目次
◎ 民主党 中小企業政策・商店街振興策の「理念」の概要
◎ 第 I 部 民主党 中小企業政策・商店街振興策の「理念」
◎ 民主党 中小企業政策・商店街振興策の「具体策」の概要
◎第 II 部 民主党 中小企業政策・商店街振興策の「具体策」
1. 中小企業のやる気を支援する税制改革
2. 中小企業を元気にする金融対策
3. 創業・ベンチャー企業への支援策
4. 中小企業へのソフト・人材支援策
5. 技術で勝負する中小企業への支援策
6. ものづくり基盤対策の強化
7. まちづくりと一体となった商店街の振興
8. その他
◎民主党 中小企業政策・商店街振興策の「理念」の概要
1.民主党は結党以来「中小企業」のためにがんばっている。
民主党は、産業・雇用を守る為には中小企業を支援し、新規事業を育てることが重要であると考え数々の政策を進めてきた。
* 98年5月 大規模小売店立地法案、中心市街地活性化法案において、住民意見をより反映させる等の付帯決議
* 同年12月 中小企業への融資促進
* 99年5月 中小製造業の支援を中心とした「ものづくり基盤技術振興基本法」の制定
2. 民主党は中小企業をこう考える!
−「元気の循環」型社会と中小企業の役割−
戦後の日本経済に勝利を与えてきたのは、中小企業の柔軟性と不断の努力の賜である。
21世紀にふさわしい産業構造・社会は、「従来の護送船団方式」でも、「市場万能主義」でもない、第三の道、すなわち「今までは相対するものであったものが調和する道」=「リベラル資本主義」である。つまり、大企業と中小企業、ものづくりとサービス、ハードとソフト、中央と地方、がお互いにビジネスチャンスを与え合っていく「豊かな共存関係=元気の循環」型社会であり、その延長に「企業の競争力と豊かな人間生活の共存」がある。
その実現のためにも、新規事業も含めた「中小企業」のスピード、柔軟性といった「力」が必要であると考える。
3. 中小企業政策の必要性と民主党の政策目標
−「バラまき政策」から「やる気が出る政策」へ−
世界経済環境の激変(国際化、情報化など)の中、(1)中小企業が社会の約8割の雇用および貴重な技術を支えていること、(2)小さいが無限の可能性ある芽であること、(3)通商国家として変化への迅速な対応が要求されることなどから、適切な中小企業政策は必要である。
政策目標としては、(1)元気で自立・独立した既存中小企業を数多く輩出し、(2)生きがいある仕事場としての中小企業を残し、(3)新規起業を促進することであり、結果として「大企業と中小企業の元気の循環=産業構造の変革」、「中央と地方の元気の循環=地方分散」、を進めることである。
そのために、従前の「バラまき政策」から「やる気が出る政策」へ転換させる。具体的には、やる気の出る「税制」、「経営サポートシステム」「再教育制度」などが必要である。
◎第 I 部 民主党 中小企業政策・商店街振興策の「理念」
1.民主党は結党以来「中小企業」のために頑張っている。
勤労者の約8割は中小企業で働いている。民主党は、産業・雇用を守るためには中小企業を支援し、新規事業を育てることが重要であると考える。
98年5月に成立した大規模小売店立地法案、中心市街地活性化法案について民主党は、小売商業関係者の意見反映、住民参加、郊外開発規制等の位置付けを明確にする重要な内容を含んだ付帯決議をまとめた。
同年12月には、貸し渋りに対する「中小企業金融安定化特別保証制度」が創設され、20兆円の特別枠が設けられたが、民主党はこの実現の為に党派を超えて取り組み、今後更に設備投資に対する融資制度の創設、特別枠の拡大等に積極的に取り組もうと考える。
また、99年5月には中小製造業の発展を支援するため、民主党の議員が中心となって草案をまとめ、超党派で「ものづくり基盤技術振興基本法」が成立したが、今後はこの法律を生かしものづくり技術の振興、後継者育成、職業訓練の充実、産業集積を推進し、地場産業の競争力強化に努めていく。
2.民主党は中小企業をこう考える!(「元気の循環」型社会と中小企業の役割)
戦後の急速な経済復興、また経済激変に対して、常に勝利を日本経済に与えてきたのは、中小企業の柔軟性と不断の努力の賜物である。
民主党は21世紀にふさわしい産業構造・社会を以下のように考える。
今までの日本に代表される「ピラミッド的系列」「護送船団方式−結果の平等」ではなく、また欧米の産業形態である「弱肉強食的勝者による市場万能」社会でもない、第三の道、すなわち今までは相対するものであったものが調和する道、つまり「リベラル資本主義」である。「自立・独立した企業が有機的に水平に結びつき連携」し、大企業と中小企業、ものづくりとサービス、ハードとソフト、中央と地方、がお互いにビジネスチャンスを与え合っていく「豊かな共存関係−元気の循環」型社会である。
21世紀は「どこに勤めているか」から「何をしているのか」そして「どこに住み、何を生きがいとするか」を問われる時代であり、やみくもに大企業や役所に入ることは必ずしも個人の幸せにつながらない。中小企業は個人の技能、能力を生かす自己実現の場であり、地域を発展させる場であり、小回りのきく情報ビジネスの場であり、女性の社会進出、活躍にふさわしい場であり、面白い文化、トレンドを生み出す場であり、まさに中小企業こそ21世紀の人間の生き方にふさわしい場であると考える。
日本は、ものづくり、技術を大切にしながら、欧米では実現できなかった、企業の競争力を保持しながら、人間生活の豊かさを向上させていく社会を目指していかなければならない。
そのような観点から、民主党は、21世紀に活力ある「産業」と魅力ある就業機会としての「雇用」を創り出しつづけるためには、新規起業も含めた「中小企業」のスピード、柔軟性といった「力」が必要であると考える。
3.中小企業政策の必要性
経済の活力というものは、経済の民主化にあり、皆が参加し競争していくことにある。資本主義にあって、独占とバブルの二つはあってはならないことであるが、合理的な財の配分、所得の配分がなされない場合、つまり資本主義の不完全性が顕在化する場合に、現実に独占とバブルが起こっている。
人間でもはじめから大人はおらず、赤ちゃんから子供へそして大人へと成長していくように、小さな町工場がソニーやホンダのように世界の大企業に育っていった。その意味において、中小企業の小さい、しかし可能性のある芽を摘み取ってはならない。
また、中小企業が社会の雇用と技術を支えており、事業所数では98.9%が中小企業であり、従業員数では77.6%の方が中小企業に勤務しているという点からも中小企業は無くてはならない存在である。そして、現在のように、刻一刻と変化していく状況にきめ細やかに対応していくという強みを持ち合わせているという点においても、ますます中小企業の意義は大きくなっている。
特に、わが国は資源を持たない「通商国家」であるため、常に新しいものを創り出していかなければならない、その上、自活性に欠けるため常に「新しい変化」に対応する姿勢を保つ必要がある。従って中小企業の持つスピード・柔軟性といった長所がわが国のような通商国家には欠かせないものである。
その意味でも中小企業が創出される可能性を高め、既存中小企業を活性化していくことを政策として打ち出す必要がある。
(参考)「文明が衰亡するとき」高坂 正尭著
通商国家の生き方には、逞しさを衰頽させるところがあるからである。まず、絶え間なく変動する国際情勢に巧みに対応することは人々を疲れさせる。しかも、その対応とは、所詮妥協だから、それを繰り返しているうちに、自分達の生き方への確信が失われる危険がある。そこに、通商国家として成功して豊かになったときに不可避におこる頽廃が加わる。(中略)ヴェネティアについてイギリス人アディソンが述べたように、「通商国家は常に新しい変化に対応する姿勢を持つ」必要があるのだから、変化への対応力の弱まりは日本の衰退ということになる。
4.直面している環境
世界経済の一層の国際化・情報化が進む中、環境問題・南北問題などの地球的問題の深刻さは増すばかりである。
産業についても、次世代の必要性を見通すことはできないが、産業構造の変化は着実に起きている。最大の環境変化は、アルビン・トフラーが言うところの「第三の波−情報化の波」であり、ピーター・ドラッカーが言うところの「ポスト資本主義社会」といった革命である。つまり、支配力をもつ資源、最終決定を下しうる「生産要素」は、資本でも、労働でも、土地でもない「知識」であり、社会の重心・構造・力学は今までとは全く異なり、例えば、「国家が管理する産業社会」といったものから「国民自身が情報を持ち、主体的に創造する産業社会」へと変化するであろう。
わが国でも、21世紀を目前にしながら、失業者数については平成11年9月には317万人、失業率も4.7%、倒産件数も平成10年度18988件と数字だけをみても未曾有の不況に喘ぐ一方、少子高齢化問題、環境問題など重要な問題を抱え、解決の糸口さえ見えていない。
更には、わが国の近年の企業開業率は3.7%(平成6-8年)で廃業率3.8%(同年)を下まわっている。また、開業率を各国と比較すると1988年から1994年中間値での米国が11.4%、ドイツが11.7%である。つまり、開業率は大変低く、しかも廃業率が開業率よりも高く、激変する経済状況の中における新陳代謝という面で時代の波に遅れを取っている。
このような中で、情報化の波に遅れをとることなく、雇用を支えながら、産業構造の変化を進めていくことが必要である。
5.日本の中小企業政策は成功したか
戦後の中小企業政策は、財閥の解体とともに、市場の主体は中小企業である、と言う観点から始まった。つまり、無数の企業が競争することでより良い市場ができ、消費者ひいては国家のためになる、と考えた。しかしながら、時をおかず昭和21年には国家による経営資源の重点集中が国家を救う、傾斜生産方式などが採用される。
その過程の中で、過小過多と言われる中小企業を創出する一方、選別された巨大産業が誕生する。その結果、1950年代後半、大企業と中小企業の二重構造が指摘されるようになり、その解消に向けた近代化、数の合理化が政策の中心になる。また、当時中小企業の役割は、産業構造改革の際の「雇用の受け皿」となった。
その後も、近代化、数の合理化が政策の柱であったが、その方向とは逆に、企業数は増え続け、雇用環境の二重構造も解消されていない。例えば、賃金については1000人以上企業の賃金を100とした場合、昭和40年以降10〜99人企業が50〜60の間で、100〜999人企業で70〜80の間でほぼ横ばいである。また、生産性については、大企業の付加価値生産性を100とした場合、昭和40年以降中小企業は45〜52でほぼ横ばいである。この状況を一言で言えば、「産業論としてのわが国中小企業政策は不在」であったと言えよう。
また、政府の中小企業対策費は平成11年度当初予算で1923億円、一般会計歳出額に占める割合は僅か0.41%である。過去最大額は昭和56年度 2500億円(0.78%)、昭和57年度2500億円(0.77%)である。一方、平成11年度農林水産省所轄予算の一般会計歳出額に占める割合は 6.35%と中小企業対策費のそれの約15倍となっている。更には不用率をみると中小企業対策費は平成8年度で3.33%と一般会計全体の不用率 0.88%に比べ高い数字となっている。このことは制度の使いづらさや現実に即していない制度であることの現れである。
また、産業研究所・中小企業総合研究機構「中小企業政策の今後の方向に関する調査研究」の中で、中小企業政策の問題点として、「利用するのに手続きが面倒(44.6%)」、「どんな施策が行われているかわからない(39.2%)」、「要件が厳しすぎて利用困難(33%)」、「一社あたりが利用できる融資枠や予算枠が小さい(31.7%)」、が指摘されていること、そして、グローバルニッチの企業が創造法などの政府の施策を1割も利用していないこと等から、これまでの政策が中小企業の方々からしても、不満の多いものであったのは明確である。
更には、米国では1983年から1993年の10年間で従業員20人未満の中小企業において500万人の雇用を生み出して、失業率は7%から4.3%に減少したのに対し、わが国は1986年から1996年の10年間で従業員数20人未満の中小企業においては15万人の雇用が減少し、失業率は2.8%から 3.4%に上昇し、現在は更に4.6%(平成11年9月)に上昇している。このことからもわが国の中小企業政策、特に小規模企業創出政策が失敗であったことは明確である。
6.民主党の中小企業政策目標(元気の循環を巻き起こす)
民主党の中小企業政策の政策目標は、元気で自立・独立した中小企業を数多く輩出し、その結果わが国の「産業構造の変革」、「地方分散」といった社会構造の変革を進めていくことだと考えている。そして中小企業と大企業の元気の循環、中央と地方の元気の循環を巻き起こすことである。
新世紀を目前にして、世界史の流れは大きく方向転換している。壮大な歴史観や国家が個人や地域を引っ張るのではなく、逆に個人、地域などの小さな単位が主役となり、歴史を創る時代が到達したと認識する。少数のものがまぶしい灯りで遠くを照らし人々を導くのではなく、各人がたいまつを持ち自分で足元を照らして歩く時代が到達した。新時代の政策は、少数の者にまぶしい灯りを持たせることではなく、各人にたいまつを渡し、自分の人生を切り開くように環境を整備することが基本となる。
元気で自立・独立した中小企業を多く輩出し、生きがいある職場としての中小企業を残し、新規起業を促進することが民主党の政策目標である。
社会構造の変革の目標として、「産業構造の変革」は自立・独立した中小企業がわが国の産業を主体的に支えていく構造を作ることである。つまり、従前のような大量生産一辺倒の時代は終焉し、消費者ニーズも企業のニーズも多様化とパーソナル化が進み、スピード・柔軟性といった中小企業のもつ長所を生かした商品・サービスの提供が必要である。
社会構造・産業構造の変革を行う際、最も重要な要素は情報化革命であり、IT(情報技術)革命と考えられる。わが国もこの革命を進めることなしには国家も企業も存続が危ぶまれる。21世紀のわが国の経済成長を考えると、労働人口が増加するか、または各産業の生産性を向上させるほかはない。前者はマイナスになるため、生産性を向上させることこそが必須のこととなる。その中核を担うのが、IT革命である。情報化(オンラインネットワーク化)は外部の知恵を借りて自己変革を迫るプロセスを伴うものである。需要の正確な予測から始まり、それに見合った最適生産、原材料の最適調達、ムダのない販売など、ITは、農業、商業、製造業、建設業などすべての産業や企業活動の生産性を向上させるカギである。また、福祉、環境、教育についても、従来の発想にとらわれない解決を可能にする。つまり遠隔地医療、世界的リサイクル、ゴミのでない効率的生産など、情報化をテコにした地域産業・産業基盤の活性化を始めるべきである。
寺島実郎氏は「かつて軍事という分野に原子力という技術を取り込み、制御困難な状況に自らを追い込んだが、「技術の高度化」という名前で新たな制御困難な状況を招来しているのかも知れない。」と語っている。デリバティブ取引から起こったアジア金融危機がこのことを端的に物語っている。
民主党が目指す社会はITの構想力と生身の体験を上手に結合させた産業を育成する社会である。つまり、わが国には世界に誇る技術を所有した企業が数多く存在する、これと民主党が中心となって制定した「ものづくり基盤技術振興基本法」を生かして、ITと“ものづくり”とを上手に結合させ新事業・企業を育てていく社会を目指すべきであり、そのための環境条件の整備が政策の基本となる。
また、「地方分散」は、地方に眠っている優れた技術力を見つけ出し自立・独立した中小企業を育てることで地域の発展を進めることから始まる。更には住環境・教育環境・通勤といった面での豊かさを求める人材も中央から地方に移動させ更に地域の発展に拍車をかけるべきである。
また、中小企業の現在の中小企業政策は「中央」主導で行われているが、より現場に近い「地方」主導で行うべきである。それにより地域の特性にあったきめの細かな政策を進めることができる。
上記のような産業構造の変革による影響を緩和し、変革への円滑な対応を促進し、加えて再挑戦の機会を提供するセイフティーネットの準備、技能・技術の集積とその発展に向けた中小企業の役割を認識した労働条件の整備も併せて行う必要がある。
7.必要とされる中小企業政策(「バラまき政策」から「やる気が出る政策」)
従前の野放図な「バラまき政策」から「やる気が出る政策」への転換が必要である。中小企業の経営者・従業員の方々がやる気を持ち続けることができる“舞台づくり”が重要である。
歴史的にみると、旧ソ連の崩壊は「国民のやる気」が無くなった結果であった。これからの中小企業政策は、社会主義のような儲けても、儲けなくても一緒の社会、またはバラまきによる一時的な安定を得るような社会から、社会的安全はありながら、夢のある非社会主義社会へ、更には米国のような、自由で、時に牙をむく競争社会・資本主義社会から、失敗を前提とする、何度でもチャレンジできる脱資本主義社会を目指す政策とすべきである。
具体的なやる気の出る政策は以下の通りである。「税制」については、従前は増益すれば多くを税金で徴収されていたが、利益が新たな経営資源としてより有益に活用できる「やる気」が出る税制に変える必要がある。また、やる気のある方に事業承継しようとしても現在の税制では承継が困難であるが税法等を改正して承継しやすくする必要がある。
また、「金融面」については透明で厳正な貸し渋り対策等の確立が必要である。金融安定化特別信用保証枠制度の運用等を厳正にチェックし、真に資金を必要とする中小企業に重点的に恩恵が及ぶよう、メリハリある制度にする必要がある。
「再教育制度」としては、起業したくても学ぶところがないという方のために各地にコニュニティー経営塾を創設したり、会社の進むべき方向性がわからない方には各地に継続的な中期的経営指導体制を整えたりといったやる気の出る舞台づくりを進めていく必要がある。
「経営サポートシステム」としてはベンチャービジネスや新規開業にものづくり技術、技能者が参入したり活用されたりできるようにビジネス支援のネットワーク化、人材のデータベース化を大規模に進める。ものづくりをインターネットなどITと結びつけ振興し、中小製造業を有利な立場に誘導する。従来のハードワークというイメージからの転換を図り、ものづくり現場、特に中小企業のインテリジェントネットワーク化を支援し、情報関連機器導入に関する補助の拡充、中小企業大学校、基本的な取引文書に関する外国語例文データベースの構築などを進める必要がある。
また、従前からの政策である公正な下請取引の確立と優位的地位の乱用防止、環境に配慮した地域産業集積と地域の街づくり、労働環境や労働条件の改善といった政策等についても引き続き中小企業政策として取り組んでいくる必要がある。
(参考)「学問のすすめ」福沢諭吉
我日本国人もいまより学問に志し、気力をたしかにして先ず一身の独立を謀り、随って一国の富強を致すことあらば、何ぞ西洋人の力を恐るるに足らん。
一身の独立をして、一国独立するとは、このことなり。
8.中心市街地、商店街に人を呼び戻す政策
今後は特に商店街の果たす役割が大きくなってくる。商店街は消費生活のライフラインであると同時に、地域の創造的活動、伝統文化の保持などにも少なからず貢献してきた。今、地域の商店街は厳しい状況にあるが、住民同士のふれあい、賑わい空間の創出、中心市街地活性化、高齢社会にふさわしい住環境の整備、観光の拠点づくり等にとって重要な存在であり、新時代を切り開く重要な存在と位置づけて支援していかなければならない。
中心市街地は、古くから商業、業務等多種な機能が集まり、人々の生活や娯楽、交流の場となり、その街の長い歴史の中で文化や伝統を育むなど、その街の「顔」ともいうべき場所であった。
しかし、近年多くの街で商業を取り巻く環境の変化、人口の減少と高齢化等によって、中心市街地の衰退・空洞化問題が深刻化している。
中心市街地はこれからも地域経済の発展や、豊かな生活の実現に大切な役割を果たしつづけなければならない。中心市街地を、これからの時代のニーズに対応した、人が住み、育ち、学び、働き、交流する場として再び活気溢れる場所とし、地域コミュニティの中心としてその再生を実現する必要がある。
中心市街地の衰退、空洞化により空き地や空き店舗が目立っている。民主党はその空き地や空き店舗の共同事務所化、SOHOアパートの創設を促進できる様にその仕組みづくり、補助金制度、優遇措置の拡充を図り、サービス産業等による活気溢れる街づくりを進める必要があると考える。
また、高齢社会、女性の社会進出等、新しい時代の要請に対応するコミュニティづくりを、既存の商店街の活性化とリンクさせ、高齢者、女性にやさしい街づくりを進める必要があると考えている。中心市街地やその周辺に住む人を増やし、コミュニティの維持を図ることは商業の振興に効果的であるばかりでなく、福祉の向上にもつながることになる。更に「お元気ですか」という一声掛けでコミュニケーションがとれる「ご用聞き」のような仕組みの復活も重要である。高齢者の生活の利便性を高めるとともに、住民とお店の一層の交流を図ることでまちの福祉力を高めることができる。民主党はこうした施策を実現するために税制上の優遇措置、助成制度の拡充を図り、街の古くからの伝統を守り、清潔で人にやさしい街、それぞれの地域特性を生かした街づくりを進めたいと考えている。
◎民主党 中小企業政策・商店街振興策の「具体策」の概要
(「やる気」を支援する税制をつくる!)
* 未上場株の評価改善等によって事業承継税制を抜本的に強化し、中小企業の後継者を育成。
* 同族会社への留保金課税は、中小企業などについては撤廃。
* 企業の立上げ5年間の法人税の軽減、中小企業向けの法人税の軽減税率の見直し。
(「金融対策」で必要な資金を供給する!)
* 公営競技(JRA等)の売上の1%をベンチャーキャピタルの充実にあて、これから伸びる中小企業を応援。
* 中小企業向けの貸し渋り対策を厳正にチェックし、真に必要な企業に重点融資。
(「技術」で勝負する中小企業を育てる!)
* 本格的なSBIR(ハイテク中小企業の多段階支援制度)を確立。ハイテクベンチャーのプロジェクト事業化・商業化を支援してベンチャー企業を育成。
* 「医療・福祉関連分野」「人材・起業支援関連分野」など「新規事業・ベンチャー関連6分野+NPOセクター」に対して重点的に技術・開発を徹底支援。
(「人材・ソフト」で企業を発展させる!)
* 企業発掘・支援コーディネーターを質量ともに充実、中小企業の発展を助成。
* 起業家教育の振興、教育訓練給付制度の拡充で、自分への投資、自己啓発を支援。
(「ものづくり」支援で日本を強くする!)
* 学士院、芸術院に並ぶ技術者、技能者の殿堂たる「技術・技能院」の創設。
* 大学教育の改革を進め、ものづくり学士を輩出し、製造業に強い日本を再構築。情報通信技術との一体化でものづくり産業を強化。
(中小企業に働く「女性」を応援する!)
* 働く女性をサポートする施設の建設、育児休業制度の充実で女性を応援。
* 政府調達の女性起業家への割当を一定比率以上に、女性起業家を育てる民間団体への支援を強化。
(まち・市民と一体の「商店街」をつくる!)
* 空き店舗の共同事務化、SOHO(スモールオフィスホームオフィス)を支援。
* 高齢者世帯、市民、商店街を結びつける福祉コミュニティーの再構築。民主党は日本で一番中小企業を大切にする党
◎第 II 部 民主党 中小企業政策・商店街振興策の「具体策」
1.中小企業のやる気を支援する税制改革
(1)実効ある承継税制の確立
国際的に見ても累進度の高い相続税体系については、その今後のあり方を検討するとともに、事業承継の円滑化を図る観点から、取引引相場のない株式評価方法の改善等を図る。
(2)同族会社の留保金課税の見直し
同族会社の留保金課税制度については、(1)所得金額の35%、(2)年間1,500万円、(3)期末資本金×1/4−期末利益積立金、の金額のうち最も多い金額を留保控除額として留保金から差し引くことができることとなっているが、中小企業については、留保金課税制度を適用しない特例を設ける。
(3)中小企業軽減税率の見直し及び創業期企業に対する法人税等の軽減
1. 資本金1億円以下の中小企業については軽減税率(22%)が設けられ、所得800万円まで適用となっている。この上限は1966年に定められたものであり、今日まで物価が3.8倍になったことをふまえ、上限800万円の引き上げを検討する。
2. 立ち上げ5年間に限り、法人税を軽減する。
3. 立ち上げの累損を後年度に繰り越せるようにする。
(4)エンジェル税制の抜本的強化
中小企業の創造的事業活動の促進に関する臨時措置法に規定する特定中小企業者に該当する株式会社の株式に係る譲渡損失の金額は、所得課税の総合課税化を図るという方向を前提に、他の各種所得との損益通算を選択できるようにする。
(5)ストックオプション優遇税制の拡充
特定の取締役等が受ける株式譲渡請求権等の行使による株式の取得にかかる経済的利益の非課税の年間限度額を現行の1,000万円から3,000万円に引き上げるとともに、優遇税制の要件のうち当該権利の行使ができない期間を、現行の2年から1年に短縮する。
(6)創業者にかかるキャピタルゲイン優遇税制の拡充
新規に上場又は店頭登録された株式等にかかる譲渡所得等の課税の特例の 要件とされている保有期間を現行の3年から2年に短縮するとともに、当 該株式等にかかる譲渡所得等の金額のうち課税対象とされる部分の割合を、現行の2分の1から5分の1に引き下げる。
2.中小企業を元気にする金融対策
(1)透明・厳正な貸し渋り対策の確立等
金融安定化特別信用保証枠制度の運用等を厳正にチェックし、真に資金を必要とする中小企業に重点的に恩恵が及ぶよう、メリハリある制度に改める。
(2)中小企業の円滑な社債発行への支援
中小企業が社債を発行できるよう「信用格付け情報基盤」を整備したうえ、信用保証協会を活用した保証付社債を発行できるように、直接金融市場を整備する。
(3)政府系金融機関の貸付制度の拡充等
技術・特許の評価による融資拡大、無担保・無保証の貸付制度の充実により政府系機関の貸付制度を強化する。また、地域に根差した信用金庫などが中小企業にとって一層有益な金融機関になるように環境を整備する。
3.創業・ベンチャー企業への支援策
(1)1%ベンチャーキャピタル構想の実現
公営競技(JRA等)の売り上げ(約8兆円)の1%をベンチャーキャピタルの充実に当てる制度を確立する。
(2)株式会社による証券市場開設の解禁等
株式会社による証券市場開設の解禁、店頭登録市場の抜本改革支援に資する環境整備等に取り組み、新規事業が育ちやすい証券市場の確立につとめる。
(3)マル経融資制度の拡充等
マル経融資に経営指導とは別枠で、職業訓練(専門学校、職業講座等)費の助成又は融資制度を追加創設する。国民金融公庫の新規事業貸付の返済据置期間を延長する。
(4)会社設立要件の緩和等
91年4月施行の商法改正で、最低資本金について株式会社は35万円から1000万円に、有限会社は10万円から300万円に引き上げられた。このことによって新規創業が困難になっているとの指摘もあり、最低資本金の引き下げを中心に会社設立要件の緩和を図る。
(5)ベンチャーインキュベーター等の創設
全国の大学にベンチャーインキュベーターを設置。同時にベンチャー審査機構とインキュベーター基金を設置し、ベンチャー企業を創業したいと思っている人のアイデアを審査し、よいアイデアの提案者には事務所兼研究室を持つことができるようにするなど、諸々の支援をする。
4.中小企業へのソフト・人材支援策
(1)発掘・コーディネートへの支援
ベンチャー企業総合支援センターへの予算を拡充するとともに、企業発掘・支援コーディネーター(常駐アドバイザー・コーディネーター)を質・量ともに充実させ、ベンチャー企業はもちろんのこと、既存企業も積極的に発掘・コーディネートして、発展の手助けに努める。
(2)起業家教育等の充実
起業家能力を養成する専門的教育システムの充実を図ることはもちろん、年少者に対し起業家的資質を醸成する教育システムの構築が必要。また、日本はそれを教える教師陣の層が薄いので、起業家教育の専門家発掘も支援する。現在就業中の労働者が再教育を受けやすくするよう、労働省の行う教育訓練給付制度を、講師の質を向上させる、対象講座を増やす、指定の教育機関を拡大する、などしてより充実させる。教育訓練給付制度(雇用保険の被保険者が職業訓練・教育を受講した者に対し費用の助成を行う制度)が利用しやすいように、受給要件である被保険者期間6ヵ月以上(現行は5年以上)の場合は受給できるようにし、起業家・中小企業家教育もできるだけ対象になるように環境整備をはかる。中小企業、ベンチャー企業でのインターンシップ普及に努める。
(3)失業給付制度の拡充等
公共職業訓練所の訓練期間を現行の平均6ヶ月から12ヶ月に延長する。倒産などによる失業者に対して、雇用保険に加入していた期間が6ヶ月未満でも90日の失業給付を実施する。雇用保険が対象とならない者にも、弾力運用で職業訓練手当を支給する。雇用保険の積立金の資金的制限に拘らず、失業給付等の拡充をはかる。失業給付の拡充、教育訓練・再就職支援等の雇用保険事業の改善に向け、雇用保険の国庫負担の割合を本則に戻すとともに、各事業への国庫負担、事業主・被保険者の保険料についても早急に見直す。
(4)2000年問題関連の支援策強化
特に中小金融機関に的をしぼって、システムエンジニア等への派遣を支援する等の施策を講じる。2000年問題に関連する資金ショート等に備え、政府系金融機関等の緊急融資枠を充実させる。対応の遅い中小企業に対する支援措置を強化する。
5.技術で勝負する中小企業への支援策
(1)中小企業技術革新制度の抜本的強化
中小企業技術革新制度(日本版SBIR)の予算を拡充し、政府の研究開発予算の2.5%を下回らないとの明確な規定のあるアメリカのSBIRのように、新しい仕組みをつくる。単段階の支援にとどまっているわが国の制度を改め、調査、試作品、商業化ごとの支援制度を確立する。
(2)大学教官の民間企業役員の兼務解禁等
国立大学、公立大学の教官については民間企業役員との兼務が原則禁止されているが、こうした規制を緩和し兼務を認めることとする。
(3)地域レベルの産学間連携の強化
大学教員、民間、地域との交流を促進し、大学の研究室がベンチャー企業や地場産業の発展につながるよう環境を整備し、地域レベルの産学間連携を強化する。
(4)発展分野の技術開発への重点支援
医療・医薬・福祉関連分野、人材・学習・起業支援関連分野、情報通信関連分野、新ものづくり分野、ニューライフ関連分野、バイオ・環境関連分野、NPOセクターの6分野+1セクターの技術開発を金融・税制上の措置を含め、徹底して支援する。
6.ものづくり基盤対策の強化
(1)ものづくりと情報通信技術の一体化
ベンチャービジネスや新規開業にものづくり技術、技能者が参入したり活用されたりできるようにビジネス支援のネットワーク化、人材のデータベース化を大規模に進める。ものづくりをインターネットなどIT(情報通信技術)と結びつけて振興し、中小製造業を有利な立場に誘導する。従来のハードワークというイメージからの転換を図り、ものづくり現場、特に中小企業のインテリジェントネットワーク化を支援し、情報関連機器導入に関する補助の拡充、中小企業大学校、基本的な取引文書に関する外国語例文データベースの構築などにつとめる。
(2)技術の殿堂「技術・技能院」の創設
学者の学士院、芸術家の芸術院に並ぶものとして、技術者、技能者の殿堂として技術・技能院を創設し、会員に一定額の年金を支給することとする。なお、財源については、雇用保険三事業のあり方も含め検討する。
(3) ものづくりを大切にした高校、大学への支援
実技を重視した推薦方式により工業高校卒業生等の受け皿とするとともに、働きながら学べるよう大学の門戸を開放し、教官にはものづくり熟練技能 者(OBも含む)を充て、卒業生にはものづくり学士を与え、製造業の人的育成に貢献する高校、大学等を支援する。
(4)義務教育段階からのものづくり教育充実
小学校、中学校を通じて、ものづくりへの関心と興味を高め体験を通じた学習を盛り込んでいくため、技術教育におけるものづくり重視のシステムを構築する。小中学校における工場見学を活性化をはかり、子供がものづくり現場を体験できる機会を増やす。産業界、労働界の協力を得て、「ものづくり副読本」を作成して学習教材にするとともに、教員のための「ものづくり体験研修制度」を確立する。
(5)工場・工場跡地の有効利用の促進
縮小された工場跡地の有効利用のため、新規事業や企業立地を促進する。また、柔軟な土地利用、用途地域見直しによる職住近接に配慮した工場アパートの建設、工場の立て替え需要に応じた賃貸工場の建設等を促進し、住・工・商の共存を目指すトータルなまちづくりを助成する。
7.まちづくりと一体となった商店街の振興
(1) 空き店舗の共同事務所化、SOHO(スモールオフィスホームオフィス)創設の促進
ハローワーク等に情報コーナーを設置し、空き店舗・入居希望者等の情報を公開し、空き店舗の再活性化をはかる。共同事務所立ち上げに対する低利融資制度を充実するとともに、商店街振興に絞った都道府県への交付金を創設する。SOHOに関する情報ネットワークの整備、相談窓口の充実等に取り組む。
(2)シルバーハウジングの建設促進
まず、中心市街地の活性化を図るため、低層部分が店舗、上層部分が住居の高層ゲタバキ商店街や三世代住宅の建設を促進する。商店街へのシルバーハウジングの建設を推進し、高齢者世帯と商店街を結び付け、商店街を中心とした福祉コミュニティーの再構築を図る。又、介護保険の導入に伴う在宅介護対象者への住宅供給を促進する。
(3)市民が主役の中心市街地活性化策の拡充
都心部に思い切って老人ホームや託児施設などの公共施設を設置するなど、居住環境を大幅に改善し、居住人口の増加を図っていく。虫食い状態・散発的な開発行為を抑制し、商業地域が郊外に広がっていく一方で中心市街地が空洞化するような非効率的な土地利用を防止するなど、建設投資に対する適切な規制誘導を推進する。縦割り行政を排して、住民の意志を反映した総合的かつ主体的なまちづくりを進めるため、地域住民・市民による「まちづくり協議会」の設立を推進する。公的賃貸住宅、公園緑地、合併浄化槽・中下水道等の生活排水処理システム、電線類・ガス管・上下水道管を併せて埋設する共同溝など、生活関連社会資本の整備・充実をはかる。
(4)中心市街地・商店街を核とする公共交通システムの確立
老人やハンディキャップを持つ人の利便性を守るとともに、郊外と中心市 街地・商店街の交流を深め、また、通常の路線バスやタクシーではカバーしにくい比較的少量のきめ細かい地域の公共交通需要に対応するため、NPOによる事業の許可なども含めミニバスのような公共交通システムの導入促進を図る。
8.その他
(1)中小企業諸施策の整理と窓口の一本化
似かよった制度がたくさんあり、また、窓口も統一されていないため、利用 者にとっては自分がどの制度を利用したらよいのかが非常にわかりにくい。 中小企業関連の法案を統合して政策体系を簡素化するとともに、各施策の整理・窓口の一本化をするなどして、利用しやすくなるようにする。
(2)中小企業政策等における地方への権限委譲等
地方の法人関係税、政策金融、外国企業の誘致など中小企業政策・産業政策に関わる国の権限 を地方自治体に全面的に委譲し、市区町村を中心とした地域ごとに自治体が自由な産業政策を展開し、地元経済をリードする中小企業を大胆に育成できる体制を確立する。
(3)中小企業組合から株式会社、有限会社への組織変更規定の創設
中小企業者が事業の発展段階や環境変化に応じて、多様な連携組織形態を選 択し、柔軟な組織再編が可能となるよう、中小企業組合から株式会社、有限会社への組織変更規定を創設する。
(4)下請中小企業対策の強化
大幅な受注減少、取引の不安定化等に直面している下請企業が、親企業・発 注会社から地位の濫用等による不当なしわ寄せを受けることがないように、 下請中小企業振興法の規制を強化して、下請け取引の適正化を図る。また、下請支払遅延等防止法の規制を拡大・強化して、親企業・発注会社と下請企業との、また、下請企業(中小企業)同士の支払いに関するトラブルの減少に努める。
(5)中小企業者による政策提言システムの構築
中小企業政策が官主導で中小企業者と縁遠いところで決定されている現状を是正し、個々の中小企業者が参加しうる政策提言システムの構築を図る。中小企業庁における中途採用を積極的に進め、中小企業の現場経験者などを政策立案に従事させる。
(6)中小企業に働く女性・起業する女性への支援
働く女性をサポートする施設(ファミリーサポートセンターなど)の設置促進を図る。育児・介護休業制給付の所得保障を現行の 25%から60%に引き上げる等の措置により、仕事と家庭生活の両立を支援する。政府調達の一定比率を女性起業家に与えるよう努めることとし、その責務を政府に課す仕組みを創設する。政府は女性起業家についてのデータベースを作成し、常時女性の起業家に関する情報を確認できるシステムを構築する。民間団体への支援などにより女性起業家の育成に努める。
(7)倒産法制の見直しによる中小企業経営のセーフティーネット強化
わが国では、一度事業に失敗すると、再び新事業に挑戦するのが難しいことに鑑み、「企業組織の変更に伴う労働者保護法」の制定を前提に労働者を不利な立場に追い込まない歯止めを講じつつ、零細企業や個人事業に簡易な法的手続きを認め、スピーディーな再起を容易にするための法整備に取り組む。
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