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1999/11/25
高齢者、障害者等の移動の自由を確保するための法律案(仮称)骨子案
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第一 総則

 一 目的
 この法律は、高齢者、障害者等の移動制約者の自立及び社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進するため、移動制約者が円滑かつ安全に公共交通機関等を利用することができるための施策を定めること等により、移動制約者の移動の自由を確保し、もって公共の福祉の増進に資することを目的とするものとすること。

 二 定義
 この法律において「移動制約者」とは、主として身体的理由により移動に関し制約を受ける者をいうものとすること。

 三 基本理念
 移動制約者の移動の自由の確保を目的として国及び地方公共団体が講ずる施策は、移動制約者の自立及び社会を構成する一員としての社会、経済、文化その他あらる分野の活動への参加の実現を旨として、移動制約者がその他の者と同等に公共交通機関等を利用することができるよう総合的かつ計画的に推進されるものとすること。

 四 国の責務
 国は、移動制約者の移動の自由を確保するための施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有するものとすること。>

 五 地方公共団体の責務
 地方公共団体は、移動制約者の移動の自由を確保するための施策に関し、国と協力しつつ、当該地域の社会的、経済的状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有するものとすること。

 六 国民の責務
 何人も、移動制約者の移動の自由を確保するための施策に関して理解を深めるとともに、移動制約者の移動の自由を確保するための施策に協力しなければならないものとすること。


第二 公共交通機関

 一 公共交通機関の事業者の義務

 鉄道、路線バスその他の公共交通機関に係る事業者であって政令で定めるもの(以下「交通事業者」という。)は、移動制約者が円滑かつ安全に当該公共交通機関を利用できるようにするため、四1の公共交通機関改善計画に従い当該公共交通機関の施設(これに連絡する通路等の施設を含む。以下二を除き同じ。)及び設備(車両、船舶及び航空機を含む。以下二及び第三の二4を除き同じ。)の整備等について必要な措置を講じなければならないものとすること。


 二 連絡施設等の所有者等の協力義務

 公共交通機関の利用に際し使用される当該公共交通機関の施設に連絡する通路その他の政令で定める施設及び設備の所有者及び管理者(交通事業者を除く。以下「連絡施設等の所有者等」という。)は、交通事業者が四1の公共交通機関改善計画を実施するために行う措置に協力するものとすること。


 三 公共交通機関整備基本指針及び公共交通機関整備基準


1. 運輸大臣は、移動制約者による円滑かつ安全な公共交通機関の利用の総合的な推進を図るための基本的な指針(以下「公共交通機関整備基本指針」という。)を定めなければならないものとすること。

2. 公共交通機関整備基本指針は、次に掲げる事項について定めるものとすること。
(1)移動制約者による円滑かつ安全な公共交通機関の利用の推進の基本的な方向
(2)移動制約者による円滑かつ安全な公共交通機関の利用のための施策に関する事項
(3)移動制約者の公共交通機関の利用に関する調査及び研究に関する事項
(4)移動制約者による円滑かつ安全な公共交通機関の利用に関する啓蒙及び知識の普及に関する事項
(5)その他移動制約者による円滑かつ安全な公共交通機関の利用の推進に関する重要事項

3. 運輸大臣は、五年ごとに公共交通機関整備基本指針に再検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更するものとすること。

4. 運輸大臣は、公共交通機関整備基本指針を実施するため必要となる公共交通機関の施設及び設備の整備に係る基準(以下「公共交通機関整備基準」という。)を定めなければならないものとすること。

5. 公共交通機関整備基準は、公共交通機関の施設及び設備の構造、規格、装置等に関  する事項その他移動制約者による円滑かつ安全な公共交通機関の利用の推進に関する  事項について定めるものとすること。

6. 運輸大臣は、必要があると認めるときは、公共交通機関整備基準に再検討を加え、これを変更することができるものとすること。

7. 運輸大臣は、公共交通機関整備基本指針及び公共交通機関整備基準を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、厚生大臣と協議するとともに、移動制約者、交通事業者その他の関係者の意見を聴かなければならないものとすること。

8. 運輸大臣は、公共交通機関整備基本指針及び公共交通機関整備基準を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならないものとすること。



 四 公共交通機関改善計画


1. 交通事業者は、公共交通機関整備基本指針に即して、移動制約者が円滑かつ安全に公共交通機関を利用することができるようにするための施策の実施に関する計画(以下「公共交通機関改善計画」という。)を定めなければならないものとすること。

2. 公共交通機関改善計画は、次に掲げる事項について定めるものとすること。
(1)その所有又は管理に属する公共交通機関の施設及び設備の整備に関する基本方針
(2)その所有又は管理に属する公共交通機関の施設及び設備の整備の実施期間及び目標量
(3)(2)を達成するために必要なその所有又は管理に属する公共交通機関の施設及び設備の具体的整備に関する事項
(4)その所有又は管理に属する公共交通機関の移動制約者による円滑かつ安全な利用に関する啓蒙及び知識の普及に関する事項
(5)(1)から(4)に掲げるもののほか、公共交通機関改善計画の実施に必要な事項

3. 交通事業者は、乗継ぎを円滑に行うための措置に係る公共交通機関改善計画を作成する場合等、公共交通機関改善計画の作成に当たり他の交通事業者、地方公共団体、連絡施設等の所有者等その他の関係者と意見の調整を図る必要があると認めるときは、これらの者に対し、協議会を組織することを求めることができるものとすること。

4. 運輸大臣は、交通事業者、連絡施設等の所有者等その他の関係者が正当な理由なく3による協議会の組織の求めに応じないときは、当該交通事業者、連絡施設等の所有者等その他の関係者に対し、当該協議会の組織の求めに応ずべき旨の勧告をすることができるものとすること。

5. 運輸大臣は、4の勧告を受けた交通事業者、連絡施設等の所有者等その他の関係者が正当な理由なくその勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができるものとすること。

6. 3の協議会において意見の調整が図られた事項については、協議会の構成員は、その意見の調整の結果を尊重しなければならないものとすること。

7. 運輸大臣は、交通事業者が正当な理由なく公共交通機関改善計画を作成しないときは、当該交通事業者に対し、当該公共交通機関改善計画を作成すべき旨の勧告をすることができるものとすること。

8. 運輸大臣は、7の勧告を受けた交通事業者が正当な理由なくその勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができるものとすること。

9. 交通事業者は、公共交通機関整備基本指針及び公共交通機関整備基準が変更された場合には、公共交通機関改善計画に再検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更するものとすること。

10. 交通事業者は、公共交通機関改善計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを運輸大臣に提出しなければならないものとすること。

11. 運輸大臣は、10により公共交通機関改善計画の提出を受けた場合において、当該公共交通機関改善計画の内容が公共交通機関整備基本指針に即していないと認めるときは、当該交通事業者に対し、当該公共交通機関改善計画の変更に関し必要な勧告をすることができるものとすること。

12. 運輸大臣は、11の勧告を受けた交通事業者が正当な理由なくその勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができるものとすること。

13. 交通事業者は、政令で定めるところにより、公共交通機関改善計画の実施の状況を運輸大臣に報告しなければならないものとすること。



 五 監督


1. 運輸大臣は、公共交通機関改善計画の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、交通事業者に対し、公共交通改善計画の実施の状況に関し報告をさせ、又はその職員に、交通事業者の事務所その他の施設に立ち入り、公共交通機関改善計画の実施の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができるものとすること。

2. 運輸大臣は、交通事業者が正当な理由なく公共交通機関改善計画を実施してないと認めるときは、当該交通事業者に対し、期限を定めて、当該公共交通機関改善計画を実施すべきことを勧告することができるものとすること。

3. 運輸大臣は、2の勧告を受けた交通事業者が正当な理由なくその勧告に従わなかったときは、当該交通事業者に対し、期限を定めて、当該公共交通機関改善計画を実施すべきことを命ずることができるものとすること。


 六 国会報告

 運輸大臣は、毎年、国会に、公共交通機関改善計画の実施の状況及び移動制約者による円滑かつ安全な公共交通機関の利用の推進に関して講じた施策に関する報告書を提出しなければならないものとすること。


第三 道路

 一 道路管理者の義務
 道路管理者は、移動制約者による円滑かつ安全な通行を確保するため、三1の道路改善計画に従い道路の整備等について必要な措置を講じなければならないものとすること。


 二 道路整備基本指針及び道路整備基準


1. 建設大臣は、移動制約者による円滑かつ安全な通行を確保するための道路の整備等に関する基本的な指針(以下「道路整備基本指針」という。)を定めなければならないものとすること。
2. 道路整備基本指針は、次に掲げる事項について定めるものとすること。
(1)移動制約者による円滑かつ安全な通行を確保するための道路の整備等に関する基    本的な方向
(2)移動制約者による円滑かつ安全な通行を確保するための道路の整備等の目標及び    整備すべき道路の設定に関する事項
(3)移動制約者の道路の通行に関する調査及び研究に関する事項
(4)移動制約者による円滑かつ安全な道路の通行に関する啓蒙及び知識の普及に関す    る事項
(5)その他移動制約者による円滑かつ安全な通行の確保に関する重要事項

3. 建設大臣は、五年ごとに道路整備基本指針に再検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更するものとすること。

4. 建設大臣は、道路整備基本指針を実施するため必要となる道路、設備等の整備に係る基準(以下「道路整備基準」という。)を定めなければならないものとすること。

5. 道路整備基準は、道路等の構造、規格等に関する事項その他移動制約者による円滑かつ安全な通行の確保に関する事項について定めるものとすること。

6. 建設大臣は、必要があると認めるときは、道路整備基準に再検討を加え、これを変更することができるものとすること。

7. 建設大臣は、道路整備基本指針及び道路整備基準を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、厚生大臣及び国家公安委員会と協議するとともに、移動制約者、道路管理者その他の関係者の意見を聴かなければならないものとすること。

8. 建設大臣は、道路整備基本指針及び道路整備基準を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならないものとすること。


 三 道路改善計画

1. 道路管理者は、道路整備基本指針に即して、移動制約者による円滑かつ安全な通行を確保するための道路の整備等に関する計画(以下「道路改善計画」という。)を定めなければならないものとすること。

2. 道路改善計画は、次に掲げる事項について定めるものとすること。
(1)その管理に属する道路の整備等に関する基本方針
(2)その管理に属する道路の整備等の実施期間及び目標量
(3)(2)を達成するために必要なその管理に属する道路の具体的整備等に関する事項
(4)その管理に属する道路の移動制約者による円滑かつ安全な利用に関する啓蒙及び知識の普及に関する事項

3. 道路管理者は、道路改善計画の作成に当たり必要があると認めるときは、他の道路管理者、都道府県公安委員会その他の関係者に対し、意見の調整のための協議会を組織することを求めることができるものとすること。

4. 3の協議会において意見の調整が図られた事項については、協議会の構成員は、その意見の調整の結果を尊重しなければならないものとすること。

5. 道路管理者は、道路整備基本指針及び道路整備基準が変更された場合には、道路改善計画に再検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更するものとすること。

6. 道路管理者は、道路改善計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを建設大臣に提出するとともに、公表しなければならないものとすること。

7. 道路管理者は、政令で定めるところにより、道路改善計画の実施の状況を建設大臣に報告しなければならないものとすること。



 四 国会報告
 建設大臣は、毎年、国会に、道路改善計画の実施の状況及び移動制約者の円滑かつ安全な通行の確保に関して講じた施策に関する報告書を提出しなければならないものとすること。

第四 港湾及び空港
 移動制約者による円滑かつ安全な港湾及び空港の利用の推進については、道路に準じた措置が講ぜられるものとすること。

第五 地方公共団体の措置

 一 地方における改善指針

1. 地方公共団体は、当該地域の社会的、経済的状況に応じ、当該地域内にある公共交通機関を移動制約者が円滑かつ安全に利用することができるようにするため、公共交通機関の施設及び設備の整備に関する指針を定めることができるものとすること。

2. 1の指針は、公共交通機関整備基本指針との整合性が図られたものでなければならないものとすること。


 二 地域改善計画

1. 交通事業者は、移動制約者が円滑かつ安全に公共交通機関を利用することができるようにするための施策の実施に関する一1の指針に即した計画(以下「地域改善計画」という。)を作成し、これを当該指針を作成した地方公共団体に提出して、当該地域改善計画が適当である旨の認定を受けることができるものとすること。

2. 地方公共団体は、一1の指針に即した措置を講ずることが移動制約者の利便の増進の程度、当該措置に要する費用等を考慮して特に必要があると認めるときは、交通事業者に対し、地域改善計画の作成又は実施を勧告することができるものとすること。

3. 地方公共団体は、2の勧告をした場合において、当該勧告を受けた交通事業者が正当な理由なくその勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができるものとすること。

4. 地方公共団体は、交通事業者に対し、地域改善計画の作成及び実施に必要な指導助言及び情報の提供を行うとともに、当該地域改善計画を実施するために必要な財政上又は金融上の措置その他の措置を講ずるものとすること。

5. 地方公共団体は、交通事業者に対し、1の認定を受けた地域改善計画の実施状況について報告を求めることができるものとすること。


 三 移動の手段の確保
 地方公共団体は、既存の公共交通機関の利用によるのでは円滑かつ安全な移動が著しく困難な移動制約者に対し、別途移動の手段を確保するよう努めなければならないものとすること。

第六 雑則

 一 情報の提供
 交通事業者及び道路管理者は、移動制約者が円滑かつ安全に公共交通機関及び道路を利用できるようにするため、必要な情報の提供に努めなければならないものとすること。

 二 改善計画の作成及び実施に関する指導等
 国は、交通事業者又は道路管理者に対し、公共交通機関改善計画又は道路改善計画の作成及び実施に関し必要な指導、助言又は情報の提供を行うものとすること。

 三 財政上の措置等
 国及び地方公共団体は、移動制約者の移動の自由の確保に関する施策の実施に必要な財政上、金融上又は税制上の措置その他の措置を講ずるものとすること。

 四 国民の理解を深める等のための措置
 国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じて、移動制約者の円滑かつ安全な公共交通機関及び道路の利用に関する施策について国民の理解を深めるとともに、その実施に関する国民の協力を求めるよう努めなければならないものとすること。

 五 罰則
 第二の五3の命令違反等に対する罰則を規定するものとすること。

第七 その他

 一 施行期日
 
この法律は、○○から施行するものとすること。

 二 検討
 政府は、この法律の施行後○年を経過した場合において、この法律の施行の状況を勘案し、地方公共団体による移動制約者に対する移動の手段を確保するための措置について検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。

三 規定の整理
  
所要の規定を整理するものとすること。

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