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2002/11/01
「知的財産基本法案」に対する本会議質問
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民主党・無所属クラブ  田中慶秋

 私は、民主党無所属クラブを代表して、政府提出の知的財産基本法案に対して、平沼経済産業大臣の見解をお伺いいたします。
 小泉総理が先日の所信表明演説で、東大阪市と大田区の中小企業について触れていました。また、視察されたとも聞いております。しかし、2、3度の視察だけでその厳しい実態は理解できないと、私は思っております。
 今、私は時間の許す限り、地元の中小・零細企業に足を運び、経営者、従業員の方達の意見を聞く機会を持つよう心がけております。その中で感じることは、資金繰りの苦労は勿論ですが、日本が築き上げてきたモノづくりの大切さが、このままでは失われてしまわないかという危機感です。後継者も育たず、工場が廃墟と化していく様子は、そのまま日本が滅びていく縮図を目の当たりにするような気がしてなりません。
 日本の製造業の99%以上が中小・零細企業で占められています。この中小・零細企業が元気になることが、日本経済がよみがえる必須条件だと私は思っております。しかしながら、日本を支えるため、この条件を満たさなければならない筈の中小企業経営者は、自分が築き上げてきた事業を守ろうと必死の努力にもかかわらず、万策尽きて命を絶たなければならない状態にまで追い込まれているのです。私の知り合いにも自殺を余儀なくされた方がいます。誠に残念に思っております。手に汗して繁栄を築き上げてきた職人の素晴らしい技術も、このままでは途絶えてしまいます。
 大臣はこの方達の心の葛藤をどれほどお分かりでしょうか。本当にお分かりであれば、総理は「改革なくして景気回復なし」ばかりを発言してはおられないはずです。今、モノづくりに携わる人達が求めていることは「改革」ではなく、モノづくりのための技術の伝承、そして誰にも邪魔されない保護政策を「より充実」させることです。そのためには優れた技術を持つ中小・零細企業が知的財産を取得しやすい環境を作り出し、競争力をつけて企業活力を充実させる事だと思います。
 その中で政府は、国家戦略の柱としてベンチャー企業の育成政策を進めていますが、他方では知的財産権に対する取り組みの遅れが指摘され、これでは時代に即しているとは決して言えません。
 かつて世界を席巻させた日本企業の国際競争力は著しく低下しております。スイスのシンクタンクの調査によれば、九三年まで八年連続首位を占めていた日本の競争力は、今年は三十位にまで転落しております。
 対照的に米国は一九八〇年代からヤングレポートに端を発した知的財産の国家戦略を打ち立てました。日本に対して強力な輸出規制圧力を加えながら、知的財産権の育成と保護のための強力なプロ・パテント政策を実行し、国家競争力の強化を図りました。二〇〇〇年における特許使用料収支については米国がトップで、二一九億ドルの黒字を、日本は八億ドルの赤字となっています。
 こうした事態に陥った背景には、政府が八〇年代までの成功のおごりに安住し、各省庁の縦割りを是正できず、知的財産に関する国家戦略を確立できなかったことにあります。
 また、過去の失敗の総括もせず、基本法案だけ提出して「事足れり」とする政府の姿勢も問題です。この国会に、特許法改正などの具体的法案も提出できず、後手後手に回っている政府には、危機意識のかけらも感じられません。我が国は、一日も早く知的財産の保護を視野に入れた国家的戦略を打ち立てることが急務であります。これまでのようなトゥー・リトル、トゥー・レイトといった対応では取り返しのつかない事態に発展しかねません。
 まず、日本の競争力低下を招いた政府の責任を明らかにした上で、知的財産戦略を組み立てるべきではありませんか。今後政府が取り組んでいく知的財産政策は今までとどこが異なるのか、通商政策なども含めた国家戦略をどう確立するのか、日本の産業競争力をいつまでにどうやって回復させるつもりなのか、明らかにすべきです。大臣の答弁を求めます。
 政府が提出した基本法案は、内閣に知的財産戦略本部を設置することを柱としています。しかしこれまで内閣に設置されたIT戦略本部、都市再生本部、総合科学技術会議、バイオテクノロジー戦略会議など、雨後の竹の子のように作られた組織を検証すると、多くの機関が機能不全に陥っています。IT戦略本部一つ取ってみても、経済産業省、総務省の縄張り争いから抜本的な政策を打ち出すことが出来ず、情報通信の面では遅れが目立ちます。私達は今般の知的財産戦略本部が実効ある機関になるのか 疑念を抱いております。知的財産権を全般的に管轄する知的財産権庁を置き、文化庁、特許庁、農水省、厚労省等にまたがる知的財産関係の全ての行政機関を整理統合すべきではありませんか。こうした行政機関の裏付けなくして本部だけ作っても、看板倒れに終わることは必至です。大臣の見解を求めます。

 政府提出の基本法案には具体案が明記されず、個別法も提出に至っておりません。とりわけ、知的財産権の基礎とも言える特許法改正が欠落していることは、政府の怠慢さを示すものです。
 また、今後、知的財産訴訟が増加することが予想され、知的財産訴訟にかかわる特許権の技術内容は高度化且つ複雑化しています。
 米国が特許紛争を一元的に扱う裁判所を設置したことに習って、知的財産権の紛争を専門的に扱う特許裁判所の設置が必要であると考えますが、政府の取り組みをお伺いしたい。

 今、日本において知的財産への関心がかつてないほど高まっています。つい先日、一民間企業の研究者である田中耕一さんがノーベル賞を受賞されました。優秀な研究者・技術者が大勢いるにもかかわらず、経済が低迷しているのは政治の責任に拠るところ大きいと言わざるを得ません。有能な若手研究者が、もっと自由に研究ができるよう環境を整備すべきと考えます。国の予算についても、若手研究者に優先的に配分する等の措置が必要であります。大臣の答弁を求めます。

 また、職人が尊ばれる文化を持った日本において、今日の繁栄を築き上げたのはモノづくりであり、そしてそれは、今もって日本の強みでもあります。しかし、その一方で日本においては製造業の空洞化が恐るべき勢いで進行しつつあるのも事実であります。
 バイオやナノテクのような先端技術の開発を進める一方で、先端技術と結びついたモノづくりは、何としても守っていかねばなりません。しかし、現実には多くの製造業者が先端技術を抱えたまま海外に渡ってしまい、その技術を現地の技術者達に開けっ広げにして盗まれてしまっております。
 技術の流出を防ぎ、なおかつ国内におけるモノづくりの更なる空洞化を防ぐために新たに出願された特許を使った製品についてはできるだけ国内で生産されるように誘導策を講ずべきと考えますが、大臣の見解をお伺いします。
 今、日本の映画や漫画、アニメ、ゲームソフトといった映像文化や歌謡曲はアジアの近隣諸国に住む人々にとっては憧れの文化です。しかし残念ながらハリウッド映画に比肩し得るような、これら日本の大衆文化もアジア諸国に蔓延する模倣品のため、その本来の経済的価値に見合った収益を上げているとは言えません。例えば、中国の音楽ソフト市場のうち、90%が海賊版で、邦楽はそのうち約三割と推定されています。
 ソフト製品だけでなく、中国における模倣品はバイクからオーディオ製品、DVDなど多岐に渡ります。政府は今後、中国における模造品対策にどのように取り組んでいくつもりですか。
 既にWTO加盟国となった中国に対しては、厳しい態度で臨んで当然ではありませんか。大臣の答弁を求めます。
 二十一世紀、元気で活力ある社会を実現するためにも、また、失われた十年を取り戻す意味でも、知的財産基本法は国家戦略の柱とすべきであります。大臣の見解を求め質問を終わります。

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