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2002/11/15
衆議院本会議  電気事業法等の一部改正案等に対する本会議質問
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民主党・無所属クラブ 北橋健治

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました「電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律案」および「独立行政法人原子力安全基盤機構法案」について、民主党の提言もまじえつつ、関係大臣に質問を行います。
 
(今回の事件の受けとめ方について・・・経済産業大臣)
 今回の電力会社による点検記録の改ざん問題は、電力会社首脳の総退陣に発展すると同時に、原発安全行政へのかつてない国民の不信、9基もの原子力発電の停止、核燃料サイクル計画の中断という、国の原子力政策の根幹を揺るがす深刻な事態に陥っています。
 90年代に、もんじゅの火災事故、再処理施設の事故、JCOの臨界事故などがおこるたびに国会で安全行政のあり方が論議されてきただけに、原子力関係者の閉鎖性と安全規制行政の怠慢に対する国民の怒りは、頂点に達しています。
 これまでのような通り一遍等の反省の弁やその場限りのやっつけ仕事で幕引きをはかることは、到底許されません。官民が膿を出し切り、国民が納得するけじめをつけて出直す、そしてわが国のエネルギー政策について、もう一度原点にたち返った国民的論議を徹底する、そうした真摯な反省と総括なくして、前進はありえません。
 経済産業大臣は、わが国の安全規制行政に対する信頼が崩壊した現状をどう受けとめているか、お伺いします。

(今回の事件の行政責任について・・・経済産業大臣)
次に、トラブルを会社ぐるみで隠ぺいし、国民の原子力発電に対する信頼を失墜させた企業への厳しい責任追及は当然のことですが、同時に、経済産業省の原子力安全保安院など国の管理責任も厳しく問われねばなりません。
 政府が米国GE子会社の元社員から東京電力原子力発電所点検記録の書き換えなどの不正が行われた旨の申告を受けたのは、2000年7月です。それから2年以上も経って不正が明るみになり、政府もようやく対応に着手しました。もし、事が闇に葬られたままなら、何も対策を講じなかったというのが政府の本音ではありませんか。
 保安院、原子力安全委員会のダブルチェック体制も、実は、事業者に丸投げされた安全検査の結果に対し、その妥当性を評価する能力が欠如していた内情が明らかになったのです。国の原子力政策に対する国民の信頼を損なった行政責任は、決して免れることができません。行政責任を平沼大臣はどう考えているのか。今回提出している法案に目途がついた後、大臣自らが辞任する考えはないのですか。幕引きを急ぐあまり、責任の所在をあいまいにしては、失われた信頼は決して回復しません。所見を求めます。

(独立した原子力安全規制機関の設置について・・・内閣官房長官、経済産業大臣)
 保安院を中心とした原発の安全管理体制の限界に対し、民主党は、保安院を経済産業省から完全に独立させ、内閣府に移すよう主張しています。二〇〇〇年三月には、「原子力安全規制委員会設置法案」を提出して政府に改革を迫ってきました。
 保安院と原子力安全委員会がチェックするという、緊張感のない中途半端なシステムが、今回の不正事件を見ぬけなかったことは、紛れもない事実であります。
 原子力安全委員会は、原子力や放射能の専門家5人がメンバーとなり、その下に審査会や専門部会が設けられていますが、規制に関する諮問機関に過ぎず、強い権限が与えられていません。しかも、主な役割は、行政府の措置を書類でチェックすることに終始しており、現場感覚もあまり持ち合わせず効率的な仕事ができる機関とは到底言えません。
 保安院についても、今回のトラブル隠しに関して、誰が、いつ、どのように不正を行ったのかを具体的に解明できず、検査能力の欠如が目の当たりになりました。経済産業省の関連機関であることから、その独立性に疑念を持つ声が巷間満ちていることを政府は直視すべきです。
 また、保安院の原子力部門は、各発電所に配置する保安検査官も含めておよそ260人、安全委には、約100人しかいません。約3千人の職員がいる米国の原子力規制委員会に比べて何と脆弱な機関でしょうか。専門的な知識や検査能力を持った技術者・研究者を核とする「日本版NRC」の創設を急ぐべきであります。青森県知事をはじめ、原子力立地自治体の関係者も保安院を経済産省から独立させるよう国に求めています。原子力発電や関連施設を受け入れてきた地元の声をこれまで以上に大切にしなければならない時です。こうした声に政府は、耳をふさぐべきではありません。
 民主党は、経済産業省から保安院を完全に切り離し、原子力安全規制に特化した独立性のある「原子力安全規制委員会」を内閣府に創設すべきだと、あらためて提唱します。原子力発電に対し失われた国民の信頼を回復するためには、最低限実現すべき改革と考えますが、内閣官房長官、経済産業大臣の答弁を求めます。
 また、原子力行政に対する自治体の信頼を回復し、連携を強化するために、新しい仕組みを確立していく計画や行動計画を政府は、用意しているのですか、経済産業大臣の答弁をいただきたい。

(自主点検措置の法定化について・・・経済産業大臣)
 今般、政府は、再発防止策の一環として、自主点検の法定化を打ち出しました。しかし、実態は、自主点検自体が既に法定「定期検査」の一部をなしているため、法定化しても実態は変わらないと言わざるを得ません。自主点検を法定化するということ自体が矛盾に満ちた措置と言えないでしょうか。
 諸外国の例を見ても、自主点検は民間監査、法定検査は国が監査するというシステムが合理的、かつ効率的であり、政府案では、国と民間の責任体制が曖昧なままです。経済産業大臣の答弁を求めます。

(維持基準の導入について・・・経済産業大臣)
 また、政府は、あらたに設備の健全性評価の手法として、維持基準の導入を図ろうとしています。完全無欠を求める現行の検査基準が、今回の隠ぺい、改ざん問題を誘引した一因ではないかとの指摘もあり、現にアメリカでは、機械学会で作成された基準が適用され、イギリス、フランス、ドイツ、韓国、台湾でも現実的な維持基準が設けられています。
 しかし、原子力安全規制行政に対する国民の信頼が失墜した今、多くの国民や立地地域の間では、原発の安全基準をなぜ今緩和するのかという疑念が広がっており、政府には、国民の理解をえる努力が著しく欠けていると言わざるをえません。なぜ新たな基準を導入せねばならないのか、また、関係学会等が策定する民間規格を活用するとされていますが、その作成過程において、透明性をどう確保するのか。立地地域、国民の理解が十分得られるよう、当然、公正なメンバー構成、公開の場で行うべきですが、政府の答弁を求めます。


(原子力安全基盤機構の創設について・・・経済産業大臣)
 次に、政府提出法案では、三つの公益法人を統合して独立行政法人「原子力安全基盤機構」を発足することとしております。
 これは、原子力発電所の検査や設計に関する安全性の解析及び評価を行うことにより、安全確保のための基盤整備を目的としていますが、目的とおり機能するかどうかは、この機構の評価能力と人材、組織の独立性にかかっていると考えます。原子力安全委員会のように、天下りや各省庁からの出向人事、3年で転属といったことになるであれば、現状となんら変わるところがありません。真に有能な人材が採用確保され、高級官僚の天下りを阻止できるような仕組みがどこに担保されているのでしょうか。
 また、特殊法人を独立行政法人化する流れの中で、公益法人の独立行政法人化は、行革の流れに逆行し、経済産業省の傘下にある組織を肥大化させることにつながることにはなりませんか。経済産業大臣の明快な答弁を求めます。

(内部告発制度について・・・内閣官房長官)
 今回の不祥事は、米国人の申告が発端となっていますが、原子力安全保安院は、告発があってから調査公表まで2年も放置したばかりか、内部告発者の名前を東京電力側に漏らすという大失態を演じました。
 今回、政府は、外部の中立的な専門家からなる「申告委員会」を保安院に設置するとの改善措置を盛り込んでいますが、アメリカにおける保護制度も比較したとき、この程度の措置では、不十分ではないかと考えます。あいつぐ食品の不正や自動車のリコール事案も内部通報がきっかけで発覚しており、内閣府の国民生活審議会も、企業の不正行為を告発した人が不利益な扱いを受けないよう、公益通報者保護措置の法制化を提言しています。
 民主党は、官公庁も含めて抜本的な法整備を急ぐべきだと考えますが、内閣官房長官の答弁を求めます。

(エネルギー政策の見直しについて・・・経済産業大臣)
 次に、今後のエネルギー政策について、政府の見解を順次お尋ねします。
 政府は、これまで京都議定書における国際公約を達成するためにも、原子力発電を重要なエネルギー供給源と位置づけ、2010年におけるエネルギー需給見通しを公表していますが、今回の不祥事を契機に原子力立地をめぐる地域住民の不信感はかつてなく高まっています。原子力発電の新規立地や核燃料サイクルの既定方針が揺らぎ始めた今日、安全規制行政の信頼回復に努める一方で、原子力エネルギーの位置づけを含めたエネルギー政策の国民的論議は避けられないと考えます。
 その論点の一は、原発の運転停止が相次ぐ現在、コスト低減の社会的要請にこたえつつ、電力の安定供給は間違いなく確保されるのか、という短期的課題に明快な見通しを持っているのかどうか。
 第二は、既定の原子力発電立地計画すなわち2010年における10〜13基の新増設計画を今後とも維持するのか、それとも見直すのか。
 また、混迷を深めるプルサーマル計画や世界各国が撤退しつつある高速増殖炉計画に今後、国としてどう取り組むかのか、などについて、政府は、説明責任を回避すべきではありません。
 第三に、現行の地球温暖化対策の推進にあたり、原子力発電による地球温暖化ガス削減の比重は、現行目標のままで国民の理解は得られるのでしょうか。環境エネルギー政策の視点から、最適のエネルギー供給を視野に入れ、燃料課税、環境税制、特別会計を含めたエネルギー課税の再構築が不可欠と思うが、どう対処する方針でしょうか。
 第四に、国民は、今、再生エネルギーの将来目標値を大幅に上方修正することを求めているのではないか。私たちは、原子力エネルギーを過渡的エネルギーとして認める立場ですが、同時に、燃料電池、バイオマスのような新エネルギー開発の加速化を図るべきだと考えます。この分散型エネルギー源の開発は、地球温暖化対策のみならず、我が国産業の国際競争力強化の観点からも、国家的プロジェクトに位置づけ、経済再生の導火線とすべきであります。
 以上の諸点について、経済産業大臣の明快な答弁を求めます。

 終わりに、民主党は、地方公共団体や広く国民の意見を聴いて、それらを十分反映したエネルギー戦略を構築するため、エネルギー基本計画は官僚任せにせず、国会承認事項とするよう提唱してきたところです。今こそ国会の中に、原子力発電のありかたを含めてエネルギー政策を根本的に論議する調査委員会を設置し、中長期的なエネルギー政策の国民合意形成を期して、検討を開始するよう、各党に提案して、私の質問を終わります。

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