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2000/11/20
森内閣不信任決議案 賛成討論
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民主党  石井 一

私は、ただいま議題となりました森内閣不信任決議案に対し、民主党・無所属クラブを代表し、賛成の討論を行うものであります。

 ただいま提案理由にもありましたとおり、森内閣は既に国民の支持を失っております。国民が不支持を表明した内閣が外交を行い、予算を編成している、このような不可思議な、異常な事態は一刻も早く解消し、正当な政府を再構築しなければなりません。
 何故、国民の支持を失ったのでありましょうか。この内閣にこれ以上日本の政治の舵取りを任せたら、日本が沈没するに違いない、と思っているからであります。
 自民党はじめ与党の諸君も、森内閣では来年の参議院選挙は戦えないと公然と言っております。これはまさに、本音ベースで森内閣不信任ではありませんか。永田町、いや自民党の常識が国民の非常識、国民の常識が自民党の非常識になっているところに、今日の国民の政治不信があり、国民との乖離があり、政治の混迷を深めていることを深刻に認識しなければなりません。
 明るい将来を、森内閣に託すことができますか。間違いなく、ノーであります。森政権、自公保政権が存続して国滅ぶ、であってはなりません。

 私は、以下に森内閣不信任決議案に賛成する理由を申し述べます。

第一に、森内閣がこれ以上存続することが、民主主義の崩壊を招くことに他ならない、と言うことであります。そもそも、小渕前総理の急逝を受け、密室・談合によって選ばれた森総理の正当性自体が、未だ疑問の残るところであります。非常時であり、本会議で指名を受けたとは言え、まさに外電が報じたように、暗黒時代のクレムリンを思い起こさせるような選出劇であったとの批判さえありました。さらに、その森総理を密室・談合で決めたいわゆる「四人組」が何でもありの強権政治を繰り広げているのであります。

今の自由民主党に、自由も、民主主義もありますか。

 かつての自民党には、理性がありました。自制心とバランス感覚がありました。そして、高邁な自尊心がありました。唯一の政権担当能力のある政党としての使命感と責任感がありました。それが今、どうでしょうか。多くの重要法案を数の力で押し通し、これまで培ってきた民主主義のルールやよき慣例を平気で踏みにじっているではないですか。特に、いわゆる久世問題をすり替え、今国会で採決を強行した参議院の非拘束名簿式比例代表選挙制度導入に関しては、ただただその暴挙に唖然とするばかりであります。民主主義の根幹を成す選挙制度を、各党の合意なしに与党の都合、つまりは政権維持だけのために変えてしまうとは前代未聞のことであり、わが国の議会史に残した汚点は、計り知れないほど大きなものであります。
七年前、我々が気の遠くなるような労力と議論を重ね、成立させた衆議院の選挙制度改革法案の事を、皆さん思い起こしてみてください。その過程を承知しているはずの諸君が、こうした愚行に走られたことは、必ず後世で批判の目にさらされることは必定であります。
またこれまで、どれだけの法案を強行に採決したのでしょう。少なくとも、かつての自由民主党は議会制民主主義の本質を理解し、野党や少数政党の意見を可能なまでに反映しようと努力したものであります。ところが、いまや連立を組むパートナーとの協議が終われば、本来権威にあふれた国会の場を、単なる形式的な手続きの場と形骸化させているのであります。この責任の大きさは計り知れません。昨今の自民党は理性のかけらもなく、もはや恫喝としか言いようのない行為が公然と行われているのであります。更に、選挙においては政権与党である立場を背景に、各自治体に公共事業の配分をちらつかせて応援を強要し、党内外の批判勢力にはその権力を振りかざす有様であります。 
私が知っている、誇り高き自由民主党はもはやこの世にはございません。私が知っている自由民主党は、常に自由闊達な議論が許され、そしてそうしたものを許容するおおらかさを持っている政党でありました。もはや、今の自由民主党は民主主義を語れる状況にありません。自民党の覇道を廃し、民主主義の王道を歩むために、自公保・森内閣の退陣をその第一歩としなければなりません。

 森内閣を不信任とする二つ目の理由は、その経済政策にあります。いや、森内閣に経済政策と呼べるようなものは何もなく、政府が“景気対策”と呼ぶ、赤字国債乱発による公共事業のばら撒きという、無能な施策があるだけであります。株価は森内閣発足以来坂道を転げ落ちるように下がりつづけ、年初来の最安値を更に更新する勢いで、一万四千円割れ寸前であります。一方で先週には、森内閣退陣のうわさが流れるや否や、一時上昇の兆しを見せるという、皮肉と言うには深刻すぎる動きを、マーケットは示したのであります。総理、市場はこの内閣の一刻も早い退陣を、切望しているのであります。政府・与党よりも、健全なマーケットの反応を信ずることは、世界の常識であります。今、政府・与党が取り得る最大の景気対策は、森内閣の退陣ではないでしょうか。
与党幹部や閣僚は、呪文のように「景気は確実に回復の兆しを見せている」と言い続けていますが、このセリフは聞き飽きた、と言うのが国民の実感です。さらに、わが国が直面する財政問題は、まさに深刻です。国と地方をあわせて、六五〇兆円にも及ぶ長期債務残高を懸念し、アメリカの債権格付け機関が日本の国債格付けを下げている深刻さを、政府は認識しているのでしょうか。
 更に、補正予算についてであります。そもそも、本年度予算が成立した際、宮沢大蔵大臣は補正予算編成の必要性はないとおっしゃっていたではないですか。ところが、状況がさして変化したと思えない中で、いままでと同じ手法の補正予算をのこのこと提出するとはどういうことでしょうか。見通しの甘さ、無責任のそしりを免れません。
収入は減り借金は膨れ、年金が削られ、医療費や介護保険料が引き上げられ、しかも近い将来の大増税と、悪性インフレが予測される大きな不安の中で、どうして個人消費が期待できるでしょうか。病が更に高ずることは賢明な国民の皆さんは十分承知です。経済無策の森内閣の一日の存続は、国民の苦しみと不安の一日の延長であります。この国民の悲鳴が、聞こえてくるではありませんか。

 森内閣を不信任とする三つ目の理由は、わが国の国際的地位の低下であります。世界各国は、この森内閣を、当事者能力を備えた内閣であるとは捕らえず、儀礼的な外交関係を保っているだけであります。わが国がここまで目に見える形で取り残されたことは、鎖国政策を敷いていた江戸時代以来なかったのではないでしょうか。激動する世界情勢の中で、日本外交の地盤低下と停滞は覆い隠す術もありません。クリエイティブな外交もなければ、政治のリーダーシップ、イニシアティブもありません。
いくつかの例があります。朝鮮半島では、本年六月に歴史的な南北対話、金・金会談が行われました。その歴史的瞬間の感動と同時に、そうしたシーンから確実に取り残されているわが国があります。そして、それに拍車をかけるのが、森総理の口から飛び出した、北朝鮮拉致疑惑に関する第三国発見発言です。その外交感覚のなさには、驚かされるのみであります。ロシアとの関係に関しては、平和条約の締結に関して、プーチン来日直前に野中幹事長が領土問題切り離しに言及しました。政府・与党間の認識大きな違いが露呈したわけですが、この事はわが国に大きなマイナスをもたらしました。更には、日米関係であります。口先だけでは沖縄の苦しみに言及しながら、肝心の米国との交渉では、問題提起すらできないと言う、非常識極まりない弱腰外交を展開しているのです。これ以上、理念も戦略性もない外交を、森内閣に委ねることは国益を損なうことが明らかです。


 長年にわたる自民党政権の下で、国民の勤勉さと努力によってわが国は世界第二位の経済大国にまで発展を遂げることができました。しかし、東西冷戦構造の終結、そしてわが国経済がバブル崩壊により経済神話が崩壊し、行政、経済、社会など既成のシステムが行き詰まり、改革が必然となった時、古い政治はその変化に対応できませんでした。つまり、自由民主党がその歴史的役割を終えたのであります。諸行無常とは、まさにこのことです。
しかしながら、自由民主党はこのことに気付かず、権力に固執しました。そして、自由民主党は誇りをかなぐり捨て、一九九四年には当時の社会党と連立を組み、政権復帰を果たしました。その後、ことごとく国政選挙において過半数を獲得できない自民党は、権力の蜜をちらつかせ、次から次へと野にある政党に手を伸ばし、連立政権と言う形で政権維持を続けてまいりました。その結果が、いまの自公保内閣であるわけです。
土台が腐食してしまったのに、いくらその上に家を建て、補強材をそえても風雪に耐えることができません。この事は一九九三年、私が羽田・小沢氏らと共に自民党を離れてから、ずっと指摘し続けてきたことではありませんか。自民党の諸君は、土台の腐食に目をつぶり、補完政党を次から次へと探し、政権の延命を図るという誤りを繰り返してきました。
自民党の執行部がいくら締付けや強権を発揮しても、時代の流れを変えることはできません。強権、脅かしの政治は時代錯誤、アナクロニズムに過ぎません。
私はこの場で、呼びかけたいのであります。加藤氏は森内閣に対し退陣を求めてきたのであります。もし、その言明が果たせないのであれば、それは国民に対する公約違反であり、背信行為であります。加藤君も、そして山崎君も、小泉君も、この末期症状を終え、時代の終わった自民党の、今からまた補完勢力になろうとするのですか。国民の75%が反対している内閣に、公約を守らないのであれば、政治家を辞めなさい。公約違反であります。政治家は、言ったことに責任を持て。
強く反省を求め、私の賛成討論を終わります。

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