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2000/03/14
「川辺川ダム事業の継続には反対」川辺川ダム事業に関する民主党方針
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民主党ネクストキャビネット
社会資本整備担当大臣 前原誠司

 建設省直轄事業「川辺川ダム建設事業」問題については、費用対効果の観点や自然環境への影響、流域漁業者に与える影響などが強く懸念されているところである。民主党ネクストキャビネットは、前原誠司社会資本担当NC大臣を団長とする視察団を現地に派遣し、この問題について議論を重ねてきたが、3月7日の政務役員会において、事業の継続に反対する旨を正式に決定したところである。以下にその概要を示す。


川辺川ダム事業に関する民主党方針

 川辺川ダムは4つの目的(洪水調整、流水の正常な機能維持、潅漑、発電)からなる多目的ダムとされている。しかし、これらの目的は下記の理由からダムを必要とせず、他の手法により対処可能と考える。

(1) 「洪水調整」

 建設省の事業計画では、計画規模1/80の降雨が2日間継続した場合を想定し、人吉地点における基本高ピーク流量7,000m3/secを、川辺川ダムと既存の市房ダムにより4,000m3/secに流量カットするとしている。
 しかし大惨事を招いた昭和40年7月災害の降雨データを同計画に当てはめた場合、川辺川ダムによって洪水調整が可能になる時間はわずか12時間にすぎず、さらに降雨ピーク時前後3時間の降水量を正確に予測することで適切な放流操作を行わなければ、ダム貯水容量の超過による過剰放流を招く危険性が高いことが明らかになった。
 現在の技術水準では降水量のピークについて正確な予測を行うことは困難であることから、複数ダムの統合運用に関する技術的問題とあわせ、川辺川ダムによる球磨川水系の洪水調整は実効性の観点から著しく疑問であるといわざるを得ない。
 人吉周辺の河床を一定程度掘削し、さらに球磨川上流に遊水地を確保することで、人吉地点における洪水流下能力を高めることが可能であり、さらに上流域の森林保全などの対策を講じることにより、ダムに頼らない治水対策は可能であると考えられる。

(2) 「流水の正常な機能の維持」

 建設省の説明によると、この「機能維持」の目的は観光の目玉である球磨川舟下りの支障改善や水質の保全、アユなどの動植物の保護等とされている。しかし、舟下りのために数千億円の国費を投じ、自然の摂理である河川の水量を調節するという発想自体、到底国民の賛同を得られるものではない。同様に、ダム建設が水質保全や動植物保護に役立つという考えも理解に苦しむ。そもそも「流水の正常な機能」は自然の川の流れにこそ求められるべきであり、それをダムに求めること自体、本末転倒と言わざるを得ない。

(3) 「潅漑」

 「川辺川土地改良事業」として球磨川の北側に安定的に農業用水を供給することを目的としているが、減反政策により対象地域の水田が減少している、用排水路の整備が進んでいる等の理由から、巨大ダムを作ってまで水を必要としているとは思えない。また、当該地域の農家の多くが同事業計画に反対を表明し、訴訟をおこしている。同地域の土地改良事業については、司法の判断を待った上で、農業用水を必要とする地域に対しては川辺川ダムを前提としない潅漑計画を再検討すべきである。

(4) 「発電」

 川辺川ダムは16,500kWの発電を計画しているが、現在、川辺川にある4つの発電用ダムの発電合計量は18,900kWであり計画よりも大きい。よって発電はダム計画の合理的目的となり得ない。


 この他、同地域におけるダム計画は希少猛禽類のクマタカをはじめ多くの自然生態系に深刻な影響を与えることが想像される。
 以上の理由から、民主党は川辺川ダム事業の継続には反対の立場をとる。

 しかし、同事業の中止が関係自治体等に与える影響はけっして小さくない。特に、ダム計画受け入れという苦渋の選択の代償としてインフラ等の整備を進めてきた当該地域にとって、事業中止による影響は深刻であり、国策により長年、翻弄され続けた地域住民に対しては国が責任をもって十分な事後対策を行なうべきと考える。そのため、事業中止後もダム関連事業として進められてきた道路等のインフラ整備を継続するとともに、水没予定地住民の代替地への移転や代替農地の取得など、個別世帯の生活設計に関わる部分も含めた十分な補償を行なうべきである。

 民主党は、国家的プロジェクトの中止に伴うこのような特例措置に関して早急に検討し、立法措置を含めた政策のとりまとめを行なう考えである。

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