民主党ネクストキャビネット大臣
環境・農水担当 佐藤謙一郎
昨日日本で初めて大規模河川事業の是非を問う、徳島市民による吉野川第十堰可動化計画の住民投票で55%の投票率の中、92%の反対票が投じられました。これを単に、一地域の住民投票という現象として見るべきではなく、巨大な公共事業に対して間接民主主義が機能を発揮していないことが明らかにされ、真の住民の意思とは何かがつきつけられる結果となりました。
徳島市民は、建設省が設置した評価機関(ダム事業等審議委員会)が98年に可動化計画推進の結論を出すと同時に、住民投票の準備を開始し、それが議会によって否決されるや独自に市会議員を誕生させました。構成を変えた市議会が独自条例を制定ましたが、今回の結果は推進会派がもくろんだ50%以下の投票率では不成立という壁や、ボイコット運動をもはねのけ達成した勝利といえます。徳島市民の民主主義の原点に立った地道な努力と情熱に対し心から敬意と祝福をおくります。
一部始終を最も身近で見てきた徳島市長が「市民の声を尊重する」と会見をした瞬間は印象的でした。推進の旗振り役をしてきた自治体の首長が、その姿勢を180度転換したことは、そのまま日本全体の河川行政の大転換を物語っています。建設省もこの分岐点を潔く認めるべきでしょう。
おりしも、この結果に先駆ける形で21日、建設大臣の諮問機関、河川審議会(会長・古川昌彦経団連副会長)が極めて画期的な答申を発表し、昔から伝わる川にまつわる伝統技術を保存、活用する方針を打ち出しました。その中には、築堤や石積みなどの工事技術の伝承がうたわれています。そのわずか2日後に、江戸中期から続く石積みの堰を巡り住民投票が行われ、近代的可動堰が否定されたことは単なる偶然ではないでしょう。
平成9年の河川法改正では、河川整備計画の策定にあたり公聴会開催など関係住民の意見を反映させるための措置が定められました。いやしくも議会が成立させ、首長が尊重すると宣言した住民投票による意思表示は、中央政府のおごりや惰性によって見過ごされてはならず、建設省の速やかで健全な転換を求めます。
|