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2001/07/18
民主党 鳩山由紀夫代表の新潟市体育館での演説
2001年7月22日放送 NHK「党首は訴える」から
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 みなさん、こんばんは。民主党代表の鳩山由紀夫です。最近は宇宙人のゆきおちゃんと言われています。みなさまがたには、宇宙人と変人の一騎打ちの勝負だと思っていただいて結構です。

●誇りと尊厳のある日本をめざして政治家になった

 30年以上前の話になりますが、私はアメリカに留学しました。6年間の留学のなかで、気付いたことがひとつあります。アメリカ人はアメリカに生まれ育っていることを、すなわちアメリカ人であることに、大変強い誇りをもっています。留学中の私は、果たして自分自身が日本人としてどこまで誇りをもっているかと考えたとき、疑わしく感じました。
私自身は、そうした訓練はなされていませんでした。そこで政治の世界に入り、少しでもこの国・日本を、日本人であることを誇らしく、国民のみなさんが尊厳を求めて行動できる国にしたい。そうした思いのなかで、政治の世界に入る決意をしました。

 そして、最初は自由民主党の国会議員になりました。ご存知かもしれませんが、自由民主党というのは、私の祖父・鳩山一郎がつくりあげた政党です。孫の私が、ある意味で何の不思議もなく、政界に入るときに自民党の国会議員になったことは、どうぞお許しいただきたいと思います。

 でも、政治家になった瞬間から、大変強い違和感を感じました。この国の誇りを取り戻したいという思いで政界に入った私にとって、あまりにもちがう世界でした。この国のことを思うどころか、自分自身の立身出世の機会として、政治を使っている。まさに、政治を私物化してしまっている政治の世界の現実に直面したからです。これではいけない、そんな思いのなかで、新たな志を立て、自民党を離れました。そして現在、民主党をつくり、活動しているわけです。

●民主党と自民党の違いは何か

 自民党と民主党、しばしばどこが違うのかと問われます。自民党は今申し上げたように、自分自身の政権欲を満たすのが至上命題で、そのためになら何でもやる、そんな政党です。今回、小泉さんを総理にしたパワーも、ある意味でそこから出ているのではないかと思います。小泉さんを総理にしなければ、自分たちの政権があぶない。その危機意識から小泉さんを総理にしたのだと私は思います。

 それに対して民主党は、それとは全く違う、私利私欲をもたない政治集団にしたい。それがある意味で唯一、私の最大の責務として、民主党を立ち上げるとき、民主党のみなさんに呼びかけたものです。

 すべてが満たされているとは申しませんが、私利私欲の政界のなかで、対極の、国民のみなさんの声を聞かせていただく政治にしなくてはいけない。私利私欲を捨てた政治集団を、何としてもこれからも強く育てていかなければならない。その思いは今さらのごとく、強く感じています。誇りある日本をつくるという思いのもとに、行動を続けてきたのです。
ところが、突然に小泉総理が誕生し、“自民党を変える、日本を変える”というメッセージを発し始めました。今まで自民党政治に辟易していた人たちが、“そうか、自民党を変えるのか”という期待感に湧き上がったとしても無理はないと思っています。

●自民党は何も変わっていない<BR>
 しかしみなさん、冷静に考えていただきたい。あの私が飛び出したときの自民党と、今の自民党と、違ったんでしょうか。小泉さんが総理になって、何か変わったんでしょうか。確かに、総理は変わりました。しかし、それ以外のものは、まず変わっていないのです。
口では構造改革を唱えています。しかし、そう言いながら、ある人は何としても道路財源だけは死守しますと言います。また、ある人は郵政事業の民営化は決してさせませんといった発言をし、小泉さんが進めようとする構造改革とは真っ向から敵対することを進めています。自民党はその意味ではまるで変わっていません。

 私はあるテレビ番組の党首討論で、小泉総理に率直に尋ねてみました。「総理、本当は応援したくない自民党の候補者がたくさんいるんじゃないんですか」と。これに対して、なんと総理が答えたと思いますか?「そんなことまで聞かないでよ」とおっしゃったのです。これが本心だと思います。ふつうなら「いやいや、そんなことはありません。みなさん立派な人です」とおっしゃるところ、総理はそうは言わなかった。ですから、それ以上は聞きませんでした。でも、それが実態なのです。

 “自民党を変える、日本を変える”という気合はいいのですが、現実は何も変わっていないということをまず直視しなければなりません。   

●分権で、地方が税金の使い道を決められる日本に

 先ほどの、道路特定財源の問題もそうです。みなさま方も車に買うとき・乗るとき・ガソリンを入れるとき、高い税金がつきます。その税金は、ほとんどが道路に使われています。この道路に使われている5兆円を超える財源を、これからも道路だけに使われていいと思われますか。

 みなさんがお住まいになられる環境で、“いややっぱり道路だ”と思われたのならば、道路に予算をついてもいい。しかし、そうではなく、みなさんが道路よりも社会保障・介護・医療・福祉などを大事だとすれば、それらに財源をまわすべきなのです。

 教育が必要だとすれば、教育に予算を使う。環境が大切だとする地域は、環境の予算がつくようにする。分権された社会のなかで、皆さん方の発想で、皆さん方が必要とする分野の財源として、道路以外にも使えるようにするべきじゃないでしょうか。

 私たち民主党は喧喧諤諤の議論のなかで、そのような結論を出したのです。これが、いわゆる一般財源化というものです。

 小泉総理も何かそれと似たようなことをおっしゃっています。でも、よく伺うと、道路特定財源を見直すという言葉だけなのです。見直して、それをどうするのかというと、参議院選挙戦前までに、ついに具体的なメッセージはありませんでした。

 選挙が終れば、道路族、橋本派、さまざまな方々が抵抗勢力として、小泉さんの道を阻むにちがいありません。そうすると、結局は小さな見直しだけで終ってしまう危険性が高いのです。

●政権交代しなければ、真の構造改革はできない

 “日本を変える”と言っても、現実には日本は何ら変わっていないのです。たったひとつ変わったことがあるとすれば、株価がついに今日、12000円を割ってしまったという、景気がさらにさらにどん底に落ち込んでしまっているということです。

 これはなぜだかおわかりでしょうか? それは簡単です。小泉さんの構造改革にマーケットが失望しているんです。不良債権の処理を期待していたけれども、秋以降だと言い、しかもその内容を見たら、何もない。ブッシュ大統領には2〜3年で最終処理をすると言いながら、その具体的なメッセージは何もない。政府は11・7兆円の不良債権をかかえていると言い、これぐらいの額ならば2〜3年で処理できると主張していることを知ってします。しかし、それは事実ではないのです。

 現実には数倍の不良債権がこの国を覆っているのです。だから、その一部をいくら一生懸命に処理しても、まだまだ大量の不良債権がこの国にあるものですから、日本の元気は出てこないのです。

 みなさん、ここが一番大事なところです。私たちは今、経済政策が間違えているから景気が甦らないのだということを理解しなくてはなりません。

 「皆さん方に痛みを伴う改革ですが、今は我慢してください、2〜3年経てば、元気になりますから」といった説明をするかもしれませんが、決して信じてはいけません。このままの経済無策が続けば、2〜3年経っても、さらにひどい経済状態に落ち込んでしまうでしょう。

 それがわかっているのになぜできないのか。柳沢金融大臣をはじめとする、内閣の経済失政の責任が明らかになってしまうからです。さらに言えば、もっと多くの不良債権が明らかになってしまうからです。私たち民主党が、金融機関に一斉検査・資産査定をして、引当を十分に行いなさいと前々から言っているのに、そのことができないのです。

 結論として申し上げれば、政権交代をしなければ、真の意味での構造改革は決してできないということなのです。そのために、私たち民主党の仲間を、みなさんのお力によって、どんどん当選させていただきたい。正しい方向へ、大きな歯車を回転させていただくことによって、初めてこの国は正しい方向へ向かうことができると、私は信じています。

●このままでは誰にも信用されない日本になる

 そして、もうひとつ申し上げたいことがあります。最初に申し上げた、この国の誇りの問題です。私は、外交があまりにも無策であること、外交姿勢が甚だおぼつかないことを危惧しております。このまま行ったら、この国はだれにも信用されない国になってしまうのではないかといった危機感を感じています。

 それに関連して、三つ申し上げたい。ひとつは京都議定書の問題です。
 連日猛暑が続く、熱い夏です。しかし、この暑さも、ある意味では人為的な原因なのかもしれないのです。統計をとると、どんどん地球の気温が上がってきています。

 ですから、それではいけないということで、私たちの子孫のために、正しい住みやすい地球を取り戻すため、世界各国が苦労して議論を重ね、京都議定書がまとめられたのです。ところが、その京都議定書をいま、ブッシュ大統領は「Kyoto is Dead」と言って反故にしました。そして、さらに日本がそのアメリカに追随してしまう可能性も出てきています。これでいいのでしょうか。

 日米首脳会談のとき「ブッシュさん、日本は京都議定書に批准しますよ。反故にするようでは、あなた方は恥をかきますよ。それでもいいんですか」と、決意をもって、小泉総理はどうしてそれくらいのことを述べることができなかったのでしょうか。

 ボンで会議が開かれています。その会議に出席しているドイツのある大臣は、「日本は京都では助産婦でしたね。でも、ボンでは墓ほり役ですね」とまで言われてしまっています。EUの国々からは、日本の態度がけしからんと、大変にきびしい指摘をされています。誇りがもてる国にするために、何としても京都議定書にイエスといわなければなりません。

 二つ目は沖縄で起きたアメリカ兵による女性のレイプ事件です。あの事件が起きてからも、これからも日米地位協定を運用の改善でいくと言います。これは、とんでもない発想だと私は思うのです。

 もし、日本がアメリカに対して主権をもっと力強く主張し、ドイツや韓国が行ったように、日米地位協定の改定をテーブルにあげていれば、あのような悲惨な事件は起きなかったかもしれないのです。すなわち、未然に防げたかもしれないのです。それをアメリカの言いなりになって、なぜ日米地位協定の改定の議論を出すことができないのか。小泉総理は「反米と見られるから言えないのだ」と答えますが、とんでもない話です。

 私はアメリカに6年いましたし、大好きな国ですから、あえて言います。みなさまも親友をお持ちだと思いますが、親しい友達というのは、自分の考えを何でも言えるからこそ、親友なのではありませんか。日本とアメリカも、もっと親友になるためには、言いたいことをはっきりと言える日本にしなければなりません。

●誰もが堂々と参拝できる場所をつくるべき

 三つ目は靖国神社の公式参拝の問題です。総理は公式参拝をするべきではない、と強く申し上げたい。当然、このことは憲法に触れる問題です。しかし、違憲だからと理由だけではありません。

 私も、皆さんと同じように、この国を愛しています。この国がこんなに発展したのも、その礎を築いた、日本のために命を捧げた方々がたくさんおられるということを、私も知っています。そうした方々に、心からの誠を捧げるということは、当然のことだとは思います。しかし、その気持ちをあらわすのは、靖国神社の公式参拝ではないのです。

 そうした気持ちを大事にしたいからこそ、私的参拝だとか、公的だとか、まぎらわしい言い方を使い、あいまいさで逃げるのではなく、堂々と、みんなが参拝できる場所を政府が国立墓苑としてつくるべきだと主張しているのです。

 そして、中国や韓国からも、その国立墓苑に訪れる人たちがたくさん出てこられることも期待もしたいのです。

 今のまま、総理が参拝をすれば、中国や韓国との間に、無用の、大変な摩擦を生んでしまいます。この国を思う気持ちがおありなら、真の意味での国益というものを大事にされるのであるならば、私たちの国立墓苑構想に賛同していただきたいと思います。

 誇りをもった国にするために、そして、真の意味で構造改革を行うために、やはり政権交代しなければなりません。

 政権交代なくして、真の構造改革なし。政権交代なくして、誇りのもてる日本はなしです。その確信のもとで、私たち民主党は歩みを遂げてまいります。

 みなさん、ご静聴、ありがとうございました。心から感謝を申し上げます。

※当日は約30分間の演説でしたが、NHKの放送では20分間に編集されています。このテキストはNHKの放送を元にしています。

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