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2002/04/09
「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案」に対する本会議質問(衆議院)
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民主党・無所属クラブ 後藤茂之

民主党・無所属クラブを代表して、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

なぜ、我が国の経済は、今停滞しているのか。我が国は、これまでの十数年間、バブルへの対応の誤りに加え、長期的展望を欠いたその場しのぎのばらまき型の景気対策や極端な金融緩和政策の採用によって、経済のグローバル化、技術革新の急速な進展、IT化、少子高齢化といった経済社会の構造変化に対応した構造改革を結果として先送りしてしまいました。構造改革による生産性や効率性の低い分野から高い分野への諸資源の移転や潜在的な需要に対応する新しい商品、新しいサービスを生み出すイノベーションを阻害してきたことが、我が国経済の停滞の原因であります。いわば、資本の論理の欠如、マーケット原理による効率化の欠如と言わざるを得ません。それゆえに、構造改革なくして経済の回復なしという考え方は、基本的には全く正しいと考えます。要は、それが本当に実行に移せるかどうかが問題です。

勇気を持って構造改革のメニューを一つずつ実行していく覚悟が今の政府にあるのか、改めて官房長官並びに経済産業大臣に伺います。

経済社会の構造改革とは、基本的に自己責任原則と市場原理に立脚し、国際的にも開かれた自由な経済社会を実現することを通じて達成されるべきものです。このためには、経済的規制の分野での規制改革ばかりでなく、医療、福祉、労働などといった社会的規制の分野での規制改革を推進することが必要です。

また、規制改革の推進とあわせて、消費者、国民の利益の確保を目的とした公正で自由な競争ルールの確立、すなわち競争政策が重要となります。

競争という言葉は、福沢諭吉がコンペティションという英語を翻訳し、造語したものであり、日本にはそもそもそうした概念がありませんでした。「福翁自伝」には、幕府の役人に、「争」という語を使用することは穏やかならぬと叱責されたと書かれています。しかし、今では、内閣府の行った世論調査によれば、国民の七割以上が、競争についてよいイメージを有しており、公正な競争を望んでいます。

そこで、公正な競争を実現するための競争政策とは何か。競争法により保護されるべき対象は、競争なのか、競争者なのか、その哲学を明確にしておく必要があります。もちろん、一度競争者がいなくなると二度と競争者が生まれてこないような不可逆的競争を認めることが誤りであることは、言うまでもありません。

また、競争に敗れた者に対するセーフティーネット政策は別に必要です。しかし、競争法の哲学とは、少なくとも弱者保護的観点から競争者を保護するものではないと考えます。公正取引委員会委員長の見解を伺います。

現実には、現下の厳しい経済情勢のもと、ぎりぎりの条件で苦しい経営を迫られている多くの下請中小企業が泣いています。週末発注や不当な価格設定など、不公正な取引を放置して公正な競争は決して成り立ちません。公正の意味を改めて再確認し、ガイドラインによる的確な対応を求めます。

次に、競争政策は、消費者の利益を究極の目的としています。消費者の適切な判断を通じて公正な競争が実現するためには、消費者に対して的確な情報の提供を行うことが重要です。独占禁止法が消費者に誤認される表示を、不公正な取引方法の一類型である欺瞞的顧客誘引として禁じ、その特別法である景品表示法が不当表示として禁じているのは、そのためです。

例えば、最近、表示をめぐる不正が相次ぐ中、消費者の不信が高まっており、その厳正な執行が強く望まれます。しかしながら、現行の不当表示規制の適用要件は、表示が実際のものより著しく優良であるかのようになっていること、また、不当に顧客を誘引することに限定されているため、表示がない場合や表示があっても競争者への侵害が明確でない場合には、不当表示規制は適用できません。消費者の適正な選択を阻害する行為の規制範囲を拡大し、一定の重要な情報を積極的に提示することを義務づけるなど、現行の不当表示規制を改正すべきと考えます。公正取引委員会委員長の見解を伺います。

また、これまで、公正取引委員会は、独禁法の執行により、規制改革の実効性を継続的に監視し、関係省庁ごとの縦割り行政の枠を超えた一般的な規制改革の実現に先導的な役割を果たしてきました。省庁再編成の際、国家行政組織法十五条の政策調整の機能が明文化されたところでありますが、今後とも、こうした機能がますます重要となります。

そこで、競争政策を担う公正取引委員会の制度的位置づけは、特定の政策を所管する省庁のもとでなく、内閣府に移行すべきと考えます。官房長官の御意見を伺います。

国際化や技術革新が急速に進展する中で、的確かつ迅速な企業結合審査が求められます。このことは基本的に競争促進的と考えられますが、消費者が十分なメリットを受けられることを丁寧に検証することが必要です。グローバルな市場での競争力の評価、イノベーションの競争に及ぼす影響、ネットワーク社会のもとにおける市場への影響など、新しい課題に対して迅速かつ機動的な対応が求められております。そのための公正取引委員会の体制の整備が必要です。総務大臣の御見解を伺います。

次に、法案の改正事項について、公正取引委員会委員長に伺います。

第一は、一般集中規制が、日本経済の実態に照らし、今でも本当に必要なのかという点です。

改正案では、総合商社を念頭に置いて創設された九条の二については、商社の融資力や取引額などが大幅に低下し、系列取引などの状況も今後変化すると見込まれるため、廃止することとされています。しかし、昭和二十二年の独禁法制定時に、旧財閥、経済の民主化政策を念頭に置いて創設された九条の一般集中規制については、市場集中規制と重なり合う部分はあるとしても、市場集中規制などではカバーし切れない可能性を想定し、その制度を残すこととされています。その前提には、企業グループ、株式持ち合い、系列取引など、経済実態についての現状認識があります。

しかし、私は、国際的大競争時代の中で、企業グループの関係は希薄化しており、さらにますます拡散していくと考えられること、株式持ち合いの解消が進んでいることに加え、銀行等の株式保有総額規制の導入などにより株式持ち合いは今後急速に解消することを考えれば、我が国と韓国にのみ存在している一般集中規制は、現在、我が国においては歴史的使命を果たしたと考えます。

経済実態が大きく変化する中、一般集中規制を廃止しても、企業結合については、市場集中規制により対応は可能です。また、事業支配力が過度に集中する企業グループが形成されることを通じて市場における競争を制限する行為が行われる場合には、そうした行為を事後的に規制することにより対応は可能ではないかと考えます。委員長に率直なお考えを伺います。

第二に、持ち株会社については、「事業支配力が過度に集中すること」の考え方は、公正取引委員会のガイドラインで公表されています。今回新たに、事業会社についての考え方も同様に示すこととなるでしょうが、どのようなガイドラインを示されるお考えか、基本的な方針を伺います。

第三に、刑事罰を強化することについては、他の経済法規と比較しても理解できるところでありますが、法令の抑止力を高めるためには、刑事罰ばかりでなく、課徴金も含めた措置体系全般の見直しを図るべきと考えます。

例えば、課徴金制度は、カルテルによる経済的利得を国が徴収し、違反行為者がそれをそのまま保持できないようにすることによって禁止規定の実効性を高めるための行政措置ですが、私的独占などへの適用の拡大、対価の算定など、新しい制度の枠組みを検討する必要があります。刑事罰の引き上げも含めた今後の措置体系全般の見直しについてのお考えを伺います。

独占禁止法にかかわる課題として、入札談合、価格協定などが社会問題となっており、これを積極的に排除する必要があります。特に、いわゆる官製談合については早急に対応が求められています。内閣府が行った世論調査においても、半数以上の国民が、入札談合の取り締まりが不十分であると答えています。

公共事業自体は、国民生活を支える社会的インフラを整備するために、引き続き、大変重要な意義を有しております。だからこそ、効率的な予算の執行、透明性を確保することにより、国民の信頼を取り戻さねばなりません。

公正取引委員会の排除勧告については、これまで、事業者のみが対象になっているために官製談合を防止する効果が乏しかったことから、発注者側である官に対し、公正取引委員会が改善措置要求を行えるようにするなど、独禁法を見直すべきと考えます。民主党では、こうした内容を含む官製談合防止法案を、昨年、国会に提出いたしております。

政府としては、官製談合の問題についてどのような対応を図るおつもりなのか、官房長官の見解を伺いたいと思います。

合理性に乏しい、既得権益を温存する競争制限的な規制や制度が撤廃できなければ、我が国の構造改革を進めることはできません。

最後に、自己責任原則と市場原理に基づく我が国経済の健全な発展と一人一人の消費者の利益の確保を図るため、市場における公正で自由な競争ルールを支える競争政策の果たす決定的な重要性を改めて指摘し、独禁法の一部改正法案に対する質問を終わります。(拍手)

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