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2000/02/29
2000年度予算に対する反対討論
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衆議院本会議

2000年度予算に対する反対討論

海江田 万里

 私は、民主党を代表して、ただいま議題になっております2000年度予算3案に 反対の立場から討論を行ないます。

 まさに今回の国会の予算審議は異例の連続であり、異例のオンパレードであり、も しこのまま異例続きの予算案が国会を通過しますと、日本の国会は悪例を千載の後に 残すことになります。

 小渕総理は国会を1月20日に召集しておきながら、総理の施政方針演説を初めと した政府4演説が行われたのは1月28日。その間何が行われていたのでしょうか?

 自らの政権を延命させるために誕生させた自自公連立政権が約束した、いわゆる 「定数削減法案」の強行採決を行い、国会を混乱させたのであります。

 事態打開のための議長・副議長の斡旋に対しても、それが議員提案の法案であり、政府が関与する余地のまったくない法案であったにもかかわらず、あろうことか、総理官邸は議長に本会議開会の圧力をかけたことは明白であります。これを三権分立違 反といわなくて何を三権分立というのでしょうか。

 野党議員のいない本会議場での施政方針演説も憲政史上、異例中の異例だが、総理はその後も野党議員の質疑抜きで代表質問も終えてしまいました。与党議員のみの「代表質問」はまさに小渕政権に対する迎合、阿諛(あゆ)追従の大合唱で、時計が50年以上タイムスリップして、本院が大政翼賛会の時代に戻ったかの感を与えるも のでした。

 今回の予算審議において、議長と副議長は審議の正常化を図るために忍耐強く二度目の斡旋案を与野党に提示しました。その斡旋案には「まず各党とも円満なる運営、充実した審議に努めるよう」要請し、続いて「各党において、私の思いを汲んでいただき、これを機会に将来の模範となる国会にしていただきたい」という議長の切なる思いが込められております。しかし、その後の与党の国会運営はこの議長の思いを無 残に踏みにじるものでありました。

 今回の予算審議をめぐる小渕総理の「数があれば何をしてもいい」との姿勢は、まさに多数派の専制であり、民主主義の堕落であるということができると思います。国会が正常化してからも小渕総理が予算委員会で、野党委員の質問に答えたのは、本日の締めくくり質問を入れて、わずか2日間。時間にしてたった12時間のみであります。総理周辺の株取引疑惑が予算委員会で追及されているにもかかわらず、自身はひたすら総理官邸に立てこもり、あるときはバレンタインデーのチョコレートに舌鼓をうち、またあるときは大宰府天満宮の梅の使節の訪問を受けるなどして、日がな一日を過ごしていました。

 それだけではありません。小渕総理は、あろうことか予算委員会の開会の最中に、地元の群馬にお国入りを行った。これまでにどの総理が、本予算の審議の最中にお国入りして、「常在戦場、今日から選挙戦のスタートだ」などといった総理がいたでしょうか。それならそれで国会を解散して、本当に総選挙をやればいいのではないでし ょうか。

 自自公という国会の多数にあぐらをかいた小渕総理のこの間の神をも恐れぬ傍若無 人の振る舞いは、この予算の内容にもよく現れています。

 今回の予算は、一般歳出が48兆914億円で、前年当初予算比2・6%増の積極型予算であるが、その歳入全体の約40%を国債の発行によってまかなうという空前の放漫予算であります。しかも一般歳出の約二割が、景気対策と称する土木を中心とした公共事業費ではないですか。総理が喧伝する「ミレニアムプロジェクト」関係の予算はたったの1200億円であります。これでは評価したくても評価のしようがな いではないですか。

 さらに本予算に計上されている5000億円の「公共事業等予備費」も大きな問題です。この予備費に関しては、昨年来幾たびも財政法上問題があるとの指摘を受けながら、政府は懲りずに再度これを計上したものであります。自自公は法律さえも無視するのです。その上、昨年度の「公共事業予備費」の配分を見ると、これがまた旧来型公共事業ばかりです。整備新幹線、道路、ウルグアイラウンド対策と、まるで国民に喧嘩を売るような予算配分を行い、その上で今年もこれを繰り返そうとしているのです。この一点を見ても、本予算が自自公の選挙対策であることは明らかであり、と うていこれに賛成できるものではありません。

 予算委員会に公述人として意見を開陳した東京大学の神野教授は、小渕内閣の公共 事業に頼って景気回復しようとする姿勢を、「バベルの塔を建てようとする愚挙だ」 と論じていたが、まったくその通りである。

 ノアの箱船の洪水の後、ノアの子孫が都市を作ろうとする。洪水で被害も大きかったから今度は天まで届く大きな塔のある都市を作ろう。そうすれば洪水が起きても平気だ。自分たちは何でも出来ると思い上がって、当時の土木工事、公共事業をやって 巨大な都市を造る。それがバビロンの都になったとの説もあります。

 神はこれを見て、また人間は神を恐れなくなったと怒り、この都市を破壊して、以 後人々の言語を変えてしまったそうです。人々はそれまでは共通の言語を話していた が、これ以後共通の言葉を失ってしかも各地に離散して世界は大いに混乱しました。

 たしかに1980年代後半のバブル経済の崩壊によって日本が受けた損害は、ノア の箱船の大洪水の被害にも等しかったかも知れない。その後の長引く不況から立ち直 るためといって、土木事業をむやみにやる自自公政権の姿は、まさにノアの子孫の姿 に似ている。

 しかしそうした愚かな行為も再び神の怒りに触れて、バベルの塔は崩れ落ちてしま う。

 聖書ではバベルの塔が崩れて、人々は共通の言語を失い、残るのは混乱だが、小渕内閣が今回の予算成立を強行に推し進めて失うものは世界の信頼であり、残るのは巨額の借金である。それだけではない。今度の予算が奪うものは次の世代の希望であ り、残すものは現在の世代の無責任である。

 これも極めて異例のことだが、有名な格付け会社が予算の審議の最中に「今後、日 本の国債の格付けを引き下げの方向で検討する」ということを発表した。

 借金の額の大きさは、今年発行する公債の額が巨額だというでけでなく、この予算を認めてしまうと、今後21世紀に入ってから景気がいくら好転しても、自動的に数年にわたって毎年100兆円を上回る公債を発行し続けなければならなくなるということにおいて、これも極めて異例である。つまり今年の予算は今年のわが国の財政、経済を縛るということだけでなく、21世紀の財政・経済をがんじがらめにしてしま う予算であるということ、このことを忘れてはならないと思う。

 また、本予算案審議の過程では、総理周辺の株取引の疑惑、越智金融再生委員長の 「手ごころ」発言、政治家の秘書の脱税指南グループ問題など、政治家と秘書の言動 に厳しい国民の眼が注がれています。

 これらの問題は、今後、予算委員会の集中審議の場などでさらに真相解明につとめ ていかなければならないと思います。

 私は、これから20年、30年経って、私たちの多くがこの世から姿を消しても、西暦2000年度の予算は人々に語り継がれる予算だと思う。それはもちろん長い不況から立ち直るきっかけになった、輝かしい予算としての記憶ではなくて、日本の財 政を破たんさせる端緒になった類い稀な放漫財政の予算としてである。

 定見のない真空総理によって編成された予算は、思想も見識もなくただ選挙目当てのバラマキの目立つ予算であり、「景気対策」と称し土木工事に偏重した、財政赤字を膨張させるだけの史上最悪の予算であったと人々に記憶され、「おかげで私たちの負担が今でも続いている」と、後世私たちの子孫に恨みを持って語り継がれる予算で あるということ。そのことを最後に強調して、私の討論を終わります。

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