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1998/08/25
金融再生法案の概要について
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1. 金融再生委員会の設置と目的

 不良債権問題を隠蔽、先送りしてきた過去の裁量的な金融行政と決別し、透明なルールに基づく行政の決然とした対応によって迅速に金融危機を突破するために、国際的な信認の得られる一元的な金融行政組織として、国家行政組織法第三条に基づく独立行政委員会「金融再生委員会」(仮称)を総理府に設置する。金融再生委員会は、金融監督庁を民主的に管理し、国民の税金が公正に使われるように監督するとともに、金融の安定と再生を図るための金融政策の企画立案を行うことを目的とする。金融危機管理のための時限的な組織とする。

2. 金融再生委員会の組織

1. 金融再生委員会は、両院の同意を得た経済、金融、法律に識見を有する委員4名と委員長で構成する。
2. 金融再生委員長は、国務大臣(金融担当)をもってあてる。
3. 金融再生委員会に事務局と金融監督庁を置く。
4. 大蔵省の金融企画局のすべての権限、金融監督庁長官の権限のうち業務停止などの行政命令権限を金融再生委員会に移管する。預金保険機構の監督等を金融再生委員会の所掌とする。
5. 金融再生委員会は2001年3月末に廃止し、その権限は、2001年4月に発足する金融庁(仮称)に継承する。

3. 金融機関の破綻処理原則

  金融の安定と再生を図るため、以下の原則に基づき、金融機関の破綻処理を2001年3月末までに集中的に実施する。

1. 各金融機関の不良債権等の経営実態を全面的に開示する。
2. 経営の健全性の確保が困難な金融機関は存続させない。
3. 破綻金融機関の経営者、株主等の責任を明確にする。
4. 預金者は保護する。
5. 金融機関の金融仲介機能は維持する。
6. 金融機関の破綻処理に係る費用は最小化する。


4. 金融機関の情報開示義務と罰則の強化

1. 金融再生委員会は、金融機関の債権分類基準と分類債権別の適正引当率の基準を定めて公示する。
2. 金融機関は、半期ごとに分類債権の状況と分類債権別引当率を公表することを義務付ける。
3. 虚偽報告をした場合の罰則を下記の通り強化し、時効を5年(現行3年)に延長する。

         現行           改正後
虚偽報告 懲役1年又は罰金300万円 懲役5年又は罰金500万円
        法人重課2億円       法人重課5億円

5. 金融再生委員会による破綻金融機関の法的整理手続き

(1)金融整理管財人による整理・清算

 金融再生委員会(仮称)は、金融機関の破綻処理にあたっては、「金融整理管財人」(仮称)を任命し、破綻金融機関の債権債務を整理し、清算処分する方法を原則とする。
1. 金融整理管財人は、破綻金融機関の業務および財産の管理をさせるため、金融再生委員会が、預金保険機構の用意したリストから預金保険機構の意見を聴取したうえで選任し、破綻金融機関へ派遣する。
2. 金融整理管財人は、破綻した金融機関の代表権、業務執行権、財産管理・処分権を専有する。
3. 金融整理管財人は、金融再生委員会の定める基準に則り、善意かつ健全な借り手に対する融資の方針、営業譲渡等を円滑に行うための整理、リストラ等の計画を作成し、金融再生委員会の認可を受ける。
4. 金融整理管財人は、破綻した金融機関から承継した業務を原則1年以内に営業譲渡等により他の民間金融機関に移管する。受け皿となる金融機関がない場合には、整理回収機構に営業譲渡するものとする。
5. 金融整理管財人は、株主総会の特別決議を経ずして、他の金融機関への営業譲渡等を決定できるものとする。
6. 金融整理管財人は、資金節約に努め、資産売却の促進、従業員給与の引き下げなどリストラの内容を公表する。
7. 金融整理管財人は、破綻に至った原因と経緯、および過去5年間の金融犯罪を調査し、法律違反行為を発見した場合、刑事上・民事上の責任があると思料する場合には、告発する義務を負う。

(2)破綻金融機関の一時公的管理

1. ただし、金融再生委員会は、

1. 当該金融機関が金融再生委員会が定める債権分類別の引当基準に基づいて適正な引当てを実施することにより債務超過となる場合、または、当該金融機関が預金の支払いを停止した場合、あるいは、当該金融機関から公的管理に入りたい旨の申し立てがあった場合であって、
2. 連鎖破綻等により、内外の金融システムの機能の維持に重大な支障を生じる恐れがある場合、または、破綻金融機関の地域・分野における融資比率が一定以上で他の金融機関等により金融機能の代替が著しく困難であると認められる場合であり、かつ、
3. 他の手段ではこれを回避できないと判断される場合には、破綻認定と同時に、一時的な公的管理決定の申請を、当該金融機関の本店所在地の地方裁判所に申し立てることができる。

2. 裁判所は、上記申し立てがあった場合、法律に定められた上記の基準に反していると認められる場合を除き、公的管理決定をしなければならない。裁判所は、申し立てを認めるか否かの決定を、申し立てから24時間以内にしなければならない。
3. 公的管理決定と同時に、金融再生委員会は、当該銀行の発行済み全株式(すでに政府が保有している優先株式を除く)を、預金保険機構が、正当な対価をもって強制買い取り(収用)する旨の決定を行う。
また、特例法によって、同決定により、破綻金融機関の経営に関する株主権限は預金保険機構に専属するものとする。
4. 金融再生委員会は、破綻金融機関の取締役全員を解任し、新経営陣を選任する。
5. 収用株式の正当な対価を算定するため、金融再生委員会に司法関係者、公認会計士らによる「株価算定委員会」(仮称)を置き、金融監督庁の検査結果などをもとに、一定期間内に収用する株式の対価を算定し、決定、公示する。収用対価の算定基準は、金融再生委員会が決定、公示するものとする。
6. 従来の株主は、上記決定から一定期間内に、株券、または口座通帳等株式所有を証明する文書を示して、収用対価の支払いを求めることができる。
7. 従来の株主が、公的管理決定(破綻と認定したこと)について、異議がある場合は、高等裁判所に即時抗告申し立てができるものとする。
収用対価に異議がある場合は、特例法によって非訟事件手続法を準用し、裁判所が適正価格を算定し、決定すべき旨の申立てができるものとする。申立てを受けた裁判所は、適正な買い取り価格が収用対価を超えると認定した場合には、当該差額の支払いを命ずることができる。
8. 金融再生委員会は、善意かつ健全な借り手に対する融資業務の基準を定めるほか、経営合理化計画を策定させ、その経営状況等について報告させることができる。
9. 金融再生委員会は、公的管理銀行の合併、営業譲渡等の承認をすることができる。
10. 公的管理銀行の経営者は、破綻に至った原因と経緯、および過去5年間の金融犯罪を調査し、法律違反行為を発見した場合、刑事上・民事上の責任があると思料する場合には、告発する義務を負う。
11. 公的管理銀行は、株式の売却等により、2001年3月末までに公的管理を廃止する。

(3)預金保険機構による資金援助等

1. 金融再生委員会は、預金保険機構を通じて、公的管理銀行に対して資金の貸付けまたは業務により生じた損失の補填を行うことができる。
2. 預金保険機構は、政府の保証により、日銀から資金の借入れをすることができる。
3. 金融再生委員会は、金融機関の破綻処理の状況、預金保険機構による出資・資金援助の状況、公的管理銀行の経営状況等について、定期的にまたは求めに応じて国会に報告し、公表するものとする。


6. 整理回収機構(仮称)の設置

1. 預金保険機構の全額出資により整理回収機構(仮称、日本版RTC)を設立する。
2. 整理回収機構は、金融機関の破綻処理のため、次の業務を行う。
a)破綻金融機関からの営業の譲受け及びその整理。
b)破綻銀行の資産の買取り及びその管理・処分。
3. 整理回収機構は、債務者が所有する不動産への立ち入り調査権などを持つ。
4. 役員は、理事長1名、副理事長1名、理事10名、監事3名とする。(両院の同意人事)
5. 金融機関の役職員、大蔵省の職員、日銀の役職員(経験者も含む)は、理事長・副理事長になることはできない。
6. 整理回収機構は、破綻銀行から取得した債権の債務者などに対し、民事上の責任を追及するため、必要な措置をとらなければならない。
7. 整理回収機構は、役職員が犯罪の告発に必要な措置をとらなかったときは、懲戒処分にしなければならない。
8. 整理回収銀行、住宅金融債権管理機構は、整理回収機構に統合する。

7. 金融安定化特別措置法の廃止

金融安定化特別措置法は廃止し、預金保険機構が金融機関の自己資本充実のために出資することはしない。

8. 預金保険機構に係る改正

1. 預金保険機構に金融再生特別勘定を設け、金融機関の一時公的管理を実施する場合の出資、公的管理銀行への資金援助を行うことができるものとする。
2. 金融再生勘定には、国会の議決の範囲内で政府保証を付すことができるものとする。
3. 預金保険機構は、破綻金融機関を引き継ぐ民間受皿銀行の財務が健全な場合に限り、受け皿銀行に対して出資できるものとする。
4. 特定合併に対する資金援助の規定は削除する。

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