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2002/06/11
交通基本法案
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目次
 第一章 総則(第一条―第十三条)
 第二章 交通基本計画(第十四条)
 第三章 交通に関する基本的施策
  第一節 国の施策(第十五条―第二十二条)
  第二節 地方公共団体の施策(第二十三条)
 附則

第一章 総則
(目的)
第一条
 この法律は、交通が、国民の諸活動の基礎であるとともに、環境に多大な影響を及ぼすおそれがあることにかんがみ、移動に関する権利を明確にし、及び交通についての基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の交通についての基本理念に係る責務を明らかにするとともに、交通に関する施策の基本となる事項を定めることにより、交通に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民の健康で文化的な生活の確保及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

(移動に関する権利)
第二条
 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な移動を保障される権利を有する。


 何人も、公共の福祉に反しない限り、移動の自由を有する。

(安全で円滑で快適な交通施設等の利用)
第三条
 交通施設の整備及び輸送サービスの提供(交通施設の利用に関する情報の提供を含む。以下同じ。)は、何人も安全で円滑で快適に交通施設及び輸送サービスを利用することができるようにすることを旨として、交通施設及び輸送サービスを利用する者の立場に立って、行われなければならない。

(交通体系の総合的整備)
第四条
 交通体系の整備は、国土の総合的な利用、開発及び保全に関する国の方針に即し、交通に係る需要の動向、交通施設に関する費用効果分析及び収支の見通しその他交通に係る社会的経済的条件を考慮して、徒歩、自転車、自動車、鉄道、船舶、航空機等による交通が、それぞれの特性に応じて適切な役割を分担し、かつ、有機的かつ効率的に連携することを旨として、総合的に行われなければならない。

(交通による環境への負荷の低減)
第五条
 交通による環境への負荷については、交通が環境に多大な影響を及ぼすおそれがあることにかんがみ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されることを旨として、できる限りその低減が図られなければならない。

(大規模災害時における交通の確保)
第六条
 交通施設の整備は、大規模な災害が発生した場合に必要な交通が確保されるようにすることを旨として、行われなければならない。

(国際交通機関等の整備)
第七条
 国際交通機関及びこれに関連する施設の整備は、我が国経済の国際競争力の維持及び強化が図られることを旨として、行われなければならない。

(国の責務)
第八条
 国は、第三条から前条までに定める交通についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、交通に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。


 国は、交通に関する施策を策定し、及び実施するに当たっては、国民の参加を積極的に求めなければならない。

(地方公共団体の責務)
第九条
 地方公共団体は、基本理念にのっとり、交通に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。


 地方公共団体は、交通に関する施策を策定し、及び実施するに当たっては、地域住民の参加を積極的に求めなければならない。

(事業者の責務)
第十条
 運輸事業その他交通に関する事業を行う者は、基本理念にのっとり、交通の安全性、円滑性及び快適性の向上、交通による環境への負荷の低減等に努めなければならない。


 前項に定めるもののほか、事業者は、国又は地方公共団体が実施する交通に関する施策に協力する等基本理念の実現に寄与するように努めなければならない。

(国民の責務)
第十一条
 国民は、国又は地方公共団体が実施する交通に関する施策に協力する等基本理念の実現に寄与するように努めなければならない。

(法制上の措置等)
第十二条
 政府は、交通に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

(年次報告)
第十三条
 政府は、毎年、国会に、交通の動向及び政府が交通に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。


 政府は、毎年、前項の報告に係る交通の動向を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。

第二章 交通基本計画
第十四条
 政府は、交通に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、交通基本計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。


 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 交通に関する施策についての基本的な方針
二 交通に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策
三 前二号に掲げるもののほか、交通に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項


 基本計画は、国土の総合的な利用、開発及び保全に関する国の計画との調和が保たれたものでなければならない。


 国土交通大臣及び内閣総理大臣は、あらかじめ広く国民の意見を聴いて基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。


 政府は、前項の規定により閣議の決定をしたときは、基本計画を国会に提出して、その承認を受けなければならない。


 国土交通大臣及び内閣総理大臣は、前項の規定による国会の承認があったときは、遅滞なく、基本計画を公表しなければならない。


 政府は、交通をめぐる情勢の変化を勘案し、及び交通に関する施策の効果に関する評価を踏まえ、おおむね五年ごとに、基本計画を変更するものとする。


 第四項から第六項までの規定は、基本計画の変更について準用する。

第三章 交通に関する基本的施策
第一節 国の施策

(交通条件に恵まれない地域における交通施設の整備の促進等)
第十五条
 国は、交通条件に恵まれない地域の住民が日常生活及び社会生活を営むに当たり安全で円滑で快適に移動することができるようにするため、当該地域における交通施設の整備の促進及び輸送サービスの提供の確保その他必要な措置を講ずるものとする。

(移動制約者に配慮された交通施設の整備の促進等)
第十六条
 国は、高齢者、障害者等移動に関し制約を受ける者(以下「移動制約者」という。)が日常生活及び社会生活を営むに当たり安全で円滑で快適に移動することができるようにするため、移動制約者の移動に係る身体の負担の軽減に配慮された交通施設の整備及び輸送サービスの提供(既存の公共交通機関による移動が著しく困難な移動制約者に対する輸送サービスの提供を含む。)の促進その他必要な措置を講ずるものとする。

(都市部における交通の混雑の緩和等)
第十七条
 国は、都市部における交通の混雑を緩和し、交通の安全性、円滑性及び快適性の向上並びに交通による環境への負荷の低減を図るため、都市鉄道の輸送力の増強及び踏切道の立体交差化の促進、都市部における自動車交通量を抑制するための措置その他必要な措置を講ずるものとする。

(交通に係る投資の重点化等)
第十八条
 国は、交通に係る投資の重点化を図り、総合的な交通体系の整備を効果的かつ効率的に行うため、真に必要性がある交通施設の重点的な整備の促進その他必要な措置を講ずるものとする。

(有機的かつ効率的な交通網の形成等)
第十九条
 国は、有機的かつ効率的な交通網を形成し、貨物流通の効率化及び円滑化並びに旅客の移動の利便性の向上を図るため、幹線道路、鉄道、航路及び航空路の間における連携並びに公共交通機関の間における連携の強化の促進その他必要な措置を講ずるものとする。

(交通による環境の保全上の支障の防止)
第二十条
 国は、交通による環境の保全上の支障を防止するため、環境への負荷の低減に資する交通施設(移動施設を含む。)の整備の推進、環境の保全上の支障を防止するための交通規制その他必要な措置を講ずるものとする。

(災害発生時における交通の支障の防止)
第二十一条
 国は、災害が発生した場合において交通に支障が生じることを防止するため、交通施設の災害に対する安全性の向上並びに住民の避難及び緊急輸送のため必要な経路の確保の促進その他必要な措置を講ずるものとする。

(外航海運等の中核的拠点となるべき施設の整備の促進等)
第二十二条
 国は、外航海運及び国際航空における国際競争力の強化を図るため、外航海運及び国際航空の中核的拠点となるべき施設の整備の促進その他必要な措置を講ずるものとする。

第二節 地方公共団体の施策

第二十三条
地方公共団体は、前節に定める国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた交通に関し必要な施策を、これらの総合的かつ計画的な推進を図りつつ実施するものとする。

附 則

この法律は、公布の日から施行する。



理 由

 交通が、国民の諸活動の基礎であるとともに、環境に多大な影響を及ぼすおそれがあることにかんがみ、交通に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、移動に関する権利を明確にし、及び交通についての基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の交通についての基本理念に係る責務を明らかにするとともに、交通に関する施策の基本となる事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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