1 日本は、豊かな可能性を持つ国です。
民主党は、日本と国民の可能性を信じています。日本は、長い歴史と豊かな文化や伝統を持つ魅力あふれる国です。この国には、世界に誇ることのできる勤勉で誠実な人々がいます。民主党は、この優れた特性を生かし、国民と共に、21世紀の新しい日本、「最良の国・日本」を築いていきます。
長い不況と将来への強い不安から日本社会は黄昏時を迎えているのではないかとの声があります。日本はかつての元気をなくし、自信喪失に陥っているかのようです。確かに、少子高齢化社会の到来や終身雇用制の動揺、急速な情報社会化、市場主義の蔓延は国民生活の将来に不安をもたらし、これに、教育の荒廃やモラルの崩壊、猟奇的犯罪の発生などが伴って、このままでは、社会の土台が崩れるのではないかとの不安も生まれています。
いまもっとも必要なことは、社会の再構築です。自民党政府は、「経済の再生」を唱って、当面の景気対策を優先していますが、長期的には日本社会の基礎体力の衰弱そのものが課題となっています。民主党は、経済はもとより、この「社会の再生」にチャレンジすることが、いま政治に最も求められている課題であると考えています。
社会の再生なくして、少子高齢化社会に対応する社会サービスの確保も、市場社会や官僚世界に蔓延しているモラル・ハザードの防止も、教育再興も実現することはできません。民主党は、「強靱な社会の構築」を何よりも優先します。
個人の自立と確かなモラルによって支えられた共同社会(コミュニティ)に基礎を置き、国民一人ひとりの自由な創造性が発揮される社会、すなわち「最良の国」日本の実現を私たちはめざします。世界に向けても、日本は、「最強の国」でも「最大の国」でもなく、文字通りの「最良の国」にならなければなりません。それは、世界の国々や人々から信頼され、世界とともに行動する日本となることです。
私たちは、国民と国民のエネルギーを何よりも信頼しています。時代の転換期に臨んで、社会の再生に向けて改革すべき点を大胆に変革する勇気と、国民に基礎をおいた新しい政府が樹立されるならば、日本は生まれ変わることができると思います。日本はもっと良くなれるし、ならなければなりません。
日本は可能性に満ちた国です。古代以来、中国・朝鮮半島やオランダ、南東アジアなどとの交流を経て豊かな文化を築き上げ、近代においてもヨーロッパ先進諸国の文物を積極的に輸入しつつ日本文化に一層の厚みを創り出してきた国です。それは、対立と排除の文化ではなく、「融合の文化」、「重ね合わせの文化」であり、いわば絶えずそのイノベーションを受け入れる「寛容で柔軟な文化」でありました。まさに、リベラリズムの源流を見ることができます。この多様性に満ち、新しいものを受容する進取の気風あふれる「柔軟な文化」を糧に、その可能性を新しい時代に向けて切り拓くならば、必ずや世界にも誇れるすばらしい「最良の国・日本」を創造することができると信じています。
2 日本の再生に挑戦する私たちの基本理念
民主党は、不公平を拡大し、人々に不安と不満をもたらす弱肉強食社会に通じる「市場万能主義」にも、依存心を増長し、個人の尊厳と自立した人格の破壊に通じる「福祉国家至上主義」にも与しません。市場原理の機能を強く支持していますが、社会と政治の積極的役割についても重視しています。また、個人の選択の自由を広く容認しつつも、ルールを守ることや社会を支えるモラルを大切にする立場に立ちます。
21世紀は、国際人権の時代とも言われています。世界のどこに暮らす人々であっても、難民や大量の人権侵害が繰り返される状況に対しては、国際的な規模でこれを防止し、その支援を行う時代です。民主党は、日本がそうした国際活動に率先して大きな役割を果たせることを望んでいます。国内外を問わず、人権や個人の尊厳が尊重される新しい社会の姿を追求します。
民主党は、個人の自由な選択が保障される社会の形成につとめます。それとともに、国民生活の安心と安全が守られるセイフティネットの整備に徹します。「経済には可能な限りの自由を、生活には最大限のセイフティネットを」です。「自由で安心な社会」の構築が民主党の基本目標なのです。
民主党は、人と人、男と女、国と国、人間と自然等の間の「対等」「互恵」を基本に、「自立」と「共生」が織りなす「友愛社会」の実現をめざします。、「自助」も「公助」も必要ですが、何よりも人々が互いに結び合い助け合う「共助」の世界を大切にします。
このため、政府にすべてを依存し、行政の対象者として位置づけられた受益者民主主義や請負型民主主義を脱却し、義務よりまず権利が先行するという戦後民主主義の弱さを克服して、人々が共に支え合い、すべての分野で「国民一人ひとりが主役となって自ら参画し責任を負う新しい民主主義」に挑戦します。
そして、いま、20世紀から21世紀への大転換期を迎えて、新たな千年紀に突入しようとしています。紀元の始まりから1000年までは、人間が自然を神とあがめ、それにおののき支配されてきた1000年であり、その後2000年までは、人間が自然を征服したかのごとく思い上がってきた1000年でありました。新千年紀を迎えるに当たり、私たちは、支配でも征服でもなく、人間と自然が共生する、新しい時代を切り開いていく決意です。
以上の考えに立ち、私たちは、次の5つの課題に挑戦します。
1)民主党は、「分権連邦型国家」と「情報公開の徹底」による「新しい民主主義」の形成に挑戦します。
自民党は、省庁改革に際して分権改革を実質上後回しにし、曖昧な権限移譲策で乗り切ろうとしています。しかし、民主党は、21世紀日本の姿は分権連邦型国家でなければならないと考えています。なぜなら、地域の自己決定と自己責任がない社会は依然として官僚依存政治の存続を意味するからです。このままでは、政治の質は一向に変わらないことになります。
民主党は、中央政府の役割を限定し、地域に自主性と財源を持たせる分権改革を断行します。自治事務の飛躍的拡充とともに、国と地方の税源配分が1対1となるよう改正します。これによって、多様なNPOなどのネットワーク活動が自治を担う新しい政治が誕生します。地域のことは地域が決定する社会が生まれ、自己決定する個人が横に連帯して、1人1人が参加し責任を持つ新しい民主主義が実現することとなります。
民主党は、すべての分野における「情報公開」こそがこれからの日本にもっとも必要なことだと考えます。国民の知る権利に基礎を置いた情報公開の徹底があって初めて民主主義が十分に機能し、国民の自由な力が発揮できます。分権改革と情報公開の徹底は、まさに、新・民主主義革命にとって不可欠な条件なのです。
2)民主党は、男女共同社会を通じた「福祉」と「労働」の再構築に挑戦します。
年金や福祉サービスの確立は、国民生活の安心の土台となるものです。私たちの政府は、これらのセイフティネットの確立に何よりも優先して取り組みます。基礎年金については税方式を基本に改革し、介護や子育てなどの社会サービスと各種の給付制度や参加制度を統合的に捉えた「社会保障制度の再構築」をおし進め、国民生活の安心を確保します。それとともに、人々の共同で福祉を支える新しい社会のかたちを作り出していきます。
とくに、21世紀の人権時代や共生原理にふさわしい新しいライフスタイルと生活をかたどる男女共同参画社会の創造に取り組みます。
大量の失業と雇用不安を放置する政府は「責任ある政府」と言えません。雇用の開発と雇用機会の均等な保障は社会の責任であり、政府の基本的任務です。明確なルールの下で民間による職業仲介事業や労働者派遣事業を拡大し、子育てや介護と両立できる新しい働き方や「やり直しのきく社会」の確立を強力に支援して、働くことを望むすべての国民にその機会を保障する「新しい完全雇用」社会の実現をめざします。
3)民主党は、「人材立国」と「コミュニティの再生」に挑戦します。
豊かな人材の形成は国の基礎でもあります。学校荒廃や学級崩壊はもとより、学力水準の著しい低下は社会と国の基礎体力を衰弱させる道に他なりません。教育改革を断行し、新しい時代にふさわしい豊かな人材の育成を支援します。焦点の「学校改革」については、とくにコミュニティの力が必要です。学校経営の自主的運営をコミュニティに委ねて、画一的中央統制から解放します。また、大学の改革にチャレンジし、新しい時代を担う優れた人材の育成支援につとめます。
少年犯罪や非行、極端な利己主義、大人社会を含めたモラルの低下、依然として根強い官依存体質を克服するためには、何よりも強靱な社会の再生が必要です。また、多様な福祉サービスのネットワークを確立するためにもコミュニティの再生が不可欠です。民主党は、これら「社会の再構築」にも挑戦します。
4)民主党は、「インフレなき持続的経済成長」と「財政規律」の実現に挑戦します。
民主党は、公共事業ばらまきの従来型公共投資から福祉・情報関連中心の新公共投資への大胆な転換を進めて、当面の景気対策はもちろん、市民生活や環境保護と両立し、かつ起業家活動が活性化する「新しい成長軌道」の実現に辛抱強くチャレンジします。社会的不公平の拡大と様々な歪みをもたらすインフレ政策は回避し、持続可能な市場経済の確立につとめます。
現政府は、景気対策を理由に構造改革先送りの財政ばらまき政策を次々と繰り出しています。これは、財政責任も曖昧にしたまま、将来世代に多大な不良債務を積み残すものでしかありません。私たちは、景気の回復なくして財政の再建はないと考えますが、同時に、歳出構造の改革なくして財政再建もあり得ないと考えます。無駄な公共投資や特殊法人の整理を計画的に進め、21世紀日本に必要な新しい社会資本の整備に集中的な投資ができるよう、効率的で規律ある財政の確立につとめます。
5)民主党は、「平和創造国家」と「アジアの中の日本」の確立に挑戦します。
民主党は、国際社会を与件として、これに依存する国の姿をかえなくてはいけないと考えています。日本は、これまで日米関係を重視するあまり、自前の対外政策と自己主張を持たず、世界の国々から「顔の見えない国」として受け取られてきました。しかし、日本は世界平和の中でしか生きられない国です。資源小国であり、国際交易の利益を大いに享受している日本にとって世界平和はまさに国の存立基盤そのものなのです。それはまた、国際平和と国際社会に信を置き、未来を切り開くことを決意した戦後日本の出発点もありました。「平和を享受する日本」から「平和を創り出す新しい日本」へ、すなわち「平和創造国家」へと大転換していくことが重要です。民主党は、常に「世界と共に何ができるか」を構想し、それを多様な国の人々と共に実践していく積極的外交政策を推し進めていきます。
とくに、国連の効率的体制の確立に日本自らその積極的役割を果たすとともに、国際平和の創造により有効な活動ができるよう国連活動の活性化に取り組みます。
冷戦時代の終わりとともに、世界に開かれた海洋国家でもある日本は、自らの創意工夫で、新たな地域的平和秩序の形成に挑んでいくべきときを迎えています。とりわけ、「アジアの中の日本」の地位と役割を明確にし、アジア太平洋地域における外交的リーダーシップを発揮します。
3 「最良の国・日本」を実現するために
〜民主党は国民と共に前進します〜
新世紀を目前にして、世界史の流れは大きく方向転換しました。壮大な歴史観や荘重な国家が個人や地域をリードするのではなく、逆に、個人や地域などの小さな単位が主役となり、歴史を創り出す時代が到来したのです。国の在り方についても、これまでの惰性に流されることなく、ゼロベースで吟味し、再構成する勇気を持たなくてはいけません。戦後日本の基本的枠組みのすべてを見直し、大胆な改革の道を構想していくことが必要です。
にもかかわらず、自民党中心の政権は、バブル崩壊後の不況に直面して小手先の緊急対策を優先し、日本が直面している改革課題に正面から向き合い、これに挑戦しようとする毅然とした姿勢を欠いたままです。結果として、改革の「先送り」「その場凌ぎ」が繰り返され、国民はいまや日本社会の将来と国民生活の行く末に大きな不安を抱いています。
政治そのものを変えなければ、日本の再生はありません。日本が国際社会との調和の中で求められている経済構造の改革も、政治の改革と表裏の関係にあります。先送り、場当たり、ばらまき予算を続ける自民党中心の政権を許すことは国民の不幸でもあります。
誰もが「社会の再構築」が必要だと気づいているのに、日本社会の現状は、いま、歴史の転換点にあって立ち往生しているようにも見えます。なぜ、改革は進まないのでしようか。それは、日本の進路を方向付ける政策の立案を官僚が独占する仕組みそのものが変わらないままであり、いわゆる霞が関の支配が続いているからです。国民生活の方向を決する政策立案活動については、これまでのような官僚独占を排し、情報公開を徹底して、広く民間にも政策立案の仕組みが確立されるよう変革していく必要があります。まさに、民主党がめざす「霞が関の解体」です。
このため、政府への民間人の登用が可能なポリティカル・アポインティ(政治任用)のポストを飛躍的に拡充し、官庁の中にも指定職以上を特別職の政治任用とするなどの改革に着手します。また、民間シンクタンクや大学と官庁との人材交流を積極的に推し進めて、政策立案の官僚独占を打破していきます。
時代の大きな転換期に臨んで、変革の時代にふさわしい「ダイナミックで行動的な政府」、民主党中心の政府を実現しなくてはなりません。必要なことは、国民を信頼し、その新しい社会の姿の実現に向けて行動する政治的リーダーシップです。私たちには、それを引き受ける覚悟と用意があります。
私たちは、日本及び国民にとって「何が大切なのか」「何が必要なのか」を常に考え、良いものは良いと素直に認める政党でありたいと考えます。このため、民主党は、これまでの旧いイデオロギーにとらわれた「対立の政治」から、ビジョン、政策、リーダーシップ、新しい価値観などを互いに争う「競争の政治」へと大きく歩み出しました。
この基本姿勢に立ち、私たちは、ここに、国民の皆さんに向けて新しい選択肢を提供します。数を頼みに談合政治を続ける自民党中心の政権か、それとも、未来に向かってこの日本の可能性を切り拓いていくことを決意した新しい民主党中心の政権か、それを決するのは国民の選択です。
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