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2001/11/11
医療制度および医療保険制度改革案
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◆目 次

はじめに
改革の視点と方法

T.医療制度改革案
  1.医療提供体制について
  2.診療報酬体系について
  3.薬価制度について
  4.生命科学産業の振興について

U.老人医療と老人医療費について
  1.老人医療費の増加について
  2.高齢者医療のあり方について
  3.高齢者の負担の問題について

V.医療費の伸びと経済成長率について
  1.医療と経済の関係について
  2.医療と市場原理、競争原理について
  3.医療の技術革新と保険給付の範囲について

W.医療保険制度・老人保健制度の抜本改革案
  1.問題の所在
  2.中長期的な改革の方向
  3.当面の改革

○参考資料
 ・主な専門用語の解説


■はじめに

 21世紀をむかえ、日本は、あらゆる分野において構造改革を迫られている。特に、医療分野においては、1997年「抜本改革」が頓挫する一方で、経済は低迷をきわめ、医療保険制度をはじめとする社会保障制度の、持続可能なシステムへの改革が、日本社会の安定のためにも急務となっている。

 民主党は、1999年8月、医療制度改革小委員会が「中間報告」をまとめたが、ひき続き、厚生労働部門会議内に医療制度改革ワーキングチームを設け、民主党がめざす医療制度および医療保険制度の改革案の検討を進めてきた。以下は「中間報告」をふまえ、これまでの議論を集約したものである。

 なお、この報告書は12月11日の民主党ネクスト・キャビネットにおいて中間報告として了承され、議論の到達点を世に問うため、広く一般に公表するとともにパブリックコメントに付すこととされた。今後、多くの方からご意見をいただき、国民のためのより良い医療制度改革の実現に向け、引き続き取組んでいく。


■改革の視点と方法

 1997年改革において、「医療提供体制」「診療報酬体系」「薬価制度」「老人医療制度」の4つの課題が取り上げられた際に、民主党としては、<1>あるべき医療提供体制→それに相応しい診療報酬体系→その中の薬価制度[医療制度]、及び、<2>医療保険制度のあり方→老人医療制度[医療保険制度]、という2つの軸で改革を考えるべきと提起したが、その考え方で改革案を提示する。
 その際、改革に時間がかかる課題については、「中長期的目標」と「当面の改革」に分けて記述する。


T.医療制度改革案

 現在の日本においては、国民が医療機関を選ぶ際に、医師等の医療スタッフや診療内容などの医療情報が公開されていないため、フリーアクセスというシステムを持ちながら、的確な選択ができ難い状況にある。また、十分な説明がされていないという問題や、カルテなどの診療情報の開示も義務づけられていないためのトラブルが発生している。

 医療内容については、標準化が行われていないため、かかった医療機関によって治療内容等が違い、医療水準や安全性、効率性が担保されていない。

 また、個人開業医から大規模病院まで、あるいは幅広い診療を行う医療機関から狭い専門的医療を行う医療機関まで渾然一体となって存在している。このことは、患者の医療機関選択にあたって混乱を生じているだけでなく、医療費の支払い方式が出来高払い主体であることとあいまって、非効率な医療が行われ、医療費の無駄が生じる要因ともなっている。
 様々な規模、機能をもつ医療機関に対する医療費支払い方式(診療報酬体系)は、ほぼ同一であるため、それぞれの医療機関に相応しい医療が行われにくくなっている。また、支払い方式の9割以上を占める出来高払い制度は、個々の患者に応じて必要と考えることを自由にできるというメリットがある反面、無駄が多くなって医療費の増加に歯止めがかからないとか、医療技術が評価されないという欠点がある。一方では、医療費抑制のため新技術や新薬を採用することが難しいという問題も生じている。

 薬価制度については、公定価格制度であるために、仕入れ価格を下げることによって薬価差益が生じ、その薬価差益を求めて薬が必要以上に多く使われたり、より高価な薬が使われる傾向がある。また、公定薬価の決め方や保険薬としての承認制度にも問題がある。

 これらの問題を解決するために、まず情報公開を徹底するとともに、渾然一体として存在する各種医療機関を、目的別機能別にきちんと整理することが必要である。

同時に、普段から健康管理や健康づくりについて相談でき、簡単な病気の治療をしてもらい、必要な時には適切な専門医や病院を紹介してくれる「家庭医」をもつ制度を提案する。この制度は先進諸国ではごく当たり前の制度である。ただし、そのためには、幅広く健康管理や軽い病気の治療ができ、必要な時に専門医を紹介できる「家庭医」を養成する必要がある。

 診療報酬支払方式は、医療の標準化を進め、標準化のできる治療分野から定額制を導入する必要がある。定額制は粗診粗療を招くとの意見もあるが、情報公開と第三者機関評価によって担保できる。また、一定額の中でいかに効率的に治療するかという意味で、裁量性が増し、技術が評価される方式とも考えられる。

 薬価については公定価格制をやめ、市場原理に委ねるべきである。その際、売り手側の言い値で薬価が高騰しないために、買い手である患者や医療機関のパワーを発揮するシステムを組み込むべきである。診療報酬を定額払い制にすることによって、コスト削減のために薬剤購入費を下げたり、必要最小限の費用対効果の良い薬を使おうというインセンティブが働く。


1.医療提供体制について

(1)情報開示等

・患者情報の開示とインフォームドコンセント
 *カルテ等の全ての医療情報を開示する。カルテ開示義務を法制化する。
 *カルテの電子化を進める。
 *インフォームドコンセントに基づいた医療を行う。
 *セカンドオピニオンを保証する。

・医療および医療機関情報の開示
 *広報、インターネット等により、医療情報及び医療機関情報に誰でもアクセスできるようにする。広告規制は、現在のポジティブ方式からネガティブ方式に変更する。
 *第三者による医療機関の評価を行い、公表する。
 *保険者による医療機関の評価を行い、被保険者に公開する。
  
(2)医療の標準化
・根拠に基づく医療(EBM)を医療の基本的な考え方とする。

・クリニカル・パスウェイ(★注6)を導入する。

・医療の標準化を行う。主要疾患について順次治療マニュアルを整備する。
 
(3)病院と診療所の機能分離

□中長期的目標

1. 家庭医制度(★注1)を創設する。
  ・健康相談、健康管理、生活指導、簡単な病気の治療、適切な専門医や病院への紹介、アフターケアなどを総合的にできる家庭医を地域住民が選ぶ制度を創設する。
  ・家庭医については、家庭医同士、あるいは専門医と組んでグループ診療を行えるようにし、患者のセカンドオピニオンの機会を保証する。

2. 病院
  ・病院は、入院しなければ検査や治療ができない患者を収容する施設(いわゆる急性期病院)とし、外来は、紹介・救急・特殊専門外来に限定する。
   病床数の半減をはかり、機能を集中させる。
  
  ・そのような病院の診療機能を高めるため、人員配置基準および設備基準を現状より高くする(人員は現状の2倍以上)。
  
  ・そのような病院の経営が無理なく行われるような診療報酬支払制度とする。
  
  ・上記の病院のほか、一定数の長期入院病院とリハビリ専門病院も位置づけ、それらの人員配置基準および施設基準は別に定める。
 また、後記の開業専門医も入院病床をもつことができることとし、病床数のいかんに関わらずこれを病院とし、人員配置基準および設備基準を別に定める。
  
  ・上記の病院のほか、政策医療を行う病院を設ける(国立センター病院、僻地あるいは過疎地の多機能病院等)。

3. 専門医診療所
  
  ・家庭医以外の診療所は、専門的医療を行う診療所とする。(産婦人科、眼科、耳鼻科、外科、整形外科、循環器科など)

  ・歯科診療所は医科における専門医と同じ位置づけとする。

  ・専門医は入院施設をもつことができることとし、入院施設をもつ場合は上記の病院として位置づける。


■当面の改革

1. 病院

  ・病院は、急性期病院とリハビリ病院と慢性期病院に分ける。

  ・急性期病院は「地域医療支援病院」となるよう誘導する。

  ・慢性期病院は、在宅医療支援機能を整備し、退院を促進するよう誘導する。

  ・病床規制のもと新規参入・新陳代謝が妨げられていることについて、改善方策を講じる。

  ・人員配置基準を満たしていない病院は、病床の使用制限を行う。

  ・精神病院における精神科特例(★注3)を廃止する。

  ・高機能病院へのフリーアクセスについて、高率の自己負担による制限を加える。

2. 診療所

  ・「かかりつけ医(★注4)」機能を拡大し、地域医療支援病院あるいは専門医との連係を必須化する。


(4)医療従事者の養成制度

・医師の入試制度、学部教育、卒後教育を抜本的に改革する。
 医師の卒後研修のあり方については、現在、「研修医問題を考えるワーキングチーム」において検討中である。

・薬剤師の養成は6年過程とする。

・看護婦教育は4年制とする。准看制度は廃止する。

・その他の有資格医療従事者(★注5)についても、4年制大学教育とする。
 

(5)高齢者医療について(別途後記)

・高齢者医療については、エイジフリーの考え方を基本とし、個々の患者の特性を考慮して適切な医療を行うとともに、特に生活の質を重視する。
 

(6)ターミナルケア(★注7)について(別途後記)

個人の意志と尊厳を尊重する。


(7)小児医療について

・小児医療の充実の具体策について、現在、「小児医療検討ワーキングチーム」において検討中である。

・危機的な状況にある小児医療を立て直すため、小児医療を大人の医療からは独立したものとして位置づける。

・救急機能を持つセンター病院を中心とする地域の小児医療ネットワークを構築し、少子化時代の子どもたちの心身の問題に総合的に対応できる体制を作る。


(8)歯科医療の改革について(民主党「歯科医療改革案」参照)

・歯科重視の医療体制の確立

・治療歯科から予防歯科への転換

・患者が安心できる環境づくり


(9)医療の安全対策の確立

・医療事故対策については「医療事故対策に関するワーキングチーム」で検討中。

・医療事故防止のための医療法改正案を第151国会に提出(第三者機関が医療事故報告を求めることができる等)。



2.診療報酬体系について

 診療報酬の支払い方式は、薬や医療材料や検査費用などの「もの」に比重のある現在の方式を見直し、技術料重視の体系とする。「もの」の評価は基本的に市場原理に任せる。設備投資費用については、従来すべて診療報酬の中でみてきたが、建築費用、土地代、大型機器設備等を診療報酬でみるのは無理と考えられることから、低利融資制度の創設や公的資金による補助制度を拡充したり、公設民営を進める必要がある。その際、公私間格差をなくすため、医療法人制度を改革し、営利性を強化する。

□中長期的目標

(1)病院への支払い方式

・医療の標準化を進め、日本型DRG−PPS方式(★注8)を導入する。出来高払い方式(★注9)を付加する余地を残す。

・病院については、総額予算制の導入を検討する


(2)診療所への支払い方式

・家庭医は、人頭定額払いを基本とする。慢性疾患は包括払い(★注10)とし、軽微な急性疾患、あるいは予防医療についての出来高払いを付加する。

・専門医も定額制を基本とする。
 

(3)診療報酬の決定機構

・中央社会保険医療協議会(中医協、★注11)に替わる新たな機構(委員構成、独立した事務局)を検討する。
 

(4)審査・支払いシステム

・包括払い方式についての審査は、医療機関の評価と連動するシステムとする。

・医療機関への立入り検査権を有するものとする。

・支払いシステム、支払い機関(基金等)については、抜本的に見直す。


■当面の改革

(1)病院への支払い方式

・診療報酬制度を病院向けと診療所向けの二つに区分し、病院向けは、入院向けと外来向けに区分し、包括化を進める。

・レセプト審査の電子化、および、保険者による直接審査あるいは専門機関への審査委託を進める。


(2)診療所への支払い方式

・「かかりつけ医」方式を進め、慢性疾患への包括払いを拡大する。

・地域医療支援病院等との連携医療を評価する。

・レセプト審査の電子化、および、保険者による直接審査あるいは専門機関への審査委託を進める。


(3)診療報酬の決定機構

・中医協の委員構成を診療側、支払側、中立それぞれ同数とし、診療側委員に病院代表、看護婦代表等を加える。


(4)審査システム

・レセプト審査の電子化を進める。

・保険者機能を強化し、保険者が一次審査を行えるようにする。


3.薬価制度について(★注12、★注13、★注14)

 薬剤治療は医療行為の重要な一部であることから、現物給付を維持し、他の医療行為への支払方式と分離して別個の償還制度をとることはしない。

□中長期的目標

(1)市場原理に任せる

・診療報酬支払いシステムについて定額制を基本とすることにより、公定価格制度を廃止する。薬剤の価格は市場原理にまかせる。


(2)完全医薬分業(★注15)を実現する。

■当面の改革

(1)公定薬価制度を維持し、透明化等の改善をはかる。

・製薬メーカー・流通業者・保険者・学識経験者による薬価決定委員会を中医協のもとに置き、薬価の決定方法を透明化する。
 既に薬価収載されている薬剤で同一成分のものが複数銘柄ある場合は、同一グループとして、加重平均値を薬価とする。
 新薬については、類似薬効比較方式を基本とし、薬剤の特性に応じて加算あるいは減額を行う。

・市場価格を毎年調査し、R幅をゼロとして毎年薬価改定を行う。

・なお、公定薬価制度を維持せざるを得ないとしても、市場原理を働かせ、患者にもコスト意識を持ってもらうために、薬剤費について別途3〜5割の定率負担を求めるべきであるとの意見もあった。


(2)医薬分業を徹底するとともに、一般名処方(★注16)を進める。


4.生命科学産業の振興について


 薬価制度の抜本改革に際して、生命科学の発展に対して国家戦略を立て、研究開発に公的投資を行う。製薬産業政策は経済産業省に移管するが、希少疾患用薬品等の開発および安定供給は厚生労働省所管により公的支援を行う。


U. 老人医療と老人医療費について

 医療制度および医療保険制度の構造改革を行うにあたっては、老人医療のあり方および老人医療費の改革が中心的な課題の一つとなっている。

 医療費増加の主要な要因が老人医療費であること、一人あたり老人医療費が若年者のそれの約5倍と先進諸国に比して著しく高いこと、医療費全体に占める老人医療費の比率がますます増加していることから世代間連帯のあり方が問われていることなどが問題視されているが、最近では自己負担の増加などによって、老人医療費の伸びの鈍化も指摘されている。

 一方において、高齢者は健康弱者であること、年金制度の成熟と貯蓄率の向上などから平均的に高齢者が豊かになっているが貧富の格差も大きく、保険料負担や自己負担のあり方について、なお解決をはかるべき課題が老人医療に集中している。


1.老人医療費の増加について

(1)老人医療費増加の第一の要因は、高齢者数の増加である。高齢になるほど病気等になりやすく、一人が罹患する病気の種類も多くなることから、老人数の増加によって老人医療費が増えることそれ自体は避けることができない。

 欧州諸国と違って、日本においては、70歳という年齢で区分する高齢者医療保険制度である老人保健制度があり、その財源は各保険者が事後的に拠出する制度となっている。そのため、老人医療費が突出して見える特徴がある。

 そのことは、二つの側面をもつことを認識し、分析と対策策定にあたって注意しなければならない点がある。欧州諸国では、「老人医療費問題」は存在しないことに注目する必要がある。

 一つは、老人医療無料化以後生じた、社会的入院や薬剤の過多などの医療の無駄がより鮮明に浮き彫りにされということである。

 もう一つは、高齢期の国民により多くの医療サービスが行われることが過剰に強調されていることである。

(2)老人医療費増加の第二の要因は、一人当たり医療費が若人より高いことである。日本における一人当たり老人医療費は若人の5倍であり、米、英、独、仏に比べてかけ離れて高いとされているが、カナダ等、日本の比率に近い国もあり、また、アメリカは3.5倍ではなく4.6倍だというデータもある。

 わが国の特徴である「社会的入院」を減らすことにより、この老若比率の差は縮められるし、一方で、欧州諸国において老人が医療から遠ざけられているという実態を考えると、差が生じていることの一部は理解できる。また、最近では、一人当たり老人医療費の伸びは鈍化してきているというデータもあることから、老若比率の問題は慎重に検討する必要がある。

 しかし、医療費の無駄、あるいは非効率が老人医療に集中的に現れていることは間違いない。


2.高齢者医療のあり方について

(1)高齢者の病気は老化現象と重複して症状が現れる場合が多く、慢性疾患が多いことから、生活のなかで病気や障害とつきあうという考え方にもとづき、在宅医療を推進する必要がある。「社会的入院」を減らす努力が必要である。
 福祉施策の不十分さのために医療がかかえてきた分野を、介護保険制度との間で適切に分担する必要がある。しかし、過度に医療を介護に持ち込んではならないし、老人にも急性期疾患治療の機会がきちんと保証されなければならない。

(2)老人医療の特性についての研究を進め、老人の特性に合った治療法、薬容量などについてのマニュアルを早急に整備する必要がある。
 根拠にもとづいた医療(EBM)は、特に老人医療において求められる。

(3)ターミナルケアのあり方の問題
 ターミナルケアが老人医療問題と平行して論じられるきらいがあるが、注意を要する。
 ターミナルケアのあり方の問題は、年齢にかかわらず、人間の尊厳との関係に置いて論じられるべきものであり、同時に、医療問題としては、EBMの問題として論じられるべきものである。
 一般医療とは異なる、ターミナルケアのためのシステムの整備や人材の養成が必要である。

(4)幼少時・若年からの健康づくり活動の強化
 常日頃からの健康づくり活動の活発な地域ほど老人医療費が低く、平均寿命も長く、また介護保険料も低く済む傾向がはっきりしている。
 このことから、健康づくり事業、健診事業、生きがい対策事業、寝たきり老人ゼロ作戦などの総合的事業を進める必要がある。「健康日本21(★注17)」が策定され、「健康増進法(仮称)」制定の動きがあるが、地域に密着した活動が総合的行われる必要がある。縦割りで行われている、学校保健、職場の健康管理などが、地域で一本化して行われる必要がある。
 他方、人材の育成にも力を注ぐべきである。医師・歯科医師について、病気の予防・健康づくり・健康相談をも守備範囲とする「家庭医」を養成すべきである。保健婦、理学療法士、作業療法士、栄養士などの増員と地域での活動を強化すべきである。


3.高齢者の負担の問題について

(1)老人医療費無料化の教訓
 1973年の老人医療費無料化は、戦後一貫して進められた給付比率の向上(医療費の社会化)の究極の姿であり、当時の高齢者のおかれていた状況を考えれば、必然の施策であったと言える。
しかし、また、無料化によって、医療提供側および患者・家族側双方にモラルハザードが生じ、出来高払い制や公定薬価制度に支えられて、社会的入院や薬漬け・検査漬け医療が広がる要因ともなったことについては大いに反省する必要がある。
 また、社会保険制度のなかでの給付率の向上という点から無料化が行われたのではなく、老人福祉法を接ぎ木する形で無料化が行われたことについても、反省する必要がある。無料化による老人医療費急増の一方で、73年の第1次オイルショックを契機とする経済成長の鈍化は、保険財政の悪化を招き、社会保険制度としての医療保険制度の持続性に疑問をいだかせる原因をつくった。

(2)少子高齢化の進行と高齢者の所得・資産の増加
 近年、少子高齢化がますます進み若年層の負担が重くなる一方で、年金制度の成熟化に伴い高齢者の所得水準が上昇し、70才以上の平均貯蓄額や資産も現在では若年者を上回るようになった。
 こういった状況の変化から、高齢者自身の保険料負担および窓口一部自己負担は当然のことと考えられる。一部自己負担はコスト意識をもつためにも定率負担が適当である。
 ただし、高齢者が健康弱者であること、相変わらず低所得者も少なくないことから、自己負担について一定の上限を設けることが検討されるべきで、保険料についても若年者と同率の負担を求めることは合理的でなく、公費の重点的投入も必要と考えられる。
 ただし、高所得者などについては、若年者と同等の負担を求める必要がある。



V. 医療費の伸びと経済成長率について

 現在、厚生労働省や財務省、その他の政府関係機関や各種会議等から提案されている改革案には、医療費の伸びを経済成長率と連動させる、あるいは、経済成長率の範囲内に抑制するという考え方が強く打ち出されている。

 医療費の財源である公費も、事業主負担も、被保険者の保険料負担も、さらに患者自己負担も、経済動向と無関係に決定できるものでない以上、経済成長率との関係を論じることは当然であり、必要なことである。

 しかし、経済成長の成果を何に振り向けるかは、その時々の国民が決定すべきことであり、あらかじめ限度を決定すべきものではない。現に、かつて第二臨調において「国民負担率50%上限論」が錦の御旗のごとく掲げられ、1997年度予算総則にまで書き込まれたが、現在においてはその現実的意味を失っている。

 さらに、経済の構造改革において、経済再活性化と雇用創出のための新産業として、医療・福祉分野への期待が高まり、また、科学技術立国の視点から、生命科学への国家的取り組みが進められていることからも、医療費の伸びに上限を課すことは非現実的となっている。
 しかし、当然のことながら、医療費の伸びには限界があることは言うまでもない。


1.医療と経済との関係について

 医療を含む社会保障制度は、経済の発展にとって二つの面で貢献する。

グローバル化が進むなかで、経済活動を市場原理にしたがって発展させるために、安心のシステムとしてのセイフティーネットの役割がますます大きくなっている。

成熟経済の時代を迎えて、サービス産業の一翼として新たなサービスや雇用を生み出す。

生命科学産業の発展は一国の経済にとって必要不可欠である。


2.医療と市場原理、競争原理について

・市場原理を、「価格を意志決定のシグナルとして行動する需給両者の金銭取引による資源配分」と定義するならば、医療に市場原理を持ち込むことは好ましくない。供給者側が市場から退出せざるをえない事態は、「悪化が良貨を駆逐する」ことのないように監視すれば、容認できることである。
 しかし、需要者側が経済的理由で市場から退出せざるをえないという事態は容認できない。

・一方、競争政策については、重視されなければならない。
 患者が選択できるように、情報公開を徹底的に行うことを前提に、競争原理を働かせる。
 その際、公定価格下で、かつ出来高払い制で競争を行うと、医療費の高騰を招くことが明らかとなっているので、定額払い制に切り替える。

・病院病床の規制については、医療費抑制の観点から行われてきたが、参入規制となっている側面があることを考え、参入を自由化する方向での新たな手段を検討する必要がある。

・病院間の公私格差を無くす。
 医療法人の経営の透明性を高め、公益性を高めることにより、税制や補助金についてイコ−ルフッティングとする。

・国公立病院の経常経費への補填を禁止し、原則民営化する。


3.医療の技術革新と保険給付の範囲について

 医療分野における技術革新は、必ずしも価格の低下につながらないものがある。そのため、新技術や新薬をすべて公的医療保険でカバーできるとは限らない。そこで、次のような方策を検討する必要がある。

・EBMの考え方に基づき、新技術、新薬の保険適用を行う。
 EBMの考え方に基づき、既に保険適用となっているものについても、不断の見直  しを行い、不適切なものはもとより、役割を終えたものも適応からはずす。

・特定療養費制度を活用する。
 その際、自費分についての民間保険活用にあたっては、税制上の優遇措置をとるかどうか検討する。

・不妊治療、臓器移植、遺伝子治療の一部などは、個々人の生命観によるところが大きいので、国民皆保険制度での保険給付の対象とすることは難しいと考えられる。

・軽医療については、保険免責の考え方にたって、給付対象からはずすことについても検討する。


W. 医療保険制度・老人保健制度の抜本改革案

 今日、わが国の医療保険制度は多くの問題点が顕在化し、構造改革が求められている。特に老人保健制度は、近年、老人保健拠出金が急激に増加して各保険者の運営を圧迫し、新たな高齢者保健医療制度の構築が喫緊の課題となっている。

 特に、老人保健制度においては保険者機能がまったく備わっておらず、かかった医療費を事後的に拠出金制度によって負担させられていることから、各保険者が不満を募らせているのは当然である。

 しかし、問題は老人保健制度にとどまるものではない。その背景には、保険集団のあり方と保険者間のリスク構造調整のあり方、社会保険制度における税の果たすべき役割、さらには本来あるべき保険者の機能にまでおよぶ広範な問題が存在している。

 これに対して政府与党は、問題を高齢者医療制度に限定した上、小手先で当座をしのごうとしているが、本質から目をそらしては問題の解決はない。


1.問題の所在
 
 わが国の医療保険制度は、欧州諸国を範として、職域ごとに逐次整備されてきた。

 今日、欧州においては、高齢化や産業構造の変化に対応して、分立する医療保険制度の統合や財政調整を行うことによって全国民の「負担と給付」の公平をはかる方向をめざしている。当初設立された職域を越えて、被保険者の加入の自由化を行うことや、そのことを通じての保険者機能の強化も模索されている。

 一方、わが国では、完全な国民皆保険制度を確立し、農業者・自営業者のみならず、零細企業の被用者、さらに無職者等、被用者保険制度に加入できないすべての国民の受け皿として、国民健康保険制度を整備してきたという特徴がある。また、そのような経過から、国民健康保険には医療費の半額の公費を投入しているという特異な財源構造が生じている。

 高齢化が進み、無職者・年金受給者のほとんどが国民健康保険に加入するという実態から、国民健康保険制度は、保険料によって運営することはますます不可能となっている。

 もう一つの日本の医療保険制度の特徴は、老人医療の無料化に淵源をもつ、老人保健制度という独特の制度があることである。アメリカのような、国民皆保険制度を有しない国でとられている、ある一定年齢以上を独立した制度として区分している。そして、その財源を「拠出金」という形によって各保険者で分担するという制度であり、保険者機能がまったく備わっていない。

 また、政府管掌健康保険という、全国一本の巨大な保険制度があり、保険者機能がまったく働かないという特異な制度も存在する。


2.中長期的な改革の方向

(1)保険集団の再編成について

・政管健保は、都道府県単位に分割・民営化することにより、保険者として機能強化を図る。(民営には、組合方式や民主党型エージェンシー方式(★注19)が考えられる。)

・国保は、都道府県単位に統合・民営化することにより、保険者として機能化を図る。

・組合健保は、全国展開する企業については、適正規模の統合により全国健保組合として存続し自立的機能の強化をはかるが、総合健保等は都道府県単位に組織再編し、分割・民営化される政管健保と統合する。

・地方公務員共済、国家公務員共済の短期保険についても、基本的に政管健保、組合健保にならって再編する。

・老人保健制度は廃止する。高齢者の健康保険加入は、当初加入した健康保険への継続加入を基本としつつ、保険者選択を自由化する。

・被保険者の各健康保険への加入は、当初加入健保への継続加入を原則としつつ、加入の自由化をはかる。


(2)保険者間の財政調整制度について

・職種ごとの健康保険から、全国民の健康保険へと、「負担と給付の公平」をめざしつつ、一方で、保険者機能の強化をはかり複数保険者間の競争を行うため、各保険者間のリスク構造調整を行う。リスク構造調整は事前の財政調整である。

・その調整の仕方は、効率・公正・透明な方法で行われなければならない。ドイツ型(★注20)の場合、年齢・所得・性別・家族被保険者数に着目して行われているが、わが国においては国保の所得捕捉システムが不十分との指摘もあることから、年齢リスクから始めて段階的に実施することが現実的である。


(3)保険者機能の抜本的強化について

・現行制度では保険者機能は著しく制約されており、各保険者は当事者能力をほとんど付与されていない。そこで、大胆な規制緩和を行い、自主性と当事者能力の向上を通じて、保険者機能の強化をはかる。

・保険者機能として、レセプトの一次審査、医療機関の評価、医療機関との直接契約の許可、診療報酬についての一定の裁量権付与などを行う。
 これにより診療報酬支払基金のあり方については、存廃を含めて見直しを図る。

・被保険者による保険者の民主的コントロールを可能にするよう、保険者内部における公開と参加の仕組みを整備する。

・保険者機能は、医療機関との交渉力を強化したり、被保険者に対して保険料に見合った医療サービスを提供する仕組みを整えるだけでなく、広範な医療情報を提供し、あるいは健康診断や健康相談を行うなど、被保険者が自らの健康を自ら守れるような支援をすることが含まれる。


(4)税の役割について

・社会保障制度における保険料と税の役割については、保険料による運営は「リスクの分散」(保険原理)であり、税による運営は「所得の移転」(扶助原理)であるから両者を峻別すべきとの意見がある一方で、社会保障における給付と負担の関係はリスクの分散であると同時に所得の移転であるから、保険料と税とは社会保障制度全般の中で弾力的に用いられるべきとの考えもある。

・一方、わが国においては、国保に50%、老人保健制度に30%、政府管掌保険に16%、健康保険組合には0%と、税の投入比率が異なっており、その投入根拠も明らかとなっていない。
 今後、税の投入のあり方については、さらに検討を進める。


3.当面の改革
 前項の中長期的な改革の方向を展望し、当面の改革としては次の通り改革を実施する。

(1)保険者の統合等について

・国保は広域化をはかる。

・組合健保は現在の十分の一程度まで統合化を進める。都道府県単位化できるものは、都道府県単位に統合再編する。

・政管健保については、都道府県分割へ向けての準備をただちに開始する。


(2)保険者間のリスク構造調整について

・都道府県内での国保間のリスク構造調整を進める。

・組合健保については、統合された組合間でのリスク構造調整を進める。


(3)老人保健制度廃止までの移行形態について
 現行老人保健制度の廃止までの移行形態として以下の措置をとる。

・年齢区分を75歳に引き上げ、財源は、公費5割、本人負担1割とし、その他の部分は、健康保険各制度からの拠出とする。

・70歳から74歳までの高齢者については、段階的に従前加入の各保険者に加入するものとする。
 自己負担は段階的に70歳未満被保険者と同一にするが、当面1割を維持する。

・国民健康保険については、70歳から74歳までの医療費について、公費の5割充当をおこなう。


以上

参考:主な専門用語の解説


★注1 家庭医

 厚生省の「家庭医に関する懇談会」報告書(1987年4月)によれば、プライマリ・ケアを担う医師に求められる機能を家庭医機能と定義し、<1>初診患者に十分対応ができる、<2>健康相談・指導を十分に行う、<3>総合的・包括的医療を重視する、<4>患者に全人的に対応し、診療に関する説明を十分に行う、など10項目を提示している。


★注2 地域医療計画

 1985年の医療法改正によって都道府県に計画策定が義務づけられた。地域の体系的な医療供給体制の整備を進めるためで、医療資源の効率的活用や医療施設相互の機能連携確保などを目的としている。医療提供体制の確保をはかるべき単位となる区域(医療圏)を設定し、医療圏で整備すべき必要病床数を定め、機能を考慮した病院の整備目標、へき地、救急医療の確保等を定めて、少なくとも5年ごとに再検討することになっている。


★注3 精神科特例

 医療法では、病院に従事する医師や看護婦(士)等の人員配置基準(標準)が定められているが、主として精神病、結核の病室を有する病院については、都道府県知事の許可を受けた場合にこの基準(標準)より低い配置が許される旨の特例が規定されている。医師など医療従事者の確保が困難な時代に特例として規定されたものであるが、社会復帰促進などの観点から、その特例の廃止が求められている。


★注4 かかりつけ医

 明確な定義はないが、一般にプライマリー・ケアを担う医師として位置付けられている。家庭医が、診療所等における総合的・包括的な医療を重視するのに対し、かかりつけ医は、例えば「眼科のかかりつけ医」、「内科のかかりつけ医」などと言われ、患者・消費者は医師の専門とする診療科目ごとにかかりつけの医師を決めて受診している。


★注5 チーム医療を担う医療従事者

 医学・医療の進歩やニーズの多様化などによって多くの医療従事者によるチーム医療が行われている。看護婦をはじめ臨床検査技師、診療放射線技師、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、臨床工学技師、視能訓練士、医療ソーシャルワーカーなど。


★注6 クリニカル・パスウェイ

 入院患者に対し、おおよそその患者がたどるであろう臨床経過とそこで提供される医療について、医師・看護婦など関係者で図面化し、実行・評価する手法。クリティカル・パスウェイとも言われる。


★注7 ターミナルケア(終末期医療)

 末期がん患者等の終末期医療のあり方について、意味のないと思われる延命治療を拒否するリビング・ウイル(生前の意志表示)、最後の死の瞬間まで充実した生を送ることをめざしたホスピスの取り組みなど、尊厳ある死をどのように迎えるかという観点から検討が必要。

★注8 DRG/PPS(疾患群別定額支払制)

DRG(Diagnosis Related Group)
 国際疾病分類で1万以上ある病名をヒューマンパワー、医薬品、医療材料などの医療資源の必要度から、統計上意味のある500程度の病名グループに整理・分類する方法。DRGにPPS(Prospective Payment System・予定定額払い)が加わって初めて疾患群別定額支払制になる。アメリカで1986年から導入された仕組みで、入院患者の疾患を、約500の疾病診断分類の1つに分類し、実際の入院日数や使われた医療資源の多寡に関わらず、予め定められた額を支払う仕組み。


★注9 出来高払い制

 医療機関が患者に提供した検査、投薬、手術などの報酬は、原則、個々の診療行為を公定化した単価表(=診療報酬点数表)に基づき、積み上げた点数(=出来高)を保険者に対し請求し、医療保険から支払われる仕組みとなっている。点数表は、中医協の審議を経て厚生大臣が2年に1回、診療所および病院に全国一率のものとして告示される。
出来高払い制は、主治医が必要と考える診療行為を行い、その総費用を保険者に請求できるため、基本的に診療行為への制限がない一方、報酬を高めるため必要以上の濃厚・過剰診療を誘発することもあり、効率的な医療提供のインセンティブが働きにくい仕組み。


★注10 包括払い制(定額払い制)

一定の疾病(要件)に対し一定の支払額(診療報酬)を予め決めておく仕組みで、要件により疾病別、日数・件数別などで定額払い制の分類もされるが、個々の診療行為の多寡により医療機関の報酬が左右されないので、出来高払いにみられる過剰診療を抑制する効果はある。また、一定の支払額の中で最も効率的な診療行為が選択できるので技術評価ができる一方で、過少診療や重症患者の拒否など患者選別の欠点も指摘される。


★注11 中央社会保険医療協議会(中医協)

 厚生大臣の諮問機関。社会保険医療協議会法二条で「健康保険及び船員保険における適正な診療報酬額に関する事項等を…自ら厚生大臣に、文書をもって建議することができる」と規定されている。メンバーは医療費支払側委員8人、診療側委員8人、公益側委員4人の20人で構成され、診療報酬点数表の改定なども含め関係団体の利害調整機関となっている。


★注12 薬価基準

 薬価基準は、医薬品を使用する場合の保険で使用できる医薬品の範囲(品目表)と、使用した医薬品の保険での支払価格(価格表)を規定してある(1点単価は10円)。
厚生省は、毎年医療機関の医薬品購入価格の調査を行い、市場の実勢価格を元に2年に1回薬価の改定を行っている。


★注13 薬価差益

医療機関が保険者に請求する薬価基準価格(公定価格)と、実際に卸業者等から購入する価格には、その取引条件に応じた大きな価格差が存在しており、その薬価差益を大部分の医療機関がこれまで経営に充当してきた。また現行の薬価基準制度は、薬価差益の大きな高価格医薬品にシフトしがちな制度で、薬価差益は1兆円を超えると言われている。


★注14 薬価算定の仕組み

(1)既に収載されている医薬品
 薬価調査による医療機関の購入価格の加重平均値に、一定価格幅(R幅)を加えた価格を新しい価格とする。1998年4月の薬価改定によりR幅は5%となったが、例えば、改正前薬価100円、調査による購入価格の加重平均値を80円とすれば、改正後の薬価基準新価格は80+(100×5%)=85円となる。
(2)新薬の薬価算定ルール
 既存の類似薬があるときはそれと比較して新薬価を定めることを原則とし、類似薬が  ないときは原価計算を行う。画期的な新薬にはより高い評価を与え画期性加算を行い、新規性に乏しい新薬(ゾロ新)の価格は抑制的に扱う。


★注15 医薬分業

 医師の処方箋に基づき薬局の薬剤師が調剤して投薬すること。ヨーロッパでは長い伝統があるが、日本での実施率は未だ20%に留まっている。薬の専門家である薬局(薬剤師)に、調剤・服薬指導を任せることにより重複投与・投薬過誤の防止や患者の薬剤服用歴を管理できることや、医薬品の適正な保管管理ができるなどのメリットがある。他方、医療機関にとっては、薬価差益に依存しない経営の確立が迫られる。


★注16 薬剤名の商品名、一般名

薬価基準への医薬品の収載方式には、商品名(メーカーによる販売銘柄)と、日本薬局方などの同一組成・同一規格としての一般名(統一名称)がある。収載品目1万3千のうち一般名収載は10%に満たない。該当する商品名を一般名のもとに列挙する方式では、その商品の価格は同一であり、列記されない医薬品の保険適用は認められない。
 有効性・安全性が同等で、安い医薬品の使用を促進するため、長期収載医薬品の一般名への移行が求められている。


★注17 健康日本21

 厚生省が2010年を目標年に2000年から実施予定の「21世紀における国民健康づくり運動」のこと。従来の、早期発見、早期治療の「二次予防」に重点を置く取組みから、健康を増進し発病そのものを予防する「一次予防」を重視した健康づくりを構築するため、重要な課題となる対象分野を設定し数値目標を定め、それを達成するための諸施策を体系化したもの。


★注18 保険者機能

 保険者は、保険給付のほかに医療費の通知、疾病予防(健診、人間ドッグ)、保健指導・相談などの事業を行っているが、保険者が「対費用効果(医療の質とコスト)」を考え、具体的に個々の診療行為や医療機関をチェックすることは行われていない。
 したがって、各保険者が、レセプト(診療報酬明細書)情報などによって各医療機関の過剰・過少診療などの医療の質とコストをチェック・評価し、被保険者に情報提供するなどの機能を担うことが求められている。


★注19 民主党型エージェンシー(民主党「行政改革に対する基本方針」から)

 法人の長は民間人も含め公募により決定し、権限と責任を集中する。職員は、国家公務員と民間人の中間型の独立行政法人型公務員となるので、新たに法律を制定してその身分・権利義務関係を明確にする。法人の長は、コスト削減やサービス向上の目標を設定した中期目標を策定しその成果を公表する。また、独立行政法人を情報公開法の対象とし、その政策評価と一層の独立行政法人化の検討を内閣府の行政改革推進室が行う。


★注20 ドイツ型のリスク構造調整

 全疾病金庫について、年齢、男女構成、所得、扶養率に関する調整を実施し、この結果、各金庫は所要保険料と財政力の差を得る(または拠出する)こととする。
 第一のポイントは、「保険者の責任」に帰しえない部分は財政調整の対象とし、それ以外は財政調整せず保険者に帰責させる、という発想に基づくものであること。
 第二に、「事前的調整」なので、保険者の合理化努力(医療費の効率化)を当該保険者の財政状況に反映できること。  (出典:広井良典著「医療保険改革の構想」より)

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