第一 目的
この法律は、労働者のゆとりのある生活を実現するために個人の余暇活動の時間、家族と共に過ごす時間、社会活動を行う時間等を十分確保することが重要であることにかんがみ、長期休暇制度の創設、年次有給休暇の取得の促進のための措置等を講じ、もって労働者の福祉の増進を図り、あわせて消費の拡大等を通じて国民経済の健全な発展に資することを目的とするものとすること。
第二 関係者の責務
一 事業主は、その雇用する労働者が年次有給休暇をすべて取得できるよう、必要な措置を講ずるように努めなければならないものとすること。
二 国は、年次有給休暇の取得について、事業主、労働者その他の関係者の自主的な努力を尊重しつつその実情に応じてこれらの者に対し必要な援助等を行うとともに、これらの者その他国民一般の理解を高めるために必要な広報その他の啓発活動を行う等、年次有給休暇の取得を促進するために必要な施策を推進するように努めなければならないものとすること。
三 地方公共団体は、二の国の施策と相まって、広報その他の啓発活動を行う等年次有給休暇の取得を促進するために必要な施策を推進するように努めなければならないものとすること。
第三 指針の策定
厚生労働大臣は、年次有給休暇の取得の促進のため事業主が取り組むべき事項について指針を定め、これを公表するものとすること。
第四 年次有給休暇の取得の促進のための計画
一 事業主は、常時十人以上の労働者を使用する事業場(以下「特定事業場」という。)がある場合には、当該特定事業場ごとに、毎年一回、厚生労働省令で定めるところにより、その雇用する労働者の年次有給休暇の取得の促進のための計画を作成し、これを労働基準監督署長に提出しなければならないものとすること。
二 一の計画には、次に掲げる事項を記載しなければならないものとすること。
1. 年次有給休暇の取得の促進のために実施しようとする措置の内容
2. 年次有給休暇の取得の促進に必要な業務上の体制の整備に関する事項
3. その他厚生労働省令で定める事項
三 事業主は、一の計画を作成するに当たっては、義務教育諸学校に就学している生徒又は児童を養育している労働者を雇用している場合においては、二の1から3までに掲げる事項で長期休暇に係るものについては、当該義務教育諸学校の夏季等の休業日に配意するようにしなければならないものとすること。
四 事業主は、一の計画を作成するに当たっては、二の1から3までに掲げる事項で
長期休暇に係るものについては、労働者のゆとりある生活の実現に資するため、その雇用する労働者が適切な時期に長期休暇を取得できるよう、長期休暇のために利用する施設、交通機関等の状況その他の社会又は地域における事情に配意するようにしなければならない。
五 事業主は、一の計画の作成に当たっては、当該特定事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならないものとすること。
六 事業主は、毎年一回、厚生労働省令で定めるところにより、一の計画に記載した事項の実施の状況、当該特定事業場における労働者の年次有給休暇の取得の状況を労働基準監督署長に報告しなければならないものとすること。
七 労働基準監督署長は、五による報告を受けたときは、厚生労働省令で定めるところにより、これを公表するものとすること。
第五 助言及び指導
労働基準監督署長は、年次有給休暇の取得の促進のため、事業主に対して、必要な助言又は指導を行うことができるものとすること。
第六 国等の援助
国及び地方公共団体は、長期休暇の取得の促進のため、事業主に対して、必要な助成その他の援助に努めなければならないものとすること。国及び地方公共団体は、前項の援助を行うに当たっては、中小企業者に対し、特別の配慮をするものとすること。
第七 労働基準法の一部改正
一 年次有給休暇の付与日数の改正(別表)
二 長期休暇制度の創設(別表)
三 年次有給休暇の日数の内、労使合意等により「計画年休」とできる日数の変更
現行の「5日を超える部分」を、連続休暇の日数と同じ日数とすること。
四 経過措置
常時百人以下の労働者を使用する事業については、一及び二の事項の実施は、この法律の施行の日から三年後とするものとすること。
第八 施行期日
この法律は、平成十五年四月一日から施行するものとすること。
第九 検討
政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
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