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2001/12/04
交通基本法案骨子(案)
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民主党国土交通部門

第一 目的

この法律は、交通が、国民の諸活動の基礎をなす重要な要素であるとともに、環境に影響を及ぼすものであることにかんがみ、移動に関する権利について規定し、交通についての基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、運輸事業者その他交通と関係のある事業を行う者及び国民の交通についての基本理念に係る責務を明らかにするとともに、交通に関する施策の基本となる事項を定めることにより、交通に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図り、もって国民の福祉の向上並びに国土及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とすること。


第二 移動に関する権利

 一
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活の構成要素としての移動を保障される権利を有するものとすること。
 二
何人も、公共の福祉に反しない限り、移動の自由を有するものとすること。


第三 基本理念

 一
交通体系は、第二の権利を保障するものでなければならず、かつ、その整備は、国土の総合的な利用、開発及び保全に関する国の方針にのっとり、交通に係る需要の動向、交通施設に関する費用効果分析及び収支の見通しその他交通に係る経済的条件を考慮して、徒歩、自動車、鉄道、船舶、航空機等による交通が、それぞれの交通の特性に応じて適切な役割を分担し、かつ、相互に有機的かつ効率的に連結するように、総合的に行われなければならないものとすること。この場合において、公共交通機関の維持及び強化については、特に配意されなければならないものとすること。
 二
交通については、交通施設の整備及び車両等の使用が環境に大きな影響を及ぼすおそれのある行為であることにかんがみ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されることを旨として、できる限り交通による環境への負荷の低減が図られなければならないものとすること。
 三
交通施設の整備は、交通施設を利用する者の視点に立って、交通の安全性、利便性及び快適性の確保が図られることを旨として、行われなければならないものとすること。
 四
交通体系及び交通施設の整備は、大規模な災害が発生した場合に必要な交通が確保されるようにすることを旨として、行われなければならないものとすること。
 五
国際交通機関及びこれに関連する施設の整備は、国際的協調の下に、我が国経済の国際競争力の維持及び強化が図られることを旨として、行われなければならないものとすること。


第四 国等の責務

 一
国は、第三に定める交通についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、交通に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有するものとすること。
 二
地方公共団体は、基本理念にのっとり、交通に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有するものとすること。
 三
運輸事業者その他交通と関係のある事業を行う者は、その事業活動を行うに当たり、基本理念の実現に主体的に取り組むよう努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する交通に関する施策に協力する責務を有するものとすること。
 四
国民は、基本理念にのっとり、交通による環境への負荷の低減、交通の安全性及び快適性の向上等に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する交通に関する施策に協力する責務を有するものとすること。


第五 法制上の措置等

政府は、交通に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならないものとすること。


第六 年次報告

政府は、毎年、国会に、交通に関して講じた施策(交通の安全に関するものを除く。)の概況に関する報告を提出しなければならないものとすること。


第七 交通基本計画

 一
政府は、交通に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、交通基本計画を定めなければならないものとすること。
 二
交通基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとすること。
(1) 交通に関する施策(交通の安全に関するものを除く。(4)において同じ。)についての基本的な方針
(2) 交通体系の整備の目標
(3) 交通に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策(交通の安全に関するものを除く。)
(4) (1)から(3)までに掲げるもののほか、交通に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
 三
交通基本計画は、国土の総合的な利用、開発及び保全に関する国の計画並びに交通安全基本計画との調和が保たれたものでなければならないものとすること。
 四
国土交通大臣は、政令で定めるところにより、あらかじめ広く国民の意見を聴いて、交通基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならないものとすること。
 五
政府は、交通基本計画を決定したときは、これを国会に提出して、その承認を受けなければならないものとすること。
 六
国土交通大臣は、前項の規定による国会の承認があったときは、遅滞なく、交通基本計画を公表しなければならないものとすること。
 七
政府は、交通をめぐる情勢の変化を勘案し、及び交通に関する施策の効果に関する評価を踏まえ、おおむね五年ごとに、交通基本計画を変更するものとすること。
 八
四から六までの規定は、交通基本計画の変更について準用するものとすること。
 九
国又は地方公共団体が他の法令の規定に基づいて作成する交通に関連する計画は、交通基本計画と矛盾し、又は抵触するものであってはならないものとすること。


第八 交通に関する基本的施策

 一 国の施策
(1) 国は、交通条件に恵まれない地域について、当該地域の住民が日常生活及び社会生活を営むに当たり円滑かつ安全に移動することができるようにするため、適切な交通施設の整備を推進し、及び適正な輸送サービスの提供を確保するよう、必要な措置を講ずるものとすること。
(2) 国は、移動に関し制約を受ける者(以下「移動制約者」という。)が日常生活及び社会生活を営むに当たり円滑かつ安全に移動することができるようにするため、移動制約者の移動に係る身体の負担の軽減に配慮された交通施設の整備を促進するよう、必要な措置を講ずるものとすること。
(3) 国は、総合的な交通体系の整備を効果的かつ効率的に行うため、真に整備の必要性が高い交通施設について、投資の重点化を図り、地方公共団体、運輸事業者その他交通と関係のある事業を行う者による整備を促進するよう、必要な措置を講ずるものとすること。
(4) 国は、有機的かつ効率的な交通網を形成するため、幹線道路、鉄道、航路及び航空路相互間の連結の強化並びに複数の公共交通機関を連続して利用する旅客の移動の利便性の向上を図るために必要な施設の整備を促進するよう、必要な措置を講ずるものとすること。
(5) 国は、交通による環境の保全上の支障を防止するため、環境への負荷の低減に資する交通施設及び移動施設の整備の推進、環境の保全上の支障を防止するための交通規制その他必要な措置を講ずるものとすること。
(6) 国は、都市部における交通の混雑を緩和することにより、交通による環境への負荷の低減並びに交通の安全性及び快適性の向上を図るため、都市鉄道の輸送力の増強及び踏切道の改良の促進、都市部における自動車交通量の抑制を図るための措置その他必要な措置を講ずるものとすること。
(7) 国は、災害が発生した場合において交通に支障が生じることを防止するため、交通施設の災害に対する安全性の向上の促進、住民の避難及び緊急輸送のため必要な経路の確保の推進その他必要な措置を講ずるものとすること。
(8) 国は、国際海上交通及び国際航空の中核的拠点となるべき施設の整備のため必要な措置を講ずるものとすること。

 二 地方公共団体の施策
地方公共団体は、一に定める国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた交通に関し必要な施策を、これらの総合的かつ計画的な推進を図りつつ実施するものとすること。この場合において、地方公共団体は、既存の公共交通機関の利用による円滑かつ安全な移動が著しく困難な移動制約者の移動の手段を確保するよう、必要な措置を講ずるものとすること。


第九 その他

交通の安全に関する基本的な事項については、この法律に定めるもののほか、交通安全対策基本法の定めるところによるものとすること。

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