文部科学大臣 遠山敦子 殿
奨学金制度改革に関する申し入れ
民主党 部落解放推進委員会委員長 中野寛成
同和対策事業小委員会委員長 山元 勉
民主党は、誰でも・いつでも・どこでも学べる高等教育を実現するという観点から、希望する人が誰でもいつでも利用できる奨学金制度の必要性を訴えてきました。国際人権規約A規約13条の規定や諸外国の奨学金制度の踏まえるならば、奨学金は学費のみならず、最低限の生活費も貸与することを通じて、いったん社会人となった人でも、また親の支援を一切受けなくても、意欲があれば学べるシステムとして構想されなければならないと考えます。
現在の不況と雇用不安のなかで、奨学金に対する需要はますます増大していますが、「小泉改革」のなかでは、未来の世代に対する責任が放棄され、真に必要な施策への重点配分が行われない危険性が散見されます。
民主党は、誰でも・いつでも・どこでも学べる高等教育、希望する人が誰でもいつでも利用できる奨学金制度の実現に向けて、当面する以下の課題について政府が早急に対応するよう申し入れます。
記
1.日本育英会奨学金「予約採用枠」の拡充について
日本育英会奨学金各支部での来年度予約採用募集に対して、来年度進学予定者の申し込みが殺到しており、要件を満たした者であっても、第1種奨学金(無利子・成績条項あり)、希望21プラン(有利子・成績条項なし)ともに不採用になる事例が発生している。また在校生においても、経済的な理由で退学、退籍、休学をする学生が徐々に増えている。
こどもたちの現下の不安を取り除き、進学意欲を失わないようにし、高等教育の機会均等を図るためにも、早急に奨学金制度の拡充、とりわけ「予約採用枠」の拡充を求める。
2.都道府県奨学金補助事業の予算拡充と制度立ち上げ支援について
来年3月に地域改善対策奨学事業が廃止されることにともない同和地区の高校生等が経済的理由により修学困難に直面しないよう、一般施策の制度改革を早急に行うことが求められている。
この高校奨学金貸与事業については、来年度概算要求で、都道府県が独自の奨学金事業を実施するための経費補助として20億円が文部科学省より予算要求されている。しかし関係府県の計算によれば、必要総額は20億円を越えるだろうとの試算が出されており、事業総額の上積みが必要である。
またこれまで一般施策の奨学金事業を実施していない府県は、早急に制度立ち上げが必要となっており、厳しい自治体財政状況のなかで来年度からの奨学金事業実施にむけ、関係自治体への確実な財政保障と制度立ち上げ支援を行う必要がある。
3.大学奨学金当初予算の拡充と大学別「在校生枠」の情報公開について
大学奨学金については、日本育英会奨学金の拡充を通じて同和地区の高校生の進学保障を行うことが想定されているが、現時点ですでに予約採用されない事態が発生しており、「予約枠」から漏れたこどもたちが「在学枠」で採用されるという保障はまったくない。
真に奨学金を必要としている学生や家庭は、「在学採用」や「採用待ち」では進学そのものを断念せざるをえなくなる。補正予算での上積みではなく、年度当初予算の上積みが必要である。
とりわけ在学枠の配分は、一部国立大学等に偏重しており、在校生の約7割をしめる私立大学への配分比率は極端に少ないものとなっている。また各大学の在学採用枠が十分に情報公開されていないために、進路決定時点で大学に採用枠があるかどうかが判断できない状態にある。よって私立大学の採用枠を拡充するとともに、在学枠の情報公開を行うべきである。
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