トップ > ニュース
ニュース
ニュース
1998/10/05
「金融健全化対策」の概要
記事を印刷する

民主党 緊急金融・経済対策本部

バブル経済の崩壊以来、護送船団方式とよばれる金融機関と行政の癒着構造の中で、多くの金融機関は十分な不良債権処理を怠って銀行法上の義務である健全性を大いに損ない、その事実を隠すことに汲々として貸し渋りに走っている。行政側も場当たり的弥縫策を繰り返すのみで抜本的対策をとらないできた。その結果、今日の我が国の金融システムは極度に不安定化し、国民経済・世界経済にも深刻な悪影響を与えている。

今、透明性の確保によって市場の信頼を回復すると同時に、不良債権処理と資本強化を進め、金融機関経営の健全性を回復することは喫緊の課題である。金融機関の資本増強策について、我々は、近々廃止される予定の金融機能安定化特別措置法の失敗に学ばなければならない。同法による公的資本注入は、金融機関の正味の実力を明らかにしない不十分な情報開示のもと、経営者・株主の責任を事実上不問にしたまま、十分な経営努力を金融機関側に求めることもなく行なわれた。その結果はモラルハザードの蔓延であり、金融機関経営は一向に改善しなかったばかりか、公金で購入した優先株等に多量の含み損を発生させている。短期集中的な不良債権処理(=厳格な資産査定・引当て)と情報開示の徹底により、金融機関経営の実態を正確に把握することが、今後のあらゆる金融危機管理対策の大前提である。その上で、こうした劇的情報開示の結果明らかになる金融機関の過少資本状態に対しては、金融機関の自助努力を前提にしつつ、以下のような対策をとるべきである。

なお、我々の金融健全化対策は、オーバーバンキングの是正や金融再編など、金融システムの構造改革を促進する視点をあわせもつものとする。


1. 経営実態の正確なディスクロージャー(既存制度の運用。ただし、傍線部は法律措置が必要。)

金融再生委員会は、金融機関経営の実態を正確に把握し、適切に情報開示しなければならない。その際、下記の点に留意する。

(1) 有価証券の評価:

公的資本注入を受ける金融機関には低価法を義務づける。それ以外は低価法と原価法の選択制とする。

(2) 厳密な資産査定と十分な引当て:

現行の第U分類を債務者の信用状態に応じて細分化し、金融機関の健全性が十分に確保できるよう引当てを義務づける。その際、現行の第U分類債権に対しては15%、第V分類債権に対しては75%の引当てをガイドラインとする。

(3)関連企業の資産査定厳格化:

連結対象関連企業の範囲を拡大する。

(4) 監査法人による自己査定結果のチェック機能強化:

1. 会計監査人の株主代表訴訟の対象化 = 商法第267条から第268条ノ3までを会計監査人に準用する。

2. 金融再生委員会による監査法人交代命令 = 金融再生委は、当該金融機関の監査法人の適格性に疑義が生じたときは、金融監督庁に調査・報告させ、その結果をもって監査法人の交代を命ずることができる。



2. 早期是正措置の強化(既存制度の運用。ただし、傍線部は法律措置が必要。)

金融再生委員会の監督のもと、金融監督庁は(公的資本注入前の)各金融機関の自己資本比率等に応じて厳格なリストラ等を命じたり、新規業務の制限等を課す。資本状態が十分でない等、経営の健全性に問題のある場合は以下のような資本増強命令を出す。

(1) 存続可能性のない銀行(例えば、自己資本比率が2[1]%を切り、株主資本利益率(ROE)等を勘案して一定期間内に同率を回復する見込みのない銀行。[]内は現国内基準行に適用。以下同じ。):

経営の健全性の回復は困難であり、金融再生法案を修正(改正)し、特別公的管理、金融整理管財人による清算、ブリッジバンクに移すものとする。

(2) 著しい過小資本銀行(例えば、自己資本比率2[1]%以上4[2]%未満で、株主資本利益率(ROE)等を勘案して一定期間内に4[2]%を回復する見込みのない銀行):

一定の期限を限って、増資、合併・営業譲渡、又は大規模な業務縮小・自主廃業など、自助努力によって自己資本の増強を行なうための措置を速やかにとることを命ずるものとする。一定期限内に必要な自己資本の増強を行なうことができない場合または金融機関が申請するときは、後述のとおり、金融再生委員会の判断に基づいて公的資本注入を措置できるものとする。

(3)過少資本状態にある銀行(例えば、自己資本比率4[2] %以上8[4]%未満の銀行):

一定の期限を限って、必要な自己資本増強の措置をとることを命ずるものとする。一定の期限内に必要な自己資本増強ができない場合には、各金融機関の申請によって公的資本注入を可能とするものとする。金融再生委員会は当該申請を審査・判定し、公的資本注入の可否や条件を決定するものとする。ただし、BIS基準行が国際業務から撤退する時はこの限りではない。



3. 新しい公的資本増強制度(法律事項)

(1) 対象金融機関

1. 著しい過小資本銀行:金融再生委員会が決定した場合、及び金融機関が申請してそれを金融再生委員会が承認した場合には、国は当該銀行の普通株式を取得できるものとする。金融再生委員会の決定又は承認は、当該銀行に対する公的資本増強が行われなければ、次に掲げる何れかの事態を生じさせるおそれがあることを要件として行われる。

(イ)他の金融機関等の連鎖的な破綻を発生させることとなる等により、我が国における金融の機能に極めて重大な障害が生ずることとなる事態。

(ロ)当該銀行が業務を行っている地域又は分野における融資比率が高率である等の理由により、他の金融機関による金融機能の代替が著しく困難であるため、当該地域又は分野における経済活動に極めて重大な障害が生ずることとなる事態。公的資本注入に際しては、代表取締役、相談役等の更迭と再生委による新経営陣の承認、旧経営陣の責任解明、減資等による株主責任の明確化、リストラの徹底等を含む条件をすべて満たさなければならない。なお、代表取締役等の解任など必要な措置のための法的措置を別途行う。(経営再建計画における代表取締役等の解任義務付けや取締役会のみなし規定の検討。)

2. 過少資本状態にあるBIS基準行:

各金融機関は協定銀行(整理回収機構)による普通株引き受けを金融再生委員会に対して申請することができる。金融再生委員会は、当該申請を受け、多数の本邦金融機関が国際業務から撤退することを余儀なくされる結果、(イ)国際金融市場において重大な悪影響を生ずることとなる事態、(ロ)国内企業の経済活動に重大な障害が生ずることとなる事態、が予想される場合には、上記@の基準に則って審査を行い、1に準ずる条件のもとに公的資本注入を行うことができるものとする。

3. 過少資本状態にない銀行:

破綻処理の受け皿銀行である場合を除き、公的資本注入は行わない。

(2)金融再生委員会による公的資本注入の承認基準の策定・公表

金融再生委員会は、株式の引受け(等)を承認するための、経営再建、経営責任、株主責任、合併等の取扱い等を明確かつ厳格に定めた承認基準を策定・公表する。

(3)金融再生委員会による被公的資本注入金融機関の経営監視

被公的資本注入金融機関は、期限を切った数値目標や関連会社の整理等、客観的に検証できる経営指標を含む経営再建計画を金融再生委員会に4半期毎に提出し、委員会の承認を得なければならない。委員会は、被資本注入金融機関の経営状態を監視し、必要なら株主権の行使も含めて、当該金融機関の経営改善に努めるものとする。

(4)減資手続きにおける債権者保護手続の特例

減資を行なう場合に、商法に規定する債権者保護手続(債権者の異議のための広告等)を不要とする特例を設ける。

(5) 財源

金融再生勘定とは別に設ける勘定においては日銀借り入れ等を活用し、その際、 政府保証を可能とする。(なお、この資金は不良債権処理が完了した後に自己資本が不足する金融機関に対して注入されるものであり、回収が困難となる蓋然性は低い。)

(6) 期限

国が取得した株式は、2001年3月末日までに全額処分するものとする。



4. 今後の検討事項

(1) 金融持株会社設立に伴う税制優遇措置

(2) 金融機関の株式保有禁止と金融持株会社への株式譲渡に伴う非課税措置

(3) 連結決算・連結納税制度の整備

(4) 時価会計制度の整備

(5) 金融機関の貸出債権証券化の促進

(6) 直接資本市場の改革


以上

記事を印刷する
▲このページのトップへ
Copyright(C)2024 The Democratic Party of Japan. All Rights reserved.