五月八日午後、中国遼寧省瀋陽市の日本総領事館に、亡命目的の北朝鮮住民と見られる五人が駆け込み、中国武装警官に連行された。今回の中国側の行為は、ウィーン条約の趣旨を逸脱し、わが国の主権をないがしろにする行為と言わざるをえない。また、連れ去られた人達の亡命申請の機会を奪うものであり、人道的立場から極めて重大な問題である。他方、総領事館への中国武装警官の侵入・連行の行為を漫然と許した現地館員の姿勢、その後の在北京大使館及び本省への不正確な情報伝達など、国家の主権を代表し、国民の安全と国益を守るべき外務省職員の責任感と倫理観が麻痺していると断ぜざるをえない。
民主党は良好な日中関係を望むものであるが、今回の事件は、わが国の主権侵害と人道的見地から中国側に強く抗議する。同時に、わが国政府のあまりに無責任な対応に憤りの念を感じる。政府に対し、以下の事項を速やかに実施するよう強く申し入れるものである。
一、 中国側に連行された亡命希望者の安全を確保し、日本側への引渡しを実現するよう、毅然として中国政府に臨むこと。そのために、あらゆる外交努力を尽くすこと。
一、 中国側に対して事件の詳細な調査と報告、及び謝罪を求めること。
一、 亡命希望者に対して、難民条約等の趣旨に基づき、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などと連携し、人道に基づく適切な対応をすること。
一、 在外公館をはじめ、外務省全職員の人権認識を高めるための再教育を実施すると共に、業務体質及び体制の抜本的な見直しを行うこと。
一、 わが国在外公館における亡命希望者への適切な対応措置を策定するとともに、再三指摘されている在外公館を含む外務省全体の情報収集態勢及び危機管理体制について、早急に改革案を策定し実行に移すこと。
平成十四年五月十日
民主党代表 鳩山由紀夫
内閣総理大臣 小泉純一郎 殿
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