トップ > ニュース
ニュース
ニュース
2000/03/10
高齢者・障害者等の移動の自由を確保するための法律案 趣旨説明
記事を印刷する

衆議院本会議

高齢者・障害者等の移動の自由を確保するための法律案 趣旨説明

民主党 前原誠司

 高齢者・障害者等の移動の自由を確保するための法律案につきまして、その趣旨をご説明いたします。

 高齢者や障害者等移動について制約を持っている人々は、長い間公共交通機関や道路の利用について、大変な制限を受けてきました。1981年からの国連・国際障害者の10年は、ノーマライゼーションの理念を広め、バリアフリー社会を創ろうという目標を示した時代でしたが、わが国の取組みは十分なものではありませんでした。交通の分野でも、すべての人が、いつでも、安全に利用できる公共交通機関及び道路等の整備があらゆる人たちの社会参加の前提である、との訴えは、法的な裏付けもないまま今日に至っております。

 スウェーデンでは1979年に交通事業者に対し障害者の移動可能性を確保する義務を課す法律が、また、フランスでは1982年に障害者を含むすべての市民に対し交通権を認め、移動制約者についてはその実現のため特別な措置をとるという内容の法律ができており、1990年、アメリカにおけるADA法、そして1995年、イギリスの障害差別法など、欧米に比べわが国のバリアフリーへの取組みの後れは明白であります。政府案も今までなかった法制化の試みとしては評価できるものの、ノーマライゼーションの理念が明確でなく、主に都市部での施設整備に偏した立法措置になっております。

 ここに私たちが提出した法律案は、高齢者・障害者等、移動制約者の自立とあらゆる分野の活動への参加を促進するため、移動制約者が円滑かつ安全に公共交通機関等を利用することができる施策を定めることにより、本来誰もが持っている移動の自由を最大限確保することを目的とし、出発地から目的地までの間を、他の人々と同等に利用できるようにすることを明確に謳ってあります。自立と社会参加の拡大は高齢者・障害者等、移動制約者により多くの生きがいを与えるのはもちろん、わが国の経済活動全般に好影響を与えるものであることも申し添えておきたいと思います。

 次にこの法律案の主要点について、特に政府案との相違に重点をおいて御説明申し上げます。

 第一は、基本指針の作成についてであります。主務大臣は、移動の自由を確保するための施策推進のための基本指針原案を、移動制約者等の意見を聴いたうえで作成し、国民から意見を聴き、国会承認を受けるものとしております。

 第二は、公共交通事業者、道路管理者等が講ずべき措置についてであります。主務大臣は移動制約者等の意見を聴きながら整備基準を定め、交通事業者、道路管理者、都道府県公安委員会等は基本指針等に基づいて整備計画を定め、それを実施するものとしております。駅などの施設につきまして新設、既設の区別は設けず、また、政府案で除外しているタクシー事業者も含んでおります。即ち、出発地から目的地までの例外のないバリアフリー化を目指すものであります。また、施設の大規模な改善については必ず移動制約者等の意見を聴くなど、当事者参加を明示しております。

 第三は、市町村の措置についてであります。ナショナルミニマムとして国が責任を負う部分と、上乗せ、横出しとして市町村が講じる措置を明確に区別しております。地域の実情に応じ、市町村整備指針を定め、公共交通事業者はそれに即して地域整備計画を作成し、認定を受けることとしております。さらに、市町村は、公共交通機関では対応できないような制約を持っている人、あるいは公共交通機関がカバーしきれない地域の人々に別途のサービス、いわゆるスペシャル・トランスポート・サービスを提供する旨を定めております。交通のバリアフリーをくまなく実現するためには、福祉タクシー、ボランティアによる移送サービスなどによるドア・ツウ・ドアの移動手段について、どこの市町村でも対応できるような計画的施策が必須であります。
第四は、情報の提供についてであります。移動制約者が安全かつ円滑に移動できるようにするため、理解しやすい方法により、必要な情報を提供するように努めるものとし、バリアフリー情報の提供と情報のバリアフリー化を推進するよう規定しております。

 第五は、財政上の措置についてであります。交通のバリアフリーという政策課題の重要性に鑑み、国が公共交通事業者に対し、バリアフリー施設の整備に要する費用の四分の三を補助するよう規定しております。

 第六は、国会への報告についてであります。内閣は毎年国会に対し、移動の自由を確保するための施策を報告しなければならないとしております。
 以上がこの法律案の趣旨でございます。
 
 民主党は、この法案を作成するにあたって、各地でのシンポジウムやパブリックコメントを実施し、数多くの意見をいただいた上で作成させていただきました。高齢者や障害者の思いをできる限り実現するために、ぜひとも真剣なご議論をいただけますようお願いいたしまして、私の趣旨説明とさせていただきます。

記事を印刷する
▲このページのトップへ
Copyright(C)2024 The Democratic Party of Japan. All Rights reserved.