農林水産大臣 玉沢 徳一郎 殿
民 主 党
環境農林水産ネクスト大臣 佐藤 謙一郎
社会資本整備ネクスト大臣 前原 誠司
衆議院議員 石橋 大吉
標記干拓事業については、1996年8月、当時の連立与党三党(自民、社民、さ きがけ)の合意により、干拓再開の是非を判断するため、97年から2年間かけて調 査、さらに1年かけて検討することとなり、99年3月には、その調査結果にもとづい て、干拓の是非を検討するため、農水省中四国農政局に本庄工区検討委員会が設置さ れ、近く、その最終結果が出される予定となっている。
民主党は、昨年秋に現地調査を行なった後、本干拓事業を即刻中止をすべきとの党 方針を決定したことをふまえ、ここにあらためて左記の事項について強く善処を要望 する。
記
1.営農の展望がないこと。
農水省が、水面下で示しているといわれる第二案(大根島の北西側に、新たに[八 束承水路堤防]を建設。大海崎堤防から江島[八束町]にいたる幅200メートルの 水路を重しとして地下水の流失を防ぐ)によると農地価格は274万円。
これを揖屋、安来工区の七年度分譲価格だった165万円に下げて売却することが 想定されているが、この価格で、農水省の営農計画どおり、個人経営で農地6ヘクタ ールを購入すると9840万円が必要となる。
現下の農業をめぐる厳しい情勢や揖屋干拓地の営農実態等に照らし、膨大な資金投 入を行っても、採算のとれる可能性は無く、就農者の確保は不可能と判断される。
2.国・県の厳しい財政事情下、有効利用の展望なく地域の自然環境を破壊する大型 公共事業は中止とすべきである。
2000年度末の国・自治体の債務残高は645兆円。景気対策のための相次ぐ大 型公共事業等の実施により、きわめて深刻な実態である。
このような厳しい財政事情下、農耕地として有効利用される展望もなく、自然環境 を一変させる本庄工区の干拓事業は中止すべきである。
3.中海・宍道湖の環境保全と水産漁業利用こそ望ましいものと考えられること。
本庄工区が干拓された場合、年間約四〇億円の水揚げがあり、全国の生産量の約五 割を占めるといわれる宍道湖のヤマトシジミが全滅する危険性がある。
一方、中海は、本庄工区の堤防を開削して新鮮な海水を流入させることにより、赤 貝やアサリの養殖、魚類の産卵場や幼魚の育成の場となり、また、はるか東部に大山 をのぞむ雄大な景観を維持することもできる。
したがって、中海・宍道湖の環境保全と水産漁業利用こそ望ましいものと考える。
4.他用途転用を目的とした全面干陸案は、土地改良事業の目的に照らし、認められない。
島根県経済同友会(代表・山陰合同銀行頭取・丸磐根氏)は、「本庄工区の土地利 用計画としては、二十一世紀アジアの時代を展望して、構造変革を成し遂げた新しい 日本の西の玄関口の中核となる夢のあるグランドデザインを提言したい」として、 (1)先進的農業機能、(2)森林資源の育成機能、(3)研究開発、生産機能、(4)国際交流 機能、(5)レジャー・リゾート機能、(6)ゆとりと潤いの住機能、(7)臨海都市の中核 的機能等を持たせることを提案している。
本庄工区干陸の積極的推進論は、大なり小なりこのような他用途転用を念頭におい たものである。しかし、本庄工区干陸後の土地がこのような機能をになえるものかど うかについては、別途、詳細なアセスメントや具体的な事業計画、開発のため必要と される投下資本の額、その負担等についての検討が必要であり、そのような検討をぬ きにした干拓事業の推進は、空論に終る危険性を持つばかりか、そもそも、農業利用 を目的とする干拓事業の趣旨に反する。
以上、述べてきた通り、本事業の継続を正当化する理由は存在しない。一部報道で 本庄工区検討委員会の最終報告は、(1)全面干拓、(2)部分干拓、(3)中止又は凍結 (全面水域)の三案併記となるものと伝えられているが、報告のいかんに関わらずこ の際、本事業は明確に中止を決定すべきである。
右、申し入れる。
以 上
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