トップ > ニュース
ニュース
ニュース
2002/05/17
「母子及び寡婦福祉法等の一部改正案」に対する代表質問
記事を印刷する

民主党・無所属クラブ  中津川博郷


民主党の中津川博郷です。
私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました「母子および寡婦福祉法等の一部改正案」に対し、坂口厚生労働大臣並びに関係大臣に質問いたします。

さて、「日本の中小企業経営者は、なぜこれほど多く自殺してしまうのか」。ここ数年、外国の友人からよく問われる質問であります。わが国の自殺者は年間3万人余り、中にはリストラにあわれた方がもちろんいらっしゃいますが、圧倒的に多いのは中小企業や個人経営者で倒産を余儀なくされた方々なのです。

日本でこうした異常事態が生じるのはなぜでしょう。
それは単に景気が悪いからといった、表面的な理由では説明できません。

日本ではここ十数年、ゆとり教育の結果、学力低下と教育の荒廃が日本中に蔓延し、同時に経済もどん底に至っています。
一方その間アメリカは、日本とは逆に国が教育に力を入れた結果、教育が再生し、経済も大繁栄をしました。

アメリカの経済繁栄の原因は巷で言われておりますようなITの振興という面もありますが、より重要なのは、アメリカ社会が、倒産などの失敗を経験した人が再チャレンジし、やり直しできるような、法的・文化的・歴史的土壌をもっている点であると私は考えます。欧米では、会社と個人との間に明確な一線が引かれており、米国では「倒産した人が社会をつくる」と言われるほどであり、失敗の経験を積むことをキャリアとみる側面もあるほどです。

ところが日本では、中小企業経営者は自宅を担保にしなければ銀行からお金を借りられない、本人のみならず妻の「連帯保証」まで取られる、一度経営に失敗すれば家族だけでなく周囲も巻き込んで路頭に迷ってしまい、すべてを剥ぎ取られてしまうのが悲しい現実であります。業を起こす「起業支援」が進まない理由もここにあるといっても過言ではありません。

つまり日本は、一度失敗するとやり直しのきかない社会、立ち直りが難しい社会だと言えます。こんな冷たい社会でいいのでしょうか。

英国ではブレア首相が、失業や低所得、家族の崩壊など、やむを得ず社会的に排除された人たちが自力で抜け出せないならば、政府が助け舟を出して、再び社会に呼び戻すという政策を打ち出しています。具体的に、若年失業者や長期失業者あるいは一人親世帯の就業にむけたプログラムを組む「ニューディール政策」、セーフティネットでなく「トランポリン型の福祉政策」、どうしても低所得から抜け出せない層に対する手厚い保障などです。私は、例えばこうした「第3の道」の考え方から日本も学ぶべき事はたくさんあると考えますが、いかがでしょうか。坂口大臣の見解を伺います。

(今なぜ法改正するのか)
現在、5.2%の高失業率、若年層の就職難、22万8千人と激減する高卒求人数、86.3%と過去最悪の高卒者の就職率など、雇用を取り巻く環境は依然厳しく、先の見えない状況にあります。
小泉内閣発足以来この1年間、一体どんな明るい経済・雇用に関するニュースが流れたでしょうか。

このような大変厳しい経済状況の中で、小泉内閣は本法律案を提出された。児童扶養手当の見直しをはじめ、働きながら親一人でも子どもとがんばっていこうという多くの母子家庭に鞭打つような厳しい内容です。

坂口大臣、なぜこの時期にこのような法案を出されたのか、その理由を伺います。経済・雇用状況が最悪、ただでさえ厳しい生活を強いられている多くの一人親家庭にとって、あまりにもタイミングが悪すぎます。納得できる答弁を求めます。

(ひとり親世帯の実態調査)
さて、母子家庭などひとり親家庭の実態は、平成10年度の調査によれば、母子世帯は約96万世帯、父子世帯は約16万世帯で、とくに母子世帯は、前回調査に比べ20.9%も増加しています。ひとり親になった理由は圧倒的に離婚が多く、母子世帯では全体の8割を占めています。

そうしたお母さんの85%は働いており、正社員として働く常用雇用が全体の半分、臨時雇い・パート労働などが約4割おられる。年間収入は世帯平均で229万円、一般世帯の平均658万円に比べ3分の1強という極めて低い水準にあることも改めて認識しなければなりません。

調査結果からは、離婚の急速な増加、ひとり親世帯の多くが母子家庭であること、経済的貧困、子育て問題の深刻化が読み取れます。政府は、「戦後の未亡人対策以来50年の歴史を持つ母子寡婦対策を根本的に見直し、新しい時代の要請に適確に対応できるよう」に、今次改正案をまとめたとしていますが、果たして、多くの母子家庭が抱える切実な問題に対応できると本気でお考えでしょうか。

(再チャレンジできる社会の実現)
先ほど申しましたように、私は、日本を「やり直しのきく社会」にしたいと考えます。一度や二度の挫折や失敗をしても、新たな再出発ができる社会をつくることが必要です。

私は、決して離婚を勧めるわけではありませんし、幸福な家庭生活が長く続くことが望ましいことは言うまでもありません。とはいえ、再チャレンジできる社会をつくるには、不幸にして離婚というつらく悲しい経験をしたとしても、単純にマイナス、汚点としてはいけません。「別れたら次の人」、「別れたら今度は一人」、人生いろいろです。選択肢があっていいと思います。
離婚も結婚と同様、新たなる人生のステップ、キャリアとして前向きにとらえることのできる社会・文化を築き、それにふさわしい法整備も求められるべきではないかと考えますが、官房長官の認識はいかがですか。

つまるところ政府案は、財政対策として何とか児童扶養手当を抑制するために、生活支援や就労支援など、耳触りのいい事を並べてたてているだけではないでしょうか。児童扶養手当の削減だけが、期限まで明示されて決まっているにもかかわらず、それを補うための、例えば養育費の取立ての問題などは、法務省で検討中あるだけで中味は何も決まっていません。政策実行の順番が逆です。3割負担引上げだけが決まっていて、抜本改革がすべて先送りされている医療制度改革の議論とまったく同じではありませんか。これでは再スタートを切ろうという母子家庭が納得できないのも当然です。坂口大臣の答弁を求めます。

(養育費の問題について)
次に、養育費の問題について伺います。
離婚して親権者にならなかった親も、養育費負担の義務があるのは、民法上明白です。しかし協議離婚の際に、財産分与や子どもの養育費などについて十分な話し合いができないまま、離婚されているケースが少なからずあります。そのため、離婚して養育費を受けている母子家庭は全体の2割程度にとどまっています。

政府は、養育費確保の施策を今次改正案に盛り込むとしたものの、実際、法律案にあるのは、養育費取立ての義務を母子に負わせているだけで、子どもを監護しない親には何の義務も負わせていません。これで養育費の確保といえるのですか。
離婚した多くの父親は、口実を作っては支払を履行せず、切羽詰った母親は児童扶養手当を受給してしのいでいるのです。

現在、法務省の法制審議会で、養育費など少額債務について、将来分まで含め一括した強制執行の制度を検討中と伺っていますが、子どもはその親にとって宝であるだけでなく、社会全体にとっても宝です。経済的な問題で十分な教育を受けられない子どもも多くいることでしょう。法務大臣、多くの母子が抱える切実な問題です。ぜひ森山大臣から、ひとりで子育てする母親に光明を与える前向きな答弁をお聞きしたい。

(就労支援策について)
政府案の目玉の一つに就労支援がありますが、政府は現下の経済・雇用状況の深刻さを一体どうとらえておられるのでしょうか。

政府はさかんに景気の底入れをアナウンスしていますが、雇用の現場では一向に明るい兆しは見えておりません。実質的賃金の切り下げと雇用慣行の崩壊、「正社員」としての雇用枠減少とパート・派遣などの増加、若年者の就職難、フリーターの増加、年齢・賃金・能力などの「雇用のミスマッチ」に加え、雇用の受け皿がないための失業が増大しており、わが国の従来型雇用対策はすでに限界にきています。

そこで坂口大臣、母子家庭に対する就労支援を政府の雇用政策においてどう位置付けているのか、また、今次改正案の就業支援策によってどの程度の効果を見込んでいるのか、数字をあげてご説明いただきたい。

(住宅問題について)
最後に、母子家庭のお母さんが働きながら経済的自立をする時には、住宅問題も大きなハードルになっています。意外と知られていませんが、賃貸住宅を借りる場合、保証人の問題です。母子家庭の場合、高齢者や外国人に対するような入居拒否は少ないと言われますが、お母さんが一から生活をやり直そうとする時に、別れた夫や父親などの男性を保証人にしなければ、仮に安定した職業に就いていても家を借りられないという実態をご存知ですか。

民間の債務保証制度の拡充とともに、こうした実態についてもきちんと把握をし、適切な対応とるべきだと考えますが、政府の答弁を求め、私の質問を終わらせていただきます。

記事を印刷する
▲このページのトップへ
Copyright(C)2024 The Democratic Party of Japan. All Rights reserved.