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2001/03/05
森内閣不信任決議案 提案理由説明(案)
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民主党代表 鳩山 由紀夫

民主党の鳩山由紀夫です。私は、民主党・無所属クラブ、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の四会派を代表して、ただいま議題となりました森内閣不信任決議案につきまして、提案の趣旨をご説明いたします。

まず、決議案の案文を朗読いたします。

本院は、森内閣を信任せず。
右決議する。

以上であります。

森総理、それから与党のみなさん。あなた方には、国民の声が聞こえますか。市場の声が聞こえますか。いまや、森総理の支持率は一桁台まで落ち、限りなくゼロに近づいています。もはや国民は、森・自公保内閣を信任せず、であります。
また、総理就任時に二万円以上あった株価はわずか一年で四割も下落、一万二千五百円を下回り、十五年来の最安値を記録しています。市場もまた、森・自公保内閣を信任せず、であります。
そして今、国権の最高機関である国会が、森・自公保内閣を不信任するときが参りました。
以下、われわれ四会派のみならず国民を代表して、森内閣不信任決議案を提出する理由を申し述べます。

自民党の前参議院議員会長であり、密室で森首相づくりを行った五人組の一人である村上正邦前参議院議員が、「KSD汚職」に関連して「受託収賄罪」の容疑で逮捕されました。「KSD汚職」をめぐる政治家の逮捕は、同じく自民党に所属していた小山孝雄前参議院議員に次いで二人目です。「KSD汚職」関係者の逮捕・起訴が相次ぐ中で、株価の下落がつづき、わが国の政治的・経済的混迷は一段と深まっています。
その全ての原因は自公保連立政権・森内閣にあります。森内閣の存在そのものが不信と不安、混迷の元凶であると言っても過言ではありません。森内閣は政権発足以来スキャンダルが相次ぎ、三人の閣僚が辞任し、一貫して低支持率にあえいでいますが、今日、森内閣に対する国民の批判は極限に達しています。にもかかわらず、森総理がその地位に居座り続けていることに、国民は怒りすら感じています。
衆議院で与党により強行可決された平成十三年度政府予算は、財政再建にも構造改革にも真っ向から逆行する、相も変わらぬバラマキ予算であり、わが国の財政危機はなお一層深刻になっています。過去最悪の失業率、下落し低迷する株価、景気の停滞、そして森内閣の存在そのものが国民生活に打撃をもたらしています。森内閣の責任は極めて重大であります。
また、「KSD汚職」「機密費疑惑」など、相次ぐ疑惑の解明に対する森内閣の消極姿勢と無責任さは際立ち、さらには、「米海軍原子力潜水艦による宇和島水産高校実習船衝突・沈没事故」に際しての森首相、森内閣の対応は、国民の命と安全に対する責任感がいかに希薄であるかを如実に示しています。
もはや、このような自公保連立・森内閣の下で、わが国が国家的危機とも言える今日の事態から抜け出すことは到底不可能であります。
よって、本院は、わが国が一刻も早く危機的状況から脱却し、国民の政治への信頼を回復するための不可欠の前提として、森内閣を不信任すべきです。

不信任の理由をさらに詳しく申し述べます。

第一に、KSD汚職は、単に贈収賄で逮捕された村上・小山前参議院議員の個人の問題ではありません。それは、自民党の構造的な汚職であり、自民党の体質の現れであります。KSD疑惑とそっくりの構図で、マンション業者に党費を肩代わりさせていたことが発覚した、久世公堯元金融再生委員長。KSDの依頼によって施政方針演説にものつくり大学を後押しする文言を挿入し、その見返りに千五百万円のカネを受け取った疑いがかけられている、額賀福志郎前経済財政政策担当大臣。
何よりも、KSDによる党費の立て替えと幽霊党員の存在を黙認し、選挙応援とカネと引き換えに公益法人や業界団体の便宜を図り、政策や制度をねじ曲げるという自民党全体の体質があります。KSD疑惑は、自民党がカネで参議院の議席を売り、自民党全体が丸ごとKSDマネーに汚染されているという、空前絶後の大疑獄事件です。
この罪は、ひとり森喜朗総理に帰すものではありません。自民党全体が負うべきものであります。かつて、森総理自身の師である福田赳夫元総理は、「カネで日本国総理の椅子を買い取るようなことがあってはいかんのだ」とあなたを怒鳴りつけたそうですね。今日、自民党全体がカネのために政治を売る体質に堕しているのではないか。与党議員一人ひとりの胸に問うものであります。

第二に、国民生活を破綻させている森・自公保政権の経済失政であります。その象徴が一万二千円台の株価です。森内閣は景気回復最優先と称して、バラマキ財政支出を増大させています。しかし今、日本経済を再生させるために必要なことは、構造改革路線への政策転換です。いくら政府・与党がバラまいても、あなたたちが二十一世紀に残すお土産は、六百六十六兆円にまで膨張した国と地方の借金だけではありませんか。
 公共事業と補助金のバラマキ、過剰な規制の温存、という誤った経済政策は自民党の構造的歪みから生まれたものであります。森総理が辞任しても、後継が自民党総裁である以上、本格的な構造改革路線など望むべくもありません。不信任されるべきは森総理個人のみではありません。自民党型政治、自公保政権そのものが不信任され、国民の手によって解体されるべきときが迫っています。与党の議員諸君にはその歴史の足音が聞こえているのでありましょうか。

第三は、機密費の疑惑解明に対する消極姿勢と無責任さです。国民にしてみれば、自分たちが納めた税金が、競走馬や余分な飲食代、ひいては国会対策費にまで使われているという現状は、我慢のならないことであります。与党の諸君は、この国民の怒りにどのように応えるつもりなのでしょうか。
この事件は松尾前要人外国訪問支援室長の個人的犯罪ではなく、官邸と外務省の組織的な犯罪である可能性が高いといわざるを得ません。にもかかわらず、総理や福田官房長官、河野外務大臣はまるで他人事(ひとごと)のような態度で、本気で調査する姿勢を見せていません。のみならず、来年度予算においても報償費の減額を拒否し、何の改革姿勢も見せていないのであります。
機密費疑惑の解明を進めようとしないのは、森総理個人の無責任さばかりでなく、自民党政権が持つ構造そのものに問題があります。疑惑の解明を進めれば、官僚たちが傷つくのみならず、政権政党の暗部も照らし出され、責任問題が生じることになるからです。そうではありませんか。

 第四に、えひめ丸事件に関する森総理、森内閣の無責任な対応です。事故の第一報を受けた後も平然とゴルフを続け、一国のリーダーとしての真剣味も危機管理能力もないことが明らかになりました。米国に事件の真相解明を迫る姿勢にも、どこか腫れ物にさわるような中途半端さが見られます。「北朝鮮拉致疑惑第三国発見方式」発言で既に露呈していた森内閣の外交能力の欠如はますますはっきりしたものとなりました。そのうえ、北朝鮮への親書のファックス通信というあるまじき行為など、次々と問題を起こしては国会において虚偽の報告を繰り返したのであります。これ以上、この政権にこの国の将来を任せるわけにはいきません。

第五に、ただでさえ疑わしい森総理の正当性はいよいよ地に落ちています。思い起こせば、故小渕総理が病に倒れられた後、森政権は、いわゆる「五人組」による密室の協議の中で生まれました。さらに、その前提となった小渕内閣総辞職に至る経緯は、当時の官房長官であり、「五人組」の一人でもある青木参議院議員が、偽りに偽りを重ねたものだという疑いを強く持たれています。総理、あなたは、コネで大学に入学し、恫喝で就職したことを、自ら自慢げに著書に書かれておりますね。あなたがいずれまた自伝を書くときは、総理になったのは談合だったと書かれるのでしょうか。
そして今日、森総理の生みの親ともいうべき「五人組」のうち、森総理誕生に主導的役割を果たした村上正邦前参議院議員は、KSDにまつわる贈収賄容疑で逮捕されました。
総理、そして与党の議員諸君、森政権の正当性を最も疑っているのは、国民自身であります。森内閣の支持率は何と六%台にまで沈んでいます。この数字を前にして居直りを続けるあなたのような人を評して「恥を知らねば恥かかず」と言うのであります。

森総理と自公保政権の罪状は、これまでに申し上げてきたものに尽きません。政教分離に抵触した「神の国」発言、ゴルフ場会員権を実質的に無償で譲リ受け、贈与税も支払わないという驚くべき姿勢など、国民の常識を超えた行動も多く見られます。
今日の日本と日本人の危機の深刻さは、森総理が日本人の道徳や教育を語る旗頭であることです。日本中に蔓延するモラルハザードは、指導的地位にある人たちの言葉と行動の無責任さによって増幅されています。日本人が誇りを取り戻し、日本の危機を克服する道を歩み始めるためにまず行うべきは、その障害物たる森内閣を取り除き、自民党型政治を打ち破ることであることは、今や誰の目にも明らかです。

最後に、与党の議員諸君に申し上げます。今や、森総理に退陣を迫る大音声(だいおんじょう)が自民・公明・保守の与党内に響き渡っていると聞いています。まさに、与党も本音では森内閣を信任せず、というわけでありましょう。しかし、今日から百四日前、昨年十一月二十一日が何の日か、諸君は覚えているのでしょうか? ほかでもありません。私たちが提出した森内閣の不信任案を諸君が否決した日であります。日本経済をどん底に陥れ、愛すべき日本社会のモラルを失わせた責任が森内閣にあるとしたら、与党の諸君はまさにその共犯者であります。今日の政治の失墜に、諸君は共同責任を負うべきであります。

与党の諸君が、再び自民党内と公明・保守両党との談合で総理総裁の首をすげ替えてことを収めようと考えているのなら、とんでもないことです。諸君に真に国を思う心があるのならば、本日ただいま、この国会の場において森内閣を不信任すべきであります。与党の議員諸君、今こそ言葉と行動を一致させる誠実さを示し、国会に誇りを取り戻そうではありませんか。
私たちは近い将来必ずや政権交代を実現し、政官財癒着の構造、「ザ・自民党」と無責任・不適切な政策に終止符を打つことをここに表明します。
本決議案に多くの議員が賛同され、速やかに可決されんことをお願いし、提案を終わります。

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