民主党
1 池田小学校事件の教訓
被告人は過去に軽微な犯罪行為を繰り返し、精神病院への入退院等を経て、昨年6月に児童らの殺傷事件に至り、「責任能力あり」と起訴、係争中。
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・被告人の過去の犯罪行為に対する検察の起訴・不起訴の判断、さらに検察段階での「簡易鑑定」や措置入院時の「措置診察」の判定が適切であったのか充分な検証が必要。
・従来から、検察段階での「簡易鑑定」が特定の精神科医に偏っており、起訴・不起訴の検察官の判断が恣意的に行われ、その後の検察官通報(精神保健福祉法25条)で、検察の意向を受けた措置入院の判断がされるなど、不適切な法の運用が現場から指摘されている。また地域精神保健福祉施策の立ち遅れや刑事施設等の精神医学的治療・援助体制の不備が指摘されているにもかかわらず、政府の対応は極めて不充分。
・池田小学校事件の被告人は起訴されているにもかかわらず、マスコミ報道によって「精神障害者の犯罪」として精神障害者を危険視する世論と応報感情が高まり、精神障害者への差別・偏見が助長。
2 政府案の問題点
政府案は、従来から指摘されている司法と精神医療への疑問や問題に何ら解決策を示すことなく、しかも池田小学校事件の再発防止にならない。さらに「再犯のおそれ」という不確実な将来の危険性予測に基づく、不定期な予防拘禁(=重大な人権侵害)を可能とするもの。精神障害者への差別・偏見を助長するばかりか、本質的な問題解決を先送り。
3 民主党案の概要
民主党案は池田小学校事件の教訓や従来から指摘されている司法と精神医療に対する疑問や問題点の解決をめざすために、以下のように包括的・総合的な政策を提言。
1. 法改正事項(「司法精神鑑定センター」(仮称);裁判所法等の改正、「精神保健福祉調査員」「精神科集中治療センター」等;精神保健福祉法改正)
2. 現行制度の運用改善(「措置入院指定病院の指定基準」の引上げ等の見直し)
3. 精神保健福祉施策の改善と実証的調査・研究の推進(「精神保健福祉改善10ヵ年戦略」の策定と着実な実施、等)
※ 精神障害者に対する差別や偏見を助長しないよう配慮。「再犯のおそれ」の判定は科学的に不可能であり、また「重大な犯罪行為」の有無で区別せず、起訴前・起訴後の適切な精神鑑定と、あくまでも治療上の必要性から適切な精神医療を確保
【関連資料】
1. 民主党の「対案」の全体スキーム
2. 政府案と民主党案との比較
3. 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案」及び「裁判所法の一部を改正する法律案」及び「検察庁法の一部を改正する法律案」提案理由説明(154国会:水島広子議員)
4. 「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」並びに「裁判所法の一部を改正する法律案及び検察庁法の一部を改正する法律案」並びに「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案」に対する本会議質問(154国会:中村哲治議員)
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