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1999/11/04
小渕総理の所信表明演説に対する代表質問(直嶋議員)
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民主党・新緑風会 直嶋正行

私は、民主党・新緑風会を代表して、小渕総理の所信表明演説に対して、総理及び関連大臣に質問をいたします。


(はじめに)

 はじめに、一文を引用いたします。

『日本の雇用情勢は「戦後最悪」を更新し続けており、(中略)すでに雇用不安が社会不安を招き、消費低迷・景気低迷を生み出す悪循環となっており、雇用の維持・安定ならびに雇用創出は、いまや国民的な緊急課題となっている。』

 これは連合と日経連が合意・発表した「雇用安定宣言」の一節であります。現下の雇用情勢に対する危機感が溢れています。

 これと較べ、総理の所信はまるで別世界にいる人かと思う程、雇用問題に対する危機感も、解決への意気込みも感じられませんでした。

 また「雇用」と並んで国民の大きな不安の種となっている老後の問題についても同様であります。介護保険をめぐる最近の与党三党のやりとりは介護地獄とも呼ばれる深刻な社会問題を、与党の政治家が依ってたかって「おもちゃ」にしているとしか私には見えません。

 小渕総理には、政治の数合わせや、選挙対策のために目先のお金をバラ撒くことには熱心でも、国民の不安を共有して自ら先頭に立って解決しようという気迫や熱意が感じられない、失礼ながら問題意識すらお持ちになっていないように思えます。

 以下順次御所見をお伺い致します。


(雇用問題について) 

 まず、雇用問題について伺います。

 雇用情勢は、八月、九月と統計数値の面では僅かづつ改善に向かっています。しかしながらその一方で、ほとんどの業種に亙り、それも日本を代表するような大企業が、今後二〜三年の間で、万単位にも及ぶ大幅な人員削減計画を相次いで発表しています。私が、この一年間の新聞報道をざっと拾っただけでも、およそ、四十社、十五万人分ありました。さらに、先の国会で成立した産業再生法がこれらの動きに拍車をかけていくものと思います。その点では雇用面での手当てを怠った政府の責任は免れません。総理が衆議院でお答えになった、六月の緊急雇用対策は大企業のリストラの受け皿とはなり得ません。

現在、職にある勤労者にとっても雇用不安は増すばかりです。もちろんこれらは、採用抑制や退職者の不補充、転籍などが中心になっています。とはいえ、実行段階では失業問題に発展する可能性が高いと見るべきです。また、周辺企業や地域社会にも甚大な影響を及ぼすと思います。

 総理は、こうした一連の大企業のリストラ計画が勤労者の雇用や生活、地域社会に及ぼす影響をどのように見ておられるのでしょうか。また、それによって我が国の労働市場の先行きはどうなると見ておられるのでしょうか。総理の見通しとご判断をお伺いいたします。

 また、総理は、「雇用の場の確保」に国はどのような責任を負っているとお考えでしょうか。たしかに、雇用の場は、企業の経済活動によってつくられるものであり、第一義的には、経営者に、安易な雇用調整を慎み、失業者を出さないよう最大限の努力をする社会的責任があると考えます。しかし、企業の努力の限界を超え、万やむを得ず、解雇者が出る場合の対応の責任は、企業にあるのでしょうか、国にあるのでしょうか。私は、そのような場合は、国の責任において、雇用の場の確保と勤労者の保護を行うべきであると考えますがいかがでしょうか。

次に、勤労者保護の観点から指摘したいことがあります。

政府は、この数年、商法の改正などにより、企業が分社や組織変更を弾力的に行えるよう法整備を図ってこられました。今後、更なる法整備も想定されます。これらは企業が新しい環境に応えるために必要なものかも知れません。しかし、そこに働く勤労者の立場からは、全く法的な手当がなされていません。企業のドラスティックな組織変更等が、失業や生活苦といった社会問題を引き起こしかねません。それを避けるために、私は、企業社会における両輪の一方である勤労者を保護する法整備が是非必要であると思いますが、総理のご見解を伺います。

 次に、今後の雇用対策のあり方について伺います。政府は、昨年来、雇用対策を打たれてきましたが、その効果には疑問を持たざるを得ません。例えば、本年六月の緊急雇用対策を受けた自治体での雇用創出の取り組みは、目標を下回るとの専門家の指摘もあります。また、これは所詮、つなぎ的な対策でしかありません。従来型の雇用対策がもはや限界に達していると思います。総花的に助成金や奨励金をばらまくのではなく、雇用創出効果の大きい分野への重点志向や、雇用情勢の特に悪化している地域や企業城下町に対しては、政府が総力をあげて地域再生計画を作るなどといった思い切った対策が必要と考えます。

 今後の雇用対策のあり方について、総理のお考えをお伺いいたします。


(社会保障改革について)

 次に社会保障改革について伺います。

 経済不況の大きな要因である国民の将来不安を一日も早く取り除くためにも、先の通常国会では社会保障改革に精力的に取り組むべきでありました。しかるに自自連立政権内の意見対立のあおりを受けて、年金法案は会期末直前になってやっと提出されただけで審議できず、医療制度改革にいたっては、これに関連業界の圧力も加わって法案すら作成できないあり様であります。

 今国会の総理の所信では、わずかに年金について触れるのみで、医療制度改革に至っては一言もありませんでした。

 一体、総理は医療制度の抜本改革をどうなさるおつもりなのでしょうか。医療費の増大にどの様に対処なさるのでしょうか。危機に瀕した健保財政をどうやって建て直されるのでしょうか。はっきりとお答えいただきたいと思います。

 本来医療制度の抜本改革は、一昨年の医療費の国民負担引き上げとセットで実施すべきものでありました。それを政府は負担引き上げだけをつまみ食いし、制度の抜本改革は平成一二年度実施に先送りいたしました。

 現下の不況の引き金が消費税等の増税と、国民の医療費負担の増加にあることはすでに定説となっています。深刻な不況をもたらしたうえ更に、国民への改革実行の約束も果たさないとすれば、総理には国民生活を預かる資格はありません。

 総理はこの責任をどの様に取るおつもりか国民に明らかにしていただきたい。

 また年金法案についても抜本改革には程遠いといわざるを得ません。現在提出されている法案は、給付の削減により将来世代の過重な負担を防止するとされています。しかし給付の削減については法案に明記されており、総理のおっしゃるように引き下げが確実な給付を約束するものになっています。しかし過重な負担増の防止を担保するものは具体的には何もありません。

 例えば、先国会で成立した年金保険料の凍結を今後どうするかで、その後の保険料負担も大きく変わります。更には基礎年金の財源を税に求めるのか、保険とするのかで負担のあり方は全く異なってきます。しかし政府・与党は政権の枠組みに影響するので自自公三党合意において二〇〇五年を目処に年金・介護・後期高齢者医療を包括した総合的な枠組みを作るとしてその決定を先送りしています。更に国民年金の未納・未加入問題や女性の年金問題等にも何ら答えていません。

 このような年金制度で国民が将来にわたって安心できるとは到底思えませんが、総理これらの課題にどう答えていくのかお聞かせください。

 

 次に介護保険制度について伺います。 

 自自公三党は、介護保険制度について「おおむね半年間は保険料徴収を行わない」ことや、「家族介護に対する支援策は介護保険制度とは別枠で慰労金を支給する」ことなどで合意されたと伺っております。制度実施まで五ヶ月というこの時期に、なぜ制度の根幹にかかわるような見直しを行ったのか理解に苦しみます。選挙を意識したバラマキとしか理解できず、それが事実ならば国民を愚弄するものであり、断じて許されるものではありません。

 今回の合意事項は、介護保険の理念そのものを根本から変えようとするものです。

 総理が所信演説で言われた、「高齢者の介護を社会全体で支えていく」ことこそが介護保険の理念であったはずです。家族介護に対する慰労金の支給は、この理念に全く逆行するもので、介護する家族を慰労するどころか、介護サービスの整備にブレーキをかけ、結局、介護で泣く家族を増加させることにつながります。また保険料凍結・徴収の先送りとも相俟って巨額のつけを国民に回すだけであります。

 また今回の合意は来年四月の実施に向け必死の準備を続ける市町村を大きな混乱に陥れています。総理は、この混乱をどう収拾されるのか、また保険制度を将来とも維持していくお考えかお聞きします。また、自由党・公明党は介護制度を将来どのようにしていくべきと考えておられるのか二階運輸大臣並びに続総務庁長官にお聞きします。


(企業・団体献金の禁止について)

 二〇〇〇年一月一日から政治家個人の資金管理団体への企業・団体献金が禁止されることは政治資金規正法附則第九条に明記されています。自民党はこの公約を反故にし、自由党も同調する考えと伝えられております。

 そもそもはロッキード事件で田中元首相が逮捕され、リクルート事件で竹下内閣が崩壊し、更に佐川急便事件、金丸元自民党副総裁の巨額脱税事件といった政治家とお金にまつわる一連の事件を契機に、このままでは日本の政治は堕ちる所まで堕ちてしまうという反省の中から、腐敗の温床になりやすい企業団体献金を禁止し、透明性の高い政党助成金制度を採用したはずであります。つまり企業団体献金の禁止こそ政治改革の原点であり、その一番根本の問題を反故にしようと言うのは国民に対する背信行為であります。

 一連の事件、そしてその反省に立ち当時の細川総理と河野自民党総裁が決断し、法律にも明記した。こうした経緯で決まった内容を一度も実行しないままに軽々に変えて良いのでしょうか。総理は所信表明でこの問題に一切触れておられなかった。衆議院における鳩山民主党代表の質問に対しては、概略、自民党の提案を与党各党で十分議論していただきたいとのご答弁でしたが、ここは総理の所信を伺う場であります。与党三党ではなく、先程申し上げた過去の経緯を踏まえた上での総理ご自身の見解をお聞かせください。

 自自連立から自自公連立政権へと、国民の意向を無視した政権の枠組み変更は、国民から大変な不信を買っています。その上更に、多くの時間と労力をかけて実現を図ってきた政治改革の根幹部分を反故にすれば、国民の政治への信頼は地に落ちることは必至であります。総理自らの御所見を国民の皆様に直接語っていただくようお願い申し上げます。

 つぎに河野外務大臣にお聞きします。大臣は平成六年当時の総総会談の当事者として、紆余曲折した議論に最後の結論を下した責任者であります。その際の合意事項に「企業等の団体の寄付は、政治家の資金管理団体に対して、五年に限り認める」と明記されています。まさか今回の自民党の議論を容認されることはないと思っていましたが、鳩山民主党代表の質問に対して、当時は党の議論を踏まえて会談に臨み決めたことであり、今回も党が決めたことに従うと答弁されています。それでは余りに無責任ではありませんか。総総会談で決め、その後記者会見までして国民に公党として約束されたことであります。私は今でも鮮明に覚えています。あの時、細川総理と河野総裁は二人揃って記者会見をされ、会談の結果を国民の皆様に諄諄と語られました。その情景を見て多くの国民は「これで日本の政治は変わる」と確信されたと思います。それを実施目前にして反故にすることになれば、政治家として、また、公党の責任者としても信義にもとる変節との批判を免れないと思いますが、外務大臣の御所見を改めてお伺い致します。

 また公明・自由両党には政治改革に取り組んだ初心を忘れず貫徹することを切に要望いたします。

 政治改革をとりわけ熱心にリードしていたのは、細川連立政権下の新生党であり、現在の自由党幹部のほとんどの方がそのメンバーでした。

 当時政権内の一部の人達からも、細川政権の進めた政治改革に対して、政治資金の問題を先送りし選挙制度改革にすり替えようとしているとの批判がありました。

 自由党が自民党に同調して企業団体献金の禁止を覆せば、当時の批判を認めることになると思いますが二階大臣にご説明いただきたい。

 続長官にも同じ問題をお伺いいたします。

 公明党は政治改革を推進してきた当事者であり、「政治家個人への企業・団体の献金禁止」が党の基本政策にも明記されています。政治家の斡旋利得の禁止も推進するなど、ひと際政治改革には熱心な政党であります。

 長官は衆議院では三党協議に委ねる旨発言され、また政党の枠組みが変わったとも申されました。しかし、政党の枠組みが変わったことにより基本政策を変えることになれば、それは本末転倒であります。基本政策の相容れない政党の枠組みを作ることの方が問題であり、むしろそちらを改めるべきであります。

 日本の行方を左右する最大の分かれ道は、利益誘導に終始し利権構造そのものの政治を続けるのか、一切の利権とのしがらみを断ち切り、国民の立場に立った政治を目指すのか、その選択にかかっています。まさに今、公明党はいずれの側に立つかを問われていると思いますが、三党協議でどの様な主張をされようとしているのか続長官にお伺いいたします。


(衆議院定数削減問題について)

つぎに衆議院定数削減問題について伺います。

自自両党は先の通常国会で衆議院比例代表選出議員定数五〇削減法案を提出し、委員会における提案理由説明も行っており、この法案は継続審議となっております。

しかしながら、自自公三党は昨今、衆議院の比例定数を二十削減し、残りの三十名の削減は「小選挙区などを中心に~平成十二年の国勢調査の結果により」行うと、玉虫色の合意をしました。先に出した法案を一度も審議しないまま、異なる内容の法案を新たに提出しなければならない必要性が全く理解できません。総理から国民に明確に説明していただきたい。

また自自公各党は、衆議院の選挙制度としてどのような制度が望ましいと考えておられるのですか。自由党は完全小選挙区を目指しているのですか、公明党はどうなのか、小渕総理、二階大臣、続長官それぞれにお示しください。


(農業問題について)

次に農業問題について伺います。

今月末、シアトルで開催されるWTO閣僚会合を皮切りに、いよいよWTO新ラウンドが始まります。新ラウンドでは前回のウルグアイラウンド同様、農業分野が極めて重要な交渉分野となることは間違いありません。

アメリカ政府は農業分野の貿易ルールづくりを最優先の課題にすることを早々に表明しております。またEUも食品の安全性といった「消費者保護」を全面に打ち出す構えです。これに対し、わが国政府の姿勢は関係省庁の主張を総花的に羅列するといったものであり、農業分野のプライオリティーが不明確であります。新ラウンドにおける農業分野の位置づけについて政府の基本姿勢を総理にお伺い致します。


(防衛庁調達行政)

 防衛庁の調達業務についてお尋ねします。十月十九日には、燃料談合が刑事告発され、石油会社七社の九人が逮捕されました。さらに、十月二十六日には、会計検査院が自衛隊艦船の修理や定期検査の発注入札について造船会社が事前調整を繰り返していた疑いを指摘しました。防衛庁は、昨年の防衛装備品不正調達事件を機に調達業務の改革を実施したはずなのに、防衛庁と業者との癒着体質は払拭されていません。調達行政の総点検と早急な真相究明が求められていますが、今後いつまでにどのような措置を講ずるのか総理に伺います。


(おわりに)

 以上縷縷述べてまいりましたが、自自公連立政権である第二次小渕内閣では理念も考え方も異なる与党間の意見調整に明け暮れ、深刻な雇用情勢への対処もならず、年金・医療改革は遅れに遅れ、介護保険制度や政治改革においては議論を蒸し返し、その原点さえ反故にしてしまう。明らかに時計の針を逆にまわしています。

 二〇〇〇年の節目を前に、このような小渕内閣のもとでは、

総理の言われる「明日に希望を持ち、未来の発展を確信できる世の中」は絶対にやってこない。私ども民主党が政権についてこそ可能になる。総理の所信を伺い、この確信を一層強くしたことを申し上げ私の質問を終わります。

以 上

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