(目的)
第一条
この法律は、地方税財源及び地方公共団体間の財政の調整に関する制度の抜本的な見直しを行うまでの間の措置として、公共事業に係る地方公共団体に対する個別の補助金等に代えて、地方公共団体が公共事業の実施のために裁量的に使用することができる財源として公共事業一括交付金を交付することとするとともに、その公共事業に関し情報公開の促進及び民意の反映を図り、もって、公共事業に関し地方分権を推進することを目的とする。
(定義)
第二条
この法律において「公共事業」とは、公共事業基本法(平成十三年法律第 号)第二条各号(第十三号を除く。)に掲げる事業であって、地方公共団体その他政令で定める者が実施するものをいう。
2
この法律において「地方公共団体」とは、都道府県及び市町村(特別区を含む。)をいう。
3
この法律において「補助金等」とは、財政構造改革の推進に関する特別措置法(平成九年法律第百九号)第三十四条に規定する補助金等をいう。
(一括交付金の交付等)
第三条
国は、毎年度、この法律で定めるところにより、地方公共団体に対して、公共事業の実施のために裁量的に使用することができる財源として、公共事業一括交付金(以下「一括交付金」という。)を交付する。
2
国は、一括交付金の交付に当たっては、地方自治の本旨を尊重し、この法律に定めるもののほか、条件をつけ、又はその使途を制限してはならない。
3
地方公共団体は、一括交付金が国民から徴収された税金その他の貴重な財源で賄われるものであることに留意し、一括交付金を公正かつ効率的に使用しなければならない。
(一括交付金の額)
第四条
平成十四年度において各地方公共団体に対して交付すべき一括交付金の額は、平成八年度から平成十二年度までの間に当該地方公共団体に対して交付した補助金等のうち公共事業に係るものとして政令で定める補助金等の額の合計額の一年当たりの平均額とする。
2
平成十五年度以降の各年度において各地方公共団体に対して交付すべき一括交付金の額は、前年度に当該地方公共団体に対して交付した一括交付金の額に百分の九十四を乗じた額とする。
(一括交付金の交付時期)
第五条
一括交付金は、毎年度、四月、六月、九月及び十一月に、それぞれ、当該年度において当該地方公共団体に対して交付すべき一括交付金の額の四分の一に相当する額を交付する。
2
当該年度の国の予算が成立しないこと等の事由により、前項の規定により難い場合における一括交付金の交付時期及び交付時期ごとに交付すべき額については、国の暫定予算の額及びその成立の状況等を参酌して、総務省令で定めるところにより、特例を設けることができる。
(廃置分合又は境界変更があった場合の特例)
第六条
地方公共団体の廃置分合又は境界変更があった場合において関係地方公共団体に対して交付する一括交付金の額の算定については、政令で定める。
(実施計画)
第七条
地方公共団体の長は、毎年度、当該年度の翌年度に交付を受ける一括交付金に係る公共事業の実施に関する計画(以下「実施計画」という。)を策定するものとする。
2
地方公共団体の長は、実施計画の策定に当たり、その案を公表して広く住民の意見を聴き、これを考慮してその策定を行うものとする。
3
地方公共団体の長は、実施計画について、当該地方公共団体の議会の承認を受けなければならない。
4
地方公共団体の長は、前項の規定による議会の承認を受けた実施計画を、速やかに、総務大臣に送付しなければならない。
(報告書)
第八条
地方公共団体の長は、一括交付金の交付を受けた年度の翌年度の八月三十一日までに、当該一括交付金に係る公共事業の実施の状況に関する報告書(以下「報告書」という。)を作成しなければならない。
2
地方公共団体の長は、報告書を公表して広く住民の意見を聴かなければならない。
3
地方公共団体の長は、報告書について、当該地方公共団体の議会の承認を受けなければならない。
4
地方公共団体の長は、前項の規定による議会の承認を受けた報告書に第二項の規定により聴取した住民の意見の概要を記載した書類を添えて、速やかに、これを総務大臣に送付しなければならない。
(返還の請求)
第九条
総務大臣は、地方公共団体が一括交付金を公共事業の実施以外の用途に使用した疑いがあると認めるときは、当該地方公共団体に対し、説明を求めることができる。
2
総務大臣は、地方公共団体が一括交付金を公共事業の実施以外の用途に使用した場合には、当該地方公共団体に対し、その全部又は一部の返還の請求をすることができる。
3
総務大臣は、前項の規定による請求をする場合には、あらかじめ、当該地方公共団体の意見を聴かなければならない。
4
総務大臣は、第二項の規定による請求をしたときは、その旨を公表しなければならない。
5
第二項の規定による請求は、総務大臣が前条第四項の規定により報告書を受領したときから三年を経過した後は、することができない。
(命令への委任)
第十条
この法律に定めるもののほか、この法律を実施するために必要な事項は、命令で定める。
附 則
(施行期日)
第一条
この法律は、平成十三年十月一日から施行し、平成十四年度の一括交付金から適用する。
(地方税財源及び地方公共団体間の財政の調整に関する制度の抜本的見直し)
第二条
国は、この法律の施行後速やかに、地方公共団体が事務及び事業を自主的かつ自立的に執行できるよう国と地方公共団体との役割分担に応じた地方税財源の充実確保を図るとともに、地方公共団体間の財政の調整に関する制度を主として財源の均衡化を図るという本来の目的に合致したものとするための措置をとるものとする。
(関係法律の整理等)
第三条
この法律の施行に伴い必要な関係法律の整理その他必要な事項は、別に法律で定める。
理 由
公共事業に関し地方分権を推進するため、地方税財源及び地方公共団体間の財政の調整に関する制度の抜本的な見直しを行うまでの間の措置として、公共事業に係る地方公共団体に対する個別の補助金等に代えて、地方公共団体が公共事業の実施のために裁量的に使用することができる財源として、公共事業一括交付金を交付することとするとともに、その公共事業に関し情報公開の促進及び民意の反映を図るための措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
本案施行に要する経費
本案施行に要する経費としては、平成十四年度約六兆七千億円の見込みである。
|