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1998/06/23
民主党の金融再生計画
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民 主 党

 日本の不況は、失業と企業の倒産の激増など益々深刻となっている。不況の原因は景気対策よりも財政再建緊縮路線を優先させた橋本内閣の政策判断の誤りとともに、バブル崩壊後早くから指摘されてきた金融機関の不良債権を放置してきたことが根底にあることは明らかだ。

 橋本内閣と自民党は金融機関の不良債権の実態を公表しようとせず、逆に橋本総理大臣は、半年前に不良債権の処理について「全体の状況は改善している」とさえ述べていた。また、銀行の多くは大蔵省の護送 船団行政から抜け出せず、横並びで自己変革の気運もみられない。また、監督当局であった大蔵省は、国際的視野に立つどころか天下り先確保など省益優先の行政を続け、この危機のなか不祥事続きで自信喪失と機能マヒに陥っているといって言い過ぎではない。

 国民や市場は政府の言うことを信用せず、ついに円と株の急落によってアジアの経済危機の再燃と世界同時不況を危惧する声すら出てきた。アメリカをはじめ先進各国とアジア諸国はこうした橋本政権の政策運営に対して危機感を強め、サミットやIMFの場で橋本政権に直接不良債権の処理を迫る事態となった。橋本内閣の失政は外国からみても益々明らかとなった。

 結局、現在の日本の金融システムでは、大蔵省=銀行業界=自民党がもたれあう「いんぺい、先送り、無責任」の国家主義的経営が行われていると言ってもさしつかえない。我々民主党は、日本の金融システムを「情報開示、迅速対応、自己責任」の市場主義経営へと早急に変革する ことを目指している。民主党は一月にしっかりとしたルールにもとづく金融安定化対策をまとめた。

 しかしこの間も、政府自民党は場当たりの弥縫策を続けて金融危機はかえって一層進行し深まっている。 そこで民主党は、この危機的状況にあたり責任ある政党として、預金者の保護とともに善良な借り手―企業、顧客―が取引銀行の破綻等で連鎖倒産をすることなどがないよう、危機を管理し乗り切ったうえ日本の金融の再生、復興をはかる金融再生計画をまとめた。民主党は金融再生計画にもとづく緊急立法を臨時国会に提出する準備を進めることにした。

 本稿は、第1部で金融危機を招いた責任と政府自民党の対応を検証し、第2部で民主党の金融再生計画を提案する。

第1部:金融危機を招いた責任
    〜自民党、大蔵省、銀行業界〜

1 問題「先送り」の政治、行政

 バブル崩壊後、1991年に三和信金が破綻したのをはじめ、中小の地銀、信金信組が相次いで破綻した。このため当時から金融機関の多額の不良債権を処理し金融システムを守るべきだという意見が出ていたが、政府はこれを無視した。そして1994年末、6,850億円の公的資金を投入して住専の不良債権を処理したが、関係者の負担や責任追及も殆ど行われないまま密室で処理され国民の大きな批判を浴びた。この後も政府自民党は実態とはうらはらに不良債権の処理は順調に進んでいると繰り返し、問題を先送りにした。その結果主要20銀行はつぶさないと公約したにもかかわらずついに拓銀は破綻し、今日再び大手銀行の経営不安を招いている。

2 国民への負担転嫁と隠蔽(いんぺい)

 1992年度から97年度の6年間政府の超低金利政策によって、銀行は30兆円を超える業務純益をあげた。それによって政府と銀行は不良債権の処理も進めようと安易に考えた。まさに、超低金利によって預金者、国民に実質的に負担を転嫁するかたちで不良債権の処理を進めようとしたことを明記しておかなければならない。それでも、バブルのつけである巨額の不良債権は処理できず、銀行は破綻金融機関の例でも明らかなように粉飾まがいの決算を続けていたが、市場や世論の批判をうけて大蔵省と銀行は1997年上期の自己査定の結果不良債権額は76兆円にのぼることを公表し、これまでの公表額が実態と大きくかけ離れていることが明らかになった。

3 公的資金を大盤振舞い

 大手銀行の破綻を契機に、政府、自民党は銀行に資本を注入することなどを目的に30兆円の公的資金の投入を決定、民主党の提案を無視して関連法の成立を強行した。

 情報開示も責任追及も行われないままの60年前のアメリカの政策の一部を模倣した場当たりの対策であったと断言できよう。案の定ごく最近、この資本注入を受けた大手銀行のうち一行が自主再建は難しいと伝えられ、この銀行に投じられた1,766億円の公的資金は回収が難しくなる恐れがでてきた。銀行の救済策にもならなかったことが早くも証明されようとしている。

 又、1995年に破綻した兵庫銀行の受け皿として設立された「みどり銀行」が5月に破綻した。大蔵省の裁量行政の完全な失敗であるばかりでなく、失敗のつけとして当初の4,730億円の資金援助に加え新たに5,000〜6,000億円以上の公的資金の投入に迫られている。

 さらに、政府、自民党が打ち出している土地債権流動化対策は臨時不動産関係権利調整委員会によるあっせん・調停により、債権放棄に関わる無税償却を弾力的に認めることにしている。無税償却の乱発は債務者に対する公的資金の投入と同じものであり、とくにゼネコンや不動産業の債務を免除する徳政令になるおそれが大きい。

 いったい政府、自民党は、不良債権の実態も明らかにしないままどれだけ公的資金を投入しようとするのか。納税者、国民の納得は到底得られないと言わざるをえない。

 今日になっても、貸し渋りの深刻化に見られるように金融システムは安定せず、5月のサミットなどで不良債権問題に対する日本政府の認識の甘さに各国から非難が沸き上がった。このため自民党・橋本内閣は不良債権問題にようやく本格的に取り組むことを余儀なくされたが、あまりに時期が遅く、かつ外国からの圧力に屈する形となったことは自民党・橋本内閣に問題解決能力が欠如していることと、市場の信認を失っていることを明確に裏付けている。


第2部 : 金融再生計画

 日本の金融の危機的状況を正確に把握し、不良債権を早期に完全処理して金融機関の再生を進めて行く。その際には納税者、国民の理解をうるために情報公開を徹底させた上、以下の5つの確固としたルールの下に再生計画を実行してゆく。

1.預金者は保護する。
2001年3月までは預金は全額保護する。

2.市場原理に則り、劣悪銀行は破綻させる。
公的資金の投入などによって経営内容が劣悪な銀行自体を救済するような手法はとらない。

3.銀行の決済機能を維持するとともに、善意の借り手を保護する。
  取引銀行の破綻などで資金繰りに追われている多くの借り手―企業・顧客―が融資を断ち切られ、資金調達不能に陥ることを防ぐ。

4.破綻処理のコストは最小化し、国民の負担を極力抑える。

5.計画の完了期限は2001年3月とする。


第1段階 短期集中検査による実態把握

1. 大手19銀行について資産査定を中心に短期集中検査を実施、その結果を公表する。

2. 半年以内に他のすべての銀行についても同様の検査を実施し、その結果を公表する。

3.銀行自身も4分類ごとの債権額を自己査定し、その結果を監督当局に報告するとともに公表する。

4.債務超過でない銀行に対しては、検査結果などに基づき早期是正措置(省令の変更前)を早期に厳格に適用する。

第2段階 時限的公的管理と民間経営手法による再生

1.政府からは一定の距離を置いた第三者機関「金融再生委員会」を緊急立法により設立する。メンバーは国会同意人事とし、経営が悪化した銀行の経営内容の実態把握と公的管理の判断、新経営陣の指名などをおこなう。

2.短期集中検査の結果、債務超過が明らかになった銀行は、情報を開示すると同時に業務停止を命じ、破綻させる。

3. 金融再生委員会は破綻銀行の廃業等によって広範な地域、または分野において金融機能に大きな支障が生ずる恐れがあると判断した場合、国が破綻銀行の株式を100%取得する。政府保証のもとに日銀貸出を実施、預金者及び善意の借り手に対する業務を継続する。
尚、この際内外の金融機関等から、当該銀行を買収するという申し出があれば株式を売却する。

4.新銀行の不良債権は、緊急立法により新たに設立する公的債権回収機関(日本版RTC)に時価で売却し、本体から完全に分離する。 ※

5.経営者全員を退陣させ、バブル以降退任した役員を含め必要に応じて民事・刑事責任等を追及する。

6.新経営陣は内外の民間人を起用する。従業員はいったん全員解雇し、新銀行に再雇用する。

7.新経営陣は、金融再生委員会との間で新銀行の経営合理化計画を取り決め、従業員や不採算店舗の合理化を進める。2001年3月までに、合併や営業譲渡等によって整理する場合を除き、健全な銀行として再建する。金融再生委員会は、再建計画の達成方法については新経営陣に任せ、結果のみチェックする。

8.短期集中検査を待たずに債務超過が明らかになった銀行は、ただちに第2段階以降を適用する。

※民主党の第一次金融安定化対策に詳述。

第3段階 再建銀行の株式売却

 1.健全化された銀行の株式は、2001年3月までに政府が第三者に売却する。
 2.株式公開、売却益は、公的資金の穴埋めに充当する。
 3. 金融再生委員会は、任務を完了することによって廃止する。

以上の金融再生計画を断行するため 、臨時国会で金融再生のための緊急立法を行う。
尚、民間の銀行員などを臨時に公務員に採用するなど検査体制を増強するための法整備を同時におこなう。

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PDF 債務超過銀行処理スキーム(=公的管理による真の銀行民営化)
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