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2002/08/22
民主党エネルギー基本政策
〜2012年(第1約束期間最終年)をターゲットに
民主党経済産業部門会議
エネルギー政策WT

−目次−

概要
序にかえて
1.わが国のエネルギー政策の目指すべき方向
<基本方針>
2.戦略的なエネルギー政策を推進します
 〜エネルギー推進体制の見直し〜
3.地球環境配慮・省エネルギーに国民運動として取り組みます
 〜需要面からの取組み〜
  1)省エネ教育、啓蒙活動の推進
    および「環境教育法」の制定
  2)民生部門における省エネ推進
  3)運輸部門における省エネ推進
  4)産業部門、民生部門(業務)における省エネ推進
4.エネルギー供給源の多様化とベストミックス政策を進めます
 〜供給面からの取組み〜
  1)再生エネルギーの開発・普及の積極的推進
  2)未来エネルギーの研究開発推進
  3)化石エネルギー政策の転換
    i) 天然ガス
    ii) 石油
    iii) 石炭
  4)原子力の平和利用


民主党エネルギー基本政策の概要
序にかえて
◇地球レベルでのエネルギー需給と環境保全(特に温暖化防止)

○エネルギー〜生活・経済活動の根底を支える基礎資源。人類が安心して暮らしていくために食糧と同じく必要不可欠。

  現在の世界人口…60億人→2050年93億人、大半は途上国での増加
  一方、途上国のエネルギー消費量は先進国の6分の1
  ↓
  人口増加や途上国の生活水準向上、経済発展
  ↓
  エネルギー需要の爆発的増加
  ↓
  エネルギー資源の消費増に伴う環境負荷の増大


○環  境〜地球上に人類が将来にわたり健康かつ安全に暮らしていくために、保全しなければならないもの。

  ☆「地球環境保全」「資源確保」「経済発展」の3つの課題の同時達成が必要
  先進国の役割…省エネ断行、新しいライフスタイルへの転換、技術開発
  途上国におけるエネルギー消費増加を先進国で吸収
  ↓
  2010目途:各国の国情に合った省エネモデルを構築、途上国へ提示
  ↓
  2020:地球レベルでのエネルギー消費を抑制し、二酸化炭素
  レベルを安定化


民主党が重視する視点
規制緩和・競争促進 省エネ、クリーンエネルギーなど地球環境配慮 世界的規模の量的確保

1.基本方針

・省エネ先進国日本・・省エネ先進国として他国の模範に
・戦略的エネルギー政策・・一元的行政機関の設置、基本計画を国会承認
・地球環境保全・省エネを国民運動に・・COP3公約達成
・政策のプライオリティー・・エネルギーコスト低減を一層重視
・クリーンエネルギーの推進・・再生可能エネルギー等を重視
・アジア諸国との協力・・環境対策、省エネ、原子力で協力
・安全優先の原子力・・安全性を最優先、慎重に推進


2.「戦略的なエネルギー政策の推進」〜エネルギー推進体制の見直し〜

・地球環境エネルギー庁の設置・・各省庁のエネルギー部門を統合
・国家エネルギー戦略の構築・・国民からの意見聴取、情報公開
・予算、税制の再構築・・予算の無駄を排除、税体系を根本から見直し
・競争促進、規制改革推進・・公平・公正競争確立、高コスト体質の是正


3.「地球環境保全・省エネルギー」〜需要面からの取り組み〜

・考慮する視点・・国民のやる気、生活スタイル、産業構造、省エネ技術、風土
・省エネルギー教育、啓発活動推進・・環境教育法制定、環境省エネ教育を徹底
・家庭の省エネ推進・・製品寿命延長、ピークカットシステム、サマータイム検討
・運輸部門の省エネ推進・・クリーンエネ車普及、物流高度化、燃費改善
・産業、民生業務の省エネ推進・・ESCO事業、待機電力カット機器の開発等


4.「エネルギー供給源の多様化とベストミックス」〜供給面からの取組み〜

・考慮する視点・・量の確保、環境保全、コスト等、技術、リスク
・再生可能エネルギー推進・・比率を10%程度に向上、電力買取を積極推進
・未来エネルギー推進・・燃料電池を重点支援、核融合や水素エネルギー開発
・脱化石エネルギー・・・石油依存度を40%程度に
 *天然ガス・・パイプライン整備、GTL推進、メタンハイドレード開発
 *石油・・効果的な自主開発、天然ガスとの連携、石油産業の体質強化
 *石炭・・他への燃料転換、環境に配慮した効率的利用、ガス化技術支援
・原子力の平和利用・・安全規制委員会設置、防災体制強化、核燃開発

                      民主党経済産業部門会議
                      エネルギー政策WT



民主党エネルギー基本政策
[2012年(第1約束期間最終年)をターゲットに]

<序にかえて>
◇地球レベルでのエネルギー需給と環境保全(特に温暖化防止)

 エネルギーは、生活、経済活動の根底を支える基礎資源であり、人類が安心して暮らしていくためには、食糧と同じく必要不可欠です。そのため、エネルギー問題を考えるにあたっては、国境を越えた地球レベルでのエネルギー需給を考えなければなりません。

 20世紀における先進国を中心にした経済発展は、科学技術の進歩とともに、化石燃料の大量消費によってもたらされました。今後途上国における生活水準の向上は急務であり、限りあるエネルギー資源を適正に配分することにより、世界全体の発展を目指さなければなりません。現在、世界の人口は60億人、2050年には93億人になると言われており、その大半は途上国での増加が見込まれています。また、途上国における1人当たりエネルギー消費量は先進国の6分の1にすぎませんが、今後の人口増加や生活水準の向上、経済発展等により、エネルギー需要が爆発的に増加するのは明らかです。

 一方、資源の消費に伴う環境負荷の増大を見過ごすことはできません。「地球環境の保全」は、「資源の確保」「経済の発展」とともに、地球上に人類が将来にわたり健康かつ安全に暮らしていくために不可欠です。現在最も深刻な問題の一つは、地球温暖化の現象と言われています。CO2などの温室効果ガスによる影響は、異常気象による災害や飢饉、伝染病の蔓延に加え、海面上昇による陸地の水没など極めて深刻な事態を引き起こすと言われており、地球レベルでのエネルギー需給を考慮するうえで、最重視すべき要素です。これまで先進国は、化石燃料の燃焼時に生じるNOx、SOx等による公害を経験し、その対応策を進めてきており、同様の問題に直面している途上国に対して、積極的に技術移転や技術協力を進め、問題解決に努めなければなりません。

 21世紀を迎えた今、有限であるエネルギー資源の消費を適正水準に抑制するとともに公平に分かち合い、環境を保全しつつ、途上国を中心に生活水準を向上させる世界全体の持続可能な発展は、地球上の全ての人々にとって喫緊の重要課題です。これらの課題を解決するためには、これまでの経済発展を支えてきたエネルギー多消費型社会からの転換を図る必要がありますが、その道筋は未だ確かなものとはなっていません。各国が各々の利害を超えて真摯な議論を重ね、この難問を解決していかなければなりません。

 今少なくとも、我が国を含めた先進国に求められているのは、省エネを断行し、新しいライフスタイルへの転換を図るとともに、省エネやエネルギー利用に係る技術開発を積極的に進め、途上国におけるエネルギー需要の増加をできる限り先進国で吸収していくことです。21世紀最初の10年で、先進国それぞれがその国情に応じた省エネモデルを構築して途上国に提示し、途上国が選択したモデルに基づいて省エネを進めることにより、2020年には、地球レベルでのエネルギー消費を大幅に抑制し、CO2レベルを安定させます。その観点からも、京都議定書の批准に向けて、我が国としても最善の努力をしていかなければなりません。


1.我が国のエネルギー政策の目指すべき方向

  我が国に課せられた課題は、資源小国として、いかに安定してエネルギーを確保するか、そして地球的問題として、いかに持続可能で環境にやさしいエネルギーを確保するかです。他方、これらエネルギーの安定供給、地球環境保全との調和を十分考慮しつつ、経済のグローバル化等に対応したエネルギーコストの低減を図る必要があります。競争原理を活用し、事業者の一層の創意工夫による効率化を促すとともに、行政におけるさらなる情報公開や規制改革を進めなければなりません。
また、我が国のエネルギー事情を考慮する必要があります。すなわち、1.地理的条件(他国との電力ネットワークなし、パイプラインなし)、2.エネルギー資源(一次エネルギーの81%を海外から輸入)、3.自然環境(平地が少なく、災害が多い)、4.社会環境(都市部は世界的にもエネルギー密度が高い、地価が高い、防災など社会的にも、高い安全信頼度が要求されている)の4点です。
 一般にエネルギー問題というと、地球環境保全、安定供給、経済成長という3つの相反するものの同時達成、トリレンマの解決を言いますが、我々はこの3つが相反するものとは考えません。環境を考慮しながら省エネ化することは、安定供給拡大に直結するばかりでなく、ライフスタイルの変化(良き市民としての哲学、教育の構築)に連動します。また、省エネ化は産業の高度化、技術革新をもたらすと考えます。
つまり、われわれが重視する視点は、1.省エネ、クリーンエネルギーなど地球環境への配慮、2.安定供給を行うための量的確保、3.消費者の視点に立った規制改革・競争促進です。
わが国はその中において省エネ先進国として、以下の基本方針に示されるような需要・供給の両面におけるモデルを提示し、世界のリーダーとなることを指向すべきであると考えます。

<基本方針>

(1)(省エネ先進国日本)省エネ先進国として他国の模範となり国際社会に貢献することを目指します。

(2)(戦略的エネルギー政策)エネルギー政策を総合的に実施する機関「地球環境エネルギー庁」を新たに設置し、一元的なエネルギー推進体制を構築するとともに、戦略的なエネルギー政策を推進します。また、エネルギー基本計画を国会承認事項にするとともに、エネルギーに関する情報公開をより一層促進します。

(3)(地球環境配慮・省エネを国民運動に)地球温暖化防止、気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)の公約達成に向け、環境税の導入をはじめ、エネルギー多消費につながるライフスタイル、経済活動を見直し、省エネルギーを国民運動として進めます。

(4)(政策のプライオリティ)国民生活と日本経済を維持するため、国の責任においてエネルギーの安定確保に努めます。また、地球環境保全、安定供給を考慮しつつ、一層の効率化を追求し、エネルギーコスト低減に努めます。

(5)(クリーン・エネルギーの推進)再生可能エネルギーの開発・導入を積極的に推進し、一次エネルギー総供給に対する割合を高めるとともに、天然ガス利用やクリーンエネルギー車等の普及促進により、石油依存度の低減を図ります。また、未来エネルギーの研究開発も積極的に推進します。

(6)(アジア諸国との協力)アジア諸国のエネルギー確保および緊急対応能力の強化や環境対策、省エネ推進、原子力利用の安全性向上、再生可能エネルギー利用のための技術支援、技術移転などの国際協力を強化します。

(7)(安全最優先の原子力)原子力政策は安全性を最優先に過渡的エネルギーとして慎重に推進します。


2.「戦略的なエネルギー政策を推進します」
〜エネルギー推進体制の見直し〜

 我が国のエネルギー行政は、経済産業省資源エネルギー庁と文部科学省、さらにバイオマスなら農林水産省、運輸政策なら国土交通省など、研究開発、予算措置等が各省庁に分散しており、戦略的なエネルギー政策が構築されているとは到底言えない状況にあります。そのため、エネルギー政策を総合的に実施する機関を新たに設置し、一元的なエネルギー推進体制を構築し、戦略的なエネルギー政策を推進します。その上で、エネルギーに関わる予算、税制を再構築するとともに、競争力のあるエネルギー産業を支援するため規制改革に取り組みます。

(1)地球環境エネルギー庁(仮称)の設置
 資源エネルギー庁と各省庁のエネルギー関連部門および地球環境関連部門を統合して、エネルギー政策の企画立案ならびに総合調整を行う「地球環境エネルギー庁(仮称)」を設置し、環境省と協議しつつ戦略的なエネルギー政策を推進します。

(2)国家エネルギー戦略の構築―エネルギー基本計画の国会承認―
  地球温暖化防止のための省エネや原子力発電推進とコスト削減を目的とする自由化との政策の整合性、国家と市場の役割等を総合的に考慮し、さらに地方公共団体や広く国民の意見を聴いて、それらを十分反映した国家エネルギー戦略を構築します。また、エネルギー基本計画を国会承認事項とするとともに、エネルギーに関する情報公開をより一層促進します。

(3)エネルギー関連予算、税制の再構築
戦略的なエネルギー政策を推進するために、その財源確保が公平・公正に行われているのか、予算の配分が必要かつ十分なものになっているかを検証します。特に、石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計、電源開発促進対策特別会計については、新エネルギー、再生利用エネルギーの名のもとに無駄な予算が使われていないか厳しくチェックするとともに、後者についても一般会計を経由して予算編成を行う仕組みに改めるなど、一部を環境税に組み替えるとともに、既得権化しているエネルギー予算の抜本的見直しに取り組みます。
また、燃料課税、自動車関連諸税を含めたエネルギー税制については、特定財源・特別会計制度の見直し、環境対策等の使途の明確化、暫定税率の本則化、省エネへのインセンティブ等の視点をふまえ、環境税導入や税体系の簡素化を図る中で再構築します。
そして、「GOOD減税、BAD課税」の原則に立って、技術開発の推進と強力な環境関連投資減税の再構築によって、産業界の省エネ、燃料転換の自助努力を支援し、環境技術で世界のトップランナーを目指します。特に、温暖化防止の観点から、CO2排出量=炭素含有量に着目し、石炭を含む化石燃料を課税対象とする環境税を導入します。また、電力については電源開発促進税のうちグリーン化に遣われている部分を組み替えて課税する炭素・エネルギー税とします。石油税は税率を引き下げ、負担が急増する石炭課税の税率軽減措置等を図ります。環境税については、産業界等の積極的な取り組みを支援する制度を創設し、欧州に見られる産業界と政府の協定(イギリス、ドイツでは最大80%減免)などを参考とします。

(4)競争促進を柱とした規制改革の推進
  エネルギー産業においては、まず自由・公正な競争を確立することが重要です。規制緩和の推進、公正な競争ルール確立、事業者の不断の効率化努力や改善努力への支援等によって、価格の低下、サービスの向上など国民の利益を図ることが重要です。また、規制緩和に取り組んだ海外の動向とともに、わが国のこれまでの実績及び本格的な競争に向かいつつある現状をしっかりと検証することが大事です。エネルギー産業においては、公益的課題を考慮しつつ、効率的な供給システムを確立することが重要です。



3.「地球環境配慮・省エネルギーに国民運動として取り組みます」
〜需要面からの取組み〜


地球環境に配慮した持続可能な循環型経済社会に向け、2004年度中に環境税など経済的措置の導入をはかるとともに、エネルギー多消費につながる慣習や経済活動を国民一人ひとりが見直し、21世紀の少子高齢社会における省エネ型ライフスタイルを追求します。省エネは、日本が京都議定書で公約したCO2排出量削減にもつながるものであり、重要な国民運動として推し進めていきます。経済成長率にもよりますが、2012年では、‘99年度比3.8〜9.8%の最終エネルギー消費の削減を目指します。

(エネルギー需要を考慮する視点)

 国民のやる気:ある試算によれば、平均的な家庭に比較して、省エネ家庭ではエネルギーを16%も節約し、無頓着家庭では25%も多く使っている。自動車、家電、冷暖房、コンロ等の利用でちょっとした行動を積み重ねていけば、2−3割の省エネになります。これは、日本全体でも数%の省エネにつながります。国民の“やる気”を引き出せば、大胆な省エネは実現可能です。


 生活スタイル:東京など大都市での台所のゴミの約4割は食べ残しと言われています。耐久消費財、アパレル、書籍等でも同じ状況です。日本人が外国に住むとゴミを多く出すので嫌がられるという話もよく聞かれます。江戸時代にはしっかり資源循環型社会が根付いていたことを思い起こし、生活スタイルの抜本的な見直しが求められます。


産業構造 :GDPでは1・2次産業は約4割を占めていますが、エネルギー消費では約8割を占めています。他方、3次産業のGDPは約6割ですが、エネルギー消費は約2割となっています。単位あたりのエネルギー消費の比率は、1・2次産業と3次産業では、6:1となっています。産業構造が大きく変われば、成長率は高くても、エネルギーを過大に消費しない経済運営も十分可能です。


省エネ技術:日本は世界最高水準の省エネ技術を有しています。トップランナー方式の採用など世界にも類を見ないほど厳しいルールを導入し、技術者は日々研鑚を積んでいます。エネルギー有効利用の促進とあわせ、こうした省エネ技術をさらに強化していく必要があります。


日本の風土:わが国は、冬にエネルギーを最大に消費する欧州諸国と異なり、夏にエネルギーのピークが来ます。そうした気候や地形など日本の風土に適応する独自の省エネ方式が求められます。


(1)省エネルギー教育、啓発活動の推進および「環境教育法」の制定<BR>
持続可能な循環型経済社会に向けたライフスタイルの見直しと意識の改革を図り、新たな国民的価値観を創造するため、民主党提出の「環境教育法」を制定し、国民から企業に至るまでバランスのとれた環境エネルギー教育、啓発活動を推進します。
特に学校教育においては、省エネルギーを含めた環境・エネルギーに関する講座を必須科目とするなど初等教育から大学教育を含むあらゆる教育機会において、環境重視の省エネルギー教育を徹底させます。また、省エネルギー関係の情報提供などの措置強化に努めます。

(2)民生部門(家庭)における省エネの推進

1.ライフサイクルの長期化(製品寿命の延長化)
 建物、自動車、家電製品、家具等の寿命が、欧米諸国とくらべて短いと指摘されています。自動車、家電等などの使用期間を25%伸ばすとエネルギーを5.7%、100%伸ばすと32.9%節減できるとの試算もあります。国民の間で「ものを大事にする心」を醸成しつつ、省エネ型製品普及策やエネルギー浪費型製品の抑制策を講じつつ、耐久消費財の製品寿命の長期化、修理事業者の育成、中古市場の整備充実などに資する環境を整備します。


2.住宅の断熱施工による省エネ化
 家屋の断熱性能向上を図るため建築基準法などの見直しによる規制的誘導措置を行います。また、建物の新築・増改築時に断熱施工を促進する措置を講じます。


3.夏のピークカット等の促進
 夏場のピーク電力(特にクーラーの使用)を賄うためだけに、多くの発電施設を建設しなければならないという問題があります。国民にピーク時の節電について意識喚起を行うとともに、ECHONET(電力線や無線を利用した次世代設備系ホーム・ネットワークで、自動的に不用機器の運転カット等を行い、無駄な運転を抑制する)の普及促進などによって家庭等の民生業務部門の省エネ化を支援します。


4.サマータイムの導入検討
 石油換算で50万kl、わが国の省エネルギー政策の1%の節約につながるとの試算も踏まえ、時計のねじを年2回合わせ直すだけで、太陽の光を有効に生かすことのできるサマータイム制度の導入について、国民の省エネに対する意識を高揚しつつ、各層の意見を集約しながら、検討を進めていきます。


(3)運輸部門における省エネの推進

1.クリーンエネルギー車の普及促進
 クリーンエネルギー自動車・低公害車、低燃費車の普及について、2010年度で348万台という政府目標を一層加速させるため、政府・地方自治体など公的機関による導入を促進するとともに、クリーンエネルギー自動車の購入補助、減税措置、ガソリンスタンド等にクリーンエネルギー専用の燃料供給設備を併設するエコ・ステーション設置への支援等を図ります。


2.物流・ITSの高度化の推進
 地球温暖化対策としてモーダルシフト(効率的で環境にやさしい交通・物流システム)やノーカーデーの実施などを推進します。また、ITS(高度道路交通システム)の高度化により、交通渋滞の緩和や交通事故の削減、無駄な移動を抑え、環境問題の改善などに努めます。


3.車両単体の燃費改善の促進
 現在商品化されている製品のうち、エネルギー消費効率が最も優れている機器の性能以上にするという省エネルギー法に基づく「トップランナー方式」によって自動車の燃費改善が進んでいます。さらなる燃費改善を促進するため、エンジンの効率化、車両の軽量化、ボディの空気抵抗の低減などさまざまな技術開発等に対する支援等を図ります。


(4)産業部門、民生部門(業務)における省エネの推進
 「GOOD減税、BAD課税」の原則に立って、技術開発の推進と強力な環境関連投資減税の再構築によって、産業界の省エネ、燃料転換の自助努力を支援し、環境技術で世界のトップランナーを目指します。
重厚長大、エネルギー多消費型産業を中心とした産業構造からITによる産業ソフト化、サービス化にさらに比重を置いた省エネルギー型産業構造への計画的な転換を図るため、実効ある誘導政策を推進し、企業部門全体のエネルギー消費量の減少に努めます。

1.省エネルギー化への転換支援
 環境税を含む経済的措置の具体化、省エネの自助努力を促進する省エネ減税に加え、省エネルギー法による規制的誘導措置やESCO事業(省エネ診断サービス)導入などについて、予算・税制面からの助成措置を強化します。また、エネルギー利用の効率化を図るため、電力の負荷平準化のための蓄熱システム、ガス冷房などの普及促進に努める一方、省エネビルのラベリングなどの手法導入も検討します。


2.省エネルギー技術開発・普及の強力な推進施策の展開
省エネルギー技術開発を本格的に推進するため、高効率ガスタービン、廃熱利用技術、コジェネレーションシステム開発などの大型省エネルギー技術開発については、ナショナルプロジェクトとして積極的に推進します。また、エコラべリング(環境評価付け)等も活用し、省エネルギー性を高めた建築物や待機電力(家庭の全消費電力量の約10%)カットする機器など省エネルギー型民生用機器の技術開発及び普及に対する支援策を強化します。


4.「エネルギー供給源の多様化とベストミックス政策を進めます」
〜供給面からの取組み〜

 エネルギー資源は戦略物資としての側面を有しています。その資源のほとんどを輸入に頼っているわが国のエネルギー基盤は極めて脆弱です。経済を持続的に発展させ、国民が安心した生活を送れるよう、国が責任をもってエネルギーを安定的かつ効率的に確保します。そのため、エネルギー供給源の多様化はもとより、輸入先の分散化等外交努力を傾注しつつ、エネルギー安全保障を確立するとともに、市場原理を活用した一層の効率向上によりエネルギーコストの低減を図ります。また、石油依存度を欧米並の40%にすることを指向しつつ、多様なエネルギーのベストミックスを追求していきます。さらに、グローバルな視点に立ち、わが国のエネルギー産業をより強靱な『総合エネルギー産業』へ脱皮させる誘導政策も講じていきます。


(エネルギー供給を考慮する視点)

1.量の確保:ここ30年で我が国のエネルギー輸入依存度は、約9割から約8割へと低下していますが、依然として輸入頼みの状況に変化はありません。例えば、8割近かった石油依存度は、現在約5割と一定の脱石油は進んだものの、中東依存度は逆に約20ポイント増加して、石油危機以降最高の約88%を記録しています。このような状況に鑑みれば、一層の脱石油、脱中東等を進め、エネルギー供給源を多様化させる必要です。さらに、今後アジア地域においてエネルギー需要が増大することは明らかであり、対産油国、対アジア諸国といった複眼的な視野を持ち、欧米メジャーとの連携を含めた官民の戦略的外交の確立が急務です。


2.環境保全:京都議定書批准により、我が国は憲法98条の条約遵守義務を負っています。温室効果ガス6%削減の目標達成は容易なことではありませんが、これを契機として、世界のモデルとなる環境立国を目指し、再生可能エネルギー等環境負荷の少ないエネルギーの普及と環境負荷低減のための技術開発をより一層促進しなければなりません。


3.コスト等:世界経済のグローバル化に伴う大競争時代の到来により、国内産業の空洞化が懸念される今日、高コストの是正、内外価格差の解消により、わが国経済の国際競争力強化を図らなければなりません。わが国は、エネルギー輸入依存度が高いこともあり、欧米と比較してエネルギーコストは高いです。そのため、規制改革の徹底と市場原理の活用によって、電力やガス等二次エネルギーを含め一層の効率向上を図り、エネルギーコストを低減させる必要があります。また、新エネ等これから新規事業者の参入が期待される分野において、不必要な規制がある場合は早急に整理・縮小する必要があります。

4.技   術:技術開発の推進こそが、エネルギーコストの低減、さらには量の確保、環境保全も含めたエネルギー問題の抜本解決へと結びつきます。分散型エネルギー社会の構築を視野に、環境に優しいが高コストである再生可能エネルギーや燃料電池等に係る技術を向上させるとともに、NAS電池等画期的蓄電技術や水素エネルギーなど未来エネルギーの研究開発も積極的に進めるべきです。さらに、風力、マイクロガスタービン、小規模水力など地域の特性を生かしたエネルギー開発をすすめます。

5.リ ス ク:同時多発テロを契機とした米国によるイラクへの軍事攻撃の恐れやイスラエルとパレスチナの軍事衝突によって中東情勢が緊迫化するなど、石油の安定供給は予断を許さない状況です。そのため、エネルギー安全保障の点からも産油国はもちろん、東南アジア等シーレーン沿岸諸外国との対話や協力を進め、関係強化を図る必要があります。

(1)再生可能エネルギーの研究開発・普及の積極的な推進
地球環境問題、エネルギー供給源の多様化、雇用・新産業創出等に資する再生可能エネルギーを21世紀を切り拓く不可欠な存在と位置づけ、その研究開発・普及を積極的に推進し、風力、太陽、バイオマス、波力・海洋温度差等の海洋エネルギーなど再生可能エネルギーの一次エネルギー総供給に占める割合を、EUにおける導入目標をふまえ2012年までに10%程度に向上させることを目指します。

1.再生可能エネルギー普及促進のための環境整備
風力、太陽光、バイオマス、波力・海洋温度差等の海洋エネルギーなど再生可能エネルギーによって発電された電気の買取りを一定の条件の下に積極的に推進するとともに、太陽熱や雪氷冷熱など熱エネルギーの利用促進を図るため、優遇税制等の環境整備を行います。

2.再生可能エネルギー利用技術開発の推進
技術的ブレイクスルーが期待される再生可能エネルギー利用技術について、その研究開発予算を大幅に増額します。

3.小規模水力発電の技術開発、普及促進
古くからの日本固有の貴重なエネルギー源であり、再生可能エネルギーの太宗を占める水力について、既設発電所の効率向上に努めるとともに、自然環境に十分配慮しながら、流れ込み式など小規模水力発電の技術開発、普及を促進します。また、小規模水力発電は開発途上国において膨大なポテンシャルを有しており、これら地域における開発支援にも重点的に取り組みます。


(2)未来エネルギーの研究開発推進等

1.燃料電池の開発・実用化への重点支援
燃料電池は、2003年頃から実用化が見込まれ、二酸化炭素の排出抑制、エネルギー安全保障の確保、新規産業・雇用創出など多くのメリットが期待されています。燃料電池支援を最重点と位置づけ、2010年に自動車約5万台、定置用約210万kWを目指し、戦略的技術開発の推進、税制金融上のインセンティブ付与など抜本的な支援策を講じ、水素エネルギー社会の扉を開きます。現行の電気事業法では、発電設備を「事業用」とし1台ごとに主任技術者を定めて厳しい保安を義務付けていますが、電気安全保安の確保を前提に、こうした規制の緩和等を進めます。

2.その他の未来エネルギーへの支援
未来エネルギー(従来型エネの新利用形態や再生可能エネ以外の新エネ)は、エネルギー問題の抜本的解決が期待できる反面、そのブレイクスルーまでには、膨大な時間と資金を必要とします。そのため、核融合や水素エネルギーなどについては国家的プロジェクトとして、諸外国と協力して研究開発を推進します。
また、エネルギーの効率利用につながるNAS電池や石炭ガス化複合発電などの技術開発に対しても支援を行うなど、技術的に選択可能なエネルギーの幅を広げるための研究開発を推進します。

(3)化石エネルギー政策の転換
 石油に過度に依存した化石エネルギー政策を転換し、セキュリティー向上、環境保全などを優先させる新しい政策を構築します。

(・)天然ガス
天然ガスは化石エネルギーの中でCO2排出原単位が最も小さく、地球温暖化防止に有効であることから、拡大を図るべきエネルギー供給源です。今後世界的に石炭、石油から天然ガスへの燃料シフトが起こることを考慮し、積極的な開発支援を行うほか、インフラ整備を進めるとともに、ガス・コジェネレーション、ガス冷房等により普及促進を図っていきます。マイクロガスタービンなどはガスコジェネと一体的に活用されるように誘導策を講じます。

1.国内における利用環境整備
LNG基地や国内パイプライン網の建設、LNGタンカーの国内建造など天然ガス利用環境の整備を進めます。近未来において有望な石油代替エネルギーで、硫黄分を含まない環境上優れた燃料で、ディーゼルエンジンでも利用できるGTL(天然ガス液化技術)の利用を推進します。

2.天然ガス開発に対する支援
天然ガス開発については、その経済性、供給安定性等幅広い観点から検討を行い、サハリン等からのパイプライン網整備と合わせ、必要なものについては、積極的に開発を支援します。また、わが国近海に大量に存在し、国産天然ガス資源として有望なメタンハイドレード等の新型天然ガス資源の研究開発を促進します。

3.天然ガス自動車の普及支援
クリーンエネルギー自動車である天然ガス自動車の普及を積極的に支援します。


(・)石油
  石油は輸送用燃料に利用されるなど、21世紀においても主要なエネルギーであると予想されることに鑑み、輸入調達先の多角化による中東依存度低減を図るとともに、産油国との関係強化を図ります。

1.諸外国との協力関係構築
外交、経済協力、投資、貿易、共同事業などによる「産油国との協力関係の強化」および「IEA加盟国との協力・協調」と、国際石油情勢の共通認識、情報共有、緊急時施策の充実・連携強化などの「アジア諸国との政策協調」を進めます。また、欧米メジャーとの連携強化も図ります。

2.効果的、効率的な石油自主開発政策の推進等
石油公団による失敗を教訓として、国の関与はリスクマネー供給や研究開発等エネルギーセキュリティ確保の観点から必要不可欠なものにとどめつつ、ワンプロジェクト・ワンカンパニー方式を見直し、中核的な企業グループの育成を図るなど、効果的、効率的な自主開発政策を推進します。天然ガス開発と一体化した総合的な視点からの取り組みを強化します。また、市場の活用による石油の取引方法の多様化、輸入方法の多様化ならびに輸入地域の多角化を図ります。

3.石油備蓄の維持・効率的運用
わが国の石油供給構造の相対的脆弱性からすれば、緊急時に備えた石油備蓄の重要性は高まっていますが、国家備蓄、民間備蓄を合わせたわが国全体の備蓄水準は、欧米の主要石油消費国より相対的に低い状況にあります。そのため、財政状況を踏まえつつ、IEA加盟国が協調して行う備蓄放出に適切に対応しうる国家備蓄水準の達成を目指します。また、国家備蓄の統合管理については、効率的な運用体制を構築し、経費削減に努めるとともに、民間石油会社の余剰タンク等の活用を促進します。

4.石油産業の体質強化
石油産業の体質強化は、石油の安定確保と効率供給を図るためにも喫緊の課題です。過剰設備の処理を含む製油所の国際競争力強化、物流・流通機構の改革等を推進するとともに、適正な競争環境下の民間活力の発揮、国際化の観点から、石油産業の上流、下流、ユーザーを含めた総合的なエネルギー産業への脱皮につながるような誘導政策を進めます。

5.環境対策の推進
環境対策として、軽油の深度脱硫装置の設置などを促進するとともに、一層の低硫黄化などの対策を進めます。


(・)石炭
 石炭は、煤塵、SOx、NOxなどのほか、原単位におけるCO2の排出量が他の化石燃料に比べて最も多いため環境特性が劣る資源ですが、その埋蔵量は膨大であり、エネルギーセキュリティ上、有用な資源でもあります。環境税等の活用により他燃料への転換を図りつつも、環境に配慮した効率的な石炭利用にも資する施策を講じます。したがって、石炭ガス化技術等環境負荷低減のためのクリーンコール技術開発を積極的に進め、有効利用を図ります。二酸化炭素の吸収定着技術の開発実用化を急ぎます。

(4) 原子力の平和利用
 原子力発電は、COP3におけるわが国の国際公約達成のために重要なエネルギー供給源であり、エネルギー供給の太宗を担いうる代替エネルギーの開発・実用化の時代までの橋渡しの役目を担う重要な資源です。一方、その開発、利用にあたっては、平和利用に限るとともに、安全確保と国民の信頼と安心が最優先されなければなりません。しかし、JCO臨界事故により周辺産業の安全性や行政の安全規制と防災体制に重大な不備があったことが露呈したことに鑑み、国民の信頼回復と安全確保のため、原子力の安全規制を一元的に行う機関を創設するとともに、情報公開を推進し、防災インフラ整備を一層充実させるなど原子力防災体制を確立します。
 また、核不拡散や資源の有効利用に加え、資源量の飛躍的な増加が期待できる核燃料サイクルの研究開発を国の責任において推進します。また、放射性廃棄物処分などバックエンド対策に関する研究開発も合わせて推進します。さらに、アジアにおける原子力先進国の責務として、原子力利用を進める周辺諸国への安全技術支援策を推進します。


1.原子力安全規制委員会の設置
 原子力安全を確保し、原子力防災体制を強化するため、8条機関の原子力安全委員会を3条機関の原子力安全規制委員会へ改組して機能と権限の強化を図り、独立性を確保するとともに、原子力工学だけでなく、危機管理や人間工学、放射線医学、心理学等幅広い専門家の登用や公正な判断ができる専門的な技術・知見を有する委員の選出など、安全の原子力安全規制委員会への一元化による安全チェック機能の強化・充実を図ります。また、そのスタッフについても、被ばく管理やPAなど幅広い原子力行政を一括して行えるよう、幅広い人材を登用します。


2.原子力情報公開ガイドラインの設定
 原子力関連施設立地地域の住民の安心と信頼を得るため、わかりやすい情報提供や情報公開の徹底を図る原子力情報公開ガイドラインを設定します。


3.原子力防災体制の確立
 原子力防災センターに配置されている原子力防災専門官の役割を拡充して、自治体、事業者との連携を強化します。加えて、防災インフラを一層整備充実させ、住民の安全確保については国が責任をもって取り組む体制を確立します。


4.経年劣化対策などのあり方の検討
 原子力発電所の経年劣化対策などのあり方について、党内でワーキングチームを新たに設置し、議論を深めます。原子力関連施設に配置されている原子力保安検査官の役割強化とともに、原子力防災に関する対応を向上させます。


5.核燃料サイクル、放射性廃棄物処分に関する研究開発の推進
 ウラン資源の有効利用、長期利用の観点から、使用済燃料の国内再処理事業を進めるとともに、核燃料サイクルの研究開発を進めます。加えて、高レベル放射性廃棄物の処理・処分技術、廃炉技術については、先進諸国と協力し、技術的安全性、安定性、信頼性の確立に一層努めるとともに、徹底した情報公開と国民との対話により理解と信頼を得ながら、計画的かつ確実な実施に努めます。さらに、長半減期核種の分離・消滅技術の研究開発を進めます。原子力発電所の使用済燃料の再利用、すなわちプルトニウムの再利用は、MOX燃料および高速増殖炉等の研究開発用として使用計画のある分量のみを抽出することとし、その他の使用済燃料は、中間貯蔵・一時保管するものとします。


6.電源三法交付金制度の改善
 電源三法に基づく立地地域への交付金について、立地および隣接する自治体の弾力的な運用を可能にするとともに、人材育成や地域の生活環境基盤、防災インフラ、高齢化社会をにらんだ高度福祉地域社会の形成に重点的に配分される制度とします。


7.ASIATOMの創設
 原子力開発を計画しているアジア諸国での「安全に関する認識」の定着と技術支援のためのASIATOM(アジア地域における原子力開発の安全技術支援のための国際組織)を創設し、原子力分野におけるわが国の国際貢献を進めます。


以上
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