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2000/11/20
森内閣不信任決議案 提案理由説明
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民主党代表 鳩山由紀夫

民主党の鳩山由紀夫です。私は、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合、そして民主党・無所属クラブの四会派を代表し、ただいま議題となりました森内閣不信任決議案について、提案の趣旨をご説明いたします。

 まず、決議案の案文を朗読いたします。

  本院は、森内閣を信任せず。
   右、決議する。

 以上であります。

われわれ四会派は、この内閣不信任案につきまして国民を代表して国会に提出しております。いまや七割をはるかに超える国民のみなさんが、すなわち本来であるなら自民党や与党を支持しているはずのみなさんも含めて、圧倒的大多数の国民が森内閣は一刻も早く退陣すべきである、とされております。景気も外交もこの内閣のもとでは好転するはずもなく、このような最悪の内閣は二十世紀中に幕を引かないかぎり、新しい世紀、ミレニアムにおける日本の展望は開けません。
森総理、あなたはすでに国民から不信任されているのです。国会が国民の代表機関である以上、その務めを果たさねばなりません。国会として国民の意向に従うことを明らかにするのが、この内閣不信任案の意義であることを申し上げておきます。

 私たちが国民を代表して本不信任案を提案するに至る理由をこれから申し上げます。

 二十一世紀を目前にした今日、わが国は依然として政治・経済ともに世紀末の混迷から抜け出せず、危機的な状況の中にあります。こうした状況を招いた全ての原因と責任は自公保連立の森内閣にあります。森内閣はその発足の経緯からして疑惑と不信にまみれており、森内閣総理大臣の数々の失言がそれに拍車をかけております。

また、森内閣は政権発足以来、一貫して低支持率にあえいでいますが、第二次森内閣発足後はその傾向が一段と顕著になり、最早、完全な死に体内閣の様相を呈しています。スキャンダルと疑惑にまみれた中川前官房長官の辞任。そして、森内閣総理大臣の日本人拉致疑惑に関する「第三国発見案」発言など、森内閣をめぐる数々のスキャンダルや相次ぐ閣僚の辞任、失態が国民の政治に対する不信感を増幅し、さらには、わが国外交の権威を完全に失墜させております。

加えて、提出されている二〇〇〇年度第一次補正予算案は、国民の生活再建になんら役立たないばかりでなく、財政再建とも真っ向から対立する相も変わらぬバラまき予算案であり、わが国の財政危機を一段と悪化させることになりかねません。森内閣の存在が国民に現在の生活に対する深刻な不安と見通しのない将来への言いようのない不安感をもたらしています。森内閣の責任は極めて重大であります。

 よって、本院は、わが国が世紀末の混迷と危機的な状況から脱却し、国民の政治への信頼を回復するため、森内閣を不信任するべきとの結論に至りました。


 野党第一党の代表として一言申し上げます。大変残念なことではありますが、森内閣は誕生そのものから今日まで疑惑にまみれてきたと言って過言ではありません。小渕前総理が病に倒れる中で、急遽ほんの一握りの派閥の権力者によって森後継が実質決定されました。私たち野党はこれを密室の中での談合、内閣の私物化と批判いたしました。今日、自民党の中においても改めてその正当性が問題視されておりますが、森内閣誕生以来、その運営は常に国民に対して責任を果たし、国民の信頼を勝ち取る努力を重ねるのではなく、密室の中で談合した仲間たちの顔色をうかがい、いかに自分達の権益を守るかに主眼が置かれております。国民を代表する内閣がこのような状態で、健全な経済は育たず、青少年をはじめとする社会の病理が是正されるはずもありません。

 そして誕生以来、森内閣をめぐるスキャンダルは枚挙にいとまがありません。森総理自身の買春疑惑、中川官房長官の右翼との交友及び覚醒剤並びに警察情報漏洩などの疑惑、また、自民党の比例代表の順位と党員獲得をめぐり中小企業の保険料が横流し流用されていたとされるKSD疑惑、森総理はこうした疑惑を解明しようとするのではなく、一貫して臭い物に蓋の態度に終始してきました。これらの疑惑はこの臨時国会においても何ら解明されておりません。すなわち自民党をはじめ、公明党、保守党の与党三党が国会における解明を一貫して妨害し続けているからに他なりません。国民を恐れ、国民に隠し、国民を欺く、それが森内閣の本質であります。さらに、森総理が引き起こした数々の失言、とりわけ日本人拉致疑惑に関する一国の総理とも思えぬ無責任かつ不見識きわまりない発言など、森内閣誕生以来の軌跡はまさに恥の上塗りの繰り返しであり、森氏がわが国の内閣総理大臣たる資質を到底持ちえないことを赤裸々に物語るものです。

 その総理欠格者である森氏が、なぜ今日まで内閣総理大臣の地位に居座り続けているのでしょうか。それは連立与党3党、そして自由民主党の主流派の思惑だけによるものです。いま自民党の中でどのようなことがささやかれているか、報道によれば自民党の主流派は不信任案の行方にかかわらず、森さんはもうだめだ、とりかえようと話し合っているではありませんか。すなわち、密室で誕生した森内閣は再び密室の中で葬り去られようとしているのです。わが国の内閣が、国民とはなんらかかわりのないところで、権力の維持に連綿とする一部の人たちによってその生死が決められようとしているとき、国民の代表で構成される国権の最高機関たる国会は、なにをするべきか。それは、不信任案の可決によって少なくともこの内閣に終止符を打ち、国会の機能が未だ壊死していないことを内外に証明することであると確信いたします。


森内閣はスキャンダルや失言だけが致命傷なのではありません。国民が森内閣を支持しない本質は自民党政治の、それを忠実になぞる森内閣の政策の失敗にあります。景気対策、景気対策と言いながら、借金の垂れ流しと相変わらずの公共事業の繰り返しであり、経済の構造改革と財政再建は一向に進みません。福祉や教育も矛盾は拡大する一方と言わざるを得ず、あっせん利得処罰法も与党案は不十分なものであり、政治家や官僚の腐敗も是正される抜本策は示されていません。自民党に対する批判は強まる一方であり、選挙における自民党への支持は右肩下がりに終始しています。その政策的失敗を反省することなく、与党の皆さんがごり押ししたのは参議院選挙制度の改悪であります。国民の支持が得られないなら、それでも国民をだまし、各種団体を恫喝して締め付け、多数を維持できる選挙制度にしょうとして生まれたのが非拘束名簿式選挙制度です。国民を軽視し侮辱する、与党と言うにはあまりにも情けない姿勢ではないでしょうか。到底信任に値しない内閣と言わざるを得ません。

森総理、一言で言えば、あなたから何のメッセージも伝わってこないのです。日本新生とは口先ばかりで、この国難に遭遇して日本社会を、日本経済を、日本外交を、どのような理念で導こうとされておられるのか、まったく見えないではありませんか。日本に今こそ強いリーダーシップが求められているときに、姿を隠そうとばかりされている内閣では、信任できるはずはないではありませんか。

自民党内ではこの内閣不信任案に賛成するか、反対するか主流、非主流のみなさんが口角泡を飛ばして議論されてこられました。国民のみなさんからみれば、実につまらないコップの中の嵐ではないでしょうか。こんな内閣を守る価値をどこに見出すのでしょうか。主流派の人たちでさえ、自分達で近々幕引きをしようと考え、森内閣を継続させようと本当に思っている人はほとんどいないのが実状です。ではいかなる選択が本当に価値ある選択なのか。それは、この不信任を自民党の中の権力争い、政権のたらい回しの新たな序幕と考えるのではなく、新たな政治改革、1993年の政治改革の第二幕と位置づけることです。野党提出の不信任案は過去四回可決されているとのことです。この議場におられる同僚議員お1人おひとりが、国民に対して政治家としての責任を果たされることを期待いたします。

自民党以外の与党のみなさんは今日の事態をいかが考えておられるのでしょうか。自民党だけが内閣に責任を持ち、総理を出す権利を有するわけではないでしょう。公明党のみなさんは森総理で本当によいと思っておられるのでしょうか。自らもスキャンダルの数々に汚れていると連帯責任を表明されるのでしょうか。みなさんが本当に三党連立が正しいと確信するなら、公明党自らが森総理に退陣を促し、国民の声に応える責任感を示すべきではありませんか。公明党、保守党のみなさんはこのスキャンダルと失政に埋もれた内閣、連立政権のどこを守るべきであると国民の皆さんに説明するのでしょうか。


私はこの不信任案が可決されることを確信しております。この不信任案が可決されないとするなら、それは国会と国民の意思がかい離していることを示すことに他なりません。そして、不信任案が可決されるなら連立与党はただちに衆議院を解散し、改めて国民の信を問うべきです。

私たち野党四会派は、自民党政治を終わらせるという歴史的大事業を達成するために全力を挙げることを決意し、本不信任決議案を提案いたしました。

 国民は、自己改革もできない自民党利権政治に代わる新しい政治の実現を求めています。改革のうねりは数年前からはじまったものですが、いま、そのうねりが大きな節目を迎えています。みなさん、この20世紀から21世紀への歴史の転換点において政治改革の流れを確かなものとする事業に参加しようではありませんか。本決議案に多くの議員が賛同され、速やかに可決いただくようお願いし、提案を終わります。

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