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1999/08/13
民主党がめざす年金制度改革(中間のまとめ)
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 民主党は、党厚生部会内に年金制度改革小委員会を設置し、党の年金制度改革案の検討を続けてきたが、これまでの議論を「中間のまとめ」として集約した。なお、細部の詰めや、税調や他の部会等での議論も必要とされる点も多いが、議員各位のご意見をいただきながら、今後とも鋭意作業を進め、最終案を取りまとめたい。

■ 年金制度改革の視点

 5年に1度の年金財政再計算の度に、年金の将来像が大きく揺らぐことが年金制度への不信を増大させている。世代間、世代内での不公平感も解消すべき重要な課題である。制度の長期的安定をめざし、抜本的な改革に着手しなければならない。
 民主党は、次の4つの視点をもって年金改革に臨む。

* 年金は高齢者の所得保障の主要な柱であることから、その給付水準の確保に努めなければならない。一方で、将来世代に過重な負担を押しつけることのないような給付と負担の水準の設定が必要である。

* 定年制や終身雇用制など、いわゆる日本型雇用慣行の変容や、国民の生活意識や価値観の多様化に対応できるよう、公的年金制度を基本としつつ、企業年金や私的年金との組み合わせ等、選択肢を拡げる。

* すべての個人が自分自身の年金権を持てるようにするため、給付と負担について、原則、世帯単位から個人単位へと転換を図る。

* その上で、今回の改正においては、制度そのものの空洞化の進行が危惧されている基礎年金の改革を最重要課題に据える。




■ 制度改革案

* 基礎年金を改革し、「国民基本年金」制度を創設する。

o 現行の基礎年金制度を、全国民に一律定額の年金額を給付する「国民基本年金」制度へと再編し、最低所得保障(セーフティーネット)を確立する。


o 基礎年金の国庫負担率(現行3分の1)を直ちに2分の1に引き上げるとともに、それに伴って保険料率の引き下げを図る(国民年金3000円、厚生年金1%)。
  平成16年(2004年)の次期再計算時までに、全額国庫負担(いわゆる税方式)への移行を図る。その財源としては、現行消費税の福祉目的税化と一般歳出の見直しで対応する。その詳細については党税調での議論を進める。

o 基礎年金の税方式化によって引き下げられる企業負担の保険料減額については、法人事業税の外形標準課税化をすすめる際に、法人事業税賃金割(賃金を外形標準とする部分)課税に転換する等の措置を検討する(税調のとりまとめ)。

o 基礎年金の税方式により、国民年金の「空洞化」に対処するとともに、女性の年金権の確立、早期に対応が求められている無年金障害者問題の根本的解決を図ることができる。あわせて、世帯単位から個人単位へ転換することや、夫婦間での年金分割や、遺族年金の廃止に向けた検討を行う。

o 国民基本年金の給付水準は、賃金と物価の変動や高齢者の公的負担を勘案しつつ政策的に改定する。


* 厚生年金(報酬比例部分)の改革

o 報酬比例年金である厚生年金は、サラリーマン階層の世代間での相互扶助制度として、国民基本年金と明確に区分し位置づける。その財政方式は、最終的には賦課方式を基本とする。積立金を活用しつつ、厚生年金の最終保険料率を年収の20%以内にとどめる。

o 給付については、当面、物価、賃金スライドを維持する。また、今後の給付水準のあり方として、手取り年金と現役世代の手取り賃金との比率を一定とする、いわゆる「ネットネット方式」について、現役世代と高齢者の負担のバランスを踏まえながら検討する。

o 年金と雇用との接続が何より重要である。厚生年金報酬比例部分の60歳からの特別支給を維持しつつ、「65歳現役社会」をめざす諸施策を強力に推進し、その成果を見極めながら、今後、支給開始年齢の引き上げを検討する。

o 高所得水準の者を対象として、65〜69歳の在職者の厚生年金の調整を行う。また、納税者番号制度の導入を受けて、年金を含めた総合課税と控除制度のあり方に検討を加える。

* 被雇用者の厚生年金への全員加入と総報酬制の導入

o 基礎年金の税方式化にともない、パート労働者等の厚生年金への加入を進める。負担の公平さを図る観点から総報酬制を導入する。
  また、育児休業期間中の厚生年金保険料の事業主負担分を免除する。介護休業中の企業負担についても、同様の措置を検討する。


* 年金資産の安全な運用と活用

o 運用内容の情報公開の仕組み等を整備し、安全で透明性の高い年金資産運用体制を整備する。また、年金福祉事業団の解散と基金への事業の継承については、継承される事業のあり方について慎重に検討するとともに、職員の雇用確保に配慮する。


* 企業年金の改革

o 厚生年金基金の代行制度の抜本的見直し、確定拠出型年金制度、受託者責任の明確化や受給権保護等を目的とする「企業年金基本法」について検討する。


* 関連施策の推進など

o 介護・医療等を含めた総合的社会保障制度改革案「21世紀社会保障ビジョン」を策定し、社会保障・福祉制度全般の充実を推進する。
  具体的施策としては、少子化対策(こども手当の新設、保育サービスの充実等)、65歳現役社会の実現、老後生活の自立支援政策(女性の経済的地位の向上、高齢者の健康増進策、バリアフリーの住宅や街づくり等)を強力に進める。リバースモーゲッジ制度の創設・普及を検討する。

o 特に、少子高齢化社会における社会保障・福祉財源の確保については、税・社会保険、いずれの方式であっても大きなものになることから、国民的議論と合意が欠かせない。民主党は、そのような議論を、国会で活発化させるよう各党に働きかけるとともに、広く国民とともに積極的に展開する。

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