介護保険見直しに反対する民主党緊急集会
去る11月5日、自自公3党合意を受けて政府は、来年4月から実施される介護保険制度について、(1)保険料徴収を半年間行わず、その後1年間は半額を徴収し、財源は国が負担すること、さらに、(2)家族介護に慰労金等を支給することなど、見直し方針を決定した。
政府見直し案は、介護保険制度の根幹を大きく歪めるものである。
保険料徴収の凍結は、負担と給付の関係を曖昧にし相互連帯という制度の趣旨を蔑ろにするばかりでなく、その財源を赤字国債に頼ることで将来世代に多大な負担を付け回すことになる。また、市区町村保険者の努力を無駄にし、地方分権の流れも阻害するであろう。さらに、慰労金の支給に至っては、介護基盤の整備に水を差し、介護にあたるご家族、とくに多くの女性をかえって介護に縛り付けることになりかねないものである。
そもそも、自民党は保険方式、自由党は税方式、そして公明党に至ってはその折衷案と、自自公3党の介護保険に対する主張はバラバラである。制度の根幹である財政方式について、自自公連立政権は、結論を先送りしたまま極めて場当たり的な選挙目当ての見直しを打ち出した。これは〈保険料なき保険方式〉、〈税負担なき税方式〉をなし崩し的に進めるものであり、まさに国民を愚弄する無責任な行為と断ぜざるをえない。
介護保険の目的は、(1)家族介護から社会的介護へ、(2)地方分権を促し分権型社会の確立へ、(3)措置制度からサービス選択可能な自立支援システムへ、(4)社会的入院を解消し在宅介護へ、(5)民間参入による良質かつ大量のサービスの創出へ、という高齢者福祉施策の大転換にある。これら介護保険制度の意義を反故にする流れに与することはできない。
民主党は、保険原理を生かした介護保険制度の円滑な実施と目的達成のために全力を上げる。民主党は、政府・与党による介護保険制度の趣旨を歪める見直しを許さず、引き続き国会においてその問題点を追及するとともに、広く国民各界各層と連携し、取り組みを強めていく決意である。
以上、アピールする。
1999年11月11日
介護保険見直しに反対する民主党緊急集会
【政府の見直し案に対する問題点】
1. 保険料徴収を行わないことについて
(1)相互連帯に基づく保険原理の根幹を壊し、制度の趣旨を歪める
「サービス給付を受けるために保険料を負担する」のが保険の基本である。にもかかわらず、保険料負担なしにサービス提供するのは、「給付と負担の関係」が曖昧になり、社会全体で支える介護保険制度の根幹を崩すことになる。
(2)赤字国債の増発は無責任
保険料徴収の凍結により必要となる約1兆円の財源について、政府は全額赤字国債で賄うことを明らかにしている。厳しい財政状況の中、安易に赤字国債を増発するのは、将来世代へ過重な負担を先送りするだけであり、極めて無責任な行為である。
(3)市区町村の努力を無駄にし、地方分権の流れを阻害する
介護保険制度の創設は、地方自治の原点に立つものであり、まさに地方分権に向けた試金石である。保険者である市区町村は、制度の目的や「負担と給付」の特徴などを住民に説明し納得を得てきた。また、独自性の発揮や負担に見合うサービスの確保に向けた努力を行っている。今回の見直しは、そうした市区町村の努力を無駄にし、住民との間に築かれた信頼を壊し、地方分権の流れを阻害する一方的な措置である。
(4)低所得者対策や介護サービスの基盤整備に重点対策を講じるべき
限られた財源は、一律にばらまくのではなく、低所得層の負担軽減策とサービス基盤の緊急整備に対して重点的に投入するべきである。
2. 家族介護に対する慰労金支給について
(1)慰労金は介護にあたる家族(主に女性)をかえって苦しめる
これまで家族介護にあたってきたのは主に女性であり、またそうした家族介護がすでに限界に達していることは明らかである。いま家族に必要なのは慰労金ではなく、息抜きと睡眠である。いくばくかの現金給付によって、家族介護を当然のこととされるのは大きな苦痛である。
(2)自治体の介護基盤整備に対する意欲を低下させる
慰労金の導入は、基盤整備に対する自治体の意欲は大きく低下させるものである。現物サービスの不足を慰労金で補う逃げ道が出来るため、自治体はサービスを充実させずに、安上がりな慰労金給付に流れるからである。その結果、介護基盤整備は一向に進まず現金給付に頼るという悪循環に陥る。
(3)民間事業者参入のインセンティブが失われる
介護保険制度の実施にあわせ、民間の介護サービス事業者が続々と介護市場に参入している。しかし、慰労金が導入されると、低所得者を中心にホームヘルパーなどのサービス利用が低下し、ニーズが伸びなくなるため、民間事業者が積極的に参入するインセンティブが失われる。それでは、従来の貧弱な介護基盤の状態が一向に改善しない。
以上
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