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2002/07/26
「長期休暇制度創設法案」について
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法案提出者
長期休暇制度導入WT座長 枝野 幸男
事務局長 細野 豪志
海江田万里
山井 和則
加藤 公一
中村 哲治

T. 法案の主な内容

1. 年次有給休暇の取得促進
・年次有給休暇取得のための計画を事業所ごとに作成し、労働基準監督所長に提出。
・事業所は、年次有給休暇の取得状況を、毎年1回、労働基準監督所長に報告。
・労働基準監督所長は、その報告を公表。

2. 年次有給休暇の日数の増加
・勤続年数によって10日〜20日の現行付与日数を、10年間の移行期間後、一律25日とする。

3. 長期(連続)休暇制度の創設
・年次有給休暇の内、通常の週休と合わせて14日間(10年間の移行期間に漸増)は連続して付与する。

4. 中小企業への配慮
・10人未満の事業所に、年次有給休暇の計画作成、報告義務を免除。
・従業員100人以下の事業所には、本法の施行を3年免除。
・国や地方公共団体に、中小企業者への特別の配慮義務規定。(時短の際の、助成のような財政支援も想定)

U. 法律の必要性について

1. ゆとりある国民生活のために
家族・友人などとのきずなを深める、地域・社会活動に参加する、自己啓発による職業能力の向上、休息による勤労意欲の回復など多様な価値観にもとづく休暇の活用により、より自由でゆとりのある国民生活を実現する。

2. まず年休の取得率向上のために
現状の年次有給休暇についても取得率が約5割ときわめて低い。政府などが、完全取得に向け広報活動などを行っているが、ほとんど効果を上げておらず、取得率はここ数年低下傾向にさえある。なんらかの法的措置が必要な状況である。

3. 休暇の国際標準を目指して
年次有給休暇の日数が他の先進諸国に比べ少なく、また連続休暇の規定もなく、ILO132号条約、EU労働時間指令などの国際基準を満たしていない。実定法で定めていない他の先進諸国の現状とも大きな格差がある。

4. 時間自由による消費拡大で大きな経済効果をもたらす
経済の主体がサービス産業にシフトしている中で、サービスを消費するためのまとまった「可処分時間」の増加が、消費拡大、景気回復の観点からも不可欠である。その経済効果は約12兆円(現行年休の完全取得の場合:政府試算)以上とたいへん大きく、個別企業の負担増を十分補う規模である。「厳しい経済事情の中だからこそ休暇の増大」という発想の転換が必要である。

5. ワークシェアリングの第一歩として雇用の増大をはかる
厳しい雇用情勢の中、ワークシェアリングがその解決の一方策と考えられる。ワークシェアリングには様々な方法があるが、その最低限の前提、第一歩としても有給休暇の完全取得、国際標準並みの休暇日数の実現が必要である。代替雇用、経済波及効果による新規雇用などにより約150万人の雇用創出(現行年休の完全取得:政府試算)が見込まれる。


V. 法案検討の経緯

99年 8月 民主党政権政策「新しい政府を実現するために」に、「ILO条約などグローバル・スタンダードにもとづく連続休暇制度の導入」が、盛り込まれる。
99年11月  景気回復研究会(川端達夫座長、熊谷弘顧問、島聡事務局長)が、「連続休倍増計画」を提言。NCにも報告。
00年 6月  民主党総選挙公約「15の挑戦・110の提案」の15の挑戦のひとつとして、「長期連続休暇制度の導入などにより、豊かな生活時間を創り出すサービス経済を拡大します」が、盛り込まれる。
00年10月 長期休暇制度導入PT(枝野幸男座長、細野豪志事務局長)(後にWT)を設置。ヒアリング、立法作業を開始する。
00年11月 NCに中間報告、立法の方向性を了承いただく
01年 3月  民主党参院選政策「すべての人に公正であるために」に、「長期休暇制度法制化、年次有給休暇の消化促進策の強化」が、盛り込まれる。
01年 4月  NCに2度目の中間報告。
01年 6月  WTにおいて、連合、中小企業団体からヒアリング。
01年 6月  NCで法案骨子を了承。中小企業への配慮などをさらに検討の上、法案化すべきとの指示を受ける。
02年 7月  WT、厚生労働部門会議及びNCにおいて、中小企業への配慮条項を盛り込んだ案を了承。


W. 法案を本国会に提出する意義

1. 民主党が推進するワークシェアリングの第一歩として不可欠
依然厳しい雇用情勢の中、ワークシェアリングがその解消の一方策として注目されている。民主党の「ワークシェアリングに関する中間とりまとめ」(4月18日NC)においても、その積極的活用が打ち出され、その具体策として「有給休暇の完全取得及びゆとりある多様なライフスタイルを可能とする長期休暇制度の導入など労働基準法の改正」が、掲げられた。もとより、いかなるかたちのワークシェアリングを行うにせよ、有給休暇の完全取得や国際標準並みの休暇日数の実現がその議論の前段階でなされるべきであることはいうまでもない。

2. 政府も認めた大きな経済効果、雇用効果
本WTにおいては、かねてより労働法的な余暇拡大という観点のみならず、長期休暇制度導入が消費拡大などにより大きな経済効果をもたらすことを指摘してきた。6月に出された、経済産業、国土交通両省が民間と共同で行った研究報告書「休暇改革はコロンブスの卵〜12兆円の経済波及効果と150万人の雇用創出〜」においても、改めて長期休暇の経済効果、雇用効果の大きさが具体的に試算され、政府もそれを認めるところとなった。

3. 政府・与党の動き
昨年より、与党から消費拡大による景気対策、デフレ対策の一環などとして長期休暇制度をとりあげる動きが浮上、本年に入り政府でも「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002(いわゆる骨太・)」(6月25日閣議決定)、「観光振興に関する副大臣会議報告書」(7月4日副大臣会議)などにおいても、政府の政策として、積極的に推進することを決定した。これらは、法律措置を伴わず、旧来の省庁の縦割り政策そのもののまったく不完全なものながら、かねてよりの民主党の政策の表面だけを「横取り」されかねない状況となった。

4. 中小企業への配慮の強化
党内議論においては、中小企業への十分な配慮が必要との意見もいただいた。そもそも本法案は、10年間という長期の移行期間をかけて有給休暇・連続休暇日数を増大させるプログラム法であり、その影響は漸増的である。さらに、従業員100人以下の事業者には3年間施行を猶予しており、2006年の開始、2015年完成というきわめて長期のプログラム法である。また、年次有給休暇取得促進計画の作成義務を、10人以下の事業所には免除しているなど、中小企業に十分な配慮をしてきた。今回、さらに「国の義務」として「中小企業への特別配慮規定」を盛り込み、本法案施行時の政府に、労働時間短縮やワークシェアリングを行う企業へこれまで行われてきた財政的支援なども参考に、具体的配慮策を検討させることとした。

5. 法案の提出に向けて
以上のような状況を勘案し、かねてより民主党が国民との公約として検討を続けてきた政策を多くの国民のみなさまに広く知っていただき、議論に付す意味でも、本法案を会期末ではあるが本国会に提出する。

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