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2002/04/18
ワークシェアリングに関する中間とりまとめ〜民主党が考える働き方の構造改革〜
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厚生労働NC大臣 山本 孝史
雇用対策PT座長 城島 正光

雇用対策PTは、ワークシェアリング(以下WS)に関する論点整理と基本的な考え方を以下のとおり中間報告としてとりまとめた。今後、本中間報告をもとにさらに体系化、法案化の作業をすすめたい。

1.基本的な考え方

 1)政労使の合意について

・先般、政労使WS検討会議が「政労使合意」を発表した。三者がWSの指針や定義を初めて示した意義は大きいが、合意の枠組みは企業内での緊急対応策が中心であり、今後のわが国の雇用政策の柱の一つとして位置づけられたとはいえない。

・政府の財政的支援措置についても、「引き続き検討を行う」との表現にとどまっており、政府が雇用政策の抜本的な改革に踏み込む決意に至っていないことが露呈している。

 2)民主党の基本的考え方

・経済・雇用状況が非常に厳しく、賃金体系の変更に伴う実質的賃金の切り下げと慣行の崩壊、「正社員」としての雇用枠の減少とパート、派遣労働者などの増加、若年者の就職難、年齢・賃金・能力などの「雇用のミスマッチ」に加え、雇用の受け皿がないための失業が増大しており、わが国の従来型雇用対策はすでに限界にきている。
加えて、社会的格差の拡大、社会保障の担い手の減少傾向が発生し、社会構造全体が不安定化してきており、社会的にもっと幅広い雇用維持、雇用創出の方策の確立と推進が求められている。

・WSは、雇用、時間、賃金の組み合わせを変え、就労機会をより多くの労働者で分かち合う方法であり、「仕事に就いている人」と「仕事に就きたい人」が仕事を分かちあい、雇用機会を増大させる施策である。
同時に、労働の価値と就労形態の多様化、生産とサービスにおけるニーズの多様化、性・年齢にかかわりなく働くことのできる社会環境整備に対する要求への対応策でもあり、働き方、ライフスタイルの構造改革をもたらす社会政策でもある。

・そうした観点からすると、WSを本格的にすすめるには、労働時間、職務分担、処遇などについて日本の雇用慣行そのものを見直すことが不可避である。
今回の合意の枠組みである「緊急対応型」WSは、失業をこれ以上増やさないための短期対策の側面をもつ施策であり、現下の雇用情勢の下では推進すべき対応策だが、本来のWSはより中長期的な雇用政策の柱として位置づけるべき側面をもっている。

・民主党は、短期対策とともに、より長期をも展望した環境整備をすすめ、多様な就労形態を整備することで雇用を創出するという観点に立ち、フルタイマー・短時間就業者の労働時間と仕事に即した均等待遇、社会保険制度適用の短時間就業者への拡大、女性や高齢者の就業条件整備等を追求する。

・WSによってもたらされるものは、単に雇用機会の拡大だけではない。より多くの者が就労し、労働時間の短縮と余暇活動の拡大、多様な形態の生産とサービスの拡充により、新たな産業分野の育成と活性化がもたらされる。WSはわが国の経済、社会構造全体の活力と弾力性を生み出す可能性をもっている。
  したがって民主党は、WSの環境整備とその推進の中で、日本の社会と経済の再生そして改革をも追求する。



2.わが国がめざすWSの姿

 1)日本型WSの姿

・WSは目的ではなく、雇用の安定・創出、新たな、多様な就労形態、ライフスタイルへのニーズを充足させるための手段である。現下の雇用情勢から、まずは短期対策として緊急対応型WS、そして民主党がかねてから主張している新しい産業(環境・福祉・教育・IT・都市再生など)の創出を並行してすすめることが必要である。

・また、公的部門においても、従来型の事務事業を見直し贅肉を落としつつ、教育・保育、福祉・介護、環境など、求められている行政サービスの拡充あるいは民間分野の誘導政策と併せてWSをすすめることが重要である。

・WSに必要な社会的環境を整える必要がある。例えば、短時間勤務を誘導・奨励するのか、一日の労働時間の短縮よりは週休を増やすのか(週休拡大の方が個人の可処分時間を増やし、起業支援策としても効果的である)、さらに男女ともに仕事と家庭の両立が可能となるような働き方、就労機会の構造転換などについて、検討・推進する必要がある。

・大企業の方が取り組みやすく、中小企業の現場ではWSは難しいとの指摘もされている。WSの基本は労使の合意が前提であり、普遍的ルールを明確にし、社会合意へと高め、運用において個別労使間で円滑に協議が行われていく、いわば「明るいWS」を支援する社会的機運と態勢をつくる必要がある。
  とりわけ、中小企業における運用、パート・派遣労働者の保護等に留意する必要がある。


 2)WSの推進のための仮指針

・短期緊急型(雇用維持型)=労使の合意に基づいた雇用維持のためのWS計画があること。雇用維持人数、計画実行期間、所定労働時間の短縮とそれに伴う収入の減額、期間中の解雇・希望退職の禁止・制限、経営上の必要性、雇用調整の回避努力、労働時間管理の徹底などを図り、WSに名を借りた単なる給与ダウンを防ぐ。

・中長期型(雇用創出型)=労使の合意に基づいた雇用創出を伴うWS計画があること。上記指針に加え、新たな雇用者数、その就労形態、就労内容、賃金等について明確な規定が必要。
公的部門においては、事務事業の内容についての指針と基準が必要。



3.必要な諸制度の検討

 1)制度的検討

・時間外労働のあり方を検討。労働時間の短縮促進、世界でも類を見ない低水準の割増賃金を50%以上に引上げることなど、労働時間短縮の誘導策の検討【時短促進法の改正、労働基準法の改正等】。

・就労形態の多様化に対応する「同一(価値)労働同一賃金」原則の確立。労働時間に違いがあっても、同じ仕事をしていれば時間あたりで同じ賃金を払う、有期雇用でも反復更新を繰り返していれば、正社員と同様の身分が保障されるなど【パート労働法の改正等】。

・多様な就労形態に適合するような社会保険制度の整備。健康保険や厚生年金の被保険者は、所定労働時間の四分の三以上の労働者とされているが、これを二分の一以上とすること。雇用保険の短時間就業者への適用拡大など【雇用保険法改正等】。

・就労意欲を妨げない中立的な税制改革の推進(配偶者控除など人的控除の見直しなど)。

・性、年齢にかかわりなく働くことができ、必要な職業能力を身につけることができる環境整備。職業能力開発制度の抜本的強化。奨学金制度の拡充。育児休業、介護休業の拡充。有給休暇の完全取得及びゆとりある多様なライフスタイルを可能とする長期休暇制度の導入など【募集・採用における年齢差別の禁止法制定、労働基準法の改正等】。

・短時間正社員など多様な就業形態の整備、副業可能な就業規則の設定に向けた調査研究。

・働き方の改革、就労形態の多様化に適合する、住宅供給システム、教育費負担のあり方、金融融資制度の改善などの検討。

・働き方の改革、就労形態の多様化に伴う解雇規制ルールの再構築についての検討。


2)WSに対する助成措置

・一般会計を財源としたWS支援策の検討(仮指針を概要とする規定整備と併せて検討)。

・雇用維持のWSを進める事業主支援として、特別会計を財源に、雇用調整助成金の運用変更(基準・適格性、フォローアップ体制等を整備)。

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