トップ > ニュース
ニュース
ニュース
1999/12/01
宮沢大蔵大臣の財政演説に対する質問/海江田万里議員
記事を印刷する

民主党 海江田万里

私は民主党を代表して、去る25日に行われた第2次補正予算についての宮沢大蔵大臣の財政演説に関し、総理並びに関係大臣に質問いたします。


まず、本臨時国会が召集されましたのは10月の29日であります。たしかにいくつかの指標において明るい兆しは見られてはいるものの、相変わらず低迷を続ける日本経済を、確実な回復軌道に乗せるために必要な施策を採らなければいけないということで始められた臨時国会ではありますが、政府が肝心の第2次補正予算を閣議決定したのは、実に国会がスタートしてからおよそ1ヶ月経ってからのことであります。そして本会議場で宮沢大蔵大臣が財政演説を行い、私どもがその財政演説に対する質疑を行おうとした矢先に、厚生委員会でのあの暴挙であります。国民生活に重大な影響を与える年金制度の改革を、実質たった3日間の審議で、法案の採決日を決定するという、国民を無視した与党の議会運営を私たちは満腔の怒りをもって糾弾するものであります。

現在、自自公の与党3党は本院においては71%を占める巨大与党となっていますが、もちろん国民の選択によってできた与党ではありません。政権の維持というその一点で結ばれた醜い野合政権で、とうてい国民の支持を得られるものではありませんが、国会の中では数を頼りに、奢りの体質を露わにしています。いずれ与党のこの奢りの体質は国民の審判で鉄槌を下されることになると、私は確信をするところであります。


さて現在のわが国の経済の状況ですが、私はこれを、今、東京の渋谷や原宿で若い女性に流行の『厚底靴経済』と名付けたいと思います。『厚底靴』というのは穿いている若い女性に聞きますと、「とにかく背が高くなって、むさくるしいおじさんたちを見下ろすことが快感だ」というわけであります。もちろん20センチや30センチという『厚底靴』は人体に悪い影響を与えるわけで、足首の捻挫や骨折の患者が増えているという実害もおきていますが、これを穿いている本人は意に介さないわけです。

私は冒頭、わが国の経済は多少明るい様相を呈していると述べましたが、これはまさに日本経済が、「何でもあり」の小渕政権のもとで、多額の借金を頼りに公共事業のバラマキによって嵩上げされた結果です。本来の身長は決して高くないのに、あたかも身長が高くなったと錯覚して街を闊歩しているわけで、この靴を脱いでしまえば元の木阿弥です。

終戦直後、GHGの経済顧問であるドッジ氏が、アメリカの経済援助と各種の補助金によってささえられている当時の日本経済を『竹馬経済』と名付けたことはよく知られているところですが、現在のわが国経済は、赤字国債やジャブジャブの公共事業によって底上げされたまさに『厚底靴経済』ということができると思います。


以下、具体的な質問に入ります。


まず自自公の3党連立政権に至る過程で演じられたドタバタ劇に対する質問です。

3党の連立政権合意書を見ますと、「高齢化社会の生活の安心を実現するため、まず2005年を目途に、年金・介護・後期高齢者医療を包括した総合的な枠組みを構築する。それに必要な財源の概ね2分の1を公費負担とする。基礎的社会保障の財政基盤を強化するとともに、負担の公平化をはかるために消費税を目的税に改め、その金額を基礎年金・高齢者医療・介護を始めとする社会保障経費の財源に充てる」とありますが、総理は2005年までに、基礎年金を2分の1国庫負担にする意思がおありと考えていいわけですね。介護についても「概ね2分の1を公費負担」ということは基本的には社会保険方式を残すという理解でよろしいわけですね。

同じ質問を自由党の二階運輸大臣にもしたいと思います。自由党の従来からの主張は「介護は全額税で賄う」ということを主張していたはずですが、その主張を現在は撤回したのか。あるいは今後の協議によっては介護は全額税方式になる可能性もあるのか。そこのところをはっきりお示しいただきたい。

自自公3党連立に至るドタバタといいましたが、特に介護保険の高齢者保険料を取る、取らないの右往左往は国民に大きな政治不信と、せっかく生まれたばかりの公的介護の制度に大きな不安を与えることになりました。小渕連立政権は早くもダッチロールの状況に入ったと断じざるを得ません。

小渕総理、一度決まった介護保険について、実施間際になってかくも大きな変更を行うなら、衆議院の解散を行って国民に信を問うべきだと思いますが、その覚悟はおありですか。


65歳以上の高齢者については半年間は保険料を徴収しないというのは、介護保険法の第129条の規定、つまり「市町村は、介護保険事業に関わる費用に充てるため、保険料を徴収しなければならない」という規定に違反するのではないでしょうか。今回の決定は政府自ら、法律違反を犯していることにならないのでしょうか。これは厚生大臣に伺います。

また何故6ヶ月の保険料徴収猶予なのか。期間を6ヶ月と区切った意味はどこにあるのか。これは総理にお伺いをしたいと考えます。

総理にはもう一つ、医療保険制度の改革も喫緊の課題であることは言を待たないところですが、総理は2000年度からの医療改革の実施はすでに何度も口にされていますから、政府の公約だと思いますが、2000年の4月からどんな医療改革を行うつもりか、内容を明らかにしていただきたいと思います。また総理が考えている将来の介護・年金・医療などの社会保障の将来像はどんなものかこれも明らかにしていただきたいと思います。

年金の問題では、まさにこれからも充実した審議が厚生委員会で行われると思いますが、ここで改めてひとつだけ質しておきたい問題があります。それは年金積立金134兆円の自主運用資金の株式運用の問題です。これは大変大きな問題で厚生委員会でもしっかり議論しなければならない点ですが、最大の問題はそもそも国が、国民から集めた老後の資金を株式のようなリスク商品で運用してもいいのかどうかの問題です。この問題について、最近株価が絶好調なアメリカで、クリントン大統領が年金基金の資金を使って株式を購入したらどうかという提案をして、グリーンスパンFRB議長の猛反対にあって、提案を引っ込めた経緯があります。アメリカでは401Kプランのように個人の老後の資金はどんどん株に流れていますが、国が関与する年金基金についてはやはり株式での運用はしてはいけないという、歯止めがある。しかしわが国の場合は、そうした歯止めが一切ない。もちろん株式運用をするのはその一部でしょうが国が134兆円という巨額の資金を使って株式市場になだれ込んだら株式市場は混乱する。マーケットを歪めることになる。また民間企業の株を間接的に国が保有することによるコーポレートガバナンス(企業統治)の問題もある。それにもし、株式の下落などによって年金積立金に穴があいた場合の責任の取り方はどうするのか。国、年金資金運用基金、運用金融機関それぞれのレベルでどういう責任をとるのか当然明らかになっていなければならないと思います。

これまでの年金福祉事業団の自主運用でも、運用に失敗しています。単年度で損益が黒字になったのは13年間で4回だけ。いわば4勝9敗の成績で、累積赤字は簿価で約2兆円になっている。この損失の責任は誰かとったのか。誰も取らない体制になっています。「積立金の運用に失敗しました。それでは保険料を値上げです」。あるいは「給付水準の引き下げです」では済まされません。この年金積立金の株式による運用はただちに止めるべきで、年金法案のこの部分の関連法案は撤回すべきだがどうか。この問題は極めて重大ですので総理のお考えを伺いたい。グリーンスパンFRB議長はアメリカ下院の公聴会ではっきりと「年金基金の株式市場での運用は支持しない。それだけ巨額の資金を政治と切り離せるとは信じられないし、年金受給者に低いリターンしか残せないことを憂慮する」といいきっています。どうしても、法案の通り、年金積立金で株式運用を行うというのであれば、情報公開はどうするのか、損失が出たときの責任の取り方はどうするのかそのことをこの場で明らかにしていただきたい。この答弁は厚生大臣に伺います。「損失のでないような運用に努める」といったおざなりの答弁では納得できないことを事前に申し述べておきます。


そこで今回の補正予算についてですが、何と言っても今回の補正予算の特徴は、経済新生対策関連費などの財源として7兆5660億円の国債を発行して、この結果、99年度の国債発行額は38兆6160億円になって、地方交付税分を除いた国の税収(32兆600億円)を戦後始めて抜いたということにあるといえます。家計でいえば働いて稼ぐ収入より、借金による調達のほうが多いこととなり、これはもはや破綻した家計そのものであるといえます。

まず総理はこうした破綻財政をきたしたことに対する責任意識がおありかどうか伺います。「景気回復に失敗したのはこれまでの内閣が悪いんだ。自分はできるだけのことをやっているので、その結果多少借金が増えても仕方のないことだ」と考えておられるのか。それとも「やはりこれでは財政がもたないから。もう借金にたよった景気浮揚策はやめにしよう」と考えておられるか。国の借金がここまで膨らんでしまったことへ国の舵取りとしての責任ある考えを聞かせていただきたいと思います。

宮沢大蔵大臣は記者会見などで、「この補正予算と来年度の予算で大規模な財政出動は終わりになる」と発言しておられるが、本当にそうなるのか。よしんばそうしたところで、これまでに大量発行した国債のつけは今後確実にわが国の財政を襲う。たとえば国債の新規発行ぶんを多少押さえたところで、借り換えぶんを入れると2001年度にはどうしても100兆円を超える国債を発行しなければならなくなる。わが国の財政はさらに悪化をしていく。

大蔵省は今年の1月本予算の国会審議に際して、中期財政試算を提出して、2003年度までの公債依存度、公債残高、公債残高の対GDP比などを明かにしたが、今回の補正に際してもこの中期財政試算を提出すべきです。補正後の2003年までの公債依存度、公債残高、対GDP比はそれぞれどうなるか明かにしていただきたい。

さらに問題は補正予算の中身です。今次補正では、経済新生対策を踏まえて、社会資本整備関係の国費支出として3兆5000億円、事業ベースで6兆200億円程度が計上されています。そしてその看板は「生活基盤充実特別対策費」だとか、「情報通信・科学技術振興等経済発展基盤強化特別対策費」などと一見して斬新な印象を与える言葉が散りばめられているが、実態は単に従来の農業土木事業を継続するだけの事業がほとんどであると思われます。今次補正予算の社会資本整備関係穂の中で真に新規事業とよべるものが一体どれだけあるのでしょう。事業費ベースでいくら、国庫支出でいくらと教えていただきたい。

そして総理にもお尋ねします。もともと公共事業は景気の下支え効果しかなく、しかも近年は建設資材の在庫が膨らんでいることや、海外からの安い建設資材の輸入などによって乗数効果は年々低下傾向にあるというのがエコノミストの常識であります。またストック面から見ても、特に90年代に入って景気対策として行われてきた公共事業はその費用対効果の十分な吟味が行われておらず、道路、港湾整備、農業土木などは地域や生産者の生産性の向上に対する効果がきわめて乏しいものであったことは,私の指摘を待つまでもありません。景気対策というとすぐ公共事業だというのは、わが国だけに際立っている「日本の常識、世界の非常識」であります。一体世界の先進国のどこに日本のようにGDPに占める公共事業の割合の高い国があるか。そんな国があったら教えていただきたい。総理は、このようなわが国の公共事業のあり方について基本的にどんなお考えを持っておられるのかお示しいただきたい。

今回の臨時国会は中小企業国会と銘打って始まりましたが、補正予算にでてきた中小企業対策は、お粗末のひとことです。中小企業金融安定化特別保証を来年3 月末まで1年間延長し、保証枠を10兆円追加するという経済新生対策を受け、補正予算では今年度分として5兆円を計上しています。10兆円の積算根拠についてもはなはだ不明瞭で、当初通産省では2兆円程度といっていたのが、選挙対策でいつのまにか4兆円という金額に膨れ上がったとも仄聞しています。10兆円の根拠は何か。そしてそもそも、こうした融資を継続することが、中小企業の自立を妨げ、今国会で改正した中小企業基本法の精神と方向性に反することにならないか総理にお尋ねします。


 最後に企業団体献金を廃止する誠司資金規正法の改正案についてでありますが、現在自自公の与党3党で協議中と聞きますが、総理は与党の総裁として、付則第9条に基づく法案をいつ提出することになるのか。またその際、付則第10条の取り扱いについて自民党は削除の方針を打ち出しているとの報道もあるが、それは本当のことか。総理も先だってのクエスションタイムでわが党の鳩山代表とのやりとりのなかではっきりと「企業・団体献金は廃止する」といったのだから、ここでも「現在協議中」などと答えずに、はっきりと自民党総裁としての考えを述べるべきだと思います。

記事を印刷する
▲このページのトップへ
Copyright(C)2024 The Democratic Party of Japan. All Rights reserved.