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1998/06/29
"全治3年"日本経済再建プログラム
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民 主 党

 日本経済が再び活力を取り戻すには、自民党のような、その場しのぎの景気対策ではない、社会・経済構造の改革を大胆に進める政策が必要です。民主党は、以下のプログラムを実施し、今世紀中に日本経済をダイナミックに再生します。

■金融再生計画
徹底した情報開示と預金者保護を図り、破綻金融機関の不良債権は強力な公的債権回収機関を創設して回収。2001年3月までの「国有・民営化」方式で金融機能を再生する。

■6兆円減税
消費マインドを刺激すると同時に、グローバルスタンダードに合致する税制に改革するため、3兆円の所得税恒久減税をはじめとする総額6兆円の減税を実施する。

■未来への投資
土木中心の従来型公共事業ではない、生活・福祉・環境・エネルギー・情報通信等の 21世紀型社会資本整備を地方主体で実施するため、4兆円の包括的補助金を交付する。

■雇用対策
雇用の維持・安定に加え、福祉マンパワーなどの新たな雇用の積極的創出、自主的な職業能力開発の支援など、経済構造改革に対応できる新たな雇用政策・周辺策を推進する。

■中小企業・新規事業対策
中小企業等への緊急貸し渋り対策として、政府系金融機関の融資を拡充する。新規事業者の創業期法人税免除や新規雇用の賃金助成、ものづくり基盤技術振興を図る。

■財政構造改革法の2年間凍結と抜本的見直し
デフレ経済を招いた財政構造改革法を2年間凍結し、その間に経済再建に集中的に取り組むとともに、財政構造改革法の抜本的見直しを行う。

【はじめに】
 自民党・橋本内閣の経済失政によって、いまや日本経済は惨憺たる危機的状況にある。戦後最悪・最長の不景気で、企業倒産と失業率は過去最高水準に達している。景気の状況を甘く見誤り続け、冷え込みつつある景気に、さらに水をかける財政再建=デフレ政策の強行、場当たり的な特別減税や従来型の土木中心公共事業大盤振る舞いの景気対策、銀行やゼネコン救済のための公的資金投入、そして制度の抜本改革なき社会保障切り下げという支離滅裂な政策を続けるかぎり、日本経済や国民生活に明るい未来はない。
 民主党は、以下の通り、経済再建の最大の足かせとなっている不良債権問題・金融不安の解決、所得税恒久減税など6兆円減税や公共事業改革による民主導経済への構造改革、新しい産業と雇用機会の拡大を中心に据えた雇用・起業対策を強力に推し進め、今世紀中の残り3年間に日本経済をダイナミックに再生する。

■金融再生計画

 大手金融機関の破綻を契機とする金融システム不安に対し、政府・自民党が行ってきた30兆円の公的資金の投入、不良債権処理のための土地・債権流動化トータルプラン等の一連の対策は、つねに時期遅れであっただけでなく、情報開示と責任追及なき銀行救済、無税償却の乱発によるゼネコン徳政令にほかならず、断じて許容できるものではない。
 民主党は、徹底した情報開示と預金者保護を前提に不良金融機関を消滅・退場させ、その不良債権は、強力な権限を持った公的債権回収機関を設立して回収に当たることを原則としつつ、単純に破綻させることが内外の経済に与える悪影響が甚大である場合に限り、破綻銀行の「国有・民営」措置を2001年3月までの時限措置として導入することを提案する。

(1) 厳格な基準で銀行に対する短期集中検査を実施、不良債権の実態を情報開示。

(2) 検査の結果、債務超過銀行には、預金を全額保護の上、即刻業務停止を命じて破綻させる。旧経営陣は総退陣、場合によっては損害賠償請求や株主代表訴訟の対象になる。

(3) しかし、集中検査の結果、債務超過であることが判明した場合でも、当該行を単純に破綻させると内外経済に対する悪影響が大きすぎると判断されるときには、国が破綻銀行の株式を100%取得し、政府保証のもとに日銀貸出を行い、預金者及び健全な借り手に対する業務は継続しつつ、国会の同意人事によって設立される第三者機関『金融再生委員会』が指名する新経営者のもとで人員・店舗・不採算業務を徹底的に合理化し、2001年3月までに経営再建または整理を完了する。
 新銀行の不良債権は、新たに設立する公的債権回収機関(日本版RTC)に売却、本体から完全分離したうえで、債権回収を強力に推進する。

■ 6兆円減税

(1) 所得税3兆円恒久減税
  経済の先行きに対する不透明感を払拭し、経済の回復基調を確実なものにすると同時に、米英の最高税率への接近、後述の法人税率引き下げとのバランス等を考慮し、現行の5段階の累進税制の基本的枠組みを維持しつつ、税率区分の各税率をそれぞれ8,16,24,32,45%程度に引き下げる制度減税を実施する。

(2) 法人課税実効税率を40%程度に引下げ
 法人税(国税)率を34.5%から30%に、法人事業税(地方税)率を11%から10%に、さらに引き下げる。これにより、法人課税の実効税率は、98年改正後の46.36%から 41.08%に約5%低下する。
 あわせて、企業関係租税特別措置の大幅な縮減等を行い、課税ベースの一層の適正化を図る。
 地方法人課税のあり方については、今回の法人事業税率等の引き下げの減収がもたらす地方財政への影響にも留意し、別途、来年度において法人事業税の外形標準化や法人住民税均等割の見直し等による増収策を検討する。

(3) 有価証券取引税等の廃止とキャピタルゲイン課税適正化
 証券市場活性化策の一つとして、有価証券取引税・取引所税を廃止する。同時に、納税者番号制度の導入によるキャピタルゲインの総合課税化を早急に具体化する。

(4) 住宅取得促進税制の拡充
 景気対策の観点から住宅取得を促進するため、現行住宅取得促進税制を大幅に拡充し、1999年末までに居住の用に供した住宅の取得・増改築費の1.5%を6年間、最高 270万円まで所得税額から控除できることとする等の特例を設ける。特例の内容は、( (ア)対象住宅にセカンドハウス等を含める
(イ)優良な住宅ストックの形成に資するよう、床面積要件を最小60・に引き上げ、上限を廃止する
(ウ)現金や親族からの借入金による取得等も控除対象とする
(エ)控除総額を現行の1.5倍の270万円に引き上げる
――など。

(5) ローン利子減税の創設
 マイホーム、セカンドハウスや自動車の購入、高齢者にやさしいバリアフリー住宅へのリフォーム、教育ローン等の負担を軽減し、消費の拡大を図るため、一定の要件に該当する新規ローンの利子分を10年間にわたって所得から控除するローン減税を今後6年間の政策減税として実施する(家屋の取得・増改築については住宅取得促進税制との選択制とする)。

(6) マイホーム譲渡損失繰越控除制度の拡充
 98年改正で創設されたマイホーム買換え時の譲渡損失繰越控除を拡充して持ち家から賃貸への住み替え等にも対応できることする。所有期間5年を超える個人の居住用財産の譲渡により損失が出たときは、一定の要件の下で翌年以後3年以内の各年の総所得金額からの繰越控除を認める制度を、今後6年間の政策減税として実施する。

(7) 環境・情報化等投資減税の実施
企業が事業活動による環境負荷の低減や情報ネットワーク型社会の創造に資する生産技術の革新を図るための一定の機械装置を購入する場合等について、割増償却・税額控除等の特例を認める環境・情報化等投資減税を今後6年間の政策減税として実施する。

■未来への投資
 93年以降の累次の経済対策の過程で、国庫補助金による公共事業の大幅な積み増しが繰り返されてきたが、これらは国の中央省庁間のシェアが固定的に推移しているために、地方公共団体の住民のニーズにあった支出を困難なものとし、厚生水準の低下をもたらしている。
 このような公共投資のあり方を改革するためには、国の役割を真にナショナルミニマムの維持に限定し、それを上回る部分は、国庫補助金の一般財源化や包括補助金化を進め、地方団体の自主性に委ねていくことが必要である。
 民主党は、国の公共事業関連予算のうち4兆円程度を地方への包括的補助金(米国のブロックグラント=総合補助金の日本版)に変更し、都道府県等が地域の特性を生かして自主的・主体的に事業計画を策定・実施できることとする。
 この包括的補助金は、人口数を補助基準とする(都道府県人口1人につき約1.6万円、市町村人口1人につき約1.6万円の交付)。
 また、これとあわせ、国の公共事業や補助金制度全般を見直し、補助金の一般財源化やいわゆる第二交付税・包括補助金等制度、国から地方への税財源移譲の検討を本格的に進めるものとする。

【期待される事業の例】
○ 小中学校など公共施設への光ファイバー通信網接続によるインターネット利用環境の整備・充実
○ 小中学校など公共施設への太陽光発電設備の導入・普及
○ 新ゴールド・プランなど保健福祉3プランの前倒し実施
○ 国土環境保全のための民有林間伐の促進
○ 公共交通機関の駅等へのエレベーター設置
○ 一般廃棄物処理施設におけるダイオキシン対策の徹底 等

■雇用対策

 4月の完全失業率は4.1%にまで昇り、戦後最悪の記録を更新している。雇用情勢がとくに厳しい地域・業種が表れていること、再就職がとくに困難な中高年層の失業期間が長期化していることは深刻な問題である。
 民主党は、緊急の措置として、求職者の再就職支援と雇用の創出を主眼とした以下の諸施策の実施を提唱する。

(1) 既存雇用施策の弾力的・機動的運用
 地域雇用開発助成金、特定求職者雇用開発助成金、雇用調整助成金等の既存制度をいっそう弾力的・機動的に運用する。

(2) 仕事と子育ての両立で雇用継続を図る
 育児・介護休業制給付の所得保障を現行の25%(介護休業手当は来年4月より支給開始)から60%に引き上げる等の措置により、仕事と家庭生活の両立を支援する。

(3) 自己啓発への支援と職業能力開発の充実
 公共職業能力開発の内容拡充を進めるとともに、自発的教育訓練のための費用助成や休暇制度の創設を図る。

■中小企業
・新規事業対策

(1) 貸し渋り対策
 別掲の金融再生計画の実施とあわせ、経営が厳しくなっている中小企業に対し、緊急避難の施策として、政府系金融機関による貸付制度拡充などの貸し渋り対策を強化する。

(2) 起業支援
 情報通信・環境・福祉医療関連などを雇用創出効果が大きい産業と位置づけ、新規創業期の法人税免除や新規雇用の賃金助成、ベンチャーキャピタル育成や店頭市場改革などの方策を講じる。

(3) ものづくり基盤振興
 わが国のものづくりの基盤技術を振興する施策を総合的に推進するため、「ものづくり基本法」(仮称)を制定し、熟練労働者の養成、中小企業の経営基盤強化等を図る。

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