(目的)
第一条
この法律は、中小企業者に対する金融の円滑を図る観点から銀行等の資金の貸付けが果たす役割の重要性にかんがみ、中小企業者に対する資金の貸付けに関する銀行等の説明義務及び書面の交付義務並びに貸付方針の策定義務を定めること等により、中小企業者に対する銀行等の資金の貸付けの適正な運営を確保し、もって中小企業者の経営の安定及びその事業の成長発展に資することを目的とする。
(定義)
第二条
この法律において「中小企業者」とは、中小企業基本法(昭和三十八年法律第百五十四号)第二条第一項各号に掲げる者をいう。
2
この法律において「銀行等」とは、銀行(銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二条第一項に規定する銀行をいう。)及び長期信用銀行(長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)第二条に規定する長期信用銀行をいう。)をいう。
3
この法律において「貸付契約」とは、中小企業者に対する銀行等の資金の貸付けに係る契約をいう。
4
この法律において「貸付契約等」とは、貸付契約又は当該貸付契約に係る保証契約をいう。
(貸付条件等の説明)
第三条
銀行等は、貸付契約を締結しようとするときは、その契約の相手方となろうとする者に対し、次に掲げる事項について説明をしなければならない。
一 貸付けの利率及び遅延損害金の割合
二 返済期間及び返済回数
三 担保
四 前三号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項
2
銀行等は、貸付契約に係る保証契約を締結しようとするときは、その契約の相手方となろうとする者に対し、次に掲げる事項について説明をしなければならない。
一 保証期間
二 保証金額
三 保証の範囲
四 前三号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項
(書面の交付)
第四条
銀行等は、貸付契約を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項についてその契約の内容を明らかにする書面をその契約の相手方に交付しなければならない。
一 契約年月日
二 貸付金額
三 貸付けの利率及び遅延損害金の割合
四 返済期間及び返済回数
五 担保があるときは、その内容
六 前各号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項
2
銀行等は、貸付契約に係る保証契約を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項についてその契約の内容を明らかにする書面をその契約の相手方に交付しなければならない。
一 保証期間
二 保証金額
三 保証の範囲
四 前三号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項
3
銀行等は、貸付契約に係る保証契約を締結したときは、遅滞なく、第一項各号に掲げる事項について当該貸付契約の内容を明らかにする書面を当該保証契約の相手方に交付しなければならない。銀行等が、貸付契約で保証契約に係るものを締結したときにおいても、同様とする。
(貸付契約等の締結に際しての配慮)
第五条
銀行等は、貸付契約等の締結をするに際し、中小企業者の経営の安定及びその事業の成長発展に資するよう配慮しなければならない。
(貸付方針の策定等)
第六条
銀行等は、貸付契約等の締結に関する方針(以下「貸付方針」という。)を定めなければならない。
2
貸付方針においては、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 貸付けの利率、遅延損害金の割合、返済期間、返済回数その他の貸付条件を定めるに当たっては、中小企業者の経営状況並びにその事業の性質及び成長発展の可能性に照らし配慮すべき事項
二 土地、建物その他の財産を担保として提供させるに当たっては、その使用形態に照らし配慮すべき事項
三 保証期間、保証金額及び保証の範囲を定めるに当たっては、保証人となろうとする者の経済状況その他の事情に照らし配慮すべき事項
四 前三号に掲げるもののほか、貸付契約等の締結に際し配慮すべき事項
3
銀行等は、貸付方針を定めたときは、内閣府令で定める方法により、これを公表しなければならない。これを変更したときも、同様とする。
附 則
(施行期日)
第一条
この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内で政令で定める日から施行する。
(経過措置)
第二条
第四条第一項、第二項及び第三項前段の規定は、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)以後に締結する貸付契約等について適用し、施行日前に締結した貸付契約等については、なお従前の例による。
2
第四条第三項後段の規定は、施行日以後に締結する貸付契約で保証契約に係るものについて適用し、施行日前に締結した貸付契約で保証契約に係るものについては、なお従前の例による。
理 由
中小企業者に対する金融の円滑を図る観点から銀行等の資金の貸付けが果たす役割の重要性にかんがみ、中小企業者に対する銀行等の資金の貸付けの適正な運営を確保するため、中小企業者に対する資金の貸付けに関する銀行等の説明義務及び書面の交付義務並びに貸付方針の策定義務を定める等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
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