民主党ネクスト・キャビネット
予算・決算担当大臣 横路 孝弘
1. 衆議院予算委員会審議について
衆議院予算委員会における予算審議は質的にも量的にも全く不十分である。従来基本とされていた予算委員一人あたり「総括2時間・一般質疑1時間半」の質疑時間には遠く及ばず、予算の問題点について十分な審議を行うことが物理的に不可能である。
さらに問題なのは、小渕総理の予算委員会出席が極端に少ないことである。予算は内閣が考える政策の集大成であり、内閣の最高責任者がこの予算について国会審議を通じて、国民に説明することは不可欠である。
当然のことながら、予算審議は国会の最重要案件である。これにつき審議時間が十分に確保されないどころか、最も説明責任を負う総理が出席していない状況では、議会は国民から負託された責任を果たし得ない。先般の議長斡旋にも「充実した審議に努め」とあるが、現在の政府与党の国会運営はこの議長斡旋を踏みにじり、従来の国会運営のルールさえ無視する暴挙である。正常な民主主義手続きを欠いたまま、最重要案件の採決に入ることには、強く反対する。
2. 平成12年度予算について
(1) 総論
本予算について政府は「本格的な回復軌道に繋げていくため、経済運営に万全を期す」としているが、その中身は自らの選挙のために編成された典型的な「バラマキ・先送り型」の予算であり、本格的な景気回復へ繋がるという明確な根拠は何もない。かえって累積する財政赤字により消費抑制・経済不安をあおり、景気回復の弊害となりかねない予算である。
わずか1200億円ばかりで看板だけの「ミレニアム・プロジェクト」や旧来型の公共事業を物流効率化や環境という美名でごまかしただけの本予算では、民主党の主張する「財政構造改革を通じた景気回復」を実現することは到底不可能である。
(2)各論
1. 公共事業
「バラマキ」公共事業の象徴が公共事業等予備費である。これは財政法上も大変な疑義があるばかりか、平成11年度の配分実績を見れば自自公の選挙対策費であることは明らかである。その他国民から批判が多く、また経済波及効果の低下している従来型公共事業に莫大な税金を投入することは、国民に対する背信行為とも考えられる。公共事業については吉野川第十堰住民投票に見られるように、国民から特に批判の多い事業に関しては白紙から見直すと共に、硬直的な省庁別シェア配分を改める中で、総額の抑制を図るべきである。
2. 社会保障
診療報酬引き上げ、根本的な議論を欠いた児童手当引き上げを見ても自自公政権が将来に対する責任を何ら省みることなく、ただ「バラマキ・先送り」に終始していることは明らかである。このように国民生活に直結する政策分野において先送りを重ねることが、かえって国民の不安を増長し、景気回復を遅らせている。
3. 地方財政
東京都の銀行に対する外形標準課税創設において、首都・東京においても地方財政が限界まで来たことが明らかになった。地方交付税特別会計の38兆円の赤字を積み上げ、この原資に困窮した結果民間銀行からの借り入れで賄うという禁じ手を講じなければならないほど危機的な状況にある地方財政に対して、責任ある対応を全くとろうとしない政府の姿勢は極めて遺憾である。民主党が従来から主張するように、地方に対する抜本的な税財源移譲を早急に行う必要がある。
4. その他個別事項
省庁縦割りのあげくに失敗を重ねるロケット開発、最悪の状況にありながら抜本的対策が不十分な雇用対策、スローガンと看板の掛け替えばかりの中小企業対策、重要な社会問題となりながら予算面での対応が全く見られない教育行政等本予算は政治が真正面から受け止める課題に対して、何ら真摯な対応が見られない。
3. 結論
民主党として平成12年度予算に対して反対する。
政府提出の平成12年度予算は、上記に述べたように本格的な景気対策へのメドが全くないばかりか、社会を覆う閉塞感の解消、将来への希望と安心感の醸成という現在政治が最も求められている課題に全く回答を示していない。それどころか社会保障制度を崩壊させ、公共事業により我が国の貴重な環境を崩壊させ、そして莫大な財政赤字によって我が国財政を崩壊させる予算である。このように根本的に誤っている予算は一部組替によって改められるものではない。
このような日本の将来を崩壊させる予算を、適正な民主主義手続きを欠いたまま成立されることは、国会が日本の将来の崩壊に手を貸したことになりかねない。よって民主党としては、本予算に対して強く反対を表明すると共に、解散・総選挙を通じた新たな政府によって予算を編成することが本格的な景気回復の道であることを強く主張する。
|