画の実現に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、男女共同参画実現に関する基本計画を定めなければならない。
○「基本計画」は、少なくとも次に掲げる事項について定めるものとする。
(1)性別による偏りのない社会システムの構築
(2)職場・地域・家庭・学校における男女共同参画の確立
(3)政策・方針決定過程への男女共同参画の促進
(4)性別にとらわれずに生きる権利を推進・擁護する取組の強化
(5)地球社会の「平等・開発・平和」への貢献等
○内閣総理大臣は、男女共同参画会議(男女共同参画審議会)の意見を聴いて、「基本計画」の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
○内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本計画を公表しなければならない。
○前2項の規定は、基本計画の変更について準用する。
○「基本計画」の案は、必ず国会に報告し、審議を経なければならないものとする。
○なお、都道府県も基本計画の策定を行なうべきであり、市町村においても基本計画の策定に努めなければならない。
9 意識の浸透について
○男女共同参画社会を実現するためには、人々の意識の中に長い時間をかけて形成されてきた性別に基づく固定的な役割分担意識が、大きな障害となっている。こうしたことを踏まえ、国及び地方公共団体は、男女共同参画社会について国民の理解が深まるよう、必要な措置を講じなければならない。
○男女の固定的な役割分担意識を是正し、人権意識に基づき、ジェンダーに敏感な男女平等観の形成を促進するため、学校、地域、家庭など社会のあらゆる分野において、男女平等教育の充実を図る。
10 推進体制について
○内閣府に、男女共同参画会議を置く。
○参画会議は、次に掲げる事務をつかさどる。
(1)男女共同参画に関する基本方針、総合的な計画等について審議すること
(2)男女共同参画に関して講じられる施策の実施状況を調査し、及び監視する
○参画会議は、前項の規定する事項に関し、政府施策に男女共同参画の視点が反映されるよう、関係大臣に必要な意見を述べることができる。
○なお、参画会議の委員については、男女いずれか一方の委員の数が、委員の総数の 10分の4未満であってはならないものとする。
○経過措置として、男女共同参画会議が設置に到る間、男女共同参画審議会がその任にあたることとする。
11 オンブズパースン設置等について
○国は、男女共同参画社会の実現に係る行政に関する苦情の処理及び基本理念に反する人権侵害の救済のため、必要な措置を講じなければならない。
○そのため、新しい仕組みとしてオンブズパースンを置くこととする。
○また、男女平等を重点的に取扱う地域担当者を任命し、オンブズパースンと緊密に連携を図ることとする。
○なお、国の行政機関から委嘱を受けて苦情相談・救済活動にたずさわる行政相談員、人権擁護委員等については、女性問題等に関して高い識見を有する者が任命されるようにする。
12 国際機関、地方公共団体、民間団体との連携について
○国は、男女共同参画に関連する国際的な取組が積極的に進められるよう、国際機関や外国政府との情報の交換、その他の適切な措置を講ずるように努めなければならない。
○また、男女共同参画社会の実現を促進するために、地方公共団体が行なう活動重要性にかんがみ、その促進を図るため、情報の提供その他の適切な措置を講ずるよう努めなければならない。
○男女共同参画社会の実現に向けて、自主的な活動を展開する民間団体、NGOの果たす役割は大きい。国、地方公共団体は、基本計画の策定や実施状況の監視等について、密接な連携を図るよう努めなければならない。
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