目次
第一章 総則(第一条―第七条)
第二章 犯罪被害者等支援基本計画(第八条)
第三章 基本的施策(第九条―第十七条)
第四章 犯罪被害者等支援対策審議会(第十八条―第二十一条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条
この法律は、犯罪被害者(犯罪により被害を受けた者をいう。以下同じ。)及び犯罪被害者の配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他これらの者に準ずる者並びに犯罪被害の発生の防止又は犯罪被害者の救助に当たったことにより被害を受けた者(以下「犯罪被害者等」という。)が、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有することにかんがみ、国及び地方公共団体に犯罪被害者等が受けた被害の回復及び犯罪被害者等の社会復帰を支援する責務があることを明らかにするとともに、犯罪被害者等を支援するための施策(以下「犯罪被害者等支援対策」という。)の基本となる事項を定めること等により、犯罪被害者等支援対策を総合的に推進し、もって犯罪被害者等の福祉の増進に寄与することを目的とする。
(基本理念)
第二条
すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、被害の状況等に応じた適切な処遇を保障される権利を有するものとする。
2 何人も、犯罪被害者等の名誉及び生活の平穏を害してはならないものとする。
(国の責務)
第三条
国は、基本理念にのっとり、犯罪被害者等支援対策を総合的に策定し、及び実施することにより、犯罪被害者等が受けた被害の回復及び犯罪被害者等の社会復帰を支援する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第四条
地方公共団体は、基本理念にのっとり、犯罪被害者等支援対策に関し、国の施策に準じた施策及び当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施することにより、犯罪被害者等が受けた被害の回復及び犯罪被害者等の社会復帰を支援する責務を有する。
(国民の責務)
第五条
国民は、基本理念にのっとり、犯罪被害者等が受けた被害の回復及び犯罪被害者等の社会復帰に協力するよう努めなければならない。
(法制上の措置等)
第六条
政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
(年次報告)
第七条
政府は、毎年、国会に、政府が講じた犯罪被害者等支援対策の実施の状況に関する報告書を提出しなければならない。
第二章 犯罪被害者等支援基本計画
第八条
政府は、犯罪被害者等支援対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、犯罪被害者等の支援に関する基本的な計画(以下「犯罪被害者等支援基本計画」という。)を定めなければならない。
2 犯罪被害者等支援基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 総合的かつ計画的に講ずべき犯罪被害者等支援対策の大綱
二 前号に掲げるもののほか、犯罪被害者等支援対策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 内閣総理大臣は、犯罪被害者等支援対策審議会の意見を聴いて、犯罪被害者等支援基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、犯罪被害者等支援基本計画を公表しなければならない。
5 前二項の規定は、犯罪被害者等支援基本計画の変更について準用する。
第三章 基本的施策
(相談、指導等)
第九条
国は、犯罪被害者等が、被害の程度、心身の状況等に応じ、相談、指導、医療の提供、給付金の支給、被害に係る損害賠償の請求についての援助等を受けられるよう必要な施策を講ずるものとする。
(安全及び生活の平穏の確保)
第十条
国は、犯罪被害者等の安全及び生活の平穏の確保を図るため、犯罪被害者等が、被害の状況等に応じ、一時保護、情報の提供等を受けられるよう必要な施策を講ずるものとする。
(刑事手続に関する適切な取扱い)
第十一条
国は、犯罪被害者等がその受けた被害に係る犯罪についての刑事手続の進ちょく状況等について深い関心を有することにかんがみ、刑事手続における意見の表明の機会の付与、刑事手続の進ちょく状況等についての情報の提供等刑事手続に関し犯罪被害者等に対して適切な取扱いがされるよう必要な措置を講ずるものとする。
(関係者に対する訓練及び啓発)
第十二条
国は、犯罪の捜査に従事する者及び犯罪被害者等に係る相談、指導、医療等の職務に従事する者その他の犯罪被害者等の支援に関し職務上関係のある者に対し、犯罪被害者等の人権、心身の状況等に関する理解を深めるための訓練及び啓発を行うよう努めるものとする。
(教育及び啓発)
第十三条
国は、犯罪被害者等の権利に関する国民の関心と理解を深めるために必要な教育及び啓発に努めるものとする。
(調査研究の推進)
第十四条
国は、犯罪被害者等について専門的知識に基づく支援を適切に行うことができるよう、被害の実情その他の犯罪被害者等支援対策の策定に必要な事項に関する調査研究の推進に努めるものとする。
(民間の団体に対する支援)
第十五条
国は、民間の団体が犯罪被害者等の受けた被害の回復及び犯罪被害者等の社会復帰に関して行う活動を支援するため、資金の融通、情報の提供その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(施設等の整備)
第十六条
国は、犯罪被害者等支援対策を実施するために必要な施設等を整備するよう必要な措置を講ずるものとする。
(地方公共団体の施策)
第十七条
地方公共団体は、この章に定める国の施策に準じた施策及び当該地域の状況に応じた施策を実施するものとする。
第四章 犯罪被害者等支援対策審議会
(犯罪被害者等支援対策審議会)
第十八条
総理府に、犯罪被害者等支援対策審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 犯罪被害者等支援基本計画に関し、第八条第三項に規定する事項を処理すること。
二 前号に掲げるもののほか、内閣総理大臣又は関係各大臣の諮問に応じ、犯罪被害者等の支援に関する基本的かつ総合的な政策及び重要事項を調査審議すること。
3 審議会は、前項に規定する事項に関し、内閣総理大臣又は関係各大臣に意見を述べることができる。
(組織)
第十九条
審議会は、委員十人以内で組織する。
2 委員は、犯罪被害者等、犯罪被害者等の支援に関する業務に従事する者及び前条第二項に規定する事項に関し学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
3 委員は、非常勤とする。
(資料の提出等の要求)
第二十条
審議会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。
(委任規定)
第二十一条
この章に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第三項の規定は平成十三年一月六日から、附則第四項の規定は公布の日から施行する。
(総理府設置法の一部改正)
2 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。
第四条第二号の二の次に次の一号を加える。
二の三 犯罪被害者基本法(平成十二年法律第 号)第八条第三項の規定に基づき、同条第一項に規定する犯罪被害者等支援基本計画の案を作成すること。
(内閣府設置法の一部改正)
3 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。
第四条第二項中「並びに消費者の利益の擁護及び増進」を「、消費者の利益の擁護及び増進並びに犯罪被害者等の支援」に改め、同条第三項第四十六号の次に次の一号を加える。
四十六の二 犯罪被害者等支援基本計画(犯罪被害者基本法(平成十二年法律第 号)第八条第一項に規定するものをいう。)の作成及び推進に関すること。
第三十七条第三項の表独立行政法人評価委員会の項の次に次のように加える。
犯罪被害者等支援対策審議会 犯罪被害者基本法
(中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律の整備等に関する法律の一部改正)
4 中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律の整備等に関する法律(平成十一年法律第百二号)の一部を次のように改正する。
第二十九条の次に次の一条を加える。
(犯罪被害者基本法の一部改正)
第二十九条の二 犯罪被害者基本法(平成十二年法律第 号)の一部を次のように改正する。
第十八条第一項中「総理府」を「内閣府」に改める。
理 由
犯罪被害者等が、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有することにかんがみ、犯罪被害者等の福祉の増進に寄与するため、国及び地方公共団体に犯罪被害者等が受けた被害の回復及び犯罪被害者等の社会復帰を支援する責務があることを明らかにするとともに、犯罪被害者等支援対策の基本となる事項を定めること等により、犯罪被害者等支援対策を総合的に推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
本案施行に要する経費
本案施行に要する経費としては、平年度約七百三十万円の見込みである。
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