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2000/02/10
吉野川第十堰改築(可動堰)事業に対する民主党の考え方
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民主党ネクスト・キャビネット大臣社会資本整備担当 前原 誠司

1. 吉野川第十堰を巡る現状

 民主党は、本年1月10日に鳩山代表が吉野川第十堰を視察し、可動堰計画に反対すると発表した。また、1月19日にも、ネクスト・キャビネット社会資本整備部門としての視察を行ったところである。

 吉野川第十堰改築(可動堰)計画については、推進する建設省・徳島県と反対する市民との間で、これまでも数多くの議論がなされてきたが、話し合いは平行線に終わっている。しかし、市民の声は徳島市議会を動かし、住民投票にまで発展し、公共事業の見直しのシンボル的存在となっている。1月23日には、徳島市で可動堰計画の是非を問う住民投票がなされ、可動堰計画反対票が過半数を圧倒的に上回り、徳島市民の意思が明確に示された。

 民主党としては、従来から本可動堰計画について継続的な検討を行ってきたが、住民投票の結果を受け、改めて事業の妥当性について検討を加えたものである。


2. 可動堰計画に対する評価

(1) 可動堰計画の根拠と評価

 建設省が主張する改築・可動堰化の主な根拠は、

1. 固定堰によるせき上げの発生により、洪水が発生する
2. 斜め堰により深掘れが起こる
3. 可動堰がもっとも費用が安い

ということである。しかし、どの点についても、十分な説明責任を果たしているとは思われない。

 1.については、建設省の計算では、過去の洪水をシミュレートした際に最大1mの誤差が見られることから、42cmの計画高水位の超過は誤差の範囲内とも考えられ、決定的な根拠となり得ない。また、建設省が昭和51年度に委託した吉野川河床変動調査外1件報告書においても、「現状の状態で18000立方メートル/秒の流量が流下したときでも計画高水位を超えることは認められない」とされており、計算結果の信頼性は低いと言わざるを得ない。

 2.については、過去の報道資料などを遡っても、昭和40年代以前に第十堰の下流で深掘れが起こった事実は見あたらず、深掘れは砂利採取が原因であることは明白である。

3.については、建設省が昭和56年に建設技術研究所に委託した調査結果では、可動堰・引堤・堤防補強を比較した場合、可動堰建設が最も費用がかかるとされており、費用対効果が最も優れた方策という主張についても非常に疑わしい。

(2) 環境への影響

  環境への影響について、建設省は生物への著しい影響はないと主張しているが、その根拠となった調査結果は、非常に目立つ種の生息を見逃すなどずさんであり、十分に信用できるものとはなっていない。

  また、現在の第十堰よりも下流に可動堰を建設した場合には、水の滞留時間は現在の10倍(3日→30日)と大幅に増加する。これは長良川河口堰の2倍以上であり、富栄養化による水質悪化に伴う環境への悪影響が避けられないことは明らかである。

(3) 総合的検討の欠如

   現在の治水対策は、縦割り行政の結果、河川改修やダム建設のみを視野に計画されている。したがって、森林保全やまちづくりなどの視点は入っておらず、計画の妥当性の検討としては不十分である。


3. 新河川法に基づく再検討の必要性

 現在、新河川法に基づき、各地の河川で河川整備基本方針・基本計画策定手続きが進行中である。その中で、新たな知見に基づき、治水対策のあり方も決定されることとなる。したがって、新河川法の手続に基づき、最新のデータを用いて、堰の形状など計算の前提条件についても過去の洪水実績に最もよく合致する数値を選択するために情報を広く市民にも公開した上で、計画を検証すべきである。

4. 結語

  以上のように、現在の吉野川第十堰改築(可動堰)計画については、計画の根拠が乏しいばかりか、環境への影響も避けられないものと言わざるを得ない。さらに、新河川法における新たな河川整備基本方針の策定が進められている時期に、根拠の疑わしい計画を強行に進めるべきではない。したがって、可動堰計画を白紙撤回し、住民参加の透明な手続きの下、吉野川第十堰のあり方について再度検討し直すべきである。
 民主党としては、現第十堰は先人の知恵により治水・利水・環境面が見事に調和したものであるとの認識から、現第十堰を若干低くし、自然石の堰に改築するとともに、周辺堤防を補強することで対応することが、現段階では最良の選択であると考える。

以 上

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