民主党 浜岡原子力発電所事故対策委員会
1.事故概要と経過について
11月15日、民主党として第1回の浜岡原子力発電所事故調査団を派遣し、現地調査を行った。さらにその後、対策委員会を開催し、関係者からヒアリング等を行った。事故概要と経過については、添付党調査団報告書及び別紙を参照のこと。
2.事故の受けとめ方について
(1)事故の評価について
配管の破断事故は暫定評価レベル1、制御棒駆動機構ハウジング貫通部の原子炉水の漏洩事故はレベル0+と、国際的な評価尺度は低いが、両事故が同時に発生していることについては、重大な事象と受けとめる。
(2)ECCS系余熱除去系蒸気管の破断について
上記配管の破断によって、ECCS(非常用炉心冷却装置)のうち、高圧注入系が動作しない状態となった。ECCSは5系列の多重防護となっており、今回の破断がすぐさま重大な事態につながるものではないとはいえ、安全系に連なる事故として重大に受けとめる。
(3)原子炉水の漏洩について
漏洩量そのものは極めて微量であることから、外部に及ぼす影響は全くなかったが、炉本体の一部である制御棒駆動機構ハウジング貫通部からの原子炉水の漏洩は、わが国では初めてのことであり、重大な関心を持つ。
3.事業者の対応について
(1)総括
原子炉水漏洩に関する事項など一部に情報伝達の遅れはあったが、積極的な情報公開姿勢など全体として評価できるものであった。
(2)初動体制について
原子炉水の漏洩事故の通報が遅れたことは問題である。事故が起きるたびに通報の遅れが毎回指摘される。何らかの対処が必要である。
(3)事故究明について
事故究明体制は概ね問題ないが、できる限り早急に行うことが必要である。炉の老朽化が懸念されているので、事故との関わりを解明し、その関係を明確にしなければならない。
(4)情報公開について
現場への立ち入り及び必要な情報は提供されている。引き続き努力を要請していきたい。
4.今後の対応について
(1) 原因究明について
原子力安全委員会を中心に、徹底的な原因究明と万全の対策を講じるべきである。
(2)情報公開について
本件に関する調査データを可能な限り一般公開し、市民団体などの協力を求めるべきである。
(3)同型設備の設備点検・類似ヶ所対策について
同型設備を有する他のユニットについて、早急に設備点検を行うとともに、浜岡1号機の原因が判明次第、早急に対策を講じるべきである。
(4)再発防止対策について
今回の事故が経済・社会に与えた影響は大きい。この種の事故が二度と起こらないように努め、再発防止対策に万全を期すべきである。
(5)原子力発電所寿命と経年劣化対策について
トラブルのすべてを機器の経年劣化と直接結びつけることはできないが、こうした点からの検証を強化すべきである。経済産業省が、部品交換など適切な対策を取れば設計寿命の一応の目安である40年を超えて60年間の運転が可能との見解を示していること等についても議論を深め、原子力発電所の寿命と経年劣化対策のあり方について検討を進める必要がある。また、安全性の確保のため事業者に対してさらに努力を求める。
5.国の対応について
(1)国策としての取り組みについて
今回の事故に対する政府の取り組みは不十分であると言わざるを得ない。原子力発電が重要な位置を占めており、今後とも推進すべきものであるがゆえに、万全の取り組みが必要であると考える。浜岡原子力発電所事故対策については、責任の所在を含めて、国の機関が中心となり全力をあげ、国策として取り組むように求めていく。
(2)安全確保対策について
今回の事故を機に、政府としては原子力発電の安全確保策に一層の努力を傾注すべきである。
また、行政機関に原子力推進と安全規制の権限が混在し、国家行政組織法8条に基づく原子力安全委員会には実効性が欠落していること等に鑑み、国家行政組織法3条に基づく公正取引委員会型の独立行政機関を創設し、原子力利用に関する安全確保を図る任務を付与すべきと考える。そのため、民主党は、次期通常国会に「原子力安全規制委員会設置法案」を提出し、成立に全力を尽くす。
(3)原子力理解教育の徹底について
今回の例に限らず、原子力関連事故に関しては、国民が実態を十分理解せず、そのことが不安を増幅させるという側面があることも否定できない。原子力については、何が危険で、何が安全かについて、しっかり国民が理解した上で論議ができるような環境をつくる必要がある。そのため、学校も含め原子力に関する+教育を徹底すべきである。
(4)近隣対策について
現在のところ、大きな風評被害もなく、落ち着いている。引き続き努力を要請していきたい。
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